対朝鮮制裁は国際法違反
−2017年5月15日−

 朝鮮中央通信によると、国際問題研究院法律研究所の所長は15日、全文次のような談話を発表した。

 最近、米国のトランプ政権が、「最大限の圧力と関与」なる対朝鮮政策をかかげて我々にたいする新たな制裁騒動に気炎を吐いている。

 去る4日、米議会下院がわが国にたいする単独制裁の範囲を最大限に広げ、わが国と経済取引をおこなったり、我々の労働者を採用する他国の企業と団体、個人にたいする制裁を骨子とする新たな対朝鮮制裁法案を通過させたのがその代表的な実例である。

 法案採択後、米国務長官、米議会下院外交委員会委員長などが、口々に「北朝鮮の資金源を遮断する強力な道具」がもたらされたと騒ぎ立てている。国連安全保障理事会を盗用した対朝鮮「制裁決議」の抜け穴をふさげる「完璧な制裁封鎖網」が形成されたというのである。

 一方、米国は国連安保理の「制裁決議」を前面にかかげ、他国と当該国の企業と個人がわが国と正常な国家関係と経済・貿易関係をもてないように強迫し、脅すなど、我々にたいする前例のない制裁と圧力、外交的封鎖を企んでいる。

 米国がおこなう対朝鮮制裁・圧力策動は、「核拡散防止」の美名のもとに我々の経済と人民生活を完全に破綻させようとする最も悪辣な目的を追求したものであって、国連憲章をはじめ、国際法の諸般の原則に違反する反人倫的犯罪行為である。

 この2カ月間、「4月戦争説」「先制攻撃説」を流して史上最大の膨大な武力を動員しておこなった侵略戦争演習が我々の無慈悲な超強硬対応措置の前に水の泡になったいまになり、古びた制裁の風呂敷を再び広げざるを得ないトランプ政権の窮余の策であると言うべきであろう。

 振り返れば、わが共和国にたいする米国の単独制裁は、単に昨日今日に始まったものではない。

 20世紀中葉、朝鮮戦争挑発とともに始まった「敵性国交易法」を起点にして米国が我々に適用した単独制裁法は、実に数十種類を数える。そのすべてが、例外なく政治、経済、外交などすべての分野でわが民族の生存権と発展権を無残に蹂躙する最も悪辣で卑劣な反人倫的・反人権的犯罪行為であることは論じる必要さえない。

 そのうえ、米国が国内法で主権国家にたいする制裁を合法化するために執拗に策動しているのは、国際法にたいする完全な無視であり、国際社会にたいする破廉恥な愚弄である。

 一国が国内法で他国に制裁を加えるのは、国際法上許されない違法行為である。

 国家の権利および義務に関する条約第4条には、「国家は他国との関係において法律上、平等であり、同一の権利をもつ」と指摘されている。一言で言って、主権国家は、いかなる場合も他国の司法権の対象になり得ないということである。

 米国の歴代の政権が、誰も任せてもいない「世界の憲兵」を自任して国際法上、成立さえしない主権国家にたいする単独制裁を法制化、制度化して国際法を無視する専横を働いてきたのは、あまりにもよく知られた事実である。

 今回の単独制裁法案の採択で国連憲章と国際法に真っ向から挑戦した米国の犯罪的正体が、またもや赤裸々に明らかになった。

 トランプ政権は法案が下院で採択されるや否や、世界に向けて我々と協力する国に制裁を加える、外交関係を格下げせよ、対朝鮮「制裁決議」を徹底的に履行せよなどの強盗の要求をためらいなく突き付けている。

 それでも足りず、我々にたいする「核・ミサイル拡散防止および制裁履行の監視」の名分のもとに我々の船舶が出入りする海外の港を特別監視対象に分類し、当該国の領海のいかんを問わず恣意的に停船、船舶検査をおこない、我々の海外労働者を受け入れた国にたいする「二次制裁」措置をとると強迫している。

 国際違法行為にたいする国家責任条文草案第32条には、「責任ある国家は、自国の国内法上の規定を本条文に従って担う自国の義務を遵守できない理由にしてはならない」と明記されている。これは、国内法を口実に国際法的義務を無視するのは違法であるということである。

 自分らの利益に合致するなら他国にたいする主権侵害行為、内政干渉策動も正当なものになり得るし、自分らの国内法も国際法の上位になり得るという論理こそ、強権の極みである。

 そのうえ看過できないのは、対朝鮮単独制裁の裏にある米国の陰険で狡猾な世界制覇野望である。

 米国が海上封鎖を主張した国々と、我々との関係断絶および経済貿易活動禁止を強要した国々は、そのほとんどが米国と戦略的競争関係にあったり、地政学的要衝に位置している国々である。そのうち、多くの国が既に米国からさまざまな制裁を受けている。

