2016年 朝鮮半島核問題の主な動き

2月の主な動き
−※は報道日、表記は報道のまま−

 2日 −北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議の議長を務める中国の武大偉朝鮮半島問題特別代表が2日午後、空路で平壌に到着した。北朝鮮が1月6日に4回目の核実験を実施した後、中国高官が訪朝したのは初めて。
 武氏は核実験後、日本と米国、韓国の高官と会談し、北朝鮮の核実験に対する国連安全保障理事会の制裁決議などについて話し合った。これらの協議を踏まえ、北朝鮮側と核問題について議論するとみられる。(共同)

 −国際海事機関(IMO、本部ロンドン)の報道担当者は2日,北朝鮮政府から同日、「2月8日から25日の間に地球観測衛星を打ち上げる」との通告があったことを明らかにした。事実上の長距離弾道ミサイルの発射の通告とみられる。
 IMOによると、北朝鮮から伝えられた衛星名は「光明星」。IMOは加盟国に通知した上で、北朝鮮からの詳しい通告内容を公表するとしている。
 また、ジュネーブの国際電気通信連合(ITU)も2日昼(日本時間同日夜)までに、ジュネーブにある北朝鮮在外公館から同様の通告を受けたとした。情報が不十分だとして、あらためて北朝鮮側に詳しい報告を求める方針だという。
 北朝鮮は1月6日,4度目の核実験を実施。さらにミサイル発射を強行すれば、国際社会の批判が高まるのは必至。国連安全保障理事会での制裁決議へ向けた動きも活発化しそうだ。
 IMOは航行の安全を管轄する国連機関。北朝鮮は2009年以降、「人工衛星打ち上げ」と称して事実上の長距離弾道ミサイルを発射した際にも、事前にIMOなどに通告していた。
 北朝鮮が事実上の長距離弾道ミサイルを発射すれば、12年12月以来となる。前回は、地球観測衛星「光明星3号」を、運搬用のロケット「銀河3号」で発射する平和的な宇宙開発だと主張。発射実験について「衛星打ち上げは主権国家の合法的権利行使だ」と正当性を強調してきた。
 北朝鮮の国家宇宙開発局局長は15年9月に「新たな地球観測衛星開発が最終段階にある」と述べ、いつでも打ち上げができるとの立場を表明。米当局は先月下旬、東倉里で弾道ミサイル発射実験の準備を進めている兆候を確認。数週間以内にミサイルを発射する可能性に言及していた。(東京新聞2.3)

 −IMOは、北朝鮮政府からの地球観測衛星打ち上げに関する通告文書を加盟国に伝達した。文書によると、朝鮮半島西側からフィリピン東方まで、南方向に発射される。事実上の長距離弾道ミサイルの発射実験とみられる。
 通告内容によると、衛星「光明星」の発射は8日から25日の各日、平壌時間午前7時から正午(日本時間同7時半から午後零時半)の問。北朝鮮圏内から発射し、ロケット1段目が韓国西方の黄海上、衛星のカバ一部分が韓国南部・済州島西の東シナ海上、ロケット2段目がフィリピン東側の海上にそれぞれ分離、落下するとしている。沖縄県の先島諸島周辺上空を通過し、2012年の前回発射時と似たルートになるとみられる。(東京新聞夕刊2.3)


 4日 −中国の武大偉・朝鮮半島問題特別代表は4日昼、北朝鮮訪問を終えて北京に戻った。武氏は、北京首都空港で記者団に対し「言うべきことはすべて言った」と語った。
 中国外務省の陸慷報道局長によると、武氏は北朝鮮の李洙墉外相や金桂寛・第1外務次官らと会談。発射の中止を求めたほか、核実験を受けて国連安全保障理事会での新たな制裁決議に向けた米側などとの協議について意見を交わしたとみられる。(朝日新聞2.5)

