2017年 朝鮮半島核問題の主な動き

4月の主な動き
−※は報道日、表記は報道のまま−

 2日 −トランプ米大統領は2日の英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)電子版のインタビューで「もし中国が北朝鮮問題を解決しなければ我々がする」と単独行動も辞さない考えを示した。そうなる前に北朝鮮に核・ミサイル開発をやめさせるよう中国に対処を促すもので、6、7日の米中首脳会談を控え中国の習近平国家主席に圧力をかけた。
 トランプ氏は、対北朝鮮の単独行動の具体的な内容については言及を避けた。中国については「北朝鮮に大きな影響力を持つ」と指摘。「中国が協力すれば中国にとって非常によいことだが、協力しなければ誰にとってもよくない」と述べ中国に行動を求めた。
 中国に北朝鮮問題への対処を促すには「通商が動機になる」との見方を示した。「中国は為替操作や通貨切り下げのチャンピオンだ」とも述べ中国に対して通商や通貨問題で圧力をかける方針を示唆した。
 6、7日に米南部フロリダ州のトランプ氏の別荘で実施する米中首脳会談は、北朝鮮への対処が主な議題になる。トランプ氏は大統領選で中国に高い関税をかけると警告していたが「今回は関税についてまだ話したくない。おそらく次回の会談になるだろう」と述べた。
 FTによると、マクファーランド大統領副補佐官(国家安全保障担当)は「(4年間の)トランプ政権第1期の終わりまでに北朝鮮の核・ミサイルが米に命中する可能性が実際にある」と語った。
 ロイター通信によると、米国家安全保障会議(NSC)は北朝鮮の核・ミサイル開発を抑制する選択肢の提言をまとめた。選択肢には軍事行動も含まれているが、追加制裁や中国への圧力を優先する内容だという。(日本経済新聞夕刊4.3)

 3日 −米下院本会議(定数435)は、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮を米独自の金融制裁の対象とする「テロ支援国家」に再指定するよう国務省に求める超党派の法案を賛成多数で可決した。上院でも審議され、対北朝鮮で圧力強化を目指すトランプ政権の判断を後押しする。
 本会議では北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発を非難する決議案も賛成多数で可決。中国に北朝鮮への影響力行使を求める内容が含まれている。6日からの米中首脳会談を控え、中国企業への制裁発動を交渉カードに揺さぶりを仕掛けるとの観測も広がっている。
 法案の採決結果は賛成394、反対1。非難決議案は賛成398、反対3。いずれも共和党議員が反対した。(共同)

 4日 −宇宙空間での作戦を担当する米戦略軍のハイテン司令官は、米上院軍事委員会の公聴会に出席し、北朝鮮が2月12日に発射した新型弾道ミサイル「北極星2型」について「我々にとって非常に挑戦的な技術だ」と警戒感を示した。米韓両軍は、5日に発射された中距離弾道ミサイルも「北極星2型」と見ている。
 ハイテン司令官は、「北極星2型」が短時間で装着が可能な固体燃料を使い、捕捉が難しい移動式発射台からの発射も組み合わせた新技術だったと指摘。北朝鮮が実験と失敗を短期間で繰り返すことで弾道ミサイル技術を進展させていると分析した。
 北朝鮮の核ミサイル開発阻止に向け、「大統領が必要と考えるなら、いつでも軍事オプションを用意する」と述べる一方、「戦略的に見て中国が関与しない解決方法はあり得ない」と指摘し、中国の影響力行使は不可欠との認識を示した。(読売新聞4.6)

 5日 −北朝鮮は5日午前6時42分ごろ、東部の咸鏡南道・新浦付近から日本海に向かって弾道ミサイル1発を発射した。韓国軍合同参謀本部が明らかにした。6日から始まる米中首脳会談を前にミサイル能力を誇示する狙いがあるとみられる。弾道ミサイル発射は国連安全保障理事会決議に違反することから、日米韓は一斉に非難した。
 韓国軍合同参謀本部によると、発射されたのは中長距離弾道ミサイル「北極星2」(KN−15)とみられる。飛距離は約60キロ、最高高度は約189キロだったという。米太平洋軍司令部当局者によると、ミサイルは発射から約9分後に日本海に落下したという。
 北極星2は、2月12日にも北西部の平安北道・亀城付近から発射されている。この際は高度約550キロまで上がって約500キロ飛行し、日本海に落下した。
 日米韓は北極星2について、従来の液体燃料ではなく固体燃料を使った新型の弾道ミサイルとみて分析を続けていた。固体燃料は発射前に機体に注入する作業が省略できるため、事前に兆候をつかむのが困難になり、日米韓にとっていっそう脅威になる。
 今回は前回と異なり、東側から発射され、飛距離も短かった。新たなミサイルの技術を試す狙いだった可能性もある。日米韓は今回の発射が成功したかどうか分析を続けるとともに、さらなる挑発に備えて、警戒を強めている。(朝日新聞夕刊4.5)

