2017年 朝鮮半島核問題の主な動き

3月の主な動き
−※は報道日、表記は報道のまま−

 1日 −中国外務省によると、王毅外相は、北京を訪問している北朝鮮の李吉聖外務次官と会談した。王外相は北朝鮮を含む関係国に対し「問題を取り除き、情勢をコントロールし、朝鮮半島の非核化実現と平和メカニズム構築の目標に向け新たな努力をしてほしい」と自制と非核化への努力を求めた。李次官は「半島情勢について中国側と意思疎通を深めたい」と応じた。
 中国は国連安保理決議に基づき、北朝鮮の主要外貨獲得源である石炭の輸入を2月19日から年末まで停止する措置を実施。北朝鮮側はこれに不満を示しており、会談では制裁をめぐる対応や中国による経済支援について意見交換したとみられる。ただ中国側の発表は制裁などの問題には言及していない。
 発表によれば、王外相は「中朝の伝統的な友好発展が中国の一貫した立場だ。意思疎通を強化し、理解を深め、両国関係の健全で安定的な発展を促進していきたい」と強調。李次官も「中国と共同で努力し、関係をさらに発展させたい」と述べた。日米韓が北朝鮮への圧力強化で一致する中、中朝が友好関係確認で足並みをそろえ、日米韓をけん制した形だ。(時事)

 −米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は、トランプ米政権が2月12日の北朝鮮による弾道ミサイル発射などを受け、対北朝鮮戦略の見直し作業に着手し、北朝鮮の核兵器の脅威を弱めるため、軍事力の行使や体制転換も選択肢として検討していると報じた。戦略見直し作業に関わる複数の関係者の話として伝えた。
 同紙によると、選択肢の中には、北朝鮮が大陸間弾道弾(ICBM)の発射実験を実施しようとした場合に、米軍が北朝鮮に軍事攻撃を行うことも含まれているという。トランプ政権は日本や韓国との協議の中で、北朝鮮に対する軍事オプションの可能性を強調して伝えており、2月10〜11日の安倍首相とトランプ大統領の間での協議でも、米側は複数の場面で「北朝鮮に対処するため、あらゆる選択肢を検討している」と言及したとされる。
 対北戦略の見直しは、2月の弾道ミサイル発射や北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏の殺害事件など北朝鮮を巡る情勢の変化を受け、マクファーランド大統領副補佐官(国家安全保障担当)が約2週間前に関係省庁の安保担当者を招集して会議を開き、北朝鮮戦略について提案を求めた。
 担当者らは2月28日にマクファーランド氏に提案内容をまとめて報告。ホワイトハウスが現在、トランプ大統領への提示に向けて報告内容を精査している。(読売新聞夕刊3.2)

 4日 −米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、オバマ前大統領が約3年前、北朝鮮のミサイル発射試験を妨害するため、サイバー・電子攻撃を強化するよう国防総省に命じていたと報じた。しかし、北朝鮮の核・ミサイル開発に効果的に対抗できる段階にはまだ至っていないという。
 同紙は北朝鮮の核・ミサイル開発について「専門家の多くが考えるよりはるかに強靭(きょうじん)だ」と指摘。トランプ大統領はどう対処するか決断を迫られていると伝えている。
 同紙によると、オバマ氏は2014年初め、従来のミサイル防衛だけでは米本土を守りきれないと判断し、サイバー攻撃拡大を指示。するとすぐに北朝鮮のミサイルが途中で爆発したり、コースをそれたり、空中分解したり、海に墜落したりする事例が相次いだ。
 これを受け、一部の専門家は、米本土に到達する核弾頭搭載可能なICBMの完成を数年遅らせられたと分析した。しかし、北朝鮮がその後、発射を成功させるようになったことから、一時の失敗はミスや北朝鮮内部の不満が原因だったという見方も強い。(時事)