 −CNNは、米当局者の話として、北朝鮮が「人工衛星打ち上げ」と称する事実上の長距離弾道ミサイル発射に向けて燃料の注入を開始した可能性があり、早ければ7日にも「打ち上げ命令」が金正恩第1書記から出されるとの見通しを報じた。発射台の高さが前回2012年より約10メートル高くなっており、より射程の長いミサイルを発射する可能性があるとの専門家の見方も伝えた。
 北朝鮮は今月8〜25日に「衛星打ち上げ」を行う計画を国際機関に伝えた。同国北西部東倉皇の「西海衛星発射場」では、商業衛星写真の分析などから発射準備が進んでいるとみられている。発射台にはカバーが設置されており、内部で作業が行われている可能性も指摘されている。ミサイルの移送施設もあり、近くの施設で組み立てたものを一気に発射台に運搬することも可能だ。(毎日新聞夕刊2.5)

 −朝鮮中央通信によると、中国の武大偉朝鮮半島問題特別代表と一行が2日から4日まで平壌を訪問した。
 訪問期間、武大偉特別代表と一行は李洙墉外相を表敬訪問し、李容浩外務次官と会談した。表敬訪問と会談では、朝中2国間関係と地域情勢を含む共通の関心事となる問題に関する意見が交わされた。(朝鮮中央通信4日)


 6日 −政府は、北朝鮮が「人工衛星」と称する弾道ミサイルの発射期間について、当初の今月8〜25日から7〜14日に変更する旨を各国や国際機関に通報したと発表した。午前7時から正午(日本時間午前7時半から午後0時半)とする発射予告時間帯や飛行予定区域に変更はないという。
 国土交通省によると、北朝鮮は6日午後0時54分、「人工衛星」と称するミサイル発射の期間を一部変更するとの航空情報を出し、国際民間航空機関(ICAO)にも通告。官邸関係者は期間の変更について「7日は(発射に影響を与える)風が弱い」と分析し、8日以降は発射場付近の天候が悪化するとの情報もあるという。政府は早ければ7日の発射もあり得るとみて警戒を強めている。
 政府は6日、「北朝鮮情勢に関する官邸対策室」で情報を集約し、関係省庁の局長級会議で対応を協議。官邸幹部の一人は「北朝鮮は最初から(各国を)撹乱(かくらん)させようとしているのではないか」との見方を示した。
 防衛省では6日夜、中谷元・防衛相らが幹部会議を開いた。日本に機体や破片が落下する可能性に備え、すでに海上配備型迎撃ミサイル(SM3)搭載のイージス艦3隻を日本海や東シナ海に派遣。
 地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)を首都圏と沖縄本島、石垣島、宮古島に配置する。中谷氏は6日夜、「7日朝までにイージス艦、PAC3の態勢が整う」と記者団に語った。(朝日新聞2.7)


 7日 −北朝鮮の朝鮮中央テレビは、国家宇宙開発局が北西部・東倉里の「西海衛星発射場」から地球観測衛星「光明星4号」を運搬ロケット「光明星号」で同日午前9時(日本時間同9時半)に打ち上げ、9時9分に軌道進入に「完全に成功した」と報じた。事実上の長距離弾道ミサイル発射だが、同テレビは「平和的な宇宙利用の権利を堂々と行使した」と主張した。
 「特別重大報道」で伝えた。金正恩第1書記が6日に打ち上げ命令を出したという。同テレビは、国家宇宙開発局が「今後も衛星をさらに多く大空へ打ち上げる」と伝えた。(共同)

 −政府は、北朝鮮が午前9時31分(日本時間)ごろ、同国西岸から南方向に「人工衛星」と称するミサイルを発射したと発表した。事実上の長距離弾道ミサイルを北西部の東倉皇から発射したとみている。ミサイルの一部は発射から約10分後に沖縄県上空を通過し、地球の周回軌道に達した可能性がある。政府は日本領域に落下する恐れはないと判断して破壊措置は行わなかった。国内に被害はないとしている。
 政府発表によると、ミサイルは発射後、五つに分離した。一つが午前9時37分ごろ、朝鮮半島の西約150キロの黄海、二つが同9時39分ごろ、朝鮮半島の南西約250キロの東シナ海に落下した。いずれも予告落下海域内だった。残りの二つが沖縄県上空を通過。そのうち一つは同9時45分ごろ、予告落下海域外の高知県足摺岬の南約2000キロの太平洋上に落下し、もう一つは南方向へ飛行を継続した。
 中谷元防衛相は7日の記者会見で「前回(2012年12月)発射したテポドン2の派生型(改良型)に類似した弾道ミサイルを発射した」と説明。飛行を続けたミサイルの一部について「何らかの物体を地球周回軌道に投入した可能性が考えられる」と指摘した。韓国の韓民求国防相は国会で「軌道進入に成功したと評価している」と述べた。一方、総務省は「電波の入感(把握)は確認していない」と発表。現段階では人工衛星としては機能していないと分析している。(毎日新聞2.8)

