日朝、朝日会談
−2012年8月10日〜9月5日

朝日赤十字会談に関する報道
−2012年8月10日−

  朝鮮赤十字会と日本赤十字社は9、10の両日、中国の北京で会談を行った。
 会談には、李浩林書記長を団長とする朝鮮赤十字会代表団と田坂治国際部長を団長とする日本赤十字社代表団が参加した。
 会談では、日本側が要請した共和国領内の日本人遺骨問題について深みのある対話が行われ、人道的立場から互いの理解を深めた。
 双方の赤十字団体は、今後もこの問題を引き続き協議し、提起された問題をそれぞれ政府に報告することにした。


拉致提起は遺骨問題の政治利用
−2012年8月16日−

  朝鮮中央通信社は16日、「人道問題を政治化しようとする不純なたくらみ」と題する論評を発表した。その全文は次のとおり。

 朝日赤十字団体の会談が10年ぶりに北京で行われた。
 会談では、日本側が要請した朝鮮領内にある日本人遺骨問題に関する対話が行われ、相互の理解を深めた。
 周知のように、日本人遺骨問題は、第2次世界大戦時、朝鮮で亡くなった日本人の遺骨返還のための実務処理問題であり、人道問題である。
 しかし、日本当局はいま、会談の趣旨とは全く異なる動きを見せている。
 玄葉(光一郎)外相と松原(仁)拉致問題担当相をはじめ当局者は、会談で「拉致問題を(交渉の)争点から外すようなことがあってはならない」「遺骨問題を提起し、拉致問題の棚上げを図るのではと懸念する意見も多くある」などの怪異なことを言った。
 特に、藤村(修)官房長官は14日の記者会見で、「日朝両国の間には、遺骨問題に限らず、拉致問題をはじめ、さまざまな諸懸案がある。日本の姿勢は、拉致問題は当然議題に含まれるものである」と力説した。
 これは、日本政府が遺骨問題の解決に真心をもって臨んでおらず、みずから会談の雰囲気を曇らせていることを示している。
 日本の右翼勢力が既に遺骨問題を「金もうけ」と描写した稚拙さを想起すると、遺骨問題と「拉致問題」を混同して会談を不純な政治目的に利用しようとする真意を難なく見極めることができる。
 日本人遺骨問題は徹頭徹尾、人道事業の一環である。
 人間尊重の使命を担って、公正さ、中立性、普遍性を原則とする赤十字団体がこの問題を主管しているのは、まさにこのためである。
 我々は今年に入ってからも、日本人と推定される多数の遺骨が工事現場などで発見されたことについて日本側に通報した。
 今回の会談でも、遺骨調査を行っている地域とこれまで確認された遺骨の数などを詳細に伝達し、約70年ぶりに実現され得る遺族の墓参と赤十字関係者の訪朝を歓迎した。
 事実上、遺骨問題の解決は、日本に必要なものである。
 日本が人道問題を政治化して得るものは何もない。
 我々の誠意を無視した結果として数多くの日本人の遺骨が流失し、国内の恨みの声が高まる場合、その全責任は日本当局が負うべきであろう。


朝日政府間会談の「拉致」議題化は事実と異なる
朝鮮外務省代弁人
−2012年9月5日−

  朝鮮中央通信によると、朝鮮外務省スポークスマンは、朝日政府間の予備会談が行われたことに関連して9月5日、同通信の質問に次のように答えた。
 去る8月29日から31日まで、中国の北京で朝日政府間課長級予備会談が行われた。
 今回の予備会談は、先に行われた朝日赤十字会談で我々の地に埋められている日本人の遺骨問題を円滑に解決するには政府としての関与が必要であるということで見解の一致を見て、それぞれ自国政府に提起したことによって行われたものである。
 予備会談では、日本人遺骨問題で開かれる朝日政府間本会談に関する双方の立場が通報され、本会談の議題とクラス、場所と時期などに関する実務的な問題が論議され、今後外交ルートを通じて引き続き調整することにした。
 これと関連して、日本の政府と政界、メディアが、本会談の議題に「拉致問題」を含めることを我々が受け入れただの、我々が日本人遺骨問題を通じていわゆる経済的代価を望んでいるだの何のと言うのは全く事実と異なるたわ言である。
 真実を歪曲し、我々の善意を愚弄するこのような世論欺瞞行為は、日本側が日本人遺骨問題を不純な政治目的に悪用しているという疑念を深めるだけである。
 我々は、日本人の遺骨問題を人道的立場から善意と雅量をもって扱っており、今後もそうするであろう。
 しかし、日本が引き続き不純な政治目的だけを追求するなら、朝日政府間の対話の継続に否定的な結果を及ぼすことになるであろう。(以上【朝鮮中央通信=朝鮮通信】)