 6日 −政府は6日午前、北朝鮮が同日午前7時34分ごろに弾道ミサイル4発を発射し、うち3発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられると発表した。日本のEEZ内に北朝鮮が発射したミサイルの弾頭部分が落下したのは昨年9月以来で3回目。安倍晋三首相は記者団に「北朝鮮が新たな脅威となったことを明確に示すものだ」と述べた。
 防衛省などによると、ミサイルは北朝鮮西岸の東倉里付近から東方向に4発がほぼ同時刻に発射された。いずれも約1000キロ飛び、秋田県・男鹿半島から西に約300〜350キロの日本海に落下。3発はEEZ内で、残る1発もEEZの近くに落下したとみられる。政府は、移動式発射台が使用されたと推定している。
 菅義偉官房長官は緊急に記者会見し、「国連安全保障理事会決議への明白な違反だ。度重なる挑発行為を断じて容認できない」と語った。船舶などへの被害の報告は受けていないという。
 首相は6日午前の参院予算委員会で「漁船等が操業している可能性もあり、極めて危険な行為だ」と指摘。ミサイルの種類に関し「北朝鮮は新型ミサイルの発射を示唆していた。米国と連携して情報収集・分析にあたっている」と述べた。民進党の福山哲郎氏が早急な対応を促したことを受け、参院予算委は休憩を決定。政府は昼に開催予定だった国家安全保障会議(NSC)を急きょ午前中に開催し、昼にも2回目のNSCを開いて対応を協議した。
 政府は北京の大使館ルートを通じ北朝鮮に厳重に抗議した。菅氏は北朝鮮に対する制裁強化について「国連として更なる厳しい対応をするのは当然だ」と語った。首相は、@情報収集と分析に全力を挙げ、国民に迅速・的確な情報提供を行うA航空機、船舶などの安全確認を徹底B不測の事態に備え万全の態勢を取る−の3点を指示した。
 岸田文雄外相は、安保理決議の完全な履行を中国をはじめとする関係国に求め、安保理での力強いメッセージ発表に向けた働きかけを行う方針を記者団に示した。岸田氏はまた、ティラーソン米国務長官、韓国の尹炳世外相と個別に電話で協議し、さらなる挑発行動の自制や安保理決議の順守を強く求めることで一致。稲田朋美防衛相は「警戒監視に万全を期すよう指示した。ミサイルの種類については分析中だ」と語った。
 北朝鮮が発射した弾道ミサイルは昨年8月に男鹿半島の西約250キロのEEZに1発、9月には北海道・奥尻島の西約200〜250キロのEEZに3発が落下している。(毎日新聞夕刊3.6)

 7日 −北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、在日米軍攻撃を担当する部隊による弾道ミサイル訓練が行われ、4発の同時発射に成功したと報じた。金正恩朝鮮労働党委員長が立ち会ったという。朝鮮労働党機関紙・労働新聞は発射の瞬間をとらえた写真を1面に掲載した。
 在日米軍を標的として想定した訓練は異例。核弾頭部の扱いや迅速な作戦遂行能力を評価することが目的とされ、核攻撃を念頭に置いたミサイル能力を誇示する狙いがある。北朝鮮は6日、北西部から日本海に向け、弾道ミサイル4発を発射。うち3発は日本のEEZ内に落下したと推定されており、これを指すとみられる。
 韓国軍当局者は7日、北朝鮮が発射したミサイルについて「スカッド改良型とみている」と述べた。韓国メディアは射程約1000キロのスカッドER型と伝えた。
 同通信によると、有事の際に「日本に駐屯している米侵略軍基地」を攻撃する任務を負っている戦略軍火星砲兵部隊が参加。金委員長は、同時発射された4発の弾道ミサイルが「まるでアクロバット航空隊の編隊飛行のように飛んでいく」と述べ、ミサイルの精度に満足の意を示したという。
 同通信は「砲兵隊員たちの心は、合同軍事演習を強行し朝鮮半島の平和と安定を壊す者たちに報復する意志であふれた」と伝え、ミサイル発射訓練には米韓合同演習に対抗する狙いがあることを裏付けた。(時事)