 −国連安全保障理事会は、北朝鮮の事実上の長距離弾道ミサイル発射を受けて緊急会合を開き、終了後、発射を「強く非難する」と明記した報道機関向け声明を発表した。パワー米国連大使は会合後の記者会見で、度重なる北朝鮮の挑発行為に「いつも通り」に対処するわけにはいかないと述べ、実質を伴う制裁強化のため「厳格で前例のない措置」を目指す意向を強調した。
 安保理は声明で、発射がこれまでの安保理決議に対する危険で深刻な違反に当たると指摘。「発射は北朝鮮の核兵器運搬システム開発を助長する」と強い危機感を表明した。
 その上で声明は、新たな決議を「迅速に」採択すると断言し、1月の核実験を受けて続いている制裁強化決議案の交渉を加速させる考えを強調した。ただ、パワー大使は決議案採択の時期を問われ、「できる限り早く」と述べるにとどめた。(時事)

 −米戦略軍は、北朝鮮が実施した事実上の長距離弾道ミサイル発射により、2つの物体が周回軌道に乗ったことを確認、追跡を続けていることを明らかにした。北朝鮮が地球観測衛星と主張する「光明星4号」と、ミサイルの3段目の残骸とみられる。
 2012年12月の発射に続き、2回連続で「衛星」を軌道に乗せることに成功したことになり、ミサイルの制御技術が向上していることを示す。
 北朝鮮のミサイル開発に詳しい米航空宇宙学者のジョン・シリング氏は、北朝鮮が今回使用したミサイルは前回12年の「銀河3号」(テポドン2号改良型)とほぼ同じものだと指摘。エンジン性能などに劇的な向上は見られないものの、精度が上がっているとの見方を示した。
 米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのジョナサン・マクドウェル研究員は「光明星4号」が北朝鮮の主張通りに機能するかどうかはまだ分からないとしながら、少なくとも数年間は周回軌道にとどまるとの見方を示した。
 戦略軍司令部などによると、「光明星4号」には「41332」、3段目の残骸には「41333」という識別番号が割り振られ、衛星の位置情報を追跡している民間のウェブサイトなどでも位置を確認できる。(共同)


 8日 −米戦略軍は、北朝鮮による事実上の長距離弾道ミサイル発射で地球周回軌道に投入された2個の物体のうち一つに「KMS4」との名称を付け、同軍の衛星カタログに登載したと明らかにした。もう一つは「UNHA 3  R/B」という名の機体部分としてカタログに登載した。
 北朝鮮は「衛星」を「光明星4」号と呼んでいる。前回2012年12月の打ち上げでは「銀河3」号と呼ばれる機体を使用した。今回の機体は「光明星」号との名前だ。
 また、CNNによると、米国防総省高官は軌道上の「衛星」について、宙返りを続けているような状態にあり、正常に機能していないようだとの見方を示した。(毎日新聞夕刊2.9)


