2016年 朝鮮半島核問題の主な動き

4月の主な動き
−※は報道日、表記は報道のまま−

 1日 −北朝鮮は1日午後、北朝鮮東部・咸鏡南道宣徳一帯から日本海に向けて短距離地対空ミサイルを発射した。飛距離は100キロ前後だという。聯合ニュースが伝えた。
 北朝鮮は2014年3月にオランダで行われた日米韓首脳会談の際にも中距離弾道ミサイル「ノドン」を発射しており、今回もワシントンでの日米韓や中韓首脳会談で対北朝鮮制裁が議題になったことなどへの反発を示した可能性がある。(毎日新聞4.2)

 2日 −朝鮮中央通信は、北朝鮮の金正恩第1書記が新型の対空迎撃ミサイル試射を視察したと報じた。視察日は不明。北朝鮮は1日に日本海に向けて短距離地対空ミサイル1発を発射しており、試射はこのミサイル発射を指している可能性がある。同通信は「敵の空中目標を正確に攻撃、消滅した」とし、正恩氏が「我々の国防力のもう一つの一大誇示になる」と成功に満足の意を表したと伝えた。米韓合同軍事演習をけん制する狙いがあるとみられる。(読売新聞4.3)

 4日 −米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院の米韓研究所は、北朝鮮・寧辺の核燃料再処理施設から煙が出ている様子を捉えた最新の衛星写真を公表した。同研究所は「(核兵器製造に必要な)プルトニウムの抽出作業を進めているか、近く着手するか」と双方の可能性を指摘した上で、現時点では判断できないとしている。
 3月12日に撮影された画像は、再処理施設の発電所の煙突から黒っぽい煙が出ているのを示している。同研究所は「煙は過去5週間に2〜3度確認された。(過去に)煙が見られたのはまれで、冬季に皆無だったことから今回の(北朝鮮の)行動は異例だ」と分析した。(時事)

 5日 −韓国軍合同参謀本部は、北朝鮮が日本海に向け1日発射した短距離の地対空ミサイルに関し、当初1発と発表したが、直後にさらに2発が発射されていたと明らかにした。
 同本部は「2発は、数秒でレーダーから消えたり、比較的飛距離が短かったりしたため、公表する必要がないと判断した」と説明。国連安保理決議が禁じる弾道ミサイルではない点も考慮したと述べた。(時事)

 −中国商務省が、北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁決議を踏まえた制裁項目を公表した。現在実施中の北朝鮮に対する輸出入禁止品目を列挙した。
 習近平国家主席は訪米中の3月末、「決議の全面的かつ厳格な履行」を表明していた。国際社会は北朝鮮と経済関係の深い中国の動向を注視しており、責任を果たす姿勢をアピールする狙いもあるとみられる。
 輸入禁止品目として石炭、鉄、鉄鉱石、金、バナジウム、チタン、レアアースを挙げた。このうち石炭と鉄、鉄鉱石について、1)民生目的2)北朝鮮産以外で(北朝鮮の)羅津港を経由して輸出される場合で、かつ核開発と弾道ミサイル計画に関連しないと証明できるものについては禁輸対象外とする。
 また、北朝鮮に対して航空燃料(ガソリン、ナフサなどを含む)の輸出を禁止するとし、人道目的や民用機に必要な航空燃料などは例外とするなどとした。(朝日新聞4.6)

 8日 −カーター米国防長官は、ニューヨーク市で講演し、北朝鮮の核・ミサイル開発への備えとして、最新鋭の地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備を進める方針を表明した。
 カーター氏は「自国民と韓国を守るために必要なことだ」と述べ、中国が反対していることに対し「これは米国と韓国の間のことであって、中国には関係ない」と突っぱねた。(東京新聞夕刊4.9)

 9日 −北朝鮮の朝鮮中央通信は、北西部東倉皇の「西海衛星発射場」で新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)のエンジン燃焼実験を行い「成功した」と報じた。金正恩第1書記が視察し「実験の成功で米国をはじめとする敵対勢力に核攻撃を加えられるようになった」と述べた。実施日は伝えられてない。
 北朝鮮がICBMのエンジン燃焼実験を公表したのは初めて。開発の進展を誇示して米韓合同軍事演習に対抗するとともに、直接交渉に応じるよう米国に迫る狙いがあるとみられる。
 今回の燃焼実験成功が事実であれば今後、初の発射実験に踏み切る恐れもある。(共同)