 −韓国国防省は、南部の慶尚北道・星州に配備予定の在韓米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の装備の一部が韓国に到着したと明らかにした。北朝鮮の核・ミサイルの脅威が強まるなか、米韓はTHAADの早期運用を目指し、手続きを迅速に進める方針だ。
 一方、韓国の黄教安大統領代行兼首相は7日午前、トランプ米大統領と電話し、北朝鮮による弾道ミサイル発射への対応をめぐり協議した。
 THAAD配備について米太平洋軍のハリス司令官は声明で「昨日の複数のミサイル発射を含め、北朝鮮が続ける挑発行為は、韓国にTHAADを配備する昨年の我々の慎重な決断を強固にするだけだ」と強調。「我々は韓国との同盟の責務を断固として果たし、米国本土や同盟国を防衛する用意がある」と述べた。
 THAADは米軍輸送機でミサイル発射台2台が運ばれ、6日夜に韓国中部の烏山空軍基地に到着。レーダーなども順次運ばれる見通しだ。聯合ニュースは向こう1〜2カ月で装備がすべて準備されるとし、早ければ4月から作戦運用に入ることができるという観測を伝えた。(日本経済新聞夕刊3.7)

 −国連安全保障理事会は、北朝鮮が6日(日本時間)に発射した弾道ミサイルについて「過去の安保理決議に基づく国際的義務への重大な違反だ」とする報道機関向けの声明を発表した。非難声明は「発射を強く非難する」とした上で、「こうした行為は軍拡競争のリスクを高める」と懸念を表明した。「国民が困窮している中で資源をミサイル開発に費やしているのは遺憾だ」とも指摘した。
 昨年採択された、北朝鮮に対する二つの制裁決議で定めた措置などについて、各国が完全に履行するよう求めた。安保理が状況を注視しながら、必要に応じて「更なる重要な措置」を取ることも明記した。
 報道機関向けの声明は安保理の全会一致が原則で、結束した意志を示す狙いがある。安保理は8日、日米韓の要請により緊急会合を開き、北朝鮮に対する対応を協議する。(読売新聞夕刊3.8)

 8日 −中国の王毅外相は、北京市内で記者会見し、「北朝鮮が国際社会の反対を顧みずに国連安保理決議に違反し、頑固に核・ミサイル開発を推進し、最近も4発の弾道ミサイルを発射した」と批判、北朝鮮に対して核・ミサイル開発を一時停止するよう要求した。一方、「北朝鮮への軍事圧力を高め続けている」として、米韓両国にも軍事演習を一時停止するよう提案した。
 王外相はこうした最近の朝鮮半島情勢に関して「新たな緊張が現れている」と懸念を表明。「赤信号をともし、同時にブレーキをかけることが急務だ」と強調し、関係国に「交渉のテーブルに戻る」よう促した。また「朝鮮半島の核問題は一つの手段だけではなく、(制裁に加え)対話を促すことも国連決議を履行することになる」とも述べた。(時事)

 −北朝鮮による弾道ミサイル発射を受け、国連安全保障理事会は、緊急会合を開き、対応を協議した。会合後、米国のヘイリー国連大使は「すべての選択肢について考慮する」と述べる一方、北朝鮮が非核化に向けて何らかの「前向きな行動」を取らない限り、対話は検討しないと明言。当面は圧力を強める姿勢を鮮明にした。
 会合では、中国が提案した、米韓軍事演習の停止と引き換えに北朝鮮に核開発計画を放棄させることや、THAADの在韓米軍への配備も議題に上った。会合後、中国の劉結一国連大使は「交渉で政治解決すべきだ」と、改めて米国に北朝鮮との対話を求めた。
 一方で、ヘイリー大使はTHAAD配備を停止することはできないと強調。さらに、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を「まともな思考ができない人間」と断言し、国連安保理の報道声明や制裁に対する北朝鮮の対応を「信じられないほど無責任で傲慢」と批判した。
 中国は、米韓軍事演習やTHAAD配備が朝鮮半島の緊張を高め、北朝鮮を核・ミサイル開発に走らせていると主張している。
 米メディアは、トランプ政権が対北朝鮮政策を見直しいると報じている。(毎日新聞夕刊3.9)