 9日 −韓国国防省当局者は、北朝鮮による長距離弾道ミサイル発射実験の分析結果を明らかにした。2012年に行った前回の実験時に発射した「テポドン2改良型」と性能に大きな違いはなかったが、ミサイル破片の回収を妨害するために1段目を自爆させることには成功し、一定の技術向上があった。
 当局者によると、ミサイルは1段目と2段目が正常に分離し、3段目と北朝鮮が「衛星」と称する搭載物が地球を周回する軌道に入った。1段目と2段目は北朝鮮の通知とほぼ同じ海域に落下。前回の発射時とミサイルの形状に大きな違いがないことなどを理由として、今回発射したミサイルの性能は12年と同水準と評価した。米東海岸が射程に入る約1万2000キロ・メートルの飛行性能を持つ可能性がある。
 12年に打ち上げた搭載物の重さは約100キロ・グラムだったが、今回は重量が「多少増加した」と推定した。約200〜250キロ・グラムの物体を搭載できる能力があるとみられ、12年のミサイルも同程度だったと分析している。
 正確に打ち上げるための姿勢制御や機体分離の技術には、向上があったという。現時点では、3段目と搭載物から信号を発したなどの兆候は確認されていない。1段目は韓国に近い黄海に270個以上の破片となって落下し、自爆装置が作動したとみられる。12年のミサイル発射の際も、韓国軍が回収した1段目のミサイルから爆薬が発見された。(読売新聞2.10)

 −米政府の情報機関を統括するクラッパー国家情報長官が9日開かれた上院軍事委員会で、北朝鮮の寧辺にある5千キロワット級の黒鉛減速型原子炉が再稼働しており、「数週間から数カ月間でプルトニウムを抽出する可能性がある」と証言した。
 北朝鮮は昨年9月、寧辺の核施設が再稼働し始めたと発表しており、クラッパー氏の証言はこれを米政府としても確認したものだ。この施設は、6者協議で北朝鮮が無力化に同意し、2008年には冷却塔が爆破されていた。(朝日新聞2.10)

 −北朝鮮が長距離弾道ミサイルで打ち上げ、地球周回軌道に投入したとされる「物体」について、ロイター通信は9日、米政府高官の話として、姿勢が安定していると伝えた。
 北朝鮮が2012年12月の発射で放出した物体は、周回軌道に入った後に不安定な回転を続けたとみられることから、今回の打ち上げでは技術が向上した可能性がある。
 北朝鮮は打ち上げた物体については「人工衛星」だと主張している。地球観測などを担う衛星として機能するには、姿勢を安定させる必要があるが、今回打ち上げられた物体から地球への信号などは確認されていない。(読売新聞2.11)


 10日 −韓国政府は、北朝鮮南西部・開城の工業団地での南北共同事業を「全面的に中断する」と発表した。開城工業団地は、2004年に操業を開始した南北経済協力の象徴的事業。北朝鮮の核実験、長距離弾道ミサイル発射を受け、日米韓などが「強力な制裁」を目指す中、独自制裁として操業中断に踏み切った。
 洪容杓統一相は記者会見で、南北の共同発展に向けて工業団地を維持してきたにもかかわらず、「北朝鮮の核兵器と長距離弾道ミサイルの高度化に悪用される結果になった」と指摘。これまで総額約6160億ウォン(約591億円)が北朝鮮側に流れ、核・ミサイル開発に流用されたとの見方を示した。その上で「国際社会が制裁を推進している状況で、核心的な当事国である韓国も主導的に参加していく必要がある」と強調した。
 「閉鎖」には踏み込まなかったが、北朝鮮による新たな挑発が懸念される中、再開は困難な状況だ。北朝鮮の反発は必至で、工業団地内にある韓国の施設接収などの対抗措置を取る可能性もある。(時事)

 −政府は10日夕、国家安全保障会議(NSC)を首相官邸で開き、北朝鮮に対する日本独自の制裁措置を決定した。再入国禁止の対象を核・ミサイル技術者に拡大したほか、全ての北朝鮮籍船舶の入港禁止などが柱。核実験や長距離弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮に対し、毅然(きぜん)とした姿勢を示し、国連安全保障理事会での制裁決議採択に向けた議論を加速させる狙いがある。政府は速やかに閣議決定し、発動する。
 安倍晋三首相は記者団に、「北朝鮮に対し断固たる制裁措置を決定した。拉致・核・ミサイル問題解決のため国際社会とより緊密に連携する」と述べ、米韓などと協調して圧力を強める考えを示した。政府は、北朝鮮の動向をにらみ、必要に応じて、さらなる制裁措置も検討する。(時事)


