2015年 朝鮮半島核問題の主な動き

10月の主な動き
−※は報道日、表記は報道のまま−

 4日 ※北朝鮮が長距離弾道ミサイル発射を示唆する中、発射のタイミングについて、当初想定されていた朝鮮労働党創建70周年となる10日までに強行する可能性は低いという見方が広がっている。今月に入っても発射に向けた具体的な動きが見られず、国際民間航空機関(ICAO)などへの通告も行われていないためだ。ただ、10日以降に発射実験を行う可能性はあるため、日米韓など関係国は警戒を続けている。
 聯合ニュースによると、韓国国防省報道官は2日、「発射が近いとの兆候はない」と述べた。また韓国軍関係者も「平壌から北朝鮮北西部・東倉里の発射場に向かった貨物列車は今のところない」と指摘し、発射実験用のロケットが発射場に運び込まれている可能性を否定した。
 北朝鮮の国営メディアは9月14日に「(2012年に弾道ミサイル発射実験を行った)科学者、技術者たちが朝鮮労働党創建70周年をさらに高い成果で輝かせるために力強い闘争を展開している」と主張する国家宇宙開発局長の言葉を伝え、70周年に合わせた発射実験を示唆。創建記念日前後に打ち上げるとの見方が国際社会に広がった。
 しかし、9月下旬に米CNNテレビのインタビューに応じた宇宙開発局関係者は、発射実験が「極めて近い」と述べる一方で、「特別な記念日や祭日に行われると考えるのは間違っている」とも強調していた。北朝鮮情勢に詳しい外交関係者は「創建記念日は予定されている軍事パレードに集中するということではないか。発射実験の目的は国内の団結力を高めるというものであり、しばらく後になっても影響はないだろう」と話している。(毎日新聞10.4)

 5日 −来日中のブリンケン米国務副長官は、都内の米国大使館で一部日本メディアと会見した。副長官は北朝鮮が朝鮮労働党創建70年にあたる今月10日にも長距離弾道ミサイルを発射する構えを示していることについて、「米国だけでなく日本や韓国、ロシア、中国が深刻な懸念を抱いている」と述べ、これらの関係国と対応を緊密に協議していることを明らかにした。
 副長官はまた、仮に北朝鮮がミサイル発射などの「挑発行為」に踏み切った場合は、国連安全保障理事会が2009年の北朝鮮による核実験を受けて採択した制裁決議に基づき「重要な措置をとることを期待する」と語り、追加制裁を実施するか新たな制裁決議を採択すべきだと主張した。
 同時に、日米韓や安保理が結束して圧力をかけ、「北朝鮮にミサイル発射を断念させることが望ましい」と指摘した。(産経新聞10.6)

 6日 −北朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、10日の党創建70周年に合わせ、金正恩第1書記の論文を掲載した。金第1書記は「威力ある最先端兵器をさらにたくさん造り出し、自衛的核抑止力を不断に強化すべきだ」と主張し、核・ミサイル開発の加速を訴えた。(時事)

 7日 −北朝鮮の外務省報道官は、米国に平和協定の締結に応じるよう求めるメッセージを公式ルートで送ったことを明らかにし、米国が平和協定に応じる政策転換をするなら「われわれも建設的な対話に応じる用意がある」と表明した。朝鮮中央通信が伝えた。
 報道官は、8月に南北が砲撃の応酬などで緊張が高まったことに触れ「現在の(朝鮮戦争の)休戦協定ではもはや朝鮮半島の平和は維持できない」と強調。朝鮮半島の緊張激化を防ぐため「朝米が古い休戦協定を廃棄し、新たな平和協定を締結する」べきだと訴えた。
 北朝鮮の李洙墉外相も1日、国連総会の一般討論演説で米国に平和協定締結に応じるよう呼び掛けていた。(共同)

 −米本土防衛を担う北方軍・北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)のゴートニ一司令官は北朝鮮の核開発について、米本土を射程に収めたミサイルに核兵器を搭載する能力を保持しているとの見方を示した。ワシントンのシンクタンクで7日に行われたイベントで、語った。
 司令官は、「北朝鮮は核兵器を保有しており、それを小型化して米本土に到達可能なロケットに搭載する能力を持っていると評価している」と表明。その上で「彼(金正恩第1書記)が米国に向け何かを撃ってくる愚か者だとしても、24時間体制で備えはできている」と述べ、ミサイル防衛(MD)網で迎撃可能だと強調した。(時事)