 9日 −菅義偉官房長官は9日午前の記者会見で、北朝鮮が6日に同時発射した弾道ミサイル4発のうち1発について「能登半島から北に200キロメートルの日本海上に落下したと推定されている」と述べた。
 ミサイル発射で最も日本本土に近かった可能性については明言を避けたが「極めて近いということも事実だ」と語った。
 日本政府は6日のミサイル発射直後、弾道ミサイル4発はいずれも約1千キロメートル飛行し、秋田県男鹿半島西方の約300〜350キロメートルの日本海上に落下したと発表していた。菅氏は「北朝鮮の弾道ミサイルが日本のEEZに落下したのは昨年8、9月に続いて3回目で技術的信頼性が向上している」と指摘した。
 菅氏はミサイルの種類に関し、スカッドの射程を伸ばした中距離弾道ミサイル「スカッドER」と推定されると指摘。4発のミサイルが南北に80キロメートル程度の等間隔で落下したとの一部報道については「個々の具体的な情報の内容はわが国の情報収集能力が明らかになりかねないために差し控えたい」と述べるにとどめた。(日本経済新聞夕刊3.9)

 15日 −国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会は15日、北朝鮮の2月の石炭輸出量が123万トンだったと公表した。1月分の144万トンと合わせて、昨年採択した対北朝鮮制裁決議で定めた年間の輸出量上限の約36%に当たる。取引額は明らかにしていない。
 安保理は昨年11月、北朝鮮産の石炭輸出を年間で総額約4億ドル(約450億円)または総量約750万トンまでに抑える制裁決議を採択した。(共同)

 16日 −米国務省のトナー報道官代行は電話記者会見で、北朝鮮の核問題を巡る6か国協議について、「成果がなかった仕組みだという見方がある」と述べ、今後の開催の意義に懐疑的な見方を示した。
 ティラーソン国務長官が岸田外相との共同記者会見で米国の北朝鮮政策について、「20年間の努力は失敗に終わった」と否定的に評価したことを踏まえた発言。トランプ米政権が対北政策で、「対話」よりも「圧力」を重視する方向に傾いていることを示すものといえそうだ。
 6か国協議は北朝鮮に日米韓中露が核放棄などを迫る枠組み。2003年8月に始まったが、北朝鮮に譲歩を繰り返し、結果的に核開発の進展を止められなかったとの批判がある。08年12月を最後に決裂し、再開のメドは立たない状況が続いている。(読売新聞夕刊3.17)

 17日 −ティラーソン米国務長官は、就任後初めて訪問した韓国で大統領代行を務める黄教安首相らと会談した後、尹炳世外相と共に記者会見した。ティラーソン氏はオバマ前政権の対北朝鮮政策について「明確に述べる。『戦略的忍耐』政策は終わった」と述べ、軍事行動を含め「あらゆる選択肢を検討中だ」と強調した。
 「戦略的忍耐」は、北朝鮮が先に非核化に向けた措置を取らない限り、米国は対話に応じないとする前政権の政策。だが、金正恩政権はオバマ時代に4回も核実験を実施し、核兵器の大幅な性能向上を許す結果となっていた。
 一方、中国が反発する在韓米軍への最新鋭迎撃システムTHAAD配備について、ティラーソン氏は「反対は認識している」とした上で、「(韓国への)経済的報復は不適切で、問題だ。自制を求める」と要求。THAAD配備は韓国の自衛が目的であると説明した。
 親友の国政介入事件により、韓国では朴槿恵前大統領が失職。外交の司令塔が不在となる中、ティラーソン氏は会見で、5月にも選ばれる次期韓国大統領とも協力を継続する考えを示し、「米韓同盟は朝鮮半島の平和と安全保障の基軸だ」と強調した。尹氏も「米韓は緊密に対応していく」と応じた。
 さらに、核実験や弾道ミサイル発射などを繰り返す北朝鮮に対し、ティラーソン氏は「挑発行為をエスカレートさせた場合、適切な対応を取る」と警告し、軍事行動が含まれることを示唆。中国には北朝鮮への圧力強化を求めた。
 同氏は17日、北朝鮮との軍事境界線に接する非武装地帯(DMZ)を訪問。夕方に黄氏や尹・氏と会談した。18日午前に最後の訪問先となる中国に向かう。(時事)