 −北朝鮮が日本時間5日に発射した弾道ミサイルについて、米軍は当初推定した新型中距離「KN−15」(北朝鮮名「北極星2」)ではなく、中距離「スカッドER」だったと分析を修正した。米国防総省当局者が5日、明らかにした。発射は「失敗だった」とみている。
 米太平洋軍はミサイルが約9分飛行したとみていたが、国防総省当局者は発射から間もなく制御不能に陥り、飛行したのは「1分程度だった」と説明。KN−15は固体燃料エンジンが特徴だが、5日のミサイルは液体燃料を使っていたという。分析修正の理由や根拠については言及を避けた。
 スカッドERは韓国を標的とする短距離スカッドを改良したミサイル。射程は西日本を収める千キロとされる。(共同)

 6日 −国連安全保障理事会は、北朝鮮による5日の弾道ミサイル発射を「強く非難する」とする報道声明を発表した。北朝鮮の挑発行為に「最大の懸念を表明する」とし、従来の「深刻な懸念」から表現を強めた。
 繰り返されるミサイル発射などの挑発行為を即座にやめるよう求めた。
 声明では、ミサイル発射について「安保理決議に基づく北朝鮮の国際的な義務への重大な違反だ」と明記。
 従来は「ますます国際情勢を不安定化させる行動」としていたところを「大いに」と表現を改めた。北朝鮮が挑発行為を続けた場合は「さらなる重大な措置をとる」とし、制裁強化を含む対応をにおわせた。
 今回、安保理は緊急会合や記者会見は開かず、報道声明のみを発表した。安保理の報道声明は法的拘束力を持たないが、理事国すべての賛同が必要で、国際社会の結束した意思を示す。(日本経済新聞夕刊4.7)

 7日 −政府は午前の閣議で、日本が独自に実施している対北朝鮮制裁のうち、今月13日に期限が切れる輸出入全面禁止と船舶入港禁止の二つの措置について、2年間延長することを決定した。北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射など挑発をエスカレートさせていることや、日本人拉致問題に進展がないことを踏まえ、圧力をかけ続ける必要があると判断した。
 岸田文雄外相は閣議後の記者会見で「これらの(制裁)措置の実施を徹底するとともに、『対話と圧力、行動対行動』の原則の下、拉致・核・ミサイルといった諸懸案の包括的な解決に向けて全力を尽くしていきたい」と強調した。
 政府は2006年から独自制裁を実施し、内容を適宜強化しながら繰り返し延長。輸出入と入港の禁止措置は15年4月に2年間延長していた。入港禁止対象には、北朝鮮の船舶だけでなく、北朝鮮に寄港した全ての船舶も含まれる。
 独自制裁にはこのほか、北朝鮮への渡航制限や送金禁止などがあり、政府は継続して実施する。
 昨年12月には資産凍結対象に中国企業・個人を新たに追加したほか、再入国を制限する北朝鮮関係者の対象も拡大した。(時事)

