2010年 朝鮮半島核問題の主な動き

4月の主な動き
-※は報道日、表記は報道のまま-

4月5日

 -オバマ米大統領は、米紙ニューヨーク・タイムズとのインタビューで、米国が核拡散防止条約(NPT)を順守する非核保有国に対しては、自衛のためであっても核兵器を使用しないとの考え方を示した。冷戦期以来あいまいだった核使用目的について大幅限定するオバマ氏の核戦略の方針転換が鮮明になった。北朝鮮やイランなどの核開発国は「例外」として核使用の余地を残した。

 6日公表予定の核戦略指針「核体制の見直し」(NPR)に盛り込まれる。

 オバマ氏は新戦略に基づいても米国への脅威が通常兵器で抑止できるとして、非核国が生物・化学兵器で攻撃を仕掛けても対抗できると強調。「核兵器の重要性を減じる方向に向かっていく」と語った。(共同)


4月6日

 -オバマ米政権が発表した新核戦略NPRの要旨は次の通り。

 1.最も切迫している脅威は核テロと核拡散。世界的な核戦争は遠のいたが、核攻撃の恐れは高まっている。
 1.核兵器がある限り、米国は効果的な核戦力を保持する。米国と同盟国、盟友国への核攻撃の抑止が根本的な目的。通常兵器や生物・化学兵器に対する核抑止力の役割は引き続き縮小する。
 1.核兵器を持たず、NPTを順守する国家に対して核使用や威嚇はしないと宣言し(非核保有国を核で攻撃しない)「消極的安全保障」を強化。
 1.NPTを順守する非核保有国による生物・化学兵器攻撃には通常兵器で反撃する。生物兵器の発達や拡散の脅威に対抗するための手段について、この判断を変える権利は留保する。
 1.北朝鮮とイランはNPTの核不拡散義務に違反し、国連安全保障理事会の命令を無視した。
 1.核兵器を持ち、不拡散義務に違反する国から米国などへの通常兵器や生物・化学兵器による攻撃を抑止する米核兵器の役割は残る。
 1.死活的な利益を守るため、極限状況でのみ核兵器使用を検討する。
 1.米国は保有核弾頭数を削減し、新たな核兵器開発も停止。現在保有する核兵器の維持管理体制を強化する。
 1.今後核実験をせず、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准への努力を続ける。
 1.米核戦力の3本柱である大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、戦略爆撃機による核弾頭の三つの運搬手段は維持する。
 1.米国の核兵器は同盟国などの安全保障に不可欠な役割を持つ。信頼できる「核の傘」は、米核戦力の3本柱や重要地域に前方配備した核などで構成する。
 1.原潜に搭載可能な核巡航ミサイル「トマホーク」は退役。
 1.核能力の向上を進めたり米国のミサイル防衛(MD)を問題視したりしているロシアや中国との安定した関係が重要。米核戦力の削減規模は依然ロシアに影響される。対話により中国の核政策の透明性を向上させ、不信を除く必要がある。(共同)


 -ゲーツ米国防長官は新核戦略指針NPR公表を受けた記者会見で、イランや北朝鮮はNPTを順守していないとみなし、米国による核攻撃の余地を残すと明言、両国を強くけん制した。

 ゲーツ氏は「NPRはイランと北朝鮮に強いメッセージを発している」と名指し。その上で「こうしたNPTを順守していない国や核兵器を獲得した非国家組織に対して、米国はあらゆる選択肢を残している」と核攻撃の可能性を否定しなかった。

 一方オバマ大統領は同日声明を発表し、新指針がNPTを順守する非核保有国に核攻撃しないと明確化することで1)米国の核戦略における有事の範囲が狭まる2)他国にNPT順守を促す-との考えを示した。イランや北朝鮮を念頭に「NPTの義務を果たさない国は孤立し、核兵器取得の追求が安全をもたらさないと認識するだろう」と警告した。

 また「安全保障上の最大脅威はもはや国家間の核攻撃でなく、核テロや核拡散問題だ」と力説した。(共同)


4月8日

 *北朝鮮が3月下旬に、核問題をめぐる6者協議の予備会合開催を呼びかけた中国提案への支持を表明していたことが分かった。米国が日韓など関係国に説明した内容を、協議筋が明らかにした。昨年4月に6者協議からの脱退を表明して以来、北朝鮮が全参加国が集まる会議への参加を表明したのは初めて。

 これを受け、米国も北朝鮮高官の訪米に向けた調整などを始めたが、直後に起きた韓国哨戒艦沈没の彩響などで慎重姿勢に転じ、予備会合の開催は固まっていない。

 北朝鮮側の突然の表明の背景には、議長国の中国に配慮を示し、近くあるとされる金正日総書記の訪中で大規模な経済支援などを取り付ける狙いがあるとみられ、関係者の間には非核化への意思を疑問視する声が多い。

 予備会合は、6者協議ではなく米朝協議の開催を求める北朝鮮と、「6者協議に結びつく場合にのみ米朝協議が可能」とする米国とを仲裁するため、中国が2月に関係国に提案していた。(朝日新聞4.8)