 18日 −ティラーソン米国務長官は、就任後初めて中国を訪問し、王毅外相と北京で会談。共同記者会見で、核開発や弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮に「政策転換」を迫るために協力していくことで一致した、と明らかにした。
 共同会見で王氏は「北朝鮮の問題を平和的に解決するには外交的手段を使う必要がある」と主張。中国は国連決議に基づいて2月中旬に北朝鮮からの石炭輸入を停止したが、制裁と同時に関係国に対話のテーブルに着くよう求め、軍事力行使を排除しないとするトランプ政権にくぎを刺した。
 新華社通信によると、米軍が韓国に配備するTHAADが自国の安全保障に影響を与えるとして、王氏はあらためて反対の立場を伝えた。
 一方、ティラーソン氏は「朝鮮半島の緊張は危険なレベルにまで達している」との認識を表明。「北朝鮮が正しい道を選択するよう両国が決意を新たにした」と述べた。(東京新聞3.19)

 19日 −北朝鮮の朝鮮中央通信は、新たに開発された高出力ロケットエンジンの地上燃焼実験が北西部東倉皇の「西海衛星発射場」で行われ、「成功した」と報じた。18日早朝に実施されたもようで、金正恩朝鮮労働党委員長が立ち会った。
 軍事技術の研究を担当する国防科学院が開発したエンジンで、従来のものより燃料効率が高いという。燃焼実験を公表することでミサイル能力の向上を誇示し、米韓合同軍事演習やトランプ米政権の圧力強化をけん制する狙いがあるとみられる。
 実験はエンジンの全般的な性能を確認するのが目的で「全ての系統の技術指標が予想値に正確に達し、安定的に維持された」という。
 金氏は実験結果に満足の意を示し「今日の勝利がどのような意義を持つのか、全世界が間もなく目撃することになるだろう」と述べ、新型エンジンによる将来的なミサイル発射の可能性を示唆した。
 また「宇宙開発分野でも世界的水準の衛星運搬能力に肩を並べられる土台ができた」と述べ、衛星打ち上げロケットにもエンジンを活用する考えを示した。
 18日は、ティラーソン米国務長官が日韓に続き中国を訪問した。北朝鮮はこの日に合わせた燃焼実験で、包囲網を構築する米国に対し、核・ミサイル開発を続ける姿勢を明確にしようとした可能性もある。
 19日付の朝鮮労働党機関紙、労働新聞は、実験用施設に垂直に設置されたエンジンから炎が噴出する燃焼実験の写真を掲載した。(共同)

 20日 −韓国国防省副報道官は記者会見で、北朝鮮が19日に地上燃焼実験を公開した新開発エンジンについて「性能で意味のある進展があったと評価している」と語った。メインエンジン1基に補助エンジン4基を連結し、推進力を向上させたものだと分析していることも明らかにした。
 エンジンの推進力がどれくらいだったかなど性能の詳細について副報道官は「追加分析が必要」とした。
 今回のエンジンは、北朝鮮が昨年9月に公開した「80トン」エンジンを更に改良したものだとみられている。韓国科学技術政策研究院の李春根専任研究員は本紙に対し、「補助エンジンは姿勢制御の向上が目的。燃料効率も良くなり、推進力も強まった」との見方を示した。このエンジンが完成した場合、「1トンの弾頭を宇宙に運ぶ能力がある」(李氏)という。
 北朝鮮が昨年2月に発射実験を行った長距離弾道ミサイルの弾道搭載能力は約200キロ・グラムにとどまるとされるが、弾道搭載能力が1トンになればミサイルの脅威はさらに増す。20日付の韓国紙「東亜日報」は、実験の成功でエンジンの小型化が進めば、米首都ワシントンに確実に届くことを目指したICBMを、移動式発射台に搭載することも容易になると報じた。(読売新聞3.21)