 これらすべては、トランプ政権が我々の自主的権利の行使を世界の平和と安全にたいする「脅威」や「挑発」であるとミスリードし、自分らの世界制覇戦略実現に最大の障害となっている我々を孤立させ、圧殺し、自分らに従順でない国々を手なずける一方、戦略的拠点を掌握、統制しようとする一石二鳥の効果を狙っていることを示している。文字どおり、世界制覇野望を「用意周到」に実現しようとするヤンキー式思考であると言うべきであろう。

 結局、不法、非道な対朝鮮制裁法案が採択されたのは、主権尊重と内政不干渉、紛争の平和的解決のような初歩的な国際関係の原則と制度的装置を完全な死滅に追い込みかねない重大な事態が生じたことを示している。

 諸般の事実は、自分らの覇権野望実現のためなら何もためらわない米国の傲慢さ、破廉恥さが、既に限界を超えたし、それをそのまま放置しては地球上にいかなる平和も、安定もあり得ないことを実証している。

 米国の対朝鮮制裁・圧力策動に警戒心を高め、これに反対してたたかうのは、当該国の自主権を守る道であり、世界の平和と安全を保障する方途となる。

 現在、単独制裁法案にあがった国々の間で「国際法規範にたいする乱暴な蹂躙」「港湾封鎖と船舶検査は戦争行為」「法案実行は宣戦布告も同然の力のシナリオ」であるという非難とともに、「たった一隻の米国の軍艦も我々の海上に入れないであろう」「米国は自分の家のことに専念せよ」「米国は朝鮮から手を引け」という声が強く上がっているのは、米国の専横が国際舞台で反対、排撃されていることをはっきり実証している。

 我々は既に、制裁が我々に通じない理由について、我々にたいする制裁はすなわち米国の敗北であることについて再三強調した。

 米国は、我々の忍耐力をこれ以上試そうとしてはならない。

 周知のように、侵略の定義に関するロンドン条約と国連総会決議第3314号には、平和的時期に主権国家の港や沿岸への他国の封鎖を宣戦布告の有無に関係なく侵略行為とみなすと指摘されている。現在、トランプ政権が新たに法制化しようとしている単独制裁は戦争犯罪に該当する反人倫犯罪であり、断固たる軍事的懲罰を受けて当然である。

 最後の決算の瞬間を待っているわが共和国の自主的な核の宝剣が我々の自主権と生存権にたいする乱暴な侵害にどんな恐ろしい威力を発揮するのかについては、もはや説明する必要もない。

 付言するが、わが共和国の自衛的核抑止力と先制攻撃能力は、名実共に我々を敵視し、孤立させ、圧殺しようとする米国を狙ったものであり、いかなる政治的駆け引きの対象や経済的取引の対象ではないし、制裁、圧力の手綱を最大に締めるからといって放棄するものではなおさらない。

 トランプ政権が真に前政権の失敗から教訓を得て新たな対朝鮮政策を樹立したいのなら、朝米間の停戦協定を平和協定にかえ、敵対関係を完全に清算する問題など朝鮮半島の恒久的な平和、ひいては世界的な平和と安全を図ることに多少なりとも寄与する道を選ぶべきであろう。

 しかし、もし、トランプ政権がいまだに現実感覚をもてずに単独制裁の「効果」に期待をかけているなら、いまから1年前に「2016年対北朝鮮制裁および政策強化法」を採択し、我々にたいする制裁・圧力攻勢を加えたオバマ政権がその代価として果たして何を得たのかを改めて振り返る必要がある。

 まさにその1年間に、我々は戦略潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、高出力固体ロケットエンジン、地対地中長距離戦略弾道ミサイル「火星10」、地対地中長距離戦略弾道ミサイル「北極星2」型など、最先端水準の主体的な核攻撃手段、核兵器を相次いで開発し、我々の自衛的核抑止力を世界的水準に堂々と押し上げる快挙を遂げた。

 わが共和国が前代未聞の極悪な制裁のなかでも自力、自彊の偉大な原動力で東方の核強国、アジアのミサイル盟主国としてそびえ立ったいまになっても制裁でいわゆる変化を引き出せると考えるなら、それよりも荒唐無稽な妄想はない。

 朝米対決の歴史は、非対称的な戦争の歴史であった。現代的な兵器を誇る米国との対決で我々は常に正義の力、一心団結の威力で勝利ばかりを重ねてきた。ましてこんにち、核対核の対決、意志の対決で勝者が誰なのかは既に決まったも同然である。

 トランプ政権がいまだに相手を見極められないまま制裁に引き続き狂気を振りまくなら、そこからまねかれる破局的結果について全責任を負うことになるであろう。【朝鮮通信=東京】


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