2006年2月の日朝政府間会談 日本の報道抜粋
−2006年2月4〜8日−

 朝日政府間会談が2月4日から8日まで、中国の北京で行われた。

 4日の全体会合に続き、5日に拉致問題、6日に国交正常化問題、7日午前に安全保障問題、同日午後に拉致問題について協議が行われ、8日午前の全体会合で終了した。

 朝日の政府間会談で3分野を並行して協議する方式は初めて。

 朝鮮側代表団は、宋日昊・外務省朝日会談担当大使を団長とし、金哲虎・外務省アジア局副局長が拉致問題、宋日昊大使が国交正常化問題、鄭泰洋・外務省米国局副局長が安全保障問題の代表を務めた。また、諮問役として在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総聯)の金明守、金栄植両参事が北京入りした。

 日本側代表団は、原口幸市・日朝国交正常化交渉担当大使を政府代表とし、梅田邦夫・外務省アジア大洋州局参事官が拉致問題、原口大使が国交正常化問題、山本忠通・北朝鮮核問題担当大使が安全保障問題の代表を務めた。

 なお、朝鮮政府代表団は4日に平壌を出発し、11日に帰国した。(朝鮮通信)


日本の報道抜粋(表記は新聞、通信報道のまま)

=開・閉会など=

 −拉致、安全保障、国交正常化の三つの分野について話し合う日朝両政府間の初の包括並行協議が4日、北京市内のホテルで始まった。全体会合で日本代表の原口幸市・日朝国交正常化交渉担当大使は「拉致問題は極めて重要。それが解決しないと国交正常化は難しい」と表明した。

 これに対し、北朝鮮代表の宋日昊外務省大使は「自分たちは自分たちで重視している問題がある」と「過去の清算」を含む国交正常化問題を重視する考えを示した。拉致問題については「いろいろ言いたいことがある」と述べたが、具体的な言及はなかった。

 全体会合は1時間余り開かれ、5日に拉致、6日に国交正常化、7日に安全保障の各問題を協議することで合意した。宋大使が「複数の協議を並行して行うのは希望しない」とし、日本側も1日に一つの議題を協議することを受け入れた。全体会合後、両国は非公式の夕食会を開いた。

 日本側の説明では、全体会合で宋大使は「日本が拉致の問題を重視しているのは理解している。過去の清算を重視している」と述べた。原口大使は北朝鮮に、核問題をめぐる6者協議への早期無条件復帰も求めた。

 全体会合終了後、原口大使は記者団に対し、協議内容について「今後どういう精神と姿勢で会合を進めるべきか、お互いの立場を述べ合った。日朝平壌宣言を念頭におき、各分科会で意味のある成果が出せるよう互いに努力をしようということだった」と語った。日本側は、最優先課題とする拉致問題の進展をにらみながら国交正常化交渉を進める方針だ。

 北朝鮮の宋大使は全体会合の終了後、記者団に「双方は、関係を改善しなければならないという考えと姿勢で会談しようという方向で協議した」と語った。(朝日新聞2.5)

 −日朝両政府間の包括並行協議は8日、北京市内のホテルで全体会合を開き、今回の協議を終了した。双方は、1−拉致、2−安全保障、3−国交正常化の3分野を関連させて話し合う協議方式を今後も継続することを確認したが、次回の協議日程は決まらなかった。日本代表の原口幸市・日朝国交正常化交渉担当大使は会合で「日本国内の世論の態度が硬化している」と述べ、拉致問題で進展がなければ経済制裁を含む厳しい対応を取らざるを得ないとの認識を示した。

 全体会合は日本側から原口大使ら、北朝鮮の宋日昊外務省大使ら両政府代表団全員が出席。午前9時(日本時間同10時)から約40分開かれた。

 原口大使は終了後の記者会見で「双方の関心事項について、お互いの立場を確認し合えたことは一定の意味があった」と協議自体は評価した。

 ただ原口大使は「拉致問題で北朝鮮は同じ説明を繰り返しただけで、疑念は全く解消されなかった」と不満を表明。「圧力をどのような方法で、どのタイミングでかければ最も効果が得られるのかを見極めることが重要だ」と述べ、経済制裁の可能性にも言及した。