 −米南部フロリダ州で開かれていた米中首脳会談は7日午後、ワーキングランチで2日間の日程を終えた。トランプ大統領は焦点の北朝鮮問題について、習近平国家主席に取り組み強化を促す一方、中国が有効な手を打てない場合は米国が単独で行動する用意があると伝えた。
 シリア攻撃後に改めて単独行動に言及することで、中国や北朝鮮を圧迫する狙いがあるとみられる。
 また、両首脳は貿易不均衡の是正に向けた「100日計画」の実施で合意したほか、トランプ氏が中国側の招待を受け入れ、年内に訪中することでも一致した。さらに、両国は@外交・安全保障A経済B法執行・サイバーセキュリティーC社会・文化──の4分野による包括対話の設置を決め、@Aは両国の閣僚らが7日に初会合を開いた。
 会談後に記者会見したティラーソン米国務長官によると、両首脳は北朝鮮問題を「幅広く論議した」という。トランプ氏は、北朝鮮の核能力向上が著しく、解決を急ぐ必要があると指摘した上で「中国が取りうる行動があれば歓迎する」との考えを伝えた。さらにトランプ氏は、北朝鮮と中国が特殊な関係にあることに理解を示し、米国自身が単独でも行動する用意があると伝えた。
 両首脳は、朝鮮半島の非核化と両国の連携強化では一致したものの、北朝鮮に対する圧力を中国がどう強化するか具体案の策定には至らなかった。ただティラーソン氏は「習主席はこの問題が非常に深刻な段階に達しているという見解を共有したと思う」と述べた。(毎日新聞夕刊4.8)

 −米NBCテレビは、NSCが北朝鮮政策見直しの中で検討している北朝鮮の体制転換に関し、金正恩朝鮮労働党委員長の殺害が選択肢として挙がっていると伝えた。在韓米軍への戦術核兵器の再配備とともに、すでにトランプ米大統領に報告されたという。複数の情報機関や軍の高官が明らかにした。
 NSCはトランプ氏の指示を受けて「あらゆる選択肢」を対象にした政策見直しを実施。北朝鮮指導部を排除する計画は「斬首作戦」と呼ばれ、金委員長のほか核・ミサイル開発計画に責任を持つ高官の殺害が検討されているという。
 戦術核の再配備先に関し、NBCはソウル南方の米空軍烏山基地とみられると報じた。
 米国はジョージ・ブッシュ(父)政権時代の1991年に韓国に配備していた戦術核を撤去。トランプ氏は6、7両日に中国の習近平国家主席と行った首脳会談で「朝鮮半島の非核化」を確認したが、NSCのトランプ氏への報告は会談前になされた。
 このほか、米韓の特殊部隊を北朝鮮に潜入させ、重要インフラを破壊する秘密工作も検討中という。(産経新聞4.9)

 8日 −北朝鮮外務省の報道官は、米軍のシリア攻撃について談話を発表し、「主権国家に対する明白な侵略行為で、絶対に容認することはできない」と非難した。朝鮮中央通信が伝えた。
 報道官は「力には力で対処しなければならず、核戦力を強化してきたわれわれの選択が正しかったことを実証している」と述べ、核・ミサイル開発を正当化。「自衛的国防力」をさらに強化していくと予告した。
 また、「一部では、米国のシリアへの攻撃がわれわれに対する『警告』の性格を持つと騒いでいるが、それに驚くわれわれではない」と強調。「核戦力を中心とするわれわれの強力な軍事力は、米国の侵略策動に対抗し、国の自主権と民族の生存権を守る『正義の宝剣』となっている」と述べ、強硬な政策を取るトランプ米政権に力で対抗していく姿勢を明確にした。(時事)

 10日 ※米原子力空母カールビンソンが寄港先のシンガポールから予定を変更して、朝鮮半島近海に向かうことになった。9日までに米太平洋軍のハリス司令官が派遣を命じた。軍事的挑発を繰り返す北朝鮮を強く牽制(けんせい)する狙いがある。米ホワイトハウスのマクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)は同日、「(トランプ大統領から)あらゆる選択肢を示すよう指示されている」と述べた。
 米海軍によると、空母カールビンソンのほか、空母航空団や誘導ミサイル駆逐艦などが8日、豪州に向かう予定を変更し、朝鮮半島近海に向けて航行。米西海岸のサンディェゴ基地からも、誘導ミサイル駆逐艦2隻の水上戦闘群が西太平洋に向けて航行しており、合流するとみられる。
 米国防総省は9日、カールビンソン派遣について「朝鮮半島近海で物理的プレゼンスを示すためだ」と明言。米国の外交・安保政策を仕切るマクマスター大統領補佐官は9日、米FOXニュースのインタビューで、「大統領から、米国民や地域の同盟国、友好国に対する脅威を除去するため、あらゆる選択肢を示すよう指示されている」と述べた。
 ティラーソン米国務長官も同日の米ABCニュースで、米フロリダ州での米車首脳会談で北朝鮮問題について「両首脳間で幅広い選択肢について論議した」と強調。シリアへの巡航ミサイル攻撃に触れながら、「どのような国でも国際規律や合意に違反し、他国に脅威を与えれば、ある時点で対抗措置がとられる」と述べた。(朝日新聞夕刊4.10)