 15日 −北朝鮮は15日午前5時30分ごろ、日本海沿いの江原道元山付近から弾道ミサイル1発の発射に失敗した。韓国軍合同参謀本部が明らかにした。同本部は発射を試みた機体は中距離のムスダン(射程3千キロ)とみている。北朝鮮がムスダン発射を試みたのは初めてで、国際社会の強い反発を招きそうだ。
 北朝鮮は最近、移動発射台に搭載したミサイルを日本海沿いに展開していた。発射した機体は爆発したか、ごく近距離に墜落した模様だ。展開したミサイルが複数との情報もあり、日米韓は追加の発射の可能性について響戒している。
 ムスダンは旧ソ連の潜水艦搭載型弾道ミサイルを改造。これまで試射したことはないが、北朝鮮はイランを通じてデータを収集し、数十発を実戦配備しているとされる。
 日米韓はムスダンについて、米軍基地があるグアムを狙ったミサイルとみている。米国は1月、グアムから核搭載可能な戦略爆撃機B52を韓国に派遣しており、軍事的に対抗する狙いもありそうだ。(朝日新聞夕刊4.15)

 −北朝鮮の新型中距離弾道ミサイル「ムスダン」とみられる発射実験について、米国防総省のデービス報道部長は、実験が「大失敗」に終わったと結論付けた。北朝鮮が再発射に踏み切る可能性があるとして警戒を続けるとしている。従来の他のミサイルと異なり東岸から発射されたことから「移動式とみられる」と指摘した。
 韓国メディアは同国情報当局の話として、発射直後に空中爆発した可能性が高いとの見方を伝えていた。デービス氏も「発射とともに炎を上げて」失敗したと説明、空中爆発の見方を裏付けた。
 アーネスト米大統領報道官は15日の記者会見で、「北朝鮮の挑発行為を強く非難する」と述べ、日韓など同盟国の防衛に注力する考えを表明した。
 ムスダンは、米軍の戦略拠点グアムや米アラスカ州から延びるアリューシャン列島を射程に入れる。アーネスト氏は「米国に対する脅威は十分に認識している」と強調、アラスカ州に配備した地上配備型迎撃ミサイルなどを念頭に「米国の防衛態勢は十分に整っている」と話した。
 その上で「北朝鮮を孤立させる」として中国を含む国際社会と連携し、制裁網を強化する方針を示した。(共同)

 −北朝鮮による15日の中距離弾道ミサイルの発射を受け、国連安全保障理事会は同日、発射を「強く非難」する報道声明を発表した。
 声明では、北朝鮮の「弾道ミサイル発射は失敗したものの、(弾道ミサイル発射を禁ずる)5回の安保理決議に明白に違反している」と批判し、決議に違反する行動を慎むよう北朝鮮に要求した。また、加盟国に対しても「すべての安保理決議を履行するための努力を倍加させる」ことを促した。
 北朝鮮は故金日成主席の誕生日にあたる15日に新型の中距離弾道ミサイル「ムスダン」と推定されるミサイルを発射したが、失敗していた。
 安保理は、北朝鮮が今年1月6日に行った4回目の核実験と2月7日の弾道ミサイル発射を受けて、3月2日に北朝鮮に対する制裁強化決議を採択した。(毎日新聞夕刊4.16)

 −米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」は15日、北朝鮮が寧辺の再処理施設で核兵器の原料となるプルトニウムを抽出する作業を始めたか、準備に入ったとみられるとの衛星写真の分析結果を明らかにした。
 同サイトによると、今月11日に撮影された商業衛星写真で、再処理施設の敷地内にタンクなどの容器を積んだ貨車があるのが確認された。容器は化学物質を供給したり、廃棄物を運び出したりするために使われ、北朝鮮がプルトニウムを抽出していた2000年代初頭にも再処理施設で確認されたことがあるという。(共同)

 −聯合ニュースは、国連制裁対象の海運会社との関係が疑われメキシコで出港停止となっている北朝鮮の貨物船「ムドゥボン号」について、メキシコ政府が北朝鮮の解放要求に応じず、没収を決めたと報じた。
 経緯は不明だが、同ニュースは核実験などを受けた国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議に沿った措置との見方を伝えている。
 報道によると、メキシコのペニャニエト大統領は今月4日、同国を訪れた韓国の朴槿恵大統領との会談で韓国の対北朝鮮政策に理解を示し、ムドゥボン号については「国連加盟国の義務を履行する観点から処理している」と述べていた。(共同)

