朝鮮は米国によって強要されている核戦争の危険を
強力な核抑止力で根源的に終息させる
−2016年9月23日−

 朝鮮の李容浩外相は9月23日、第71回国連総会で演説し朝鮮の原則的立場を明らかにした。演説の全文は、次のとおり。

 議長、平和と安全は国連の永遠の主題です。持続開発も平和と安全を大前提にしています。国連の持続開発のための変革を指向するいま、この時間にも世界では、テロの狂風が吹き、戦乱による難民事態が巻き起こっており、世界的なホット・スポットは少なくなるのではなく、かえって増えています。

 なかでも朝鮮半島は、核戦争勃発の危険まではらむ世界最大のホット・スポットと化しました。人民経済全般を活性化し、国家経済を持続的に発展させる土台を整えるための国家経済発展5か年戦略の遂行に着手したわが国にとって、何よりも必要なものは平和的な環境です。

 国際社会が毎年目撃しているように、朝鮮半島情勢がたびたび統制不能の状態に陥るのは、米国が対朝鮮敵視政策を諦めず、朝鮮半島とその周辺で侵略戦争演習をしきりにおこなっていることに根源があります。

 今年も3月から4月と8月から9月に、米国が南朝鮮でくり広げた大規模な合同軍事演習は、その規模においても一つの戦争がで、きる50万以上の大兵力と、戦略爆撃機、戦略潜水艦をはじめとする戦略資産が投入された極めて挑発的な大規模な軍事行動でした。

 この演習は、わが共和国の指導部にたいする斬首と平壌占領を目標とする精密打撃作戦、特殊部隊の侵攻作戦、上陸作戦、先制核攻撃作戦などが基本をなす徹頭徹尾、攻撃的で侵略的な核戦争演習です。

 いま、世界で、このように規模が膨大な合同軍事演習をおこなわれているところは他にありません。このように、挑発的で攻撃的な戦争演習はありません。このように、攻撃対象の鼻先でおこなわれる危険千万な侵略演習、露骨な軍事的威嚇はありません。

 朝鮮半島は、平和を保障するまともな制度装置がない場所です。1950年代に起こった戦争は終わったのではなく一時的に停戦している状態、すなわち、どちらか一方が戦争を始めようとする場合、宣戦布告を必要としない交戦状態にあります。それほど何処よりも大規模合同軍事演習のような挑発的な軍事行動が他方を刺激しやすく、対応を誘発させやすいのです。偶発的な事故によっても衝突が起こり、全面戦に拡大しやすいのです。

 朝鮮半島の周辺諸国はもちろん、域内の多くの国々、ひいては、米国と南朝鮮内部でも、大規模合同軍事演習がまねく緊張激化にたいする憂慮の声が高まっています。

 朝鮮民主主義人民共和国は、米国と南朝鮮当局が挑発的で侵略的な軍事演習をおこなうたびに、必要な自衛的対応措置を取りながらも、衝突と拡戦を防止するために、できる限りの努力を尽くしてきました。

 朝鮮労働党委員長であり朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長である金正恩同志は、朝鮮労働党第7回大会で米国が時代錯誤的な対朝鮮敵視政策を撤回し、停戦協定を平和協定にかえ、南朝鮮から侵略軍隊と戦争装備を撤収させることについて言及しました。また、朝鮮半島の平和と統一のために、まず、北南軍事当局間の対話と協商が必要だということについても明らかにしました。

 しかし、これにたいする回答はなく、わが国を狙った大規模な軍事演習は続いており、その性格はより挑発的で侵略的なものになっています。

 いま、国際舞台では、米国を首魁とする帝国主義勢力の横暴な支配と干渉策動によって、世界的に公認された国際関係の基本原則が公然と無視されており、帝国主義列強の利害によって正義も不正義として犯罪視されています。

 国際平和と安全を守るためにも、持続的な開発をなし遂げるためにも、真の国際正義が必ずなし遂げられなければなりません。

 国連憲章第1条は、平和の破壊をまねきうる国際紛争や状態を平和的方法で、そして正義と国際法の原則に則して調停し解決することを規定しています。しかし、いま国連安全保障理事会は、朝鮮半島問題にたいするうえで、正義と国際法から逸脱し、米国の強権と専横を国連の風呂敷で包み隠す役を演じています。

 わが国政府は、国連憲章第34条、第35条にもとづき、朝鮮半島において米国の大規模軍事合同演習によって国際平和と安全が脅かされる事態を国連安保理に何度も提訴しました。今年だけでも3月と8月、2回にわたって提訴しましたが、国連安保理は毎回、朝鮮民主主義人民共和国の提訴を無視しました。安保理は反面、わが国が自国の自主権と尊厳、国家の安全を守るためにとっている正々堂々たる自衛的措置については問題視しています。

 朝鮮民主主義人民共和国は、1950年代から始まり、世紀を超えて続いてきた米国の常態的な核威嚇から国家の安全を守るため、できることはすべてやった末、やむなし核武装の道を選びました。我々が核武装の強化を決めたのは、米国の恒常的な核威嚇から自国を防衛するための正当な自衛的措置です。

 にもかかわらず、国連安保理は、最近でっち上げた反共和国決議2270号でも朝鮮民主主義人民共和国の現存する核と弾道ミサイル活動が、国際平和と安全にたいする明確な脅威になると断言しました。核と弾道ロケット活動が、国際平和と安全の脅威となるという法的根拠は、国連憲章にも、いかなる国際法典にも明示されておりません。

