核と交換してまで朝中友好哀願しない
−2017年5月3日−

 朝鮮中央通信によると、金哲氏が3日に発表した論評「朝中関係の柱を切り倒す無謀な言行をこれ以上してはならない」の全文は次のとおり。

 最近、我々の核保有に言いがかりをつけて米国とその追従勢力がおこなう反朝鮮制裁と軍事的圧力騒動が限界を超え、朝鮮半島の情勢が刻一刻と緊迫していることにたいする内外の懸念は極めて深刻である。

 ところが、米国がやかましく吹く威嚇、恐喝と戦争の轟音に心臓が縮まったからなのか、隣の大国から事理と分別を失った言辞が連日飛び出して現在の事態をさらに緊張の局面へと追い込んでいる。

 中国の党と政府の公式の立場を代弁することで広く知られている「人民日報」と「環球時報」が、紙面を惜しまずに書き立てる記事がその代表的な実例である。

 最近も、「人民日報」と「環球時報」は、数編の論評で、我々の核保有が自分らの国家の利益にたいする脅威になると騒いで朝中関係悪化の責任を我々に全的に転嫁し、米国に踊らされる卑劣な行為について苦しい弁解をした。

 各論評は、朝鮮が中国の国境から100キロも離れていない場所で核実験をおこない、「東北地域の安全を脅かしている」だの、我々が東北アジアの情勢を刺激して同地域にたいする米国の「戦略的配置を強化する口実を提供」しているだのと騒いだ末、我々の核保有に反対するのは、米国と中国の共通の利益であり、自分らに危険をもたらす戦争を避けるためにも、我々にたいする制裁を強化すべきであるとでたらめを言った。

 そのうえ、朝中関係の主導権が自分らの手に握られており、我々が中国との軍事的対立を望まないなら「長期間の孤立ともう一つの国家安保の道」のうち、中朝友好と核放棄のうち、どちらか一つを選択せよという極めて挑戦的な妄言もためらわなかった。

 これは、主権国家としてのわが共和国の自主的で合法的な権利と尊厳、最高の利益にたいする重大な侵害であり、友好の長い歴史と伝統をもつ善良な隣国にたいする露骨な威嚇である。

 我々は、こんにちになって内外が公認する核保有の不可避さと、平坦ではなかったすべての過程についてあえて再び説明する必要を感じない。

 ただ、自分らと全く関係もない我々の核問題に米国をはじめ、敵対勢力に劣らず拒否感をあらわにし、不当千万な口実を設けて血潮で切り開かれ、年代と世紀を継いで強固になり、発展してきた朝中関係を丸ごと壊そうとしていることに怒りを禁じ得ない。

 中国の一部がともすれば持ち出す東北3省の「核実験の被害」について言えば、何の科学的根拠も、妥当性もない強弁である。

 5回にわたる我々の核実験は徹底した安全を担保したうえでおこなわれたし、核実験場の付近に暮らす我々の住民も核実験後、何の被害も受けていない。

 米国が核物質収集装置を備えた最先端情報手段を動員して我々の核実験の過程を綿密に観察したが、キセノンをはじめ、極めて微量の放射性物質も収集できなかったことについては、中国自身がよりよく知っているであろう。

 この厳然たる事実を歪曲して東北3省のいわゆる「被害」を騒ぐのは、我々の核の高度化を快く思わない中国の内心をそのままあらわにするだけである。

 中国の政治家と言論人が何かにつけて取り上げるいわゆる「国家の利益の侵害」に関しては、むしろ、我々が言うべきことがより多い。

 相手の信義がなく、背信的な行動で国家の戦略的利益を再三侵害されてきたのは決して中国ではなく、我々朝鮮である。

 我々の社会主義制度を壊そうと極悪非道に狂奔する南朝鮮かいらいと外交関係を締結し、純粋な経済交流の枠を脱して政治的・軍事的関係にまで深化させて東北3省はもちろん、中国全域を反朝鮮前哨基地に転落させた罪科を何によって弁解できようか。いま、鴨緑江および豆満江流域をはじめ、期中国境沿線で宗教家、企業家の仮面をかぶったかいらい国家情報院の要員と手先が暗躍して毎日のようにわが共和国に反対する謀略と陰謀、拉致とテロ行為を公然と働いていることについて中国は当然、責任を負わなければならない。

 そのうえ、万人の指弾のなかで権力の座を追われて捕らわれの身となっている朴槿恵のような人間のクズを天安門広場の幹部席にまで立たせて、これ見よがしにくちづけし、あらゆる卑劣な行為をためらわないできたことも我々ははっきり記憶している。

