2016年 朝鮮半島核問題の主な動き

9月の主な動き
−※は報道日、表記は報道のまま−

 3日 −ロシアのプーチン大統領と韓国の朴槿恵大統領は、極東ウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムの会場で会談し「北朝鮮の核保有を容認しない」立場で一致した。会談後の共同記者会見でプーチン大統領が明らかにした。
 朴大統領も「北朝鮮の核問題をめぐる韓日両国の戦略対話をさらに強化することで合意した」と述べた。さらに「北朝鮮は、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を含めてミサイル開発技術を改良している。今が圧力をかける最後のチャンスだ」と危機的状況を訴えた。
 ただ、プーチン大統領は「朝鮮半島における、あらゆる挑発行為を回避しなければならない」と主張し、韓国にも自制を求めた。ロシア独自のチャンネルを活用し、緊張緩和に向けて北朝鮮を、核問題について話し合う6カ国協議に復帰させるようロシアが努力することを約束した。(時事)

 5日 −北朝鮮は5日午後0時13分ごろ、北朝鮮南西部・黄海北道黄州付近から日本海に向けて、弾道ミサイル3発を発射した。防衛省などによると、ミサイルは約1000キロ飛び、北海道・奥尻島(北海道奥尻町)の西約200〜250キロの日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。日本のEEZ内にミサイルの弾頭や本体部分が落下したのは、8月3日に続いて2回目。日本、米国、韓国は国連安全保障理事会決議違反だと強く批判している。
 菅義偉官房長官は、中国訪問中の安倍晋三首相の指示に基づき、情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対して迅速・的確に情報提供するよう関係省庁に指示した。政府は国家安全保障会議(NSC)を開いて対応を協議するとともに、北京の外交ルートで北朝鮮に厳重に抗議した。岸田文雄外相は「至急、(安保理の)緊急会合招集を呼びかけたい」と記者団に語り、国連でも北朝鮮への圧力を強める考えを示した。
 防衛省は、飛距離からみてスカッドER(射程約1000キロ)かノドン(射程約1300キロ)の可能性が高いとみている。スカッドやノドンは移動式発射台(TEL)から発射されることが多く、事前に発射を探知するのが難しいため、自衛隊には8月8日に弾道ミサイルを迎撃する破壊措置命令が出ており、常時、迎撃態勢をとっている。
 海上保安庁は、日本近海を航行する船舶に注意を呼びかける「航行警報」を出し、奥尻島沖の落下地点に航空機と巡視船を派遣した。弾道ミサイルの破片など落下物がないか調べる。国土交通省も日本周辺を飛行する航空機に対し、航空情報(ノータム)を出して注意を呼びかけた。
 聯合ニュースによると、韓国軍はこの時期の挑発行為があるとみて警戒態勢を強め、5日は発射前に兆候をつかんでいたという。(毎日新聞9.6)

 6日 −北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、金正恩朝鮮労働党委員長が「改良された弾道ミサイル」の発射訓練を視察したと報じた。訓練は「成功」し、金委員長は満足の意を示すとともに、核戦力の「拡大・強化」を指示した。
 北朝鮮は5日、「ノドン」と推定されるミサイル3発を日本海に向け、ほぼ同時に発射。日本のEEZに落下したもようで、これを指すとみられる。
 朝鮮中央通信によると、訓練を実施したのは戦略ロケット軍の火星砲兵隊で、有事の際、太平洋作戦地帯内の「米帝侵略軍基地」の攻撃任務を負っている。訓練は「改良された弾道ミサイル」の飛行安定性、誘導命中性能など信頼性を点検する目的で行われ、「ミサイルの実戦運用能力とミサイルの戦闘性能は、完璧と評価された」という。(時事)