 現実的に、我々よりはるか前にこうした活動を始めた国々が、国連安保理で問題視されたことは一度もありません。にもかかわらず、いかなる根拠と権限で、安保理はわが国の核と弾道ロケット活動を禁止する決議を採択したのか、根拠と権限があるなら、なぜ核と弾道ロケット活動をおこなう他の諸国は問題視しないのかということです。

 これについて我々は国連事務局に公式な質問をしましたが、事務局は4か月が経っても回答できずにいます。その回答は明白です。国連安保理は、正義ではなく、拒否権を持っているのか持っていないのかによって罪の有無を決めるからです。米国には、このような決議にもならない決議をもって国連加盟国にたいし、その履行を強要する道徳的資格はなく、国連加盟国にはこのような不公正で不正義な決議を履行する道徳的義務はありません。

 先週、ベネズエラの美しい島マルガリータで第17回非同盟諸国首脳会議がおこなわれました。会議で採択された最終文章は、ここ数年国連安保理が一部のケースに限って過度に早く威嚇的な立場をとったり、強制的措置をとりながらも、他のケースに関しては、沈黙を守り、丁重に対応していることについて憂慮を示し、国連憲章に則って、制裁は必ず国際平和と安全にたいする威嚇や侵略行為が存在するときにだけ扱わなければならないと指摘しました。非同盟諸国と首脳は、会議で採択されたマルガリータ宣言で、加盟諸国にたいし、国連憲章と国際法、特に、それらの国々の自決権と独立、内政不干渉の原則から逸脱して制定、適用されている一方的な強圧的措置への糾弾を表明しました。これは、国連加盟国の3分の2近くを占める非同盟諸国の共通の立場、すなわち、国際社会の真の声です。

 国際正義は、おのずと達成されるものではなく、反帝自主的な国々の力が強いときにこそ実現されます。

 我々の核武装は、国家路線です。我々と敵対関係にある核保有国が存在する限り、わが国の安全と朝鮮半島の平和は、信頼できる核抑止力によってのみ守ることができます。

 冷戦終結後、4分の1世紀が過ぎつつあるなか、安保感覚が鋭くなくなっているヨーロッパ諸国や自国の敷居、上空周辺に敵対的な列強の核兵器が出没する状況を直接体験したことがない国々は、我々が何故それほどまで心血を注いで、核抑止力を強化しなければならないのかについて理解しがたいかもしれません。

 最近、我々が成功裏におこなった核弾頭爆発実験は、わが国の自衛権の行使を悪殊に妨害する米国をはじめとする敵対勢力の威嚇と制裁騒動にたいする実際的な対応措置の一環であり、敵が我々に手出しをすれば、我々も迎えうつ準備ができている、というわが党と人民の超強硬意志の誇示です。

 米国は、一昨日もB1−Bという戦略爆撃機を朝鮮半島の軍事境界線上空を飛行させたうえ南朝鮮に着陸させて、我々を再び威嚇しましたが、我々はそれを絶対に座視しないであろうし、米国は想像を絶するほどの代価を払うことになるでしょう。

 米国の度重なる核戦争威嚇から我々の尊厳と生存権を守り、真の平和を守るための核武力の質量的強化措置は続けられるでしょう。

 議長、真の国際正義を実現し、国際平和と安全を守り、国連が設定した持続開発目標を達成するためには、正義の看板のもとで不正義がはびこる古い国際秩序を打破し、公正で正義の新たな国際秩序を築かねばなりません。

 米国が数十年間、不当におこなってきた反キューバ封鎖は、国際正義が失われた代表的な実例の一つです。わが代表団はこの機会に、米国の強権と専横、一方的な封鎖の企てに対抗し、民族の尊厳と自主権を守り、国際正義を実現するためにたたかっているキューバ政府と人民に全的な支持と連帯を送ります。

 主権国家にたいする米国の乱暴な内政干渉により、戦乱と暴力事態に直面したシリアとイラク、リビアのような国々と地域、パレスチナ問題などで、国際正義が一日も早く実現されなければなりません。

 国際刑事裁判所を悪用し、自主的なアフリカ諸国の主権を侵害する米国と西側諸国の不純な政治的企ては、阻止されなければなりません。

 人権問題を政治化し、反帝、自主的な国々を故意的に悪魔化し、カラー革命の道具として利用している米国とその追従勢力による二重基準行為は断固排撃されなければなりません。

 国連が正義を踏みにじるのであれば、誰も国連に期待しなくなるでしょう。

 米国が敵視する国、米国が制度転覆を目標とする国は、例外なく自動的に人権問題を抱えている国として分類されているところがこんにちの国連舞台です。朝鮮民主主義人民共和国もそのなかの一国ですが、それはむしろ、わが国がそれほど米国とその追従勢力の気にさわる自主的な国であることを証明しています。

 米国は、核問題でどうすることもできなくなると、人権問題を持ち出してきたように、人権問題でもどうすることもできなくなると、また他の問題を持ち出して、わが国を抹殺しようと試み続けることでしょう。しかし、米国は絶対にわが国の人民から、みずからが選択した社会主義、人民に滅私服務する制度を取り上げることはできないでしょう。

 議長、共和国政府は、米国によって強要されている核戦争の危機を強力な核抑止力に依拠して根源的に終息させ、朝鮮半島とアジア、世界の平和と安全を守り、世界の非核化を実現するためのたたかいを力強く繰り広げるでしょう。


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