2015年 朝鮮半島核問題の主な動き

12月の主な動き
−※は報道日、表記は報道のまま−

 2日 −米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」は、北朝鮮北東部の豊渓里にある核実験場で新たな実験用坑道が掘削中であることを明らかにした。商用人工衛星の画像で確認した。核実験が間近に迫っている兆候は無いが、将来的に実施可能であることを示す動きだとしている。
 衛星写真は10月25日と11月2日に撮影された。10月の写真には、2009年と13年に核実験が行われた北側坑道の西側に、新たな坑道の入り口と、掘り出されたと見られる土が写っている。
 4月に撮影された写真では、この場所に丸太と新しい建物が写っていた。10月の写真では丸太が見当たらないことから、38ノースは「坑道の支えなどに使われた可能性がある」と指摘している。
 豊渓里の核実験場の坑道二つで計3回の核実験が行われている。(毎日新聞12.4)


 3日 −北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の日米韓首席代表が、米国務省で会談し、対北朝鮮で連携を深めていくことを確認した。外務省の石兼公博アジア大洋州局長、ソン・キム米国務副次官補(日本・朝鮮担当)、韓国の黄俊局平和交渉本部長が出席した。
 石兼局長は会談後、記者団に「(北朝鮮に対して)実効的な圧力を維持し、関連の国連安保理決議や6カ国協議の共同声明をしっかりと順守するように求めていく」と強調。日本人拉致問題の解決に向け、米韓から支持と理解が得られたとも説明した。
 キム副次官補も、記者団に対し「北朝鮮の挑戦にどう対処するかについて、われわれ(日米韓)の間に隙間はない」と明言ロ北朝鮮は挑発行動を自制すべきだと語った。(時事)


 8日 −米政府は、北朝鮮の大量破壊兵器開発に関与したとして、弾道ミサイルの発射を繰り返した朝鮮人民軍「戦略軍」を米国内の資産凍結や米国民との取引禁止の制裁対象に指定したと発表した。武器の取引に関わったとして、銀行幹部ら6人と海運会社3社も対象に指定した。
 米財務省によると、戦略軍は昨年3月から7月にかけて短距離の「スカッド」や中距離の「ノドン」など5発の弾道ミサイルを発射した。射程はいずれも500キロ以上で、一連の発射が北朝鮮の弾道ミサイル開発を推進する役割を果たしたと指摘している。
 ロシア極東ハバロフスクに駐在する朝鮮貿易銀行の幹部と、シリアやベトナムなどに駐在する端川商業銀行の幹部5人の計6人も指定された。同じく指定された海運会社3社は、キューバから兵器を運搬中に拿捕(だほ)された北朝鮮貨物船を運航したとして制裁対象になっている「オーシャン・マリタイム・マネジメント」(OMM)の関連会社。(産経新聞12.10)

 −米ニュースサイト「ワシントン・フリービーコン」は、北朝鮮が11月28日に日本海で行ったSLBMの発射実験失敗により、潜水艦が深刻な被害に遭ったと報じた。
 同サイトは、米人工衛星が破片を分析した結果などから被害が判明したとしている。実験失敗は、ミサイルが発射管から正常に排出されなかったのが原因とみられる。被害の詳細は不明。
 実験は、金正恩第1書記が見学していた可能性が指摘されている。(共同)


 10日 −朝鮮中央通信(10日)によると、北朝鮮の金正恩第1書記は平壌の「平川革命事績地」を視察し、「今回、わが祖国は国の自主権と民族の尊厳を守る自衛の核爆弾、水素爆弾の巨大な爆音をとどろかせることのできる強大な核保有国になることができた」と述べた。
 北朝鮮が水爆の開発に成功したことは確認されていない。北朝鮮は10月以来、朝鮮戦争の休戦協定に代わる平和協定の締結に応じるよう米国に重ねて求めており、核開発の進展を示唆して米国との対話を狙っている可能性がある。
 平川革命事績地は北朝鮮初の兵器工場が建てられた場所とされ、金第1書記は「軍需工業の発展に引き続き大きな力を入れていかなければならない」と強調した。朝鮮人民軍の黄炳瑞総政治局長らが同行した。視察日は伝えられていない。(共同)