日朝政府間会談に関する日本の通信、新聞の主な報道
−2012年8月31日〜9月2日−

 8月31日 −日本と北朝鮮の両政府は、北京の日本大使館で3日目の課長級協議を行い、本協議の進め方について「双方が関心を有する事項について幅広く協議する」ことで一致した。「より高いレベル」の本協議を北京で早期に開催する方向で調整することでも合意した。拉致問題について、日本側は「日本側の関心事項に含まれるのは明らかで、先方も十分理解している。当然協議で扱う」(外務省関係者)とするが、北朝鮮側の態度は不明で、扱いは局長級の本協議にゆだねられた。
 課長級協議には、日本外務省の小野啓一北東アジア課長、北朝鮮外務省の劉成日課長(日本担当)らが出席。31日は午前10時(日本時間午前11時)から約2時間協議した。
 日本側は3日間の協議で「拉致問題は日朝間の諸懸案の中でも国民の生命と安全に直接関わる重大な問題だ」と説明し、重大な関心事項であると強調。これに対する北朝鮮側の発言内容などは明らかになっていないが、「経済支援などの要求はなかった」という。
 9月前半に想定される本協議では、終戦前後に北朝鮮で亡くなった日本人の遺骨収集や遺族らの墓参など人道上の問題が議題になる見通し。さらに、北朝鮮の核開発問題や4月の長距離弾道ミサイル発射を踏まえ、「安全保障にかかる問題も取り上げたい」(日本政府関係者)という。日本側は杉山晋輔アジア大洋州局長、北朝鮮側は宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使が出席するとみられる。
 課長級協議は当初29日から2日間の日程で、北京の日朝双方の大使館で交互に開き、合意を得る予定だった。しかし、調整が難航し、予定を1日延ばして協議を続けた。(毎日新聞9.1)

 9月1日 −北京で8月31日まで開催された約4年ぶりの日朝政府間協議に出席した北朝鮮代表の劉成日外務省課長(日本担当)は、今後の協議の議題について「外交ルートを通じ調整する」と述べ、拉致問題の議題化に応じるかどうかは明言しなかった。帰国前に北京国際空港で記者団の取材に応じた。
 日本政府は次回以降の協議の議題に拉致問題が含まれるとの認識を示したが、北朝鮮側の今後の対応次第では、次回協議の実現までに曲折もありそうだ。
 劉課長は今回の協議について「互いの関心のある事項について深く協議できた」と述べた。次回協議の日程については「調整を経なければならず、確たる答えはできない」とした。
 日本側の説明によると、日朝両国は今回の協議で、今後「双方が関心を有する事項を議題として幅広く協議」することで一致。次回協議を今回の課長級から、より高い交渉権限を持つ局長級に格上げして開催することでも合意した。(共同)

 9月2日 *北京で29〜31日開かれた日朝政府間の課長級協議で、協議日程が延長されたのは、局長級による本協議の開催日程をめぐって調整が難航したのが原因だったことが分かった。日朝平壌宣言から10年の節目となる9月17日の前に拉致問題での前進をアピールしたい日本側と、不安定な日本の政治状況を見極めながら協議を有利に進めたい北朝鮮側の思惑の違いが浮かび上がった。
 協議関係者によると、日本側は9月17日を念頭に9月第1週の本協議開催を主張したが、北朝鮮側は応じず、2日目の協議が終了。日本外務省幹部は小野啓一北東アジア課長ら日本側出席者に「もう一回会って(協議を)やれ」と指示し、日程延長が決まった。
 今後、日本側は引き続き17日以前の開催を求め続けるとみられる。早期開催にこだわるのは、日本国内で「平壌宣言から10年が経過したのに拉致問題解決に向けて動き出していない」との批判が出るのをかわしたい狙いがある。北朝鮮側は、今後の交渉でも「17日」との関連づけを避ける日程を提示し続ける可能性が高そうだ。(毎日新聞9.2)
【月間論調 2012年8月号】

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