 11日 −北朝鮮は11日夕方、韓国が南北協力事業である開城工業団地の操業を全面中断したことを受け、「同団地を閉鎖し、軍事統制区域とする」と宣言した。韓国側関係者は同団地から全員が撤収した。南北の公式な対話チャンネルは全て途絶し、朝鮮半島情勢は混迷を更に深めることになった。
 朝鮮中央通信によると、北朝鮮の祖国平和統一委員会は11日に声明を発表。韓国による操業中断は、「米国に唆された朴槿恵(韓国大統領)の売国気質、対決ヒステリーの産物だ」と非難。同団地に隣接した軍事境界線を全面封鎖するとも宣言した。
 また、韓国の入居企業124社の全資産を凍結し、事実上没収する考えを示した。南北間の軍事通信と境界線上にある板門店の連絡通信網も閉鎖するとした。
 北朝鮮は韓国人全員の「追放」も宣言した。韓国統一省によると、11日午後11時過ぎまでに、軍事境界線近くの北朝鮮側にある同団地から、残っていた韓国の入居企業や政府の280人全員が韓国側に戻った。同夜、同団地と韓国を結ぶ通信も打ち切られた。
 団地で靴製造業を経営していた男性は記者団に「荷物の30分の1も持ち出せなかった。言葉もない。政府が事前に(事業中断を)教えてくれれば、もう少し持ち出せたのに」と、声を絞り出すように語った。
 北朝鮮は今回、同団地を軍事統制区域とした。2013年に事業が一時中断した際にこうした宣言はなく、今後は軍事的な拠点として衣替えを図る可能性がある。軍事関係筋によれば11日現在、北朝鮮軍の動きに特別な変化はないという。
 北朝鮮の朝鮮中央テレビは11日、金正恩第1書記が専用機で平安北道東倉里にあるミサイル発射場を視察した記録映画を放映。打ち上げの場面とする映像も複数の角度から放映した。朝鮮労働党機関紙、労働新聞(電子版)は同日、「世界平和と安全破壊の主犯も、軍備競争をもたらす張本人も米国だ」とし、米国を強く非難した。(朝日新聞2.12)


 −韓国軍関係者は、北朝鮮が発射した事実上の長距離弾道ミサイルの残骸とみられる三つの物体を韓国軍が朝鮮半島西側の黄海で発見し、同日未明までに回収したと明らかにした。燃焼ガスの噴射部分と推定されるという。
 7日の発射後、韓国軍はミサイル先端部分の保護カバーの残骸と、ミサイルの1段目と2段目の連結部分とみられる残骸も海から回収している。
 韓国軍は11日、連結部分や噴射部分とみられる残骸を公開した。(共同)

 12日 −北朝鮮は、日本人拉致被害者の再調査を全面的に中止して、特別調査委員会を解体すると宣言した。朝鮮中央通信が同委員会の談話を伝えた。北朝鮮による4回目の核実験や事実上の長距離弾道ミサイル発射を受けて日本が10日に表明した独自の制裁強化策を批判し「より強力な対応措置が続くだろう」と威嚇した。
 日本は拉致再調査に関する2014年の日朝ストックホルム合意に伴い解除した制裁を復活させて、人と船の往来や送金の規制を拡大した。談話は「安倍(晋三)政権が自らストックホルム合意の破棄を公言したことになる」として、調査中止は日本の責任だと主張した。(日本経済新聞2.13)

 −米国防総省は、北朝鮮の軍事力に関する年次報告書を公表した。北朝鮮は米国に直接的な脅威を与える能力を持つ核弾頭搭載の長距離ミサイル開発に傾倒していると指摘。潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射装置を保有していると初めて言及し、警戒感を示した。移動式大陸間弾道ミサイル(ICBM)「KN08」について、米国の大部分に到達する能力を持つとの見方を示したが、兵器の信頼性は低いと分析した。
 報告書は議会への提出が義務づけられており、今回が3回目となる。金正恩第1書記については「過去1年間で権力基盤を固めた」と指摘。金体制は、核・ミサイル開発が中国の怒りを買うことを意識しながらも、「中国は地域の安定維持を優先し、北朝鮮への厳しい圧力や外交・経済関係の断絶は控えると考えている可能性が高い」と分析した。
 そのうえで、北朝鮮の核・ミサイル開発は地域の安定と米国の安全保障の脅威となっていると強調。特に、SLBM開発は、ミサイル戦力の多様化▽ミサイル戦力の残存性強化▽周辺国を威圧する新たな方法の発見−−という金体制の強い決意を示しているとした。ただ、SLBMやKN08は「飛行試験を行っておらず、兵器としての信頼性は低い」とし、ICBM「テポドン2号」も標的まで弾頭を運ぶ能力は備えていないとの評価を下した。
 報告書ではまた、北朝鮮が外貨獲得の手段として、国連安全保障理事会の決議に違反して弾道ミサイルの関連部品などの輸出をしているとして懸念を表明した。(毎日新聞夕刊2.13)