 18日 −日韓の情報当局者は、北朝鮮が15日に失敗した新型中距離弾道ミサイル「ムスダン」とみられるミサイルの発射実験について「発射地点とみられる地面がほぼ円形に黒く焦げており、発射と同時に移動式発射台も巻き込んで爆発、炎上した可能性が高い」と明らかにした。
 衛星写真などの分析から判断したという。米韓などが実験は「大失敗」とする見方の根拠になっているとみられる。
 また同当局者は「ムスダンを搭載しているとみられる別の移動式発射台が1〜2台確認されており、再発射を試みる可能性が高いが、発射準備を事前に探知するのは難しい」と指摘した。(共同)

 21日 −北朝鮮の李洙墉外相は、ニューヨークの国連本部の会合で演説し、核戦力を持つ米国が朝鮮半島で軍事演習をする状況下では、核に頼らざるを得ないと述べ、自国の核兵器保持を正当化した。日米韓は、通算5回目の核実験の実施を警戒している。
 李氏は米国の朝鮮半島での軍事演習を批判した上で「北朝鮮は対話と国際法に基づいて米国からの核の脅威を除去しようと努めてきたが、無駄に終わった」と主張。各国代表団の前で「私たちに残された最後の選択肢は(核兵器という)同様の対応だった」と訴えた。 李氏は演説後、記者団からの「(5回目の)核実験を実施するのか」との質問に答えず、国連本部を立ち去った。(朝日新聞夕刊4.22)

 −北朝鮮が1月6日に実施した核実験の後、群馬県高崎市にある国際監視網の施設で放射性物質キセノン133が検出されていたことが21日、明らかになった。監視網を運営する核実験全面禁止条約機関(CTBTO)準備委員会がウィーンの欧州地球科学連合総会で発表した。
 核実験がどのようなものであったかを分析する上で重要な手がかりとなる可能性がある。
 キセノン133は、2月16〜19日に採取された試料から検出された。北朝鮮がこれまでに行った4回の核実験のうち、2006年10月と13年2月の核実験の後には、キセノン133など2〜3種の放射性物質が検出されたが、今回は133だけだった。ごく微量で健康への影響はない。(読売新聞夕刊4.22)

 24日 −朝鮮中央通信は、北朝鮮が金正恩第1書記の立ち会いの下、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験に「大成功」したと報じた。場所や日時には触れていないが、23日に東部・新浦沖で行われた発射を指すとみられる。
 同通信は、深い水中からの発射システムの安定性や新開発の高出力固体燃料エンジンを使用した垂直飛行などについて、「全ての技術的指標が条件を十分に満たした」と報じた。また、正恩氏は「いつでも米国と韓国を攻撃できるよう核武力強化の歩みを進めていかなければならない」と述べたという。36年ぶりに開かれる5月の朝鮮労働党大会に向けて「成功」をアピールし、国威を発揚する狙いとみられる。
 一方、韓国軍は23日の発射について、飛行距離は30キロ・メートルにすぎず、少なくとも300キロ・メートルとされるSLBMの射程に及ばない水準と評価し、失敗との見方を示している。韓国政府関係者は24日、「水中射出能力などで一部技術的進展がある。戦力化には3〜4年かかるが、より早まる可能性も排除できない」との分析を示した。(読売新聞4.25)

 −ドイツを訪れているオバマ米大統領は、メルケル独首相とハノーバーで、共同記者会見し、北朝鮮が米韓による合同軍事演習をやめれば核実験を中止すると述べたことに対し、「真剣に受け止めていない」と退けた。北朝鮮が非核化に向けた具体的な行動を示さなければ、さらに圧力を強めていく考えを強調した。
 北朝鮮が23日に日本海でSLBMとみられる飛翔(ひしよう)体を試験発射したことを受け、オバマ氏は「はっきりしているのは、北朝鮮が核とミサイル能力を高めるための挑発行動をとり続けていることだ」と非難。ミサイル実験はたびたび失敗しているものの、北朝鮮は知識を蓄えているとし、「我々はとても深刻に受け止めている」と語った。
 AP通信によると、北朝鮮の李洙墉外相は23日のインタビューで、米国が朝鮮半島周辺で、行っている米韓合同軍事演習を中止すれば、北朝鮮も新たな核実験を中止する用意があると提案。オバマ氏はこれに対し、「北朝鮮が(核)実験を停止すると決断するまでは、こうした約束は真剣に受け止めない」と一蹴した。その上で日韓と共に、ミサイル防衛能力を高める考えを示した。(朝日新聞夕刊4.25)

 −国連安全保障理事会は、北朝鮮が23日にSLBMを発射したことにいて、これまでの五つの安保理決議に対する重大な違反だとし、強く非難する報道機関向け声明を発表した。声明は北朝鮮による新たな弾道ミサイル能力の開発や実験について、失敗の場合も含め、決議で明確に禁じられていると強調した。(時事)