 9日 −新華社電によると、北朝鮮の金正恩第1書記は、労働党創建70周年記念行事出席のため訪朝した中国共産党の劉雲山政治局常務委員と会談した。金第1書記は中朝関係について「金日成主席と金正日総書記がわれわれに残してくれた最大の外交遺産は朝中友好だ」と強調。「中国との高位レベルでの密接な往来を継続し、各分野の交流と実務的協力を強化したい」と述べ、冷え込んでいる関係の修復に意欲を示した。
 劉氏は「中朝関係の大局と両国の大計から出発し、交流を密接にし、協力を深めたい」とする習近平総書記(国家主席)の親書を伝達。金第1書記の指導下で「経済発展と人民生活改善で積極的な進展を得た」と政権運営を評価した上で、党や国家の高位レベルの往来や経済協力を促進し、「中朝関係の新たな未来を切り開きたい」と訴えた。
 劉氏は核問題も議題に挙げ、朝鮮半島の非核化、平和と安定の維持、対話を通じた問題解決という中国の原則的な立場を改めて表明。6カ国協議の早期再開を要求した。
 これに対し、金第1書記は「(北朝鮮は)経済発展と人民生活改善に努力しており、平和・安定的な外部環境が必要だ」と訴え、「南北関係改善と朝鮮半島情勢の安定維持に向け、各国と共同で努力したい」と応じた。ただ、核問題をめぐる踏み込んだ発言は伝えられておらず、双方の主張が平行線をたどったことをうかがわせた。北朝鮮の朝鮮中央通信も会談を報じたが、核問題には触れていない。(時事)

 10日 −北朝鮮は朝鮮労働党創建70年を迎えた10日、平壌の金日成広場で「過去最大規模」の軍事パレードと閲兵式を行った。金正恩第1書記は訪朝中の中国共産党序列5位の劉雲山・政治局常務委員と並んで観閲。正恩氏は演説で、「米国が望むいかなる形態の戦争にもすべて相対することができ、万全の準備が整っている」と述べ、米国を強くけん制した。核兵器開発には言及しなかった。核放棄を求める中国側に配慮した可能性がある。
 大規模な軍事パレードが行われるのは、朝鮮戦争休戦60年の2013年7月以来。聯合ニュースによると、移動式の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「KN一08」の改良型とみられるミサイルと、新型の300ミリ多連装ロケット砲が初めて登場した。(読売新聞10.11)

 12日 −韓国国防省副報道官は記者会見で、北朝鮮の軍事パレードで公開された改良型の移動式ICBM.KN08について、「核兵器の小型化はかなりの水準に達していると推定されるが、弾道ミサイルに搭載するまでには至っていない」との見方を示した。
 北朝鮮の朝鮮中央放送は10日、パレードを中継した際、「小型化された核弾頭を搭載した戦略ロケットが登場」と説明していた。(時事)

 15日 −朝鮮中央通信は、北朝鮮で「衛星」打ち上げなどを統括する国家宇宙開発局が国際宇宙航行連盟(IAF、本部パリ)に加盟したと伝えた。イスラエルで12〜16日の日程で開催されているIAF総会で加盟が決まった。
 日米韓などは北朝鮮による「衛星」打ち上げを事実上の長距離弾道ミサイル発射実験と見なしている。北朝鮮は宇宙開発に関する国際組織に加盟することで「宇宙の平和利用」との従来の主張をアピールする狙いとみられる。
 IAFは宇宙に関する活動での国際協力を支援する目的で設立された非政府組織。日本の宇宙航空研究開発機構(UAXA)も加盟している。(共同)

 朝鮮中央通信は10月15日平壌発で次のように伝えた。

 朝鮮国家宇宙開発局の国際宇宙航行連盟(1AF)加盟が、12日から16日まで、イスラエルで行われている1AF第66回総会で決定された。
 1AFは、宇宙科学技術研究および開発、宇宙活動の平和利用を促進し、宇宙分野での国際的協力を強化する目的で1951年に創設され、朝鮮を含む65カ国で宇宙開発分野に従事する274の政府および民間組織を網羅している。1AFは、フランスのパリに本部を置いている。