 −国連安全保障理事会は、北朝鮮が中距離弾道ミサイルを5日に発射したことを「強く非難する」との報道声明を発表した。北朝鮮との対話を重視してきた中国が非難声明に賛同し、日米が求める迅速な声明発表にこぎ着けた。中国で開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議にあわせ発射されたことから、中国も歩み寄ったとみられる。
 安保理は8月26日にも、同月24日の北朝鮮のミサイル発射に対する非難声明を出している。この時も中国が自国開催のG20を控え、歩み寄ったとみられていた。
 安保理は6日、緊急会合を約1時間開催。ミサイル発射は「安保理決議による北朝鮮の国際的な義務への深刻な違反」だとし、核実験を含む挑発行為を控えるよう求める声明の発表で合意した。声明はまたすべての国連加盟国に対し、北朝鮮に対する制裁措置を「十分に履行する努力を倍増するよう求める」とした。
 会合では「全理事国が安保理決議への甚だしい違反だとして強い言葉で非難した」(日本の別所浩郎国連大使)。ミサイル発射のたびに声明を出しても北朝鮮の挑発行為は続くため「追加の対策がとれないか考える必要がある」(同大使)との声もあがったという。(日本経済新聞夕刊9.7)

 7日 −北朝鮮が今月に入り、北東部豊渓里の核実験場で再び観測機器設置などの実験準備ともとれる動きを見せていることが7日分かった。複数の情報当局者が明らかにした。日米韓は5回目の核実験を強行する恐れもあるとみて警戒、監視を続けている。日本政府当局者は「いつ核実験があってもおかしくない状況とみている」と語った。ただ、北朝鮮は7月にも同様の動きを見せながら核実験を行わなかった。(共同)

 −国連安全保障理事会が北朝鮮の5日の弾道ミサイル発射を非難し、自制を求める報道声明を発表したことに対し、北朝鮮外務省の報道官は7日、尊厳や生存権に対する侵害行為であり「全面排撃する」と述べた。朝鮮中央通信が報じた。
 報道官は「核戦力強化の奇跡的な成果を引き続き拡大していく」と述べ、核実験や弾道ミサイル発射を今後もやめないと強調した。
 また、米国が朝鮮半島に核戦争を行える兵器を投入して演習を行っているのに、安保理が北朝鮮の「正当な自衛措置」だけを問題視するのは認めることができないと主張した。(共同)

 9日 −北朝鮮は、「核弾頭の爆発実験に成功した」と発表した。9日午前に北朝鮮北東部の豊渓里で、5回目の核実験を行ったとみられる。「核弾頭の爆発」への言及は初めてで、弾道ミサイルに搭載するための核弾頭の小型化に成功した可能性が高い。北朝鮮は、日本も射程に入れたミサイルの発射実験を繰り返して技術を高めており、核ミサイルの脅威が現実味を帯びてきた。
 国連安全保障理事会は9日午後(日本時間10日朝)に緊急会合を開き、制裁強化などを協議する。オバマ米大統領は9日、北朝鮮を非難する声明を出し、「北朝鮮を核保有国とは決して認めない」と表明した。
 北朝鮮は今年1月の実験から約8カ月で、今年2回目の核実験に踏み切った。韓国の洪容杓統一相は9日、国会での答弁で「短い日数の内に再び核実験をする可能性もある」と述べた。
 韓国政府は、核実験に伴う爆発の規模が前回の約2倍にあたる10キロトン程度で「過去最大の規模」と分析。韓国の情報機関・国家情報院は国会への説明で、核弾頭の小型化が「当初予想よりかなり速い」と懸念を示した。今回は水爆実験ではなかったことも確認した。
朝鮮中央通信は9日、「小型化、軽量化、多種化した核弾頭を必要なだけ生産できる。核兵器化はより高い水準に上った」と報道。弾道ミサイル搭載にするため核弾頭を1トン以下に小型化する技術も獲得しつつあるとみられる。
 北朝鮮は2月の事実上の長距離弾道ミサイルを皮切りに、中距離弾道ミサイル「ムスダン」やSLBMの実験を繰り返している。(東京新聞9.10)