 −アーネスト米大統領報道官は記者会見で、北朝鮮の金正恩第1書記が水素爆弾の保有に言及したことについて「これまでに得た情報を踏まえると、現時点では、北朝鮮の主張に強い疑問が残る」との見解を示した。その上で、「核兵器を開発している北朝鮮がもたらす危険と脅威を深刻に受け止めている」と強調した。(時事)


 16日 ※北朝鮮の金正恩第1書記が朝鮮労働党創建70年を迎えた10月10日に行った演説をめぐり、当初の演説文案にあった核やミサイルに関する内容が、中国共産党幹部の訪朝直前に削除・変更されていたことが15日、分かった。北朝鮮に詳しい関係筋が明らかにした。中国に配慮して、核やミサイルへの言及を避けたことがあらためて確認された。
 関係筋によると、朝鮮労働党宣伝扇動部による演説文の原案には、「米国の共和国(北朝鮮)圧殺策動に決死抗戦し、共和国の核主権を固く守り通す」や「敵の脅威からわれわれの体制を守るため、さらに強力な対抗手段を多角的に開発して、核強国をつくり上げなければならない」などの表現があったとされる。
 さらに、原案にはミサイルに関する発言内容も盛り込まれており、軍事パレードには「核強国」などのスローガンも登場することが検討されていたという。
 実際には、金第1書記は平壌での演説で、核やミサイルの開発には直接言及せず、「わが党は米国が望むいかなる戦争にも対応することができ、祖国と人民を死守する万端の準備が整っている」と表明した。
 約25分間の演説は人民に対する謝意や称賛の言葉が目立ち、挑発的な表現を比較的抑制した内容となった。また、パレードでは核開発を示唆するスローガンは登場しなかった。
 中国共産党は労働党創建70年に当たり、党序列5位の劉雲山政治局常務委員を10月9日に北朝鮮に派遣した。劉氏は金第1書記と並んで、軍事パレードを観覧し、2013年の北朝鮮による核開発で冷え込んだ中朝関係修復を演出した。共産党政治局常務委員の訪朝は10年10月以来5年ぶりだった。
 金第1書記は党創建記念日の4日前にあたる10月6日には論文を発表、「威力ある最先端武装装備をさらに多く生産し、自衛的核抑止力を絶え間なく強化しなければならない」と核やミサイルの開発を続ける考えを明らかにしていた。(東京新聞12.16)

 −元米国務省の北朝鮮専門家で米朝枠組み合意に関与したロパート・カーリン氏は、東京都内の日本外国特派員協会で記者会見し、北朝鮮は「16〜22発の核爆弾を保有している可能性が高い」と述べ、「6週間ごとに1発の核爆弾に必要な核物質を開発している」と指摘した。
 また、「オバマ米政権の北朝鮮政策に(過去の政権と比べ)大きな変化はなかった」と語り、北朝鮮による2回の核実験などを防げなかったことを批判した。
 原因として、政策立案者の間に北朝鮮に対する先入観があると説明。「『破綻国家』や『孤立した国』と決めつけ、理解を拒否した。破綻国家は核実験などできない」と述べ、米国や日本で交わされる議論でより冷静な分析を求めた。
 韓国の朴槿恵政権の取り組みについては「(就任後の)約3年を無駄に過ごした」と語り、任期後半に北朝鮮との関係進展で「レガシー(遺産)」作りに取り組んでも、足元を見透かされるとの見解を示した。(時事)


 22日 −米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」は、北朝鮮が開発中の移動式大陸間弾道ミサイル(ICBM)「KN08」に大幅な設計変更を加えたとの報告書を公表した。ミサイルの信頼性が大きく向上するとみられるが、実戦配備は2020年以降にずれ込むと分析している。射程は、軽量の核弾頭を搭載すれば米西海岸に十分に届く約9000キロ。報告書は「予想よりも開発進展が遅く、脅威は先延ばしされたが、阻止できてはいない」とした。(共同)

 

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