 −米海軍が原子力空母カール・ビンソンを朝鮮半島近海に派遣したことに対し、北朝鮮の外務省報道官は、「われわれを刺激する相手に対しては超強硬路線で立ち向かい、強力な力で自らを守り、進むべき道を進む」と強く反発した。朝鮮中央通信が伝えた。
 また報道官は、「トランプ米政権が『力による平和』を叫び、朝鮮半島一帯に戦略打撃手段を次々と投入しているが、われわれは眉一つ動かさない」と強調したうえで、「自らの横暴な行為がもたらす破局的結果について、全面的に責任を負うのは米国だ」と主張した。(毎日新聞夕刊4.11)

 12日 ※トランプ米大統領は12日に放送予定の米FOXテレビとのインタビューで、核ミサイル開発を強行する北朝鮮の挑発行為に対応するため、米空母「カールビンソン」を朝鮮半島近海に派遣したことについて、「我々は大船団を送っており、非常に強力だ」と述べた。軍事力を誇示し、北朝鮮をけん制したものだ。
 トランプ氏は「我々には潜水艦もある。空母よりもはるかに強力だ」と述べ、朝鮮半島近海に潜水艦部隊を展開することも示唆した。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長については「彼のことは知らないが、間違ったことをしている」と批判した。
 米ホワイトハウスのスパイサー報道官も11日の定例記者会見で、北朝鮮への対応について「大統領は先週のシリア(攻撃)で示したように、行動する気になれば、断固かつバランスのとれた行動をとる」と指摘し、軍事力行使も排除しないことを示唆した。(読売新聞夕刊4.12)

 13日 −中国税関総署が13日発表した貿易統計によると、今年1〜3月に中国が北朝鮮から輸入した石炭は計267万8000トンで、前年同期比51.6%減となった。国連安保理の対北朝鮮制裁決議を受け、中国は2月19日以降、年内の石炭の輸入を停止している。
 北朝鮮にとって石炭は最大の外貨収入源で、中国が唯一の輸出相手先。決議は北朝鮮の石炭輸出に上限を設定しており、中国は2月にこの上限に達したとして、輸入停止措置を取った。(時事)

 −米NBCテレビは、複数の米情報機関高官の話として、北朝鮮が6回目の核実験を実行するとの確証を得た時点で、米軍が通常兵器による先制攻撃を行う準備を整えていると報じた。米政府高官は、北朝鮮が15日にも核実験を行う恐れがあるとみて警戒を強めている。
 NBCによると、米軍は巡航ミサイルを搭載した駆逐艦2隻を朝鮮半島の周辺海域に展開し、うち1隻は北朝鮮の核実験場から約480キロの海上にいる。グアムにも重爆撃機を配置し、いつでも北朝鮮を攻撃できる態勢にあるという。
 米国防総省は同報道に関し、「コメントしない。司令官は有事に備えてあらゆる手段を検討している」と述べるにとどまった。
 一方、トランプ米大統領は13日、ホワイトハウスで記者団に対し、「北朝鮮は問題だ。問題は処理される」と述べた上で、中国の習近平国家主席が事態の打開に向けて「懸命に頑張っている」と指摘し、中国が北朝鮮による核実験やミサイル発射の阻止に向け影響力を行使することを確信しているとの姿勢を示した。
 また、中央情報局(CIA)のポンペオ長官は13日、ワシントン市内で講演し、「(中国の取り組みを)頼りにしている」と強調。さらに、北朝鮮が核弾頭を搭載したミサイルを米本土に到達させる技術の獲得にこれまで以上に近づいており、このことが「北朝鮮の動きを阻止するための米国の選択肢を狭めると同時に、北朝鮮の指導者が間違った決断を下す可能性を高めている」と警告した。
 マティス米国防長官も13日、記者団に「肝心なのは北朝鮮が態度を変えなくてはならないことだ」とし、核実験やミサイル発射などの挑発行為を自制するよう要求。国際社会も北朝鮮の姿勢転換が不可欠であるとの認識で一致していると強調した。(産経新聞4.15)