 15日 −朝鮮中央通信は、北朝鮮の金正恩第1書記が「衛星をもっと多く打ち上げなければならない」と述べたと報じた。事実上の長距離弾道ミサイルを再び発射する可能性を示したものだ。
 正恩氏の発言は13日、7日の長距離弾道ミサイル発射に貢献した科学者らとの宴会の席で述べたもの。正恩氏は演説で、「敵対勢力が我々を窒息させようと血眼になっている複雑な情勢の中で、(5月に開かれる)党大会を目前にして、国の運命と尊厳をかけて打ち上げを決心した」と説明した上で、「今回の大成功を跳躍台にし、さらに高い目標を達成するための科学研究事業に邁進(まいしん)して、実用衛星をもっと多く打ち上げなければならない」と述べた。(読売新聞夕刊2.15)


 17日 −中国の王毅外相は、北朝鮮の核・ミサイル問題について、核放棄を求めるだけでなく、朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に転換する協議を並行して進めるべきだとの考えを示した。米国に協議に応じるよう促したものだが、大統領選の最中の米国が応じる可能性は低い。北朝鮮に対する影響力行使を求める国際社会の期待をそらす狙いもありそうだ。
 王氏は訪中しているオーストラリアのビショップ外相との共同記者会見で、「中国は停戦・和平メカニズムの転換を非核化と並行して進める考え方を提案している」と述べた。中国外務省の洪磊副報道局長がその後の記者会見で外相発言の趣旨は平和協定への転換を進めることだと認め、実現すれば「北東アジアが長期的に安定した未来図を描けるようになる」と説明した。
 王氏は北朝鮮の核実験と事実上のミサイル発射の実施については「国連安保理決議の連続違反で、対価を払うべきだ」と述べ、一定の範囲内での制裁が必要だとの認識を示した。そのうえで「いかなる問題も圧力や制裁だけで根本的な解決はできない」と対話路線も続けるよう訴えた。
 北朝鮮は米国との平和協定締結を求めてきた。13日付の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」でも「米国が敵視政策を撤回し、平和協定締結の場に臨むべきだ」と主張していた。ただ、米国は核・ミサイル開発を放棄するのが先だとして応じていない。(日本経済新聞2.18)


 18日 −オバマ米大統領は、米上下両院が可決していた北朝鮮に対する米国の独自制裁法案に署名し、同法が成立した。北朝鮮の核・ミサイル開発や金正恩体制を支えるような取引を遮断するのが目的。中国など「第三国」の銀行や企業が不正な取引をやめなければ米国市場から事実上締め出される内容になっている。
 米議会は、1月6日に北朝鮮が4度目の核実験を強行した直後に制裁強化法案の審議に入り、上院は全会一致、下院も今月12日に賛成408票、反対2票の圧倒的多数で可決した。オバマ政権も、北朝鮮への圧力を中国に頼る従来のやり方は「機能しなかった」(ケリ一国務長官)として、これまでの制裁より強制力を高めた。
 今回の独自制裁は「遮断型」とも言われ、北朝鮮が外国に隠し持っている資産や、核・ミサイル開発に必要な物が金体制の手に渡らないようにするものだ。
 具体的には、すべての国の企業や個人に対して@核・ミサイル開発に関する材料や技術の取引A武器輸出入などにかかわる金融取引B資金洗浄Cぜいたく品取引D核・ミサイル開発や朝鮮労働党に関係する大量の希少金属や石炭などの取引を禁止。従わない企業や個人は、米国の銀行や企業のすべての取引が出来なくなる。
 北朝鮮体制を支えている取引の大半は、中国企業が担っている。中国が北朝鮮を支援しないよう促す狙いがある。(朝日新聞夕刊2.19)