 −北朝鮮の5度目の核実験を受け、国連安全保障理事会(15カ国)は9日午後(日本時間10日早朝)に非公開の緊急会合を開き、実験は一連の安保理決議と核の不拡散体制に「明白に違反している」として、「強く非難」する報道機関向けの声明を全会一致でまとめた。今後、対北朝鮮の追加制裁を視野に協議する姿勢も示された。
 緊急会合は理事国の日米に、韓国を加えた計3カ国の要請で開かれた。報道声明に法的拘束力はないが、安保理の統一した意思を即時に示す効果がある。
 報道声明は核実験について、一連の安保理決議を「軽視するもので言語道断」と非難し、国際社会の「平和と安全への明確な脅威」になっていると指摘。北朝鮮が再び核実験を強行すれば「重大な追加措置をとる」との決意を安保理が過去の決議で示してきたことを確認した上で、「安保理は、国連憲章41条に基づき、適切な措置をとる作業をただちに始める」と宣言した。
 国連憲章7章41条は、安保理による決定に効果を持たせるために必要な武力行使以外の「強制措置」を規定。経済関係や運輸・通信の中断、外交関係の断絶を含むことができると明記している。具体的には禁輸や金融凍結、渡航禁止などが代表的な措置だ。安保理の一連の決議や声明に違反し続ける北朝鮮への強い警告を含んでいると言える。(朝日新聞夕刊9.10)

 −米国防総省のデービス報道部長は、北朝鮮が核弾頭の小型化成功を主張していることについて「北朝鮮の訴えは事実だとみなす必要がある」と指摘した。米政府はこれまで、北朝鮮が核弾頭の小型化には成功していないとの見解を示していた。
 デービス氏は「われわれは実際に北朝鮮の小型化運用を確認したわけではない」としつつ「小型化は特に難しい技術ではない」と述べた。また、在韓米軍に配備する最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)」について「2017年中の配備を予定している。緊急事態になれば速やかに配備できる」と強調。韓国や日本など同盟国への防衛体制を引き続き強化する考えを示した。
 一方、米国務省のトルドー報道部長は同日の記者会見で「北朝鮮の核兵器保有は受け入れられない」と指摘。「不可解な体制が行う挑発行動に、国際社会が協調して圧力をかけ続ける努力が必要だ」と述べた。(東京新聞夕刊9.10)

 12日 −韓国国防省報道官は記者会見で、北朝鮮の6回目の核実験の可能性について、「韓米情報当局は(北朝鮮東北部の)豊渓里地域でいつでも追加の核実験ができる準備が整っていると評価している」と明らかにした。北朝鮮外務省も11日の報道官談話で「核武力の質的・量的強化措置は継続される」とし、核開発を続ける考えを示した。
 韓国国防省報道官は会見で、豊渓里の核実験場には1〜3番の三つの坑道があり、2006年の1回目の核実験は「1番坑道」で、2〜5回は「2番坑道」で実施されたと明らかにした。そのうえで「追加の核実験をするなら、準備ができていると評価される2番坑道の一部や、3番坑道が可能だ」と説明した。(朝日新聞9.13)

 13日 −在韓米軍の関係者によると、米領グアムのアンダーセン米空軍基地を発進したBl戦略爆撃機2機が13日午前、ソウルの南約60キロメートルの位置にある烏山基地上空を低空飛行した。9日に5度目の核実験を実施した北朝鮮の新たな挑発をけん制する狙い。13日には6カ国協議の首席代表を務める米韓高官が追加的な制裁措置など今後の対応を巡って協議。北朝鮮への圧力を強めている。
 Blは超音速・低空で飛行でき、グアムから約2時間で到着できる。飛来したBlは米韓両軍の戦闘機を従えて基地周辺を飛び、高い攻撃能力をアピール。ブルックス在韓米軍司令官は同日、「米国は同盟国を守る強い意志を持つ。本日の作戦やTHAAD配備を含め、必要な措置をとる」と述べた。
 Blは12日に飛来する予定だったが、悪天候を理由に延期。米軍は1月に4度目の核実験の際にはB52戦略爆撃機を韓国に飛来させた。米軍の戦略爆撃機は戦略目標の破壊に使われる。(日本経済新聞夕刊9.13)