 14日 −北朝鮮の韓成烈外務次官は、平壌でAP通信のインタビューに応じ、6回目の核実験について、最高指導部が適切と判断した時期に、いつでも実施すると述べた。原子力空母カール・ビンソンを朝鮮半島周辺に向かわせるなどして北朝鮮への圧力を強めるトランプ米政権をけん制した。
 韓氏は、米国の先制攻撃の可能性に対し「手をこまねいてはいない」と強調。トランプ大統領がツイッターで北朝鮮に対し「攻撃的」な書き込みをしているとして「トラブルを起こしている」と批判した。
 また現在の朝鮮半島情勢について「悪循環」に陥っていると指摘した。(共同)

 −複数の米メディアは、トランプ米政権が対北朝鮮政策で金正恩委員長の体制転換は求めない方針を固めたと伝えた。2カ月にわたる政策の見直しを終えた結果で、北朝鮮に「最大限の圧力と関与」をかけながら核・ミサイル開発の断念を迫ろうとしている。
 NSCは今月、こうした方針を確認した。米紙ワシントン・ポストは14日、新政策は「経済制裁や外交手段」を通じて圧力をかけ、北朝鮮を核放棄の交渉に復帰させるものだと伝えた。
 米政府高官は政権の目標が核実験やその他の違法な行為の凍結・停止だけにとどまらず、「非核化」だと説明。AP通信は米政府高官の話として、圧力強化に際しては北朝鮮の後ろ盾である中国の協力に重点を置いたと説明した。
 これまでトランプ政権は対北朝鮮政策の見直しに際して「体制転換」も検討していると取り沙汰されてきた。結果的にそれを見送ったことで、北朝鮮にシグナルを送ったとの見方もある。トランプ政権は軍事力行使を排除しない姿勢を示しているが、今回の新政策の中でどう位置づけられているのかは明確になっていない。(日本経済新聞夕刊4.15)

 15日 −北朝鮮は、平壌の金日成広場で、故金日成主席生誕105周年を祝賀する軍事パレードを実施し、米本土を狙うICBMと推定される新型ミサイルを初めて公開した。トランプ米政権の圧迫により朝鮮半島情勢の緊張が高まるなか、北朝鮮としてはミサイルによる報復攻撃の能力を誇示して米国を威嚇するとともに、国威発揚につなげる狙いがあるとみられる。
 金正恩朝鮮労働党委員長が観閲する中、パレードでは潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「KNll」(北朝鮮名「北極星1」)や、陸上配備型に改良した新型中距離弾道ミサイル「KN15」(同「北極星2」)などが登場。続いて、大型弾道ミサイルの発射管とみられるものを搭載した片側7輪と片側8輪の2種類の車両が初めて公開された。発射管の中に実際にミサイルが入っていたかどうかは不明だが、大きさからは米本土を標的に開発しているICBM用とみられる。
 開発中のICBM「KNO8」や「KN14」とは異なるタイプとみられ、新たなICBM開発を進めている可能性がある。
 大規模軍事パレードは朝鮮労働党創建70年を記念した2015年10月以来。崔龍海副委員長が演説し、「米国が挑発を仕掛けてくれば、即時に壊滅的攻撃を加え、全面戦争には全面戦争で、核戦争には核攻撃戦で対応する」と威嚇した。(毎日新聞4.16)

 16日 −北朝鮮は16日午前6時21分、東岸の咸鏡南道新浦付近から弾道ミサイル1発を発射した。米韓両軍が明らかにした。ミサイルは発射直後に爆発。発射は失敗したとみられる。米国は原子力空母カールビンソンを朝鮮半島近海に向かわせており、ペンス米副大統領も16日に韓国に到着。北朝鮮はこれに合わせて発射し、トランプ米政権を牽制する狙いだったとみられる。
 米ホワイトハウス当局者は16日、北朝鮮が発射したのは「中距離弾道ミサイル」だったと明らかにした。今月5日に日本海に向けて弾道ミサイルを撃ったのと同じ海軍基地から発射され、4〜5秒後に爆発したという。
 このホワイトハウス当局者は、今回の発射が失敗に終わったことから、「米国として国力を費やす必要はない」として、軍事行動などを取る考えがないことを強調した。韓国へ移動中の米副大統領機「エアフォース・ツー」内で記者団に語った。(朝日新聞4.17)