 25日 −米国務省のカービー報道官は記者会見で、北朝鮮が23日にSLBMを発射したことを受け、国連の会合に出席するためニューヨークに滞在していた北朝鮮の李洙墉外相に対して、国連と北朝鮮国連代表部、ホテル、空港の4か所以外の移動を認めない制限を科したことを明らかにした。米政府が外交団のトップの外相に対して移動制限をかけるのは異例で、SLBM発射に対する米政府の独自制裁の一つと言えそうだ。(読売新聞4.27)

 26日 ※北朝鮮が1月6日に北東部・豊渓里で核実験を実施後、実験場の地表が最大7センチ陥没していたことが欧州宇宙機関の地球観測衛星センチネル1Aのレーダーで確認された。核実験の規模や方法などの手がかりとなる地形の変化が公表されたのは初めて。
 核実験全面禁止条約機関(CTBTO)準備委員会とドイツ地球科学天然資源研究所の研究班が報告をまとめた。
 この結果に基づいて精密に計算した核兵器の威力はTNT火薬に換算して10キロ・トンと広島型原爆(15キロ・トン)より小さく、「(北朝鮮が実施したと主張している)水爆はまずあり得ない」と結論づけている。
 陥没が見つかったのは、実験場のトンネル入り口から北西3キロの山中。1月1日と13日の豊渓里のレーダー観測結果を比較したところ、細長くおよそ1キロ・メートルにわたって南西から北東の方向にわずかに陥没し、その周囲がわずかに隆起していた。
 陥没箇所は、地震波で推定される核実験の場所とほぼ一致した。核実験場所の特定を地震波に頼ると誤差が生じるため、今回のやり方が正確に特定する新たな手段になると研究班は期待している。
 今回のような浅く直線的な陥没は、地下の硬い岩盤の中で爆発させたことを示す。空間が周囲にないため、地震波がほとんど弱められずに外に伝わるので、マグニチュードが爆発の威力をほぼ正確に反映しているとみられる。(読売新聞4.26)

 −李洙墉外相による米ニューヨークの国連本部訪問に同行した北朝鮮外務省のリ・テソン副局長は、米国が韓国と定期的に行っている合同軍事演習をやめれば新たな核実験を中止する、との北朝鮮側の提案について「もはや有効ではない」と述べた。帰国途中に北京空港で、記者団に語った。
 リ副局長は、提案は昨年に行ったものだとし、米国が拒否したと説明。李外相がAP通信に対し、米軍が韓国周辺の海域で韓国軍と合同で行っている軍事演習をやめれば、北朝鮮もさらなる核実験をやめる用意があると述べたという報道について「事実と異なる」と否定した。
 オバマ大統領はドイツ訪問中の24日、北朝鮮側の提案について「そのような約束は真剣に受け止めていない」と一蹴。これを受け、リ副局長は北朝鮮本国の指示に基づいて反発したとみられる。(東京新聞4.27)

 28日 −北朝鮮は28日の早朝と夜、日本海沿いの江原道元山付近から中距離弾道ミサイル「ムスダン」と推定される飛翔体をそれぞれ1発ずつ発射したが、いずれも失敗した。韓国軍が明らかにした。北朝鮮が5月6日に36年ぶりに開く朝鮮労働党の党大会を前に内部の結束を固めるため、発射を強行した可能性がある。
 28日午前6時40分(日本時間)ごろ、1発目の発射があったが、飛翔体は数秒後に墜落した。28日午後7時26分(同)にも、元山から追加の1発を発射したが、失敗したとみられる。
 ムスダンは射程3千キロ以上で、日本全域と米領グアムを射程に収める。発射台つきの車両に搭載されるため、発射の兆候を事前に把握するのは難しい。
 北朝鮮は15日にもムスダンを発射し、同様に失敗していた。韓国軍関係者は「前回の失敗を挽回(ばんかい)するため、短期間で無理に再発射を試みたのではないか」と指摘している。(朝日新聞4.29)

 30日 −朝鮮中央通信によると、北朝鮮外務省報道官は30日、前日終了した米韓合同軍事演習を「史上最悪の軍事的挑発」と非難した。その上で「米国は北朝鮮を攻撃、侵略する意図がないことを確認する」とうたった6カ国協議の共同声明(2005年9月採択)は「死滅した」と主張した。
 さらに「戦争演習が行われるたびに、われわれの核攻撃能力は飛躍的に強化される」と表明した。
 米韓演習を口実に、北朝鮮の核兵器・計画の放棄を定めた6カ国協議の共同声明の無効を宣言し、核兵器の開発や増強を正当化する狙いがあるとみられる。(時事)

 

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