 −韓国と北朝鮮は13日、強硬手段をちらつかせながら互いに非難し合った。
 韓国の朴槿恵大統領は閣議で、米韓の軍事協力体制をさらに緊密にすべきだとし「北朝鮮がわが国の領土に向けて核ミサイルを1発でも発射した場合、その瞬間、北朝鮮の政権を終わらせる覚悟で高度な応戦態勢を維持してほしい」と指示した。
 中国が猛反発する在韓米軍へのTHAAD配備についても「(計画を)白紙化すれば韓国の安全保障を何をもって守ることができるのか疑問だ」と決意を示し「国家と国民を守るため、あらゆる措置を徹底的に講じる」とした。
 一方、朝鮮中央通信によると、北朝鮮の朝鮮アジア太平洋平和委員会の報道官は同日談話を発表。「米国とその追従勢力が(金正恩委員長らを狙った)『斬首作戦』に侵入する兆候を少しでもみせれば、核弾頭を搭載したミサイル部隊への即時の発射命令につながる」と米韓を警告した。
 9日に核弾頭の爆発実験を実施したのも「『体制崩壊』と『首脳部除去』を目標にした米国と南朝鮮(韓国)当局の対共和国圧殺策動がこれ以上許されない頂点に達したためだ」と指摘した。(日本経済新聞9.14)

 14日 ※北朝鮮が5回目の核実験を強行した9日に実験の成功を伝える声明を発表した「核兵器研究所」は、朝鮮労働党で兵器開発を統括する軍需工業部(李万建部長)傘下の核弾頭開発機関であることが分かった。北朝鮮消息筋が明らかにした。核兵器研究所の責任者が、国連安全保障理事会の制裁委員会などがすでに制裁対象に指定している人物であることも判明した。核兵器研究所の実体が明らかになったのは初めて。
 核兵器研究所は9日の声明で「新たに研究製作した核弾頭の威力を判定するための核爆発実験を断行した」と発表した。「(実験で)核弾頭が標準化、規格化された」と強調し、核弾頭の量産態勢が整った可能性を示唆していた。
 消息筋によると、核兵器研究所は、軍需工業部傘下の「83研究所」の別名とされ、研究所所長は元寧辺原子力研究センター所長の李弘燮氏。北朝鮮が2度目の核実験を行った直後の2009年7月、国連は李氏を制裁対象に指定。米国や韓国、英国も独自制裁対象に加えた。
 また、李氏は今年5月に開かれた労働党大会で党中央委員に選出されている。関係当局は、最近までの肩書について、核開発政策を担当する原子力総局の「顧問」と把握していた。
 核兵器研究所の存在は今年3月、金正恩朝鮮労働党委員長が核兵器研究部門の科学者、技術者らと会見したことを伝える北朝鮮メディアの報道で初めて明らかにされた。正恩氏は会見の際、「より強力で精密化、小型化された核兵器とその運搬手段(ミサイル)をさらに多くつくる」よう指示していた。
 北朝鮮は1月の核実験の際は、正恩氏が水爆実験を行うよう命令を下し、最終命令書に署名した、と発表した。しかし、今回は、実験に関連する正恩氏の動向を明らかにしていない。核兵器研究所という機関名での声明発表にとどめたのは、正恩氏個人へのさらなる制裁強化を回避する狙い、との見方がある。(東京新聞9.14)

 15日 −米国やロシア、中国など核保有五大国は、9月で採択から20年となった包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効に取り組むとした共同声明を正式に発表した。北朝鮮の5回目の核実験を踏まえ、爆発を伴う核実験の一時停止継続を確認し、他国にも同様の措置を要求した。
 五大国は14、15両日、ワシントンで各国の軍縮担当高官による核拡散防止条約(NPT)に関する会合を開き、15日に別の共同声明も発表。核実験や弾道ミサイル実験を続ける北朝鮮を「強く非難する」とした。(共同)