 −「国際銀行間通信協会」(SWIFT、本部ベルギー)は、北朝鮮の全銀行に対し、決済に必要なシステムの提供停止を決めたと共同通信に明らかにした。ベルギー政府から国連制裁の履行徹底を求められ、対応した。北朝鮮は外国金融機関との決済が困難となり、国際金融システムから事実上、排除される。
 SWIFTには各国の主要な金融機関が参加。国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会は2月、専門家パネルの報告で北朝鮮の銀行7行がSWIFTを利用し、外国と取引を続けていると指摘していた。SWIFTの担当者は既に国連制裁対象の3行は今月上旬にシステム接続を不許可とし、残り4行も停止を決定したと説明した。(共同)

 21日 −国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は、21日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで、北朝鮮が2010年以降、ウラン濃縮施設の規模を倍増させたと指摘した。
 イラン核問題で米欧などが取った外交手段によって、北朝鮮に核開発を放棄させられる可能性については懐疑的な見方を示した。
 北朝鮮は10年に米国の核物理学者ヘッカー氏に、寧辺にあるウラン濃縮施設を公開。天野氏は、今月20日に応じたインタビューで、IAEAが衛星画像などの分析を続けてきた結果、寧辺の施設が2倍の規模に拡大したとみていると語った。
 北朝鮮の核開発は着実に進んでいるとし、近い将来の外交的解決の見通しについて「楽観できる理由がない」と述べた。(共同)

 22日 −韓国国防省当局者によると、北朝鮮は22日午前、日本海に面した東部・元山の飛行場付近からミサイル1発を発射したが、失敗したとみられる。米韓軍当局はミサイルの種類や失敗の原因などについて分析を進めている。
 菅義偉官房長官は22日午前の記者会見で「(日本の)安全保障に直接影響を与える事態は生じていない」と述べた。ロイター通信によると、米太平洋軍スポークスマンは「ミサイルは発射から数秒で爆発したようだ」と語った。(時事)

 −米国防総省のデービス報道部長は、北朝鮮が日本時間22日午前に発射したミサイルについて、ICBMではなかったとの見方を示した。発射から数秒内に爆発し「壊滅的な失敗だった」と記者団に述べた。
 米軍が分析を続けているとした上で「ICBMではなかったとみられる。(射程が)より短いものだった」と語った。日本海に向けて発射された可能性も指摘した。(共同)

 23日 −国連安全保障理事会は、北朝鮮による新型ロケットエンジンの地上燃焼実験と弾道ミサイル発射を安保理決議に対する「重大な違反」として強く非難する報道機関向け声明を発表した。安保理決議は北朝鮮による弾道ミサイル発射やミサイル開発に関連する行為を禁止している。
 声明発表には、安保理の統一した意思を国際社会に示す狙いがある。理事国全15カ国の同意が必要で、中ロも内容に同意した。
 北朝鮮は19日、新型の高出力ロケットエンジンの地上燃焼実験に成功したと発表。22日には東部・元山からミサイル1発を発射したが、失敗したとみられている。
 声明は、北朝鮮による一連の弾道ミサイル用エンジン実験とミサイル発射は、北朝鮮の核兵器運搬技術の開発を進め、地域内外の緊張や軍拡競争のリスクを高めると指摘。北朝鮮による不安定化を招く行為の増加や安保理に対する挑発的で反抗的な態度に「深刻な懸念」を示した。
 トランプ米政権の発足以降、安保理が北朝鮮を非難する報道機関向け声明を発表するのは3回目。(時事)

