朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国間の共同声明
−1993年6月11日−

 朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国間の政府級会談が1993年6月2日から11日までニューヨークでおこなわれた。

 会談には、朝鮮民主主義人民共和国政府を代表して妻錫柱外交部第1副部長を団長とする代表団と、アメリカ合衆国政府を代表してロバート・L・ガルーチ国務省次官補を団長とする代表団が参加した。

 双方は会談において、朝鮮半島の核問題を根源的に解決するうえで提起される政策的諸問題を討議し、核拡散を防止する目的にそくして南北非核化共同宣言に対する支持を表明した。

 朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国は、次のような諸原則に合意した。

 1.核兵器を含む武力を使用せず、こうした武力で威嚇も行なわないことを保証する。

 1.全面的な保障措置適用の公正性保障を含み朝鮮半島の非核化、平和と安全を保障し、相手側の自主権を相互尊重し、内政に干渉しない。

 1.朝鮮の平和的統一を支持する。

 こうした原則に準じて朝・米両政府は、平等かつ公正な基礎のうえで対話を継続することで合意した。

 これと関連し、朝鮮民主主義人民共和国政府は、核兵器拡散防止条約からの脱退効力を必要であると認めるだけ一方的に臨時中止することにした。

1993年6月11日 ニューヨーク


朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国の第2ラウンド会談報道文
−1993年7月19日−

 代表団は、1993年7月14日から19日までジュネーブで核問題解決のための第2ラウンドの会談をおこなった。

 双方は、1993年6月11日の朝・米共同声明の原則を再確認した。

 アメリカ合衆国側は特に、核兵器を含む武力を使用せず、このような武力で威嚇もしないことを保障する原則に対するみずからの公約を再確認した。

 双方は、朝鮮民主主義人民共和国が現存の黒鉛減速炉とそれと関連した原子力施設を軽水炉にかえることが望ましいと認める。

 アメリカは、核問題の終局的解決の一環として軽水炉の解決が実現できることを前提として軽水炉導入を支持し、そのための方途を朝鮮民主主義人民共和国とともに探究する用意を表明する。

 双方は、国際原子力機関の保障措置を完全に、そして公正に適用することが国際的な核不拡散体系を強化するうえで必須であることについて見解を同じくした。

 これにもとづいて、朝鮮民主主義人民共和国は、保障措置と関連した懸案問題とその他の諸問題に関する国際原子力機関との協議を可能な早い時期に始める用意を表明する。

 朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国はまた、朝鮮半島の非核化に関する南北共同宣言履行の重要性を再確認した。

 朝鮮民主主義人民共和国は、核問題を含む双方間の諸問題に対する南北会談を可能な早い時期に始める用意を依然としてもっていることを再確認した。

 朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国は、軽水炉導入に関連した技術的諸問題を含む核問題解決と関連した懸案問題を討議し、朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国間の全般的関係改善の基礎を築くために、2か月以内に次回の会談を行なうことに合意した。

1993年7月19日  ジュネーブ


朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国間の合意声明
−1994年8月12日−

 朝鮮民主主義人民共和国代表団とアメリカ合衆国代表団は、1994年8月5日から12日までの間にジュネーブで第3ラウンド会談を再開した。

 双方は、1993年6月11日付の朝・米共同声明の諸原則を再確認し、次の諸事項が核問題の終局的解決の一環となると合意した。

 1.朝鮮民主主義人民共和国は、黒鉛減速炉と関連施設を軽水炉発電所に転換する用意を表明し、アメリカ合衆国は、可能な早い時日内に200万キロワット発電能力の軽水炉発電所を朝鮮民主主義人民共和国に提供し、その間に朝鮮民主主義人民共和国に黒鉛減速炉にかわる代替エネルギーを提供する措置を講じることにした。

 朝鮮民主主義人民共和国は、軽水炉と代替エネルギー提供措置に対するアメリカ合衆国の保証を受け次第、5万キロワット、20万キロワット発電能力の黒鉛減速炉の建設を凍結し、再処理を行なわず、放射化学実験所を封印して国際原子力機関の監視下に置くことにした。

 2.朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国は、政治、経済関係の完全な正常化のための措置として、それぞれ相手方の首都に外交代表部を設置し、貿易および投資の障壁を緩和することにした。

 3.朝鮮半島の非核化と平和および安全をなしとげるために、アメリカ合衆国は、朝鮮民主主義人民共和国にたいし、核兵器を使用したり核兵器で威嚇もしないとの保証を提供する用意を表明し、朝鮮民主主義人民共和国は、朝鮮半島の非核化に関する南北共同宣言を履行する一貫した用意を表明した。

 4.朝鮮民主主義人民共和国は、核兵器拡散防止条約の加盟国として残り、条約にもとづく保障措置協定の履行を許容する用意を表明した。

 今回の会談過程で提起された諸問題のなかには、まだ解決されるべき重要な問題が残されている。

 双方は、朝鮮民主主義人民共和国の黒鉛減速炉計画を軽水炉技術に転換する事業と使用済み燃料の安全な保管と処分、代替エネルギーの保障、連絡事務所開設を推進するための専門家レベルの協商が必要であると合意した。

 これに従って、専門家レベルの協商が朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国、あるいは合意された他の場所でおこなわれる。

 朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国は、会談を休会し、1994年9月23日にジュネーブで再開することで合意した。

 そのときまでに、アメリカ合衆国は、核問題の終局的解決の一環として朝鮮民主主義人民共和国に軽水炉提供の保証を与える措置を推進し、朝鮮民主主義人民共和国は、外交部の姜錫柱第1副部長と米国務省のロバート・L・ガルーチ次官補とのあいだで1994年6月20日と22日に交換されたメッセージで合意した原子力開発の凍結と保障措置の継続性を維持することになる。

1994年8月12日  ジュネーブ

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