 18日 ※北朝鮮が今月5日に日本海へ発射した弾道ミサイル3発のうち、2発は軌道と落下水域がほぼ同じだったと、複数の軍事関係筋が明らかにした。中距離弾道ミサイルの命中精度が高まり、同地点へ多数をほぼ同時に発射する能力が脅威になると分析する。機体は韓国軍が当初に発表したノドン(射程1300キロ)ではなく、スカッドER(同1千キロ)の可能性が高くなった。
 軍事関係筋によれば1発目が発射された約30秒後に2発目、その1分後に3発目が発射された。
 1、3発目は北海道奥尻島の西沖約240キロの海域に落下。2発目はその地点から10キロ以内に落ちた。いずれも日本のEEZ内だった。1、3発目は軌道もほぼ同じだった。
 3発目は約1千キロ飛行。この飛距離で3発同時の発射成功は初めてとみられる。多数の同時発射による同地点への攻撃は、ミサイル防衛(MD)を難しくする手段の一つとされる。海上自衛隊が保有するイージス艦の場合、1隻あたり同時に2発までしか弾道ミサイルを迎撃できない場合があるという。
 また、北朝鮮が6日に公開した発射映像に、移動発射台が登場。日韓は、車輪の数やミサイル先端部の形状から、機体はノドンよりやや小型のスカッドERの可能性がきわめて高いと判断したという。これまで発射が確認されていなかったスカッドERであれば日本を射程に収めるミサイルの種類や選択肢が増える。(朝日新聞9.18)

 ※北朝鮮の李容浩外相は15、16日にベネズエラで開かれた非同盟諸国閣僚級会議で演説し、核実験は「敵対勢力の威嚇と制裁に対する対応措置の一環」だとしてあらためて正当化した。朝鮮中央通信が16日に伝えた。
 ラヂオプレスによると朝鮮労働党機関紙の労働新聞(電子版)は17日、5回目の核実験を受けてオバマ米大統領が「新たな制裁を含めた重大な追加措置に取り組む」と表明したのに対して「我々式の自衛的対応措置も連続的にとられることになる」と報じ、新たな挑発の可能性を示唆した。(日本経済新聞9.18)

 20日 −朝鮮中央通信は20日朝、北朝鮮が新型のロケットエンジン燃焼実験に成功したと伝えた。実験の日付は明らかにしていない。金正恩委員長が視察し、「実験の成果に基づき、衛星打ち上げ準備を急ぎ終える」と語ったという。米本土に到達する核搭載型弾道ミサイルの実戦配備を急ぐとみられ、近く長距離弾道ミサイルを発射する見通しが強まった。
 実験は、北朝鮮が2月に長距離ミサイルを打ち上げた平安北道東倉里の基地で行われた。「静止衛星運搬ロケット用大出カエンジン」の燃焼実験を行い、技術的な指標を全て達成したという。エンジンの出力は80トンとした。
 同通信は、北朝鮮が2012年から始めた「国家宇宙開発5カ年計画」に触れ、「計画期間内に静止衛星運搬ロケットを確実に開発完成できる科学技術を担保した」と主張。正恩氏は「様々な用途の衛星を数多く製作し、打ち上げて、我が国を数年以内に静止衛星保有国にすべきだ」と指示したという。(朝日新聞夕刊9.20)

 −日米などの先進7カ国(G7)は20日午後(日本時間21日午前)、外相会合を米ニューヨークで開き、北朝鮮による核・ミサイル開発阻止へ連携を確認した。「さらなる重要な措置を取る」として、国連安全保障理事会での新たな制裁決議を含め厳しい対応で臨む方針を示した。沖縄県・尖閣諸島周辺での中国公船による領海侵入など東シナ海情勢や、中国による南シナ海での軍事拠点化への懸念を共有。これらの成果を踏まえた共同声明を発表した。
 会合には、岸田文雄外相、ケリー米国務長官、英国のジョンソン外相のほかフランス、ドイツ、イタリア、カナダの外相らが出席した。
 岸田氏は外相会合後、記者団に「(北朝鮮対応で)中国やロシアの協力が重要だ。共同声明を活用し働き掛けたい」と記者団に述べた。
 声明は、北朝鮮の核実験と相次ぐ弾道ミサイル発射を「最も強い表現で非難する」と強調し、挑発行為は断固容認しないとの結束を示した。併せて、拉致問題を即時に解決するよう求めた。(共同)