 24日 −米国務省は、イラン・北朝鮮・シリアの大量破壊兵器開発への不拡散法に違反したとして、中国企業など10カ国の30団体・個人を21日に制裁対象に指定したと発表した。米政府機関との取引が禁じられ、支援プログラムなどからも除外される。
 発表によると、中国や北朝鮮、アラブ首長国連邦(UAE)の11企業・個人がイランの弾道ミサイル開発プログラムに関係する物資を搬出大した。残り19の団体・個人についても、不拡散法に違反する行為への関与を確認したという。
 国務省は発表で「米国はイラン、北朝鮮、シリアへの拡散活動に関与した団体・個人に対する制裁指定を継続する」と強調した。
 不拡散法では、ミサイルや核兵器など大量破壊兵器の開発につながる技術・物資をイラン、北朝鮮、シリアとの間で売買した外国人および外国企業に制裁を科すことができる。(時事)

 27日 −米CNNテレビは、北朝鮮が弾道ミサイルに用いるエンジンの実験を24日に行ったと報じた。北朝鮮は、18日にも米本土に届くことを目指したICBM用と見られるエンジンの燃焼実験を行い、「成功した」と主張している。相次ぐ実験でICBM技術の獲得を急ぐとともに、米国への揺さぶりをかける狙いとみられる。
 CNNによると、米国防当局者らは今回のエンジン実験について、過去数週間で3度目の実験だったと分析している。北朝鮮が18日と24日以外にも実験を行ったことになるが、詳細は明らかになっていない。(読売新聞3.29)

 28日 −政府は、日本が北朝鮮に実施している経済制裁のうち、資産凍結の総額は17日時点で449万円とする答弁書を閣議決定した。制裁効果について「北朝鮮の厳しい経済状況を併せて考えた場合、一定の効果を及ぼしている」と説明した。(日本経済新聞3.29)

 29日 −米下院外交委員会は、北朝鮮の核・ミサイル開発や金正男氏殺害事件を受け、国務省にテロ支援国家再指定を求める超党派の法案を可決した。同委は同時に北朝鮮への制裁を強化する法案やICBM開発を非難する決議も可決した。
 テロ支援国家再指定を求める法案は、指定が解除された2008年以降も北朝鮮が外国テロ組織に支援を続けていると指摘。米国へのサイバー攻撃やシリアの原子力施設建設支援などの動きを挙げ「再指定の基準を満たしている」とした。(産経新聞3.31)

 31日 −米財務省は、北朝鮮に違法送金などをしていたとして、中国やロシアなどで金融取引に携わる北朝鮮籍の11人を制裁対象にしたことを発表した。核・ミサイル開発や金正恩政権を支える活動の資金源を断つことを狙う。
 米財務省当局者によると、北朝鮮の核・ミサイルをめぐり、トランプ政権が新たな制裁を科すのは初めて。政権が進めている北朝鮮政策の見直しの一環だという。6日からの米中首脳会談では、北朝鮮問題が主な議題になる。会談を前に北朝鮮に対する強硬姿勢を示す狙いもありそうだ。
 これまで米国の独自制裁は主に、核・ミサイル開発に転用されかねない物質やぜいたく品の取引に関わった企業や個人に科してきた。
 財務省によると、今回対象になった11人には、北朝鮮のクワンソン銀行の中国遼寧省丹東の支店幹部や、朝鮮貿易銀行のモスクワ支店代表が含まれる。違法送金のほか、核兵器や化学兵器に関連する物質の密輸にも関わったという。また鉱物の輸出に関わった北朝鮮企業「ペクソル貿易会社」も新たに対象とした。
 トランプ政権は今後、取引に関わった中国など第三国の企業も制裁対象にすることも検討しているという。北朝鮮を国際金融システムから締め出すことを視野に、圧力を強める考えだ。(朝日新聞夕刊4.1)

 

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