 19日 −政府は臨時閣議で、核実験や長距離弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮に対する独自の制裁強化措置を決定し、一部を除き即日発動した。
 管官房長官は臨時閣議後の記者会見で「対話と圧力、行動対行動の方針の下、着実に実行していく。北朝鮮が今のような行動を取っている限り、制裁を続けるのは当然だ」と強調した。
 新たな制裁としては、19日以降に北朝鮮へ寄港した第三国籍船舶は、20日以降は日本へ入港できなくなる。船舶が入港する際、海上保安庁に事前通知する直近10の寄港地に、北朝鮮が含まれるかどうかが、入港の許可・不許可の判断基準だ。昨年1年間で、北朝鮮に寄港した実績がある船舶の入港は44隻だった。
 核開発などへの関与が疑われる資産凍結の対象リストに新たに1団体・10個人を加え、計40団体・29個人を指定することもこの日の閣議で了解され、即日実施された。
 新たな制裁措置の一つとして、北朝鮮向けの送金は、10万円以下の人道目的を除き、今月26日から禁止する。(読売新聞2.20)


 20日 −北朝鮮外務省の報道官は、米国で北朝鮮制裁を大幅に強化する法が成立したことについて「米国の敵視政策の度合いが限界を超えている」と非難、核兵器開発をさらに推し進めるとの談話を発表した。朝鮮中央通信が伝えた。
 独自制裁を打ち出した日本や韓国と連携した圧力強化で、北朝鮮の核・ミサイル開発の阻止を図る米国に対し、核開発を続ける姿勢をあらためて強調した。談話は「半世紀以上、米国の過酷な制裁下で暮らしてきたわれわれに制裁は通じない」と主張。米国の目的は北朝鮮の体制を崩壊させることにあるとし「絶対に看過できない」と訴えた。(共同)


 21日 −米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は、北朝鮮による1月6日の核実験前、米国と北朝鮮が朝鮮戦争(1950〜53年)の平和協定交渉開始の可否をめぐり非公式に接触したものの折り合わず、核実験で完全に決裂していたと伝えた。米側はこの中で北朝鮮の核開発を議題の一つにするよう要求、北朝鮮側は拒否したという。
 WSJによると、米朝高官は、国連代表部を通じた非公式ルートである「ニューヨーク・チャンネル」で調整していた。北朝鮮が4回目の核実験を強行し、非公式接触は終わったという。
 北朝鮮はこれまで、朝鮮戦争の休戦協定を転換して平和協定を締結するよう求めていたが、米側は表向き、朝鮮半島の非核化を優先させる立場を堅持していた。米側が非核化を議題に含めることを条件に平和協定交渉に応じる姿勢を見せていたとすれば、オバマ政権が対北朝鮮戦略を見直し、より柔軟な対応策を取り入れていた可能性がある。
 国務省のカービー報道官は21日、米朝の非公式接触を認めた上で、「平和協定交渉を提案したのは北朝鮮だ。われわれは交渉の中で非核化を協議しなければならないと明確にし、北朝鮮が拒否した」と説明。米側の対応は非核化に焦点を当てる過去の立場と一致していると強調した。(時事)


 23日 −朝鮮中央通信によると、北朝鮮軍最高司令部は、重大声明を発表し、敵の特殊作戦兵力に動きがあれば、「制圧するための先制的な作戦遂行に入る」と宣言した。
 北朝鮮による核実験強行や事実上の長距離弾道ミサイル発射を受け、米韓両軍は最高度の警戒態勢を敷いている。3月からの米緯合同軍事演習は、米戦略爆撃機や原子力潜水艦なども参加し、過去最大規模になる見込み。北朝鮮軍の声明には、米韓の動きをけん制する狙いがある。
 声明は、第1次の攻撃対象は青瓦台(韓国大統領府)をはじめとする韓国政府機関だと警告。第2次の攻撃対象は、アジア太平洋地域の「米帝侵略軍」の基地や米国本土になると主張した。基地には在日米軍基地が含まれるとみられる。(時事)

