金正恩委員長の大勇断──標準時の統一

 金日成主席は、次のように述べています。

  「ほぼ半世紀にわたる分断と対決の歴史に終止符を打ち、祖国を統一するのは、全民族の一致した要求であり意志である。祖国の自主的平和統一を実現するためには、全民族が大団結しなければならない」

 朝鮮の指導者と人民大衆は、金日成主席の遺訓としています。外部勢力によって国が分断されたときから、全朝鮮人民の一致した意思と念願にもとづき、「統一は民族の願い」に向けて金日成主席、金正日総書記と朝鮮労働党、人民大衆が、多種・多様な闘いをひろげてきたことは全世界が認めていることです。

 金正恩委員長は、2018年『新年の辞』で次のように述べています。

 「現下の情勢は、いまこそ北と南が過去にしばられることなく、北南関係を改善し、自主統一の突破口を開くための決定的な対策を立てていくことを求めています」

 金正恩委員長は2018年4月27日、歴史的な第3回北南首脳会談が板門店(南側地域「平和の家」)でおこなわれ、「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言(4・27板門店宣言)」を発表しました。会談は、朝鮮の統一のための多岐にわたる論議がされました。そのなかの一つである北と南の標準時を統一する問題がありました。

 金正恩委員長は、北南首脳会談の場所に平壌時とソウル時を指す時計がそれぞれかかっているのを見るととても胸が痛かったと言い、北と南の時間からまず統一しようと述べました。

 金正恩委員長は、北と南が一つになるということはいかなる抽象的意味ではなく、まさにこのように互いに異なり、分かれているものを一致させ、互いに合わせていく過程だと述べ、民族の和解・団結の初の実行措置として現在、朝鮮半島に存在する二つの時間を統一することからおこなっていく決心を披瀝しました。

 金正恩委員長が国内の当該部門でこれについて検討、承認することを提議したことに従って朝鮮最高人民会議常任委員会は政令「平壌時間を直すことについて」を採択しました。

 朝鮮最高人民会議常任委員会の政令によって平壌時間が修正され、5日から正式に実行されました。

 平壌時間を東経135度を基準子午線とする9経帯時(従来の時間より30分早い時間)に直すことによって、5月4日23時30分が5日零時となりました。これで、北と南の標準時が統一されました。

 これは、歴史的な第3回北南首脳の対面以降、民族の和解・団結をなし遂げ、北と南が一つになり、互いに合わせていく過程の初の実行措置となります。

 北が南に合わせた、この措置は、金正恩委員長の大勇断がもたらしたものです。

 「時間」の再制定は、時計の針を早める・遅らすという単純かつ事務的作業ではありません。なぜなら、人間の生活が関わるからです。

 人類の歴史は、古代人の日の出とともに動き始め日の入りで就寝することから始まりました。活動の多様性と多岐にわたる活動の展開は、日時計、水時計、現代のIT制御による時計の出現へと「時の管理」が進んできました。

 「お会いしてお話をしたいのですが…」「では、○時におうかがいしましょう」 理由、場所などについては省略しますが、現代人の生活にとって時計は約束を守るための重要な手段となっています。

 自主性を追求し、人間の尊厳を守ることを拡充しなければならない現代にとって、「時の管理」を支配者にゆだねてはなりません。勤労大衆が主人として「時の管理」をおこなわなければならないでしょう。

 「時間」の再制定はまた、行政、経済などすべての活動に影響を余儀なくされます。

 金正恩委員長は、民族の和解と団結に向けて北と南の体制の違いを考慮し、再制定に伴う困難と当面のリスクのすべてを北で背負い込む勇断をくだしました。朝鮮民主主義人民共和国は、指導者と人民大衆が一心団結してすべての活動を推進しています。指導者は人民を信頼し、人民は指導者を信頼してすべての活動を展開しています。標準時の再制定は、朝鮮のチュチェ社会主義の優位性が示された一つであると言うことができます。

 金正恩委員長の大勇断はまた、5大教育(偉大性教育、金正日的愛国主義教育、信念教育、反帝・階級教育、道徳教育)の普遍性と正当性を確認し朝鮮の人民大衆は、よりいっそう学ぶことを確信したことにあります。

 以下に、2015年の平壌時間の制定と日帝の蛮行について確認します。

 1.平壌時間の制定について

 2015年8月5日、朝鮮が祖国解放70周年に際して、標準時を制定することを決定しました。最高人民会議常任委員会の政令は、次のように指摘しています。

 「民族再生の恩人であり、不世出の愛国者である金日成主席が抗日の血戦万里を切り抜けて強盗の日帝を打ち破り、祖国を解放した8月15日は、波乱多き民族受難の歴史に終止符を打ち、わが祖国と人民の運命開拓に根本的な転換をもたらした歴史的な日である。
 奸悪な日本帝国主義者は、5千年の長い歴史と文化を誇っていた三千里の領土を無残に踏みにじり、前代未聞の朝鮮民族抹殺政策をこととして朝鮮の標準時間まで奪う千秋に許せない犯罪行為を働いた。
 血みどろの日帝の百年の罪悪を決算し、民族の自主権をしっかり守り、金日成主席と金正日総書記の不滅の尊名で輝く白頭山大国の尊厳と威容をとわに世界に宣揚しようとするのは、朝鮮の軍隊と人民の鉄の信念、意志である」

 朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議常任委員会は、朝鮮の軍隊と人民の確固不動の信念と意志を反映して、1)東経127度30分を基準とする時間(現在の時間より30分遅い時間)を朝鮮民主主義人民共和国の標準時間と定め、平壌時間と命名する。2)平壌時間は2015年8月15日から適用する。と決定しました。