4月9日

 -政府は午前の閣議で、13日に期限の切れる日本独自の対北朝鮮経済制裁を1年間延長することを決定した。08年8月に合意した拉致問題の再調査を北朝鮮が履行せず、核問題をめぐる6カ国協議への復帰にも応じていないことから、延長が必要と判断した。

 制裁内容は1)特定船舶入港禁止法に基づく「万景峰92号」を含むすべての北朝鮮籍船舶の入港禁止2)外為法に基づく北朝鮮からの全品目の輸入禁止。06年発動され、延長は6回目。当初は半年間だった制裁期間が前回(09年4月)から1年間に強化され、鳩山政権発足後は初めての延長となる。(毎日新聞夕刊4.9)


 -朝鮮中央通信によると、北朝鮮外務省報道官は9日、オバマ米政権が発表したNPRについて、北朝鮮とイランを「核先制攻撃対象」に指名したと反発した。

 報道官は、NPRが北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議再開の雰囲気に「冷や水を浴びせた」と指摘。「米国の核の脅威が続く限り、これからも抑止力としての核兵器を増やし、近代化する」とした。(東京新聞4.10)


 -米国務省のクローリー次官補(広報担当)は定例記者会見で、北朝鮮への核攻撃の余地を残したオバマ政権の新核戦略指針NPRを北朝鮮が非難したことに対し「6カ国協議のプロセスに復帰し、非核化に向けて積極的な行動を取ればNPRを気にすることはないはず」と述べ、協議復帰を求めた。(共同)


 -クリントン米国務長官は、ケンタッキー州での講演で、北朝鮮の金正日労働党総書記が経済混乱などの困難に直面し、6カ国協議への復帰が遅れているとの見解を示した。一方で、中国などの説得で、「最終的には復帰する」と述べた。

 クリントン長官は、金総書記が健康上の問題や、民衆の抗議を招いた経済失政により、「6カ国協議に復帰することは難しかった」と語った。

 一方、北朝鮮の核開発について、「北朝鮮は1~6個の核兵器を保有している」と指摘した。北朝鮮の核をめぐっては、在韓米軍のシャープ司令官が3月に下院軍事委員会で、「北朝鮮は核兵器数個分のプルトニウムを保有している」と証言している。(時事)


4月13日

 -韓国の李明博大統領は、ワシントンで記者会見し、2012年に同国で開催される核安全保障サミットまでに北朝鮮が6カ国協議を通じて核放棄を確約し、NPTに再加盟して義務に従えば、同国を「喜んで招待する」と述べた。

 同大統領は、北朝鮮やイランが国際原子力機関(IAEA)の義務に従わずに核開発を進めているために今回のサミットに招待されなかったと指摘。北朝鮮が今後2年間で非核化の進展に取り組み、次回会合に参加できるよう呼び掛けていく方針を示した。(時事)


4月17日

 -北朝鮮の朝鮮中央通信は、金正日総書記が慈江道の煕川発電所建設現場を視察「水力発電所は建設が難しいが、完成すれば原子力発電所に比べ優れているので、水力発電所を各地により多く建設すべきだ」と述べたと報道した。金総書記の原発に言及した発言が伝えられるのは、あまり例がない。(共同)


4月21日

 -北朝鮮外務省は、核問題に関する「備忘録」を発表し「他の核保有国と同等な立場で、核拡散防止や核軍縮の努力に参加する」と表明、「核軍備競争に加わったり、核兵器を必要以上に過剰生産したりしない」との立場を明らかにした。朝鮮中央通信が伝えた。

 また「極度の核の脅威でわれわれを核保有へ押しやった」と米国を非難。さらに、核保有国としての自国の地位を明確にした上で「非核保有国に対し、核兵器を使用したり、核兵器で脅威を与えたりしない政策を変わりなく堅持している」と強調。「6カ国協議が再開されようとされまいと、朝鮮半島と世界の非核化のため、一貫した努力を傾ける」とした。

 北朝鮮で「備忘録」は、声明や談話に準ずる公式文書として位置付けられている。(共同)


 -クローリー米国務次官補(広報担当)は記者会見で、北朝鮮が必要なだけ核兵器を生産するとの備忘録を発表したことについて、「北朝鮮を核保有国として受け入れない」と述べた。

 同次官補は「(北朝鮮が)現在向かっている道は袋小路だ」と指摘。「北朝鮮は結果的に、国際社会と関与するよりほかに選択肢はない」と述べ、6カ国協議に復帰し、非核化を進めるよう呼び掛けた。(時事)


4月28日

 *聯合ニュースによると、韓国政府筋は28日、韓国海軍哨戒艦沈没への北朝鮮関与説が強まる中、北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議再開に向けた米朝協議実施は当面、難しいとの立場を米国が韓国に伝えてきたと明らかにした。

 今月初めに訪韓したキャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)が米政府の検討結果として韓国側に説明。米国はこうした立場を中国にも伝え、中国も理解を示した。同筋は、6カ国協議再開まで少なくとも「数カ月はかかる」との見方を示したという。

 6カ国協議再開問題をめぐっては、韓国の柳明桓外交通商相が20日に、原因究明が協議再開より優先されるとし、北朝鮮関与が判明した場合、協議再開は当分難しいとの考えを示している。(共同)



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