 一方、北朝鮮の宋大使は終了後、記者団に「双方の立場がわかっただけに、双方の間には、大きな距離があることをともに認識した」と述べた。さらに「互いの意見の違いを縮め、朝日関係を進展させるには、こうした交渉が必要ではないか」と語り、協議を継続する意向を示した。(朝日新聞夕刊2.8)

 −小泉首相が北朝鮮の金正日総書記に対し、日朝平壌宣言に基づき、国交正常化に向けての問題解決を促す内容のメッセージを送っていたことがわかった。4〜8日に北京で開かれた日朝包括並行協議の際、日本政府代表を務めた原口幸市・日朝国交正常化交渉担当大使が、北朝鮮代表の宋日昊大使に口頭で伝えた。

 首相は昨年5月、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総聯)の結成50周年パーティーに自民党総裁としてメッセージを送ったが、自民党総裁任期を9月に控え、金総書記に直接伝わる形で、あらためて正常化に向け拉致問題などの解決を求めるねらいがあった。

 関係者によると、メッセージは、02年9月の小泉首相の初訪朝時に金総書記との間で署名した日朝平壌宣言に言及。国交正常化の前提となる諸問題の解決を目指し、努力するよう呼びかける内容とされる。

 日朝平壌宣言では「日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決」「国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注」などと明記されている。(朝日新聞2.15)


=拉致問題=

 −日朝包括並行協議は2日目の5日、北京市内のホテルで拉致問題について議論した。日本側は、1.生存している拉致被害者全員の帰国、2.真相の究明、3.北朝鮮の元工作員、辛光洙容疑者らの引き渡しの3点を要求。北朝鮮側は、横田めぐみさんのものとして提出した遺骨を「別人」のものとした日本側のDNA鑑定に反論、協議は平行線をたどった。双方は北京滞在中に拉致問題を再度協議することで合意し、日程を調整することにした。

 協議には、日本側から梅田邦夫・外務省アジア大洋州局参事官ら、北朝鮮側から金哲虎外務省アジア局副局長らが出席し、午前9時半(日本時間同10時半)に開始。休憩をはさんで午後9時(同10時)すぎまで計約9時間続けられた。

 協議で梅田参事官は、金副局長に「拉致問題の解決は国交正常化にとって非常に重要だ」と述べ、この問題が解決しない限り、国交正常化の実現はないとする日本側の姿勢を改めて強調した。

 一方、金副局長は協議後、記者団に「拉致解決への見解と立場にはまだ大きな差がある」と述べた。また、「我々は横田めぐみさんの遺骨鑑定結果に対する我々の立場を話した」とも語り、日本側の主張に反論したことを明らかにした。

 日本側は、協議で拉致被害者の横田めぐみさんや有本恵子さんら11人の早期帰国と、拉致の経緯などの真相究明を求めた。

 さらに、拉致の実行犯として辛容疑者のほか、金世鎬、よど号ハイジャック犯でもある魚本(旧姓・安部)公博両容疑者の身柄の引き渡しを要求した。辛容疑者は地村保志さんと富貴恵さん夫妻、横田めぐみさんの拉致に関与した、との証言が得られている。金容疑者は久米裕さん、魚本容疑者は有本さんの拉致にそれぞれ関与した疑いがもたれている。

 また、日本側は、よど号ハイジャック犯の小西隆裕、若林盛亮、赤木志郎3容疑者の身柄も引き渡すよう要求した。若林容疑者の妻(旧姓・黒田)佐喜子容疑者と、よど号グループの故田宮高麿元幹部の妻森順子容疑者についても、80年に欧州で失踪した石岡亨さんと松木薫さんの拉致の経緯を知っている可能性があるとして、引き渡しを求めた模様だ。

 これらの要求に対し、北朝鮮の金副局長は協議後、「我々も日本から引き渡しを受ける犯罪者がいる」と話したが、具体名は明かさなかった。

 日本側は、政府が認定した以外でも拉致の疑いが特に濃いとされる「特定失踪者」約40人の安否情報の提供を要求した。(朝日新聞2.6)

 −日本と北朝鮮の政府間協議が7日、北京市のホテルで行われ、午後には北朝鮮による日本人拉致問題が再び議題となった。日本側は拉致被害者の帰国と真相究明、元工作員辛光洙容疑者ら実行犯の引き渡しについて、早急に具体的な措置をとるよう強く要求したが、北朝鮮側は応じなかった。