 21日 −北朝鮮への精密攻撃が可能な米軍のBl戦略爆撃機2機が、韓国・ソウル郊外の烏山空軍基地上空を飛行し、うち1機が着陸した。Bl爆撃機は13日にも韓国上空を飛行したが、着陸するのは異例。6回目の核実験と新たな長距離弾道ミサイル発射に向けた準備を進める北朝鮮をけん制する狙いとみられる。Bl爆撃機は現在、米領グアムのアンダーセン空軍基地に配備されている。大量の精密誘導爆弾などの搭載が可能で、有事の際に北朝鮮指導部に致命的な打撃を与えることができる。冷戦時代には核爆弾を搭載していたが、現在は通常戦専用に改修された。(読売新聞9.22)

 22日 −北朝鮮の朝鮮人民軍総参謀部は、韓国の朴槿恵大統領が北朝鮮の体制崩壊も念頭に置いた発言をしていることや、米軍がBl戦略爆撃機を韓国に展開したことを非難する報道官声明を発表した。この中で、米韓が「挑発的言動」を続けるなら「ソウルを灰の山」にし「グアムを地球上から消す」と警告した。朝鮮中央通信が伝えた。
 談話は、北朝鮮の核実験に対して軍事的圧力を強める米韓の最終目標は「わが最高首脳部の除去による政権交代だ」と反発。韓国は「われわれの核攻撃の標的から逃れられない」と威嚇し、米軍がBlを引き続き展開するのであればグアムへの攻撃も辞さない姿勢を示した。
 その上で「激怒したわが軍隊の壊滅的な攻撃を避ける唯一の方法は、われわれの尊厳と安全に触れずに自粛することだ」と強調した。(共同)

 23日 −ラッセル米国務次官補は、ニューヨークで記者会見し、韓国の尹炳世外相が北朝鮮の国連加盟国としての資格に疑問を投げ掛けたことについて「北朝鮮は国連安全保障理事会の決議を拒否し、無視している。そうした疑問を持つのは避けられない」と述べ、理解を示した。
 ラッセル氏は安保理で決議を目指す新たな制裁について「北朝鮮が核開発の資金を得るための違法行為を阻止する方法を見つけたい」と述べた。
 尹氏は22日の国連総会の一般討論演説で「北朝鮮が平和を愛する国連加盟国の資格があるかどうかを真剣に再検討する時が来ている」と述べ北朝鮮の国連追放を検討するよう呼び掛けた。(共同)

 −国連安全保障理事会は23日午前(日本時間同日夜)、包括的核実験禁止条約(CTBT)に関する会合を開催した。あらゆる国に爆発を伴う核実験の自制を求める決議案を賛成14、棄権1で採択した。棄権はエジプト。決議案は米国が主導して作成した。歴史的な被爆地広島への訪問を果たしたオバマ大統領は核廃絶に向けた機運維持につなげたい考え。
 5回目の核実験を強行した北朝鮮をけん制する狙いもあり、ケリー米国務長官は、同核実験について「世界の安定と平和への脅威だ」と述べた。(共同)