 −北朝鮮が強行した核実験と長距離弾道ミサイル発射に対する国連安全保障理事会の制裁決議案を巡り、米国のケリー国務長官と中国の王毅外相は23日、ワシントンで行った会談後に記者会見し、「重要な進展があった」と明らかにした。近く安保理で制裁決議案が採択されるとの見通しを示した。
 ケリー氏は決議案について詳細は明かさなかったが、「決議が採択されれば、過去のものより(制裁内容が)強力であることは疑いない」と言及。決議案採択の時期は「双方とも、すぐに進めることができると願っている」と述べた。
 王氏は「我々は共に北朝鮮の核ミサイル計画を受け入れないし、北朝鮮を核保有国としても認めない」と語り、決議案が採択されれば、「北朝鮮の核ミサイル計画のさらなる進展を効果的に抑えることができる」と自信を見せた。
 制裁決議案を巡っては、北朝鮮による1月の核実験後、米国と日本、韓国が従来よりも強い内容の制裁決議の早期採択を目指したが、中国が制裁強化に慎重な姿勢を崩さず、審議が難航。国際社会が一致した対応をとれない中、北朝鮮は核実験に続いて長距離弾道ミサイルの発射を強行した。
 また、王氏は「安保理決議は北朝鮮の核問題を根本的には解決できない」として、北朝鮮の核問題を巡る6か国協議の再開の必要性を強調。「この点で我々は同意した。近い将来、協議再開の機会が現れることを期待している」と述べた。(読売新聞夕刊2.24)


 25日 −米国の国連代表部は、核実験と長距離弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮に対する制裁決議案を、国連安全保障理事会に提出した。従来の制裁を大幅に強化する内容となっている。米国や日本は数日中にも採択することを目指し、週末にかけてロシアなど他の主要国と詰めの協議を行う。
 決議案は、主に米国と中国が内容を検討し、25日に両国で最終的な合意に至っていた。読売新聞が入手した決議案によると、@北朝鮮に出入りする全ての貨物を各国が港や空港で検査A北朝鮮との全ての武器取引の禁止B違法行為に関わった疑いのある北朝鮮外交官らの追放C北朝鮮への航空用燃料の輸出禁止D北朝鮮からの鉱物資源の輸入禁止E北朝鮮の銀行の支府開設禁止など金融取引の大幅規制−−などが柱だ。
 貨物の検査や銀行支店開設禁止などについて、従来の制裁は、対象の企業などが違法行為に関与している疑いがある場合としてきたが、今回の決議案は、そうした条件をはずした。また、北朝鮮への航空用燃料の輸出禁止や、北朝鮮からの鉱物資源の輸入禁止などが、新たな制裁内容だ。
 さらに、17個人と12団体を新たに資産凍結や渡航禁止などの対象に指定。すでに指定されている12個人と20団体に大幅に追加する。
 北朝鮮による石炭や鉄鉱石の輸出禁止を巡っては、代金が市民生活のために使われると確認された場合などに限り、例外として取引を認めるとの項目が盛り込まれた。北朝鮮の国民生活に影響を与える措置に慎重な中国の意見を踏まえたものだ。(読売新聞夕刊2.26)


 29日 −国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会の下で、制裁履行状況を調べている専門家パネルの年次報告書が29日までに安保理に報告された。北朝鮮が国際金融システム、船舶、航空機を使用した禁輸品貿易をはじめ、ヒト、カネ、モノで制裁破りを続けている実態が明らかにされた。
 北朝鮮が最初の核実験を実施し、制裁が科されてから9年以上がたつが、報告書は同国が核・弾道ミサイル計画を放棄する兆候はみられないと述べ、「現在の国連の制裁体制の有効性について重大な疑問がある」と指摘した。
 制裁違反の新たな傾向として、北朝鮮が外国製の高性能な市販品を調達し、禁止された武器開発の能力強化に使うケースを挙げた。日本企業製の民間用レーダー・システムが北朝鮮の海軍艦船に使われた例が報告された。(時事)

 

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