 中国の一部の論者が、我々の核保有が東北アジアの情勢を緊張させ、同地域にたいする米国の戦略的配置を強化する口実を提供するというとんでもない詭弁を並べているが、米国のアジア太平洋支配戦略は我々が核を持つはるか以前から稼働したし、以前からその基本目標はほかならぬ中国であった。むしろ、70余年も反米対決戦の第一線で苦しい戦いをおこない、米国の侵略的企図を挫折させて中国大陸の平和と安全の守護に寄与したのが果たして誰なのかを率直に認め、我々にありがとうのあいさつをまずしてしかるべきであろう。

 朝中友好の伝統的関係が当時、各国の利益に合致したからであると、あえて罵倒する無知蒙昧な中国の一部の政治家と言論人は、歴史の本質をはっきり知って口を開かなければならない。

 朝鮮と中国は、地政学的に密接に関わる隣国であるだけでなく、先代の領袖たちが共同の偉業のためのたたかいの道で赤い血で旗を染め、ともに友情を築いてきた格別な戦友の国、兄弟の国である。

 抗日大戦と抗米戦争は、朝中の現代史にともに消せない英雄的叙事詩として記されており、朝鮮と中国の息子、娘は、その苛烈で凄絶な戦場で国籍を超越した私心のない犠牲と献身で友愛を深めた。

 20世紀の激しい風波渦巻く世界政治の真ん中でも、両国は社会主義の旗印を守り、自主権を守るうえで志と力を合わせてきた。

 朝鮮の利益だけのために我々が中国革命をあれほど献身的に助け、莫大な被害を甘受してまで中国の党と政府が困難に陥るたびに誠心誠意支援したのではない。これについては、朝中間にあった過去の秘話をあえて再び公表しなくても、少しでも常識と理性のある人ならよくわかるであろう。

 しかし、これらすべてを意図的に覆い隠して破廉恥にも米国が叫ぶ「国際社会の一致した見解」なるものをそのまま唱え、反朝鮮敵対勢力とグルになって我々を犯罪者であるとして残酷な制裁劇にしがみつくのは、朝中関係の根本を否定し、友好の崇高な伝統を抹殺しようとする許しがたい妄動にほかならない。

 朝中関係の「レッドライン」を我々が越えたのではなく、中国が乱暴に踏みにじってためらわずに越えている。

 我々両国の「レッドライン」は、いかなる場合も相手側の尊厳と利益、自主権を侵害しないことである。

 我々にとって核は、尊厳と力の絶対的象徴であり、最高の利益である。

 我々は、世紀と年代を継いで我々の思想、我々の制度、我々の尊厳を奪い、踏みにじろうとする世界最大の核列強である米国の侵略と脅威から祖国と人民を死守するために核を保有したし、その自衛的使命は今後も変わらないであろう。

 にもかかわらず、我々が核を放棄しないなら強度の経済制裁はもちろん、軍事的介入も辞さないというのは、自分らの利益のためなら我々朝鮮の戦略的利益はもちろん、尊厳と生存権さえも当然犠牲になるべきであるという極めて傲慢な大国主義の論理にすぎない。

 それが誰であれ、国家の存立と発展のための我々の核保有路線を絶対に変化させることも、揺るがすこともできないし、朝中友好がいくら貴重なものであるとしても、命も同然の核と交換してまで哀願する我々ではないことをはっきり知らなければならない。

 一部で、誰それの助けがなければ我々が生きられないし、制裁のひもを少しだけ締めれば手を上げて関係修復を哀願するものと期待することこそ、愚かな計算にほかならない。我々の生存の源と土台は我々の地、我々の空、我々の資源であり、百折不撓の精神力を備えた偉大な人民が休みなく噴出させる限りない自彊力(自分で自分を強くする力)である。

 既に、最強の核保有国となった我々にとって選択の道は多岐であることをこの時刻にあえて再論する必要を感じない。

 ユーラシア大陸の関門に位置する朝鮮半島の地政学的重要性と戦略的価値は日々上昇しており、核強国の前列に堂々と立った平壌に向かう道は全世界に伸びている。

 中国は、これ以上無謀に我々の忍耐の限界を試そうとしてはならないし、現実を冷静に見て正しい戦略的選択をしなければならない。

 南朝鮮にたいする米国の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備を阻もうと国連安全保障理事会の不法、非道な対朝鮮「制裁決議」の採択に手を挙げ、東北3省の経済的被害まで甘受して我々にたいする制裁に臨んだが、得たものが果たして何なのか。あらゆる非難をすべて受け、米国に譲歩してへつらったが、南朝鮮には中国を狙ったあいくちであるTHAADが真夜中に奇襲配備されて実に「愚かな巨人」をあざ笑っている。

 米国の力に押されて自分の定見も立てられず、目の前の利益に目がくらんで数十年間継いできた兄弟の友情まで弊履のように捨てるなら、結局は誰からも信頼を得られない哀れな境遇になり、四方から災いが押し寄せかねないことを銘記しなければならない。

 中国は、朝中関係の柱を切り倒すこんにちの無謀な妄動がもたらす重大な結果について熟考する方が良かろう。【朝鮮通信=東京】


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