2015年 朝鮮半島核問題の主な動き

11月の主な動き
−※は報道日、表記は報道のまま−

 1日 −安倍晋三首相と中国の李克強首相、韓国の朴槿恵大統領は1日午後(日本時間同)、ソウルの青瓦台(大統領府)で会談した。3首脳は、約3年半ぶりに開催した日中韓首脳会談を今後定例化することで合意。来年は日本で開催することも決めた。日中韓自由貿易協定(FTA)交渉の加速化や北朝鮮非核化でも一致し、会談成果を共同宣言として発表。宣言には中韓両国の意向を踏まえ「歴史の直視」を明記した。(時事)


 2日 −カーター米国防長官と韓国の韓民求国防相は、ソウルで定例の米韓安保協議を開いた。朝鮮半島有事の際の北朝鮮の核・弾道ミサイルの探知・破壊など積極的な対応を盛り込んだ新たな作戦概念で合意した。一方で記者会見では南シナ海での中国の埋め立て問題を巡り、カーター氏が中国の姿勢を強く批判したが、韓氏が明確な立場表明を避けるなど温度差もみられた。
 「北朝鮮のミサイルの脅威に備えた同盟の包括的なミサイル対応の作戦概念のガイドライン(指針)を承認し、指針が体系的に履行されるように相互に協力することとした」。韓氏は協議終了後の共同記者会見で、成果をアピールした。
 発表された共同声明によると、米韓は核や化学弾頭を含めた北朝鮮のミサイルの脅威を探知(Detect)、かく乱(Disrupt)、破壊(Destroy)、防衛(Defence)するための指針を承認した。「4D作戦概念」と呼ばれ、有事にはミサイル発射を待たずに発射台や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などを攻撃しうるなど、より積極的な対応をとる。
 韓国は防衛力を高めるため、韓国型のミサイル防衛システムを2020年代中盤までに持続的に発展させることを再確認した。また、両者は北朝鮮のミサイルの脅威についての情報共有を強化させることも決めた。
 両者は北朝鮮の核・ミサイル計画が地域の安定に深刻な脅威になると批判し、核に関連したすべての活動を即刻中止するよう求めた。13年2月の核実験や今年8月の非武装地帯(DMZ)での地雷爆発などの挑発行為に備えるため、米韓が合同軍事演習を続ける方針も示した。また宇宙・サイバー分野など安全保障を巡る多様な課題についても協力拡大する方針だ。
 日米韓3カ国が昨年12月、北朝鮮の核・ミサイルに関する防衛秘密を共有する覚書に署名しており、両者は3カ国間の相互理解が進み抑止力が高まっているとの認識でも一致。3カ国の定期的な防衛協議を通じて、協力関係をさらに強化する方針を確認した。(日本経済新聞11.3)


 13日 −米財務省は、北朝鮮の武器取引に関与したとして北朝鮮の金ソクチョル駐ミャンマー大使ら4人と1企業を制裁対象に追加指定したと発表した。今年1月の米大統領令に基づき、米国内の資産を凍結、米国人との金融取引を禁じる。
 北朝鮮の現職大使が制裁対象となるのは初めて。ズービン米財務次官代行(テロ・金融犯罪担当)は声明で「北朝鮮の核(兵器)能力増強に使われる資金の流れを遮断する」と強調した。(共同)


 15日 −韓国政府筋は、北朝鮮が今月11日から12月7日まで、東部元山沖合の日本海の広い範囲に航行禁止区域を設定していると明らかにした。弾道ミサイルを発射する可能性があるとみて、韓国が警戒を強めている。聯合ニュースが報じた。
 ただ同筋は、北朝鮮は8月に韓国と緊張が高まった後、毎月日本海に航行禁止区域を設定し多連装ロケット砲などを海岸部に展開する訓練を行ってきたが、発射はしていないとも指摘した。
 別の消息筋は、SLBMの発射実験が行われる可能性も排除できないとしている。
 北朝鮮は8月以降、航行禁止区域を設定する度に艦対艦ミサイルや、新型の口径300ミリの多連装ロケット砲を周辺で展開してきたという。(共同)


 28日 −韓国政府消息筋は28日、北朝鮮が同日午後に日本海でSLBMの発射実験をしたが失敗したようだと明らかにした。SLBMは核弾頭の搭載が可能で、水中から発射するため衛星などでの探知が難しい。実戦配備されれば関係国には脅威になる。北朝鮮は5月に同様の実験をして、成功したと自ら発表していた。
 同消息筋によると、ミサイルが飛んでいる様子は確認されていない。水中から海面に到達するまでミサイルを覆うカプセルの破片が見つかったため、不発だったようだとみている。韓国の聯合ニュースはカプセルだけを発射する実験だった可能性も指摘している。
 5月の実験時、北朝鮮は朝鮮労働党機関紙である労働新聞にミサイルが煙を噴射しながら水中から飛び出す写真など7枚を公開した。煙の量や発射角度などが不自然だとして、写真を合成した可能性があるとの指摘も出たが、韓国の韓民求国防相は国会で実験自体は成功したと説明した。ただ、韓国では実戦配備にはなお時間がかかるとみている。
 SLBMは潜水艦を移動させることで発射場所を変えられ、発射場所などを事前に探知しにくい。核実験や陸上からの弾道ミサイル発射などと合わせた核兵器開発の一環といえる。実験を通じて技術力を誇示するとともに、兵器としての完成度を高めて対米抑止力を高める狙いだったとみられる。
 韓国と北朝鮮は26日に開いた実務者協議で、12月11日に次官級を首席代表とする当局者会談を開くことで合意した。議題は「南北関係改善のための懸案」。北朝鮮側が一定の融和姿勢をみせたものだ。
 ただ、北朝鮮が最終的に目指すのは米国との直接対話だ。米国にとって脅威となる核兵器開発を進めて放置すべきではないとの印象を与え、米国を交渉の場に引きずり出したい考えだ。
 北朝鮮は9月に「新たな地球観測衛星の開発を最終段階で進めている」として長距離弾道ミサイル発射の可能性を示唆。11月11日に東部の江原道元山周辺の日本海上に12月7日までの航行禁止区域を設定した。韓国政府筋は短距離弾道ミサイル「スカッド」やSLBMを発射する可能性もあるとして注視していた。(日本経済新聞11.29)


 30日 −韓国の情報機関、国家情報院は、北朝鮮が28日に日本海でSLBMの水中発射実験をして失敗した際に、金正恩第1書記が視察していた可能性が高いと、韓国国会の情報委員会に報告した。出席議員が明らかにした。
 北朝鮮の放送メディアが27日に金第1書記が北朝鮮東部の元山を訪れたと報じていたことから、28日に元山周辺の海域で行われたSLBMの水中発射実験に立ち会っていた可能性が高いと推定したという。5月の実験時にも、金第1書記が現場を視察していた。(東京新聞12.1)

 

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