 17日 −訪韓中のペンス米副大統領は17日午前、北朝鮮との軍事境界線に接する非武装地帯(DMZ)を視察した。同行記者団によると、副大統領は板門店の韓国側施設「自由の家」で北朝鮮問題について、平和的な手段による解決を目指す考えを強調しながらも、「(オバマ前政権の)戦略的忍耐の時代は終わった」と改めて宣言、「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」と警告した。また、「中国が一層の役割を果たすよう期待している」と述べた。(時事)

 −訪韓中のペンス米副大統領は17日午後、北朝鮮に対して核・ミサイル開発の放棄や近隣国への敵対行動の中止などを求め、「(トランプ)大統領の決意やこの地域の米軍の力を試すようなことはしない方がよい」と警告した。ソウルで韓国の黄教安首相(大統領権限代行)と会談後、共同記者発表の席で述べた。
 両氏は、北朝鮮の挑発的な行動には断固たる対応をとることで一致した。
 ペンス氏は共同発表で、北朝鮮への対応について「すべての選択肢はテーブルの上にある」とし、軍事力行使も辞さないとする米政権の考えを表明。米軍が最近、シリアのアサド政権の空軍施設やアフガニスタンにある過激派組織「イスラム国」(IS)の拠点を攻撃したことを挙げ、「全世界は(トランプ)新大統領の力と決意を目撃した」と述べた。「通常兵器や核兵器などいかなる攻撃にも圧倒的、効果的に対処する」とも語った。
 また、核・ミサイル開発をやめない北朝鮮に対してオバマ前政権が採った「戦略的忍耐」の政策は「終わった」と明言した。(朝日新聞4.15)

 −スパイサー米大統領報道官は記者会見で、北朝鮮の一連の挑発行動に対して「トランプ大統領は『レッドライン(越えてはならない一線)』を引かない」と述べ、軍事行動などに踏み切る基準を明確にしない立場を示した。その上で「適切な時に断固たる行動を取る」と改めて強調した。
 トランプ氏は、シリアのアサド政権が化学兵器を使用したと断定。「一線を越えた」と非難し、シリアを攻撃した経緯がある。一方でトランプ政権は現在、中国による対北朝鮮圧力の効果を注視しており、北朝鮮が核実験をすれば軍事対応するといった「レッドライン」を設けないことで、行動の選択肢に幅を持たせる意味合いがあるとみられる。
 スパイサー氏は「中国は北朝鮮問題で積極的な役割を演じている。彼らは政治的にも経済的にも圧力をかけ続けることができる」と指摘。北朝鮮の核保有は誰の利益にもならないという一致があるとして、中国と協力していくと明言した。
 ソーントン国務次官補代行も17日の電話記者会見で、「中国から多くの前向きなシグナルを得ている」と述べた。また、経済制裁などが効果を上げるには時間がかかるとの見方を示した。
 北朝鮮との対話の可能性については「北朝鮮が対話に真剣であることを示す具体的なシグナルに焦点を置いている」とした上で、そうしたシグナルはないと語った。(時事)

 18日 −安倍晋三首相は、ペンス米副大統領と公邸で会談し、核・ミサイル開発を進める北朝鮮に対し、日米で圧力を強める方針を確認した。首相は冒頭で「対話のための対話は意味がない」と指摘。ペンス氏は「平和は力によってのみ達成される」と語った上で、日本など同盟国とともに行動する考えを示した。
 会談に同席した萩生田光一官房副長官によると、首相とペンス氏は北朝鮮の挑発行動を阻止するため、中国がさらに大きな役割を果たすよう働き掛けを強めることで一致した。ペンス氏は「中国はこの問題をきちんと理解し、同じ行動をとってもらえると期待している」と話した。
 首相は外交的、平和的な解決を目指すことを前提に「北朝鮮が真剣に対話に応じるように圧力をかけていくことも必要だ」と指摘。軍事力行使を含む「全ての選択肢」を掲げるトランプ政権の姿勢を「評価する」とあらためて表明した。
 ペンス氏は会談後の記者会見で「北朝鮮が核・ミサイルの開発計画を放棄するまで圧力を強化する」と語った。(東京新聞4.19)