 この日は4日目の協議で、5日に続いて拉致問題が取り上げられた。同日に進展がなかったことから、日本側が再協議を求めたためで、日本側は梅田邦夫外務省アジア大洋州局参事官ら、北朝鮮側は金哲虎外務省アジア局副局長らが出席した。

 日本の要求に対し、北朝鮮側は横田めぐみさんのニセ遺骨問題で、日本側のDNA鑑定結果に改めて疑問を提起し、遺骨の速やかな返還を求めた。

 さらに、「中朝国境地域で北朝鮮人が誘拐・拉致されている」として、脱北者を支援しているNPO(民間活動団体)関係者らを非難した。特に、北朝鮮難民救援基金の加藤博事務局長、「救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク(RENK)」代表の李英和関西大教授ら7人のNGO関係者を名指しし、北朝鮮刑法に違反したとして引き渡しを求めた。

 めぐみさんの遺骨の問題では、日本側は、1.遺骨を持ってきた夫と称する人の身元が不確かだ、2.複数のDNAが出た原因の証明は北朝鮮側がすべきだ−と反論した。NGO関係者の引き渡しは拒否した。協議終了後、梅田参事官は記者団に、「納得のいく答えはなく、溝は狭まることはなかった。非常に遺憾だ」と北朝鮮の対応を批判した。(読売新聞2.8)

 −北京で8日まで行われた日朝政府間協議で、北朝鮮側が拉致された疑いの強い「特定失踪者」について、日本からの関連情報提供を条件に調査すると答えていたことが9日、わかった。梅田邦夫外務省アジア大洋州局参事官が拉致被害者家族会に説明した。

 説明によると、日本は拉致問題をめぐる協議で、36人の特定失踪者の名前を挙げて情報の提供を求めた。政府は関係省庁間で協議した上で、関連情報を北朝鮮に提供する考えだ。

 また、北朝鮮側は日本が引き渡しを求めている容疑者のうち、工作員金世鎬容疑者について「このような人物は知らない」と述べたものの、関連情報の提供を条件に人物特定のための調査を行うと答えた。

 ただ、元工作員辛光洙容疑者の引き渡しに関しては「政治的問題であり、絶対不可能だ。年齢、健康上の問題もある」と拒否。もう1人の容疑者でよど号ハイジャック事件メンバーでもある魚本公博容疑者についても「政治亡命者で、絶対に応じられない」と述べた。

 日本側は政府認定の被害者のうち安否不明の11人について、新たな証言や情報などを示して早期帰国を求めたが、北朝鮮は「生存者はすべて帰国した」と強調。真相究明のための再調査も約束しなかった。

 特定失踪者に関しては、日本は昨年11月の政府間協議で、34人分のリストを手渡し、情報提供を要請していた。(東京新聞2.10)

 −北朝鮮が、北京で2月に行われた日朝政府間協議で、同国に渡ったよど号ハイジャック事件メンバーが帰国の条件として日本政府に求めている「協議」に応じるよう要請していたことがわかった。複数の日朝交渉筋が21日までに明らかにした。

 メンバーはこれまでも、日本人拉致事件などとの関与を否定するため協議の場を設けるよう要求。北朝鮮も、過去の日朝協議でメンバーとの協議を求めてきたが、日本は一貫して応じていない。ただ今回あらためて同じ要請をしたことで「よど号関係で新たな動きがあり得る」(日朝交渉筋)として今後の動向を慎重に見極める構えだ。

 関係者によると、北朝鮮側は「メンバーは協議に応じれば日本に帰国すると言っている。受け入れてはどうか」と提案。日本側は、よど号事件や拉致事件で国際手配し、無条件での引き渡しを求めている立場から「交渉の余地はない」と拒否したという。

 よど号メンバーは現在も4人が北朝鮮に残っている。政府は、このうち魚本公博容疑者について有本恵子さん拉致事件に関与したとして北朝鮮側に送還を要求。4人とともに残っているメンバーの妻2人も松木薫さんらの拉致事件にかかわった可能性が高いとみている。(信濃毎日新聞3.22)


=国交正常化問題=

 −日本と北朝鮮は6日、北京市内のホテルで国交正常化交渉を行った。日朝平壌宣言(平成14年)に基づき、拉致事件などを解決し、国交を正常化したうえで、「過去の清算」を経済協力によって一括解決する方針を提示した。北朝鮮側はしかし、「その方法だけでは難しい」と拒否し、合意には至らなかった。双方の思惑の隔たりを改めて浮き彫りにした格好で、今後の交渉も容易でなさそうだ。