 2−1.日帝の蛮行について

 2015年8月13日付けの朝鮮中央通信社が配信した論評「百年の罪悪清算のための義に徹する壮挙を妨げる行為」の主張の強調点は次のとおりです。

 1) 日帝によって抹殺された朝鮮の標準時間を取り戻したのは、社会生活の各分野で日帝の残滓を完全に粛清するうえで大きな意義をもつ民族史的壮挙である。
 2) 標準時間の制定問題は明白に、主権国家の自主権に関する問題であり、国際的にも普遍化した慣例である。
 3) 強奪された朝鮮の標準時間は日帝の朝鮮民族抹殺政策の所産である。
 侵略武力による露骨な脅威と恐喝、謀略的な方法で「乙巳5条約」を捏造した日帝は、朝鮮の標準時間を漸次的方法で強奪するシナリオを作成し、それを実践に移した。
 1906年6月2日から暫定的に日帝「統監府」をはじめとする漢陽にある日帝のすべての官庁でその時まで利用してきた東経127度30分を過ぎる子午線を本初子午線にして設定した朝鮮の標準時の代わりに、それより30分速い東経135度(兵庫県明石市)を過ぎる子午線を本初子午線にした日本標準時を利用するようにした。
 日帝と「朝鮮総督府」は1911年11月16日、1912年1月1日から朝鮮の標準時間を日本の「標準時間」に合わせるという指示を押し付けることによって、わが国の独自の標準時間をなくし、日本の「標準時間」を強要した。
 日帝がわが国の標準時間を抹殺した目的は、朝鮮に対する植民地支配をより円滑にし、わが民族を永遠に奴隷化しようとする腹黒い下心から発したものである。

 なお、「壮挙を妨げる行為」とは、南朝鮮の決定に対する非難を指しています。

 2−2.日帝の蛮行について

 2015年8月17日付け「朝鮮民族抹殺政策をこととした日帝の罪悪」と題する記事は、次のように指摘しました。

 朝鮮の標準時間に命名された平壌時間の初の鐘の音を聞く朝鮮人の胸のなかでは、70年前、全国に満ち溢れた解放の歓喜とともに、百年来の敵である日帝に対する恨みと憎悪の感情がさらに激しく沸き立っている、と報じました。

 社会科学院の李永煥氏(アカデミー会員候補、教授、博士)は、日帝が朝鮮の標準時間まで奪い、この地の分と秒も日本の時間で流れるようにした極悪非道な蛮行は、日帝の対朝鮮植民地同化政策の所産であったとし、次のように続けました。

 日帝は、朝鮮に対する40余年間の植民地支配の期間に朝鮮民族の魂と英知、人的資源、そして5千年の悠久な歴史と文化伝統を抹殺することを国家施策にした。
 銃剣だけでは朝鮮民族の精神を骨抜きにすることができないとみなした日帝は、教育部門だけでなく、放送、演劇、映画、音楽、語学部門はもちろん、家庭生活にまで魔手を伸ばして朝鮮語と文字を使用できないようにした。
 朝鮮人の姓と名前を日本の姓と名前に改めるよう強要し、これに応じなければ「非国民」「不穏な者」に仕立てて迫害し、「徴用」と「保国隊」の第一の選抜対象にした。
 朝鮮の国号と海の名、地名までも勝手に変更して表記し、白頭山から始まった国のすべての山脈の主要命脈に鉄棒のくいを打ち込む悪らつな行為もためらわなかった。
 侵略者は、日本より3千年以上も先んじた朝鮮民族の悠久な歴史をなくすために歴史に関連する数多くの書籍を焼却し、檀君朝鮮をはじめ古朝鮮の歴史をなくした「朝鮮史」をつくり上げた。
 東明王陵と王建王陵、景孝(恭愍)王陵など200余基の歴代の朝鮮王陵と1万1000余基の地下古墳を盗掘し、昌徳宮、景福宮、徳寿宮などに保存されていた数多くの国宝的文化財をはじめとする遺物を略奪して個人、または国家の所有にした。
 日帝は、「徴兵令」「特別志願兵令」「学徒兵令」「徴用令」など各種の悪法をつくり上げて840万人余りの朝鮮青壮年を侵略戦争の弾除けに駆り出し、過酷な奴隷労働を強要して100余万人を殺りくした。
 20万人の朝鮮女性を強制連行、拉致して日本軍の性奴隷にした。
 人類史は侵略者の略奪と殺人蛮行について数多く記録しているが、日帝のように朝鮮民族自体を完全になくすためにあらゆる手段と方法を尽くしたそのような侵略者、植民地主義者は記されていない。
 日本軍国主義者が敗北後に絶えず強行した反共和国敵視策動は、朝鮮人民に犯した罪悪を上塗りすることになっている。

 記事は、「朝鮮民族は、永遠にぬぐえない日帝の罪悪を必ず決算する」と結んでいます。


 日本の報道は、「3年で戻した」と失政のごとく報じています。失政どころではないことを確認することが重要です。

 「結果として、日本の標準時間に戻した。朝鮮は日本の経済協力」が必要と考えているのだろうとの主張は的外れであり、外交カードに利用できるとの思惑は無知の極致であることと指摘せざるを得ません。

 反帝・階級教育は、さらに深まるでしょう。また、反戦・平和を追求する人びとの間で朝鮮半島の統一機運はいっそう高まることは必然でしょう。



<参考>引用文は次のとおり。
 ・金日成主席の著作『祖国統一のための全民族大団結10大綱領』 1993年4月6日
 ・金正恩委員長の著作『新年の辞』 2018年1月1日
 ・「朝鮮中央通信」 2015年8月5日・2015年8月13日・2018年4月30日・2018年5月5日(三根一 2018年5月6日)


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