 19日 −ティラーソン米国務長官は、国務省で記者会見し、核・ミサイル開発を進める北朝鮮に対し、「テロ支援国家への再指定を含め、あらゆる圧力を検討している」と述べた。トランプ政権の閣僚が、米独自の金融制裁などを可能にするテロ支援国家再指定の可能性に言及したのは初めて。指定の判断は国務省が行う。
 ティラーソン氏は北朝鮮政策について「(オバマ前政権時の)対話路線とは違う立場を取る。全ての選択肢を検討している」と強調した。
 トランプ政権は、金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏がマレーシアで殺害されたことや、ミサイル実験を繰り返す現状を受け、テロ支援国家再指定の検討を開始。米下院も「再指定が相当」とする決議案を可決していた。(東京新聞夕刊4.20)

 20日 −国連安全保障理事会は20日午後(日本時間21日未明)、北朝鮮による16日の弾道ミサイル発射を強く非難し、核実験を行わないよう求める報道機関向けの声明を発表した。前日、声明の表現を巡って対立していた米露が歩み寄った。発表された声明には、北朝鮮が新たな挑発行動をとった場合、追加の制裁措置に踏み切ることを強くにじませる文言も盛り込まれた。
 今年に入って北朝鮮が弾道ミサイルを発射したのは16日が5回目で、安保理は、発射の成否にかかわらず報道機関向けの非難声明を発表しており、声明も今回で5回目となった。
 声明では、安保理としてミサイル発射に「最大の懸念」を表明し、北朝鮮に過去の安保理決議に違反する行為を速やかにやめるよう要求した。
 今回は議長国の米国が声明案の草案を作り、19日に各国に提示。中国は容認したが、草案で「対話を通じた解決」というこれまでの声明にあった表現が削除されていたことにロシアが反発。19日の発表が見送られた経緯があった。
 20日の交渉の結果、ロシアが求めた通り、「対話を通じた解決」との表現が追加された一方、北朝鮮が挑発を続けた場合、「さらなる重大な措置をとる」とした部分に「制裁を含む」との言葉を挿入し、制裁強化を示唆する内容になった。
 国連外交筋によると、米側がロシアの修正要求を受け入れる代わりに、追加制裁をにじませる文言を盛り込み、米露が折り合ったという。報道声明は全会一致が原則で、安保理の結束した意思を世界に示す狙いがある。(読売新聞夕刊4.21)

 21日 −北朝鮮の朝鮮中央通信は21日に配信した論評で「われわれの周辺国」が経済制裁を行い「公開的に脅している」として名指しは避けつつ中国を批判し、「彼らが誰かに踊らされ経済制裁に執着するなら、われわれとの関係に及ぼす破局的結果も覚悟すべきだ」と警告した。
 国連安全保障理事会決議に基づき北朝鮮産石炭の輸入を停止するなど制裁の厳格な履行に同調する中国に対し、強い不満を示した形だ。トランプ米大統領は、北朝鮮核問題での中国の取り組みを「異例な動き」と評価していた。(共同)

 24日 −トランプ米大統領は、ホワイトハウスに国連安全保障理事国(15カ国)の国連大使らを招いた会合で「北朝鮮の核・ミサイル開発に対して、さらなる制裁を準備しなければならない」と強調した。ホワイトハウスは週内に上院議員全100人を対象にした北朝鮮政策の説明会も企画。北朝鮮が朝鮮人民軍創建85周年記念日(25日)にあわせ挑発行為をする可能性をにらみ、圧力強化の動きを活発化させている。
 米国は今月の安保理議長国で、日本の別所浩郎国連大使らを昼食会に招待。その席でトランプ氏は「北朝鮮は世界に対する脅威で、解決しなければならない」と主張。シリアの化学兵器使用に対して安保理が対応できなかったと指摘し、「(北朝鮮について)今こそ対処するときだ」と述べた。
 またへイリー米国連大使は24日、NBCテレビに出演し「米国は北朝鮮と戦闘する考えはない」と先制攻撃の可能性を否定する一方、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が「米軍基地を攻撃したり、ICBMを発射したりすれば我々はやる」と警告した。(毎日新聞夕刊4.25)