 平成14年10月以来、約3年3カ月ぶりとなるこの日の国交正常化交渉で日本側は、平壌宣言に基づく「経済協力方式が唯一の現実的な方法だ」と主張し、これによって「過去の清算」に対応する考えを表明。だが、北朝鮮側は「『過去の清算』を早期に行うことが重要だ」と反論した。

 協議は、日本から具体的な資金援助を早期に引き出し、正常化交渉を少しでも先に進めたい、との北朝鮮側の思惑が色濃いものとなった。しかし、「過去の清算」を先行させようとの一連の要求は、国交正常化後の経済協力実施を明記した日朝平壌宣言を逸脱している可能性もある。しかも、宣言に明記された「財産および請求権の放棄」は終戦時までのもので、今後、北朝鮮側が「『戦後補償』の問題を改めて提起してくる可能性もある」(政府関係者)ともみられる。(産経新聞2.7)


≪主なやりとり≫

【交渉の進め方】
 原口幸市大使 拉致問題を含む諸懸案の解決なくして国交正常化はない。
 宋日昊大使 日朝平壌宣言に従い、過去の清算を早期に行うことが重要だ。
 原口氏 平壌宣言を踏まえ交渉を行う用意がある。昨年12月の政府間協議で「拉致、安全保障問題の解決のため誠意を持って具体的措置を講じる」と合意した。これが大前提だ。北朝鮮は、拉致を含めた諸懸案に誠意を持って対応する必要がある。経済協力方式が唯一の現実的な方法だ。
 宋氏 その方法一つだけでは駄目だ。さまざまな例外問題が提起されることもあり得る。

 【在日朝鮮人の法的地位】
 宋氏 在日朝鮮人は現在も差別的待遇を受けている。これは植民地(支配)全体から生まれた問題であり、過去の清算と絶対に切り離すことはできない。これが我々の立場だ。(在日朝鮮人系の信用組合の不良債権問題をめぐり)整理回収機構が担当している問題について日本政府に適切な措置を要求する。

 【文化財返還問題】
 宋氏 原状回復が基本だ。破壊されたり損傷しているものは復旧が必要。損失したものは、どのような形態であれ、補償しなければならない。
 原口氏 仮に北朝鮮由来の文化財が(日本に)あるとしても、合法的、正当に入手したものだ。

 【その他】
 原口氏 北朝鮮の対日貿易債務は問題解決のため返済すべきだ。コメ支援への利子を支払い平成14年12月に茨城県日立港で座礁した北朝鮮船籍の貨物船の油流出で県が支払った費用も弁済すべきだ。(共同通信)

 −4日から8日まで北京で行われた日本と北朝鮮の並行協議で、北朝鮮がいわゆる「強制連行」と「従軍慰安婦」の被害者数をそれぞれ840万人、20万人と挙げ、経済協力とは別に日本に補償を求めていたことが11日、明らかになった。日朝首脳が平成14年9月に署名した平壌宣言は、国交正常化にあたって双方が財産権と請求権を放棄することを確認しており、北朝鮮は同宣言を無視して日本側に揺さぶりをかけた格好だ。

 複数の交渉筋によると、日本の原口幸市日朝国交正常化交渉政府代表が6日の国交正常化交渉で、北朝鮮が強く求める日本の朝鮮半島統治時代の「過去の清算」について、経済協力方式による一括解決を提案した。

 これに対して、北朝鮮の来日異日朝国交正常化交渉担当大使は「強制連行」で840万人、「従軍慰安婦」で20万人がそれぞれ被害を受けており、経済協力とは別途に補償すべきだとの考えを示した。

 政府内には、北朝鮮が根拠のない被害者数を挙げ「強制連行」「従軍慰安婦」の補償を求めてきたことについて「経済協力に関する協議を有利に進めるために我々を牽制しているのではないか」(外務省筋)との見方もある。

 韓国政府は昨年8月に日韓国交正常化交渉に関する外交文書を公開した際、当時の正常化交渉の過程で除外された「従軍慰安婦問題」について日本に法的な責任があるとの考えを表明した。北朝鮮が先の並行協議で、経済協力による一括解決を拒否したのは、日本に対する個人請求権・賠償の問題が残っているとする韓国の世論に同調した動きとの指摘も出ている。