 −北朝鮮の李容浩外相は、国連総会の一般討論演説で「米国による核戦争の脅威に対する自衛のため、核戦力を質量ともに増強する政策をとり続ける」と訴えた。核開発を続ける意思を明言。米軍のBl戦略爆撃機の朝鮮半島への飛来には「決して傍観者ではいない」と強調、「米国は想像を超える甚大な結末に直面することになるだろう」と対抗姿勢を鮮明にした。
 李外相は北朝鮮が今月9日に強行した5回目の核実験について「米国を含む敵対者の制裁と脅威への現実的な対抗策」だと力説した。核開発は米国の核の脅威に対する「正当な自衛の政策」と繰り返し主張した。
 演説では米韓合同軍事演習についても「甚だしい挑発行為」と指摘した。「北朝鮮の指導者を“斬首”し“平壌占領”を目的とした徹底的に無礼で攻撃的な核戦争の行為だ」とまくし立てた。演習に対し「必要な自衛の対抗策をとる」と断言。「国家の安全保障と朝鮮半島の平和を守るため核の抑止力に頼るしかない」と核開発を正当化した。
 国連安全保障理事会が3月に決めた北朝鮮に対する追加制裁決議については「米国が国連加盟国に不当な決議を履行するよう強いる道義上の資格はなく、加盟国も不公平で不正な決議を履行する道義上の義務はない」と反発した。(日本経済新聞夕刊9.24)

 26日 −米財務省は、北朝鮮による大量破壊兵器の拡散に関与したとして、中国企業と幹部4人を制裁対象に指定した。司法省も同企業と4人に関し、経済制裁を逃れたなどとして訴追したと発表した。米国内の資産が凍結され、米国人との取引が禁じられる。
 9日の北朝鮮の核実験後、米国による単独制裁は初めて。また北朝鮮核開発をめぐり、中国企業を刑事訴追したのも初めてとみられる。オバマ大統領は19日に行った李克強首相との会談で、北朝鮮の違法活動に対する米中の司法機関の取り組み強化を申し合わせていた。
 今回の制裁は、これまでの対北朝鮮経済制裁で「抜け穴」と指摘されている第三国の企業による取引を封じ込める狙いがある。
 財務省と司法省によると、この企業は北朝鮮との国境都市、遼寧省丹東市に拠点を置く産業用機械・装置の卸売業者「丹東鴻祥実業発展」で、既に制裁を科されている北朝鮮企業の「ダミー企業」として金融取引や貿易を行っていた。
 中国当局は同企業について、北朝鮮との事業を手掛ける「遼寧鴻祥実業集団」の中核会社として、「重大な経済犯罪」に関与した疑いで調査していると発表していた。(時事)

 28日 −北朝鮮への制裁を担当する米国務省のフリード調整官は、国連などによる北朝鮮への制裁に違反したとして、複数の中国企業を含む世界各地の企業を調査していると明らかにした。米上院外交委員会の小委員会で証言した。
 米当局は26日、北朝鮮による核兵器開発に関与し、制裁逃れに加担したとして中国遼寧省丹東市の貿易会社「鴻祥実業発展有限公司」と経営者らを刑事訴追したと発表した。フリード氏は米政府が北朝鮮の制裁逃れに関して第三国の企業を制裁対象にする措置に踏み切ったと説明し、今後もほかの企業に制裁を加える可能性を示唆した。(共同)

 30日 −米ジョンズ・ホプキンス大の北朝鮮問題研究グループ「38ノース」は、北朝鮮東部の咸鏡南道・新浦の港にある造船所(潜水艦基地)の最新の衛星写真を公開し、北朝鮮が新たな潜水艦を建造している可能性があると分析した。
 1〜9月に撮影した写真からは、重機を輸送するトラックや橋形クレーン、多数の作業員の動きを確認。9月24日の写真では、直径約10メートルの円状の物体が、最近整備された工場の屋外で確認された。円状の物体について、建造用の治具か潜水艦の耐圧殻の部品の可能性があると指摘している。
 北朝鮮は8月24日、SLBMの発射実験に成功したが、現在保有するのは浅い所に数日間しかいられない船体の直径が約6メートルの新浦級潜水艦(2000トン)のみ。このため、実戦に最低限必要な二つ以上の発射管と、浮上せずに連続航行できる「AIP(非大気依存推進)」を供えた3000トン級の新型潜水艦の開発を進めているとみられている。
 同グループは今回確認されたものが潜水艦建造の動きだとすれば、新浦級潜水艦より大型になると分析している。(読売新聞夕刊10.1)

 

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