 16日 −オバマ米大統領と韓国の朴槿恵大統領は、ホワイトハウスで会談し、米韓同盟の結束と機能拡大を申し合わせた。また、米韓両政府は共同声明を発表し、北朝鮮が新たな弾道ミサイルの発射や核実験を行えば、制裁強化を含む代償を伴うと警告した。
 オバマ大統領は会談後の共同記者会見で、「米国の韓国防衛義務は揺るがない」と言明。さらに「北朝鮮のいかなる挑発や攻撃も米韓の結束を強めるだけだ。われわれは絶対に北朝鮮を核保有国として受け入れない」と強調した。
 朴大統領も「北朝鮮核問題の解決に向け、韓米日3カ国の協力を軸に(中ロを含めた)5カ国の協力を深める」と説明した。ただし、7月のイラン核協議の最終合意と比較して、現時点で北朝鮮には「核能力を放棄する真剣な意志」がないとの認識も示した。(時事)


 17日 −北朝鮮外務省は、朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に転換するよう米国にあらためて要求する声明を発表し、応じなければ「われわれの核抑止力がどんどん強化されるだ、ろう」と警告した。朝鮮中央通信が伝えた。
 北朝鮮は今月に入り、李洙墉外相の国連総会一般討論演説などで平和協定締結を米国に重ねて呼び掛けている。16日にワシントンで米韓首脳が会談したのに合わせ、自国の立場を強調した可能性がある。
 声明は、北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議の合意が履行されなかったのは、米国が韓国との合同軍事演習などで「周期的に交渉の雰囲気を壊し、朝鮮半島の緊張を高めているせいだ」と主張。朝鮮半島の緊張を根本的に解消するには「休戦協定の平和協定への転換を全ての問題に先行させるべきだ」と強調した。(共同)

 19日 −北朝鮮の祖国平和統一委員会のウェブサイト「わが民族同士」は、先の米韓首脳会談で北朝鮮の非核化などを求める共同声明が採択されたことに関し「米国の敵視政策と核の脅威が除去されない限り、絶対に核を放棄しない」と主張した。また、韓国の朴槿恵大統領を呼び捨てにし、「分別を持って振る舞うべきだ」と求めた。米韓首脳会談に対する北朝鮮メディアの直接の反応は初めて。(時事)

 ※米国の北朝鮮専門ニュースサイト、NKニュースは、IAFが、北朝鮮で、事実上の長距離弾道ミサイル発射実験である「衛星」打ち上げを統括する国家宇宙開発局の加盟を取り消したと伝えた。IAF関係者の話としている。
 韓国の航空宇宙研究院と国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会の専門家パネルが先週、加盟に反対する書簡をIAFにそれぞれ送付し、取り消しが決まった。両書簡は、国家宇宙開発局について、長距離ミサイル発射に携わり安保理決議の制裁対象である朝鮮宇宙空間技術委員会の「別名」と指摘。韓国の書簡は「加盟を認めれば、北朝鮮がミサイル開発を進める先端技術に自由に接近できるようになる」と警告した。(共同)

 20日 −韓国の情報機関・国家情報院は、国会の国政監査で、北朝鮮が10日の朝鮮労働党創建70年に合わせて長距離ミサイルの発射を示唆したことについて、「国際的な圧力と中国を意識した」ほか「技術的な準備不足」のため、発射を留保していると分析した。
 北朝鮮は「中国との関係改善を通じた活路を模索」し、「中国の北朝鮮に対する態度に変化があるかどうかうかがっているようだ」との見方も示した。ただ、ミサイル発射や4度目の核実験の準備を進めており、武力挑発の可能性は「依然としてある」との見方も示した。
 北朝鮮経済は、中国から毎年50万トンの軽油を無償で支援され、何とか持ちこたえている状態とも明かした。(読売新聞10.21)

 28日 −北朝鮮が寧辺にある5000キロ・ワットの黒鉛減速炉の稼働を今月中旬に停止したことが、韓国政府関係者の話でわかった。使用済み燃料棒を取り出し核爆弾の原料となるプルトニウムを抽出するための再処理を始めた可能性があり、核実験につながる兆候として韓国政府が監視を強めている。(読売新聞10.29)

 

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