 日本側交渉筋は、北朝鮮が示した被害者数について、全く根拠がないと反論。被害の立証責任は北朝鮮側にあり、北朝鮮が「強制連行」と「従軍慰安婦」にこだわり続ければ、国交正常化交渉は不可能になるとしている。

 日本側は、小泉純一郎首相と金正日総書記が合意した平壌宣言を日本人拉致事件、国交正常化交渉、核・ミサイルなどの安全保障問題を協議する上で重要な政治文書と判断して、北朝鮮との並行協議に臨んだ。

 しかし、北朝鮮は平壌宣言に明記されたミサイル発射のモラトリアム(凍結)を破棄する考えを表明したことも明らかになっており、日本側が交渉のよりどころとしてきた平壌宣言を事実上、無効にすることをねらっているとの見方が強まっている。(産経新聞2.12)


=安全保障問題=

 −7日午前、核・ミサイル問題など安全保障をめぐる初めての本格的な協議を行った。

 日本側は、核問題をめぐる6か国協議に無条件で早期に復帰するよう求めた。ミサイル問題でも、2002年の日朝平壌宣言に明記されている発射実験のモラトリアム(凍結)の継続を求めたうえで、開発中止と廃棄を要請した。北朝鮮側は6か国協議の重要性は認めたが、「米国による経済制裁が解除されなければ復帰できない」と主張した。(読売新聞2.8)

 −4日から8日まで北京で行われた日朝政府間協議で、北朝鮮側が平成14年の日朝平壌宣言に明記されている「ミサイル発射のモラトリアム(凍結)」を破棄する意思を日本側に伝えていたことが10日、わかった。複数の日朝外交筋が明らかにした。北朝鮮には、日本側の目を核・ミサイル問題に向けさせることで拉致事件をかすませるとともに、経済支援を引き出すねらいもあるとみられる。同宣言を事実上空文化するもので、政府は今後、より厳しい対応を迫られそうだ。

 先の日朝協議は拉致問題、国交正常化、核・ミサイル問題の3つの議題を並行して行い、核・ミサイル問題は7日午前に協議された。

 日朝外交筋によると、日本側は席上、核兵器と核開発計画の一切の放棄に加え、弾道ミサイルの全面廃止を要求した。しかし、北朝鮮側はこれを拒否するとともに「ミサイル発射のモラトリアムはないと思ってほしい」と通告、いつでもミサイルを発射する用意があるとの立場を示した。

 日本側は日朝平壌宣言の履行を迫ったが、北朝鮮の態度は変わらなかったという。

 日朝平壌宣言には「(北朝鮮は)ミサイル発射のモラトリアムを2003(平成15)年以降も、さらに延長していく意向を表明した」と明記しており、日本政府関係者は「北朝鮮は、宣言を破棄する意思を明確にした」と警戒感を強めている。

 拉致事件解決に背を向け続ける北朝鮮が、ミサイル問題を引き合いに一層強硬な姿勢に出たことで、日本国内では経済制裁などの「圧力」を求める世論が高まるのは必至だ。(産経新聞2.11)


朝日政府間会談での双方の主張(朝鮮通信のまとめ)

《拉致問題》
 <朝鮮> −横田めぐみさんのものとして提出した遺骨を「別人」のものとした日本側のDNA鑑定に反論
 −脱北支援のNGO関係者7人の引き渡し
 <日本> −拉致被害生存者全員の帰国
 −特定失踪者など情報提供
 −拉致実行犯とよど号犯引き渡し

《国交正常化問題》
 <朝鮮> −過去の清算問題で日本が経済協力を実施
 −840万余人の朝鮮人強制連行、100余万人の虐殺、20万人の「慰安婦」犯罪は経済協力とは別計算
−在日朝鮮人の地位問題に関連して、民族教育の保障と奨励、社会的・経済的施策の実施、経済活動の保護
 −文化財の無条件返還と補償
 <日本> −過去の清算は経済協力方式による一括解決安全保障問題
 
《安全保障問題》
 <朝鮮> −米国の金融制裁解除が6者会談復帰の条件
 −ミサイル発射は自主権の問題
 −日本の戦争法制定と憲法改悪、核武装化、偵察衛星の打ち上げ中止
 <日本> −6者会談への無条件復帰
 −ミサイル開発中止と発射実験の凍結継続

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