 25日 −米海軍は、韓国・釜山に原子力潜水艦「ミシガン」を入港させた。巡航ミサイル「トマホーク」を最大154発搭載できる米軍最大級の潜水艦で米CNNなどによると、誘導ミサイルを搭載しレーダーに検知されにくいため、攻撃型原子力潜水艦として優れた能力を持っているとされる。
 米軍が北朝鮮への武力行使に踏み切る場合、多くの打撃力を朝鮮半島周辺に集める作戦をとるとみられる。巡航ミサイルを多数撃てる潜水艦も、近海で潜航しながら攻撃の機会をうかがうとされる戦力だ。このタイミングでの入港は北朝鮮への強いけん制となる。(日本経済新聞4.26)

 26日 −在韓米軍は26日朝、最新鋭の迎撃システム「終末高高度防衛(THAAD)ミサイル」の機材の一部を韓国南部・星州の配備予定地であるゴルフ場に搬入した。韓国国防省は「今回の一部配備によって当面の作戦運用能力を確保する」と発表しており、速やかに試験運用を開始する見通しだ。
 機材はすでに韓国内に到着していたが実際の配備や運用開始は5月9日の大統領選後との見方が強まっていた中での機材搬入で、韓国メディアは一斉に「電撃配備」と報じている。中国政府が強く反発するのは確実とみられ、北朝鮮の核・ミサイル開発に対する米中協調にも一定の影響を与える可能性がある。
 韓国メディアによると、在韓米軍は26日未明から午前4時にかけて、ミサイル発射台やレーダーなどTHAADシステムの主要な機材の一部を大型車両で次々とゴルフ場敷地内に運び込んだ。韓国警察は前日深夜から約8000人の警備態勢をとっていた。
 韓国国防省は26日朝、「軽米両国は高度化する北朝鮮の核・ミサイルの脅威に備え、THAADシステムの速やかな作戦能力の確保のために努力してきた」と発表。米韓両政府は北朝鮮による軍事パレードでの新型ミサイル公開や米国の原子力空母派遣などによって朝鮮半島に緊張が高まる中で、THAAD配備のタイミングを探っていたとみられる。基地内の工事や環境影響調査を引き続き行い、年内の「完全な作戦運用能力の確保」を目指すという。
 THAADの配備完了と運用開始の時期については、今月中旬にペンス米副大統領が訪韓した際、米ホワイトハウス当局者が「(韓国の)大統領が決まるまで流動的だ」と発言したことなどから、大統領選後との見方が強まっていた。(毎日新聞夕刊4.26)

 −北朝鮮の朝鮮中央通信は、朝鮮人民軍創建85年(25日)を祝う過去最大規模の軍による攻撃演習が同国東部で行われ、金正恩朝鮮労働党委員長が視察したと報じた。米韓合同軍事訓練に対抗するとともに、北朝鮮への軍事的圧力を強めるトランプ米政権をけん制する狙いがあるとみられる。
 同通信は実施日を明示していないが、韓国軍は25日、北朝鮮が東部元山で同日、過去最大規模の砲撃訓練を実施したと明らかにしていた。
 攻撃演習は海軍と空軍、前線の砲兵戦力が合同で実施した。(共同)

 −米国のティラーソン国務長官、マティス国防長官、ダン・コーツ国家情報長官は、核・ミサイル開発問題を巡って緊迫する対北朝鮮政策について、共同声明を発表した。北朝鮮の核兵器開発を「差し迫った米国の安全保障上の脅威」と指摘し、「経済制裁の強化や外交手段を通じて圧力をかけ、核放棄を迫る」としている。上下両院のすべての議員を対象に極めて異例の説明会も開き、トランプ政権と危機感を共有した。
 トランプ政権は対北朝鮮政策の見直しを進めており、軍事手段を含めて、あらゆる選択肢を検討してきた。
 声明は、まずは外交手段に取り組む方針を明確にし、従来の方針を踏襲した。非核化に向けた交渉にはオープン(な姿勢で臨む)とし、国際社会と連携して、北朝鮮が対話の道に戻るよう説得する方針も強調した。一方で、「米国と同盟国を防衛する準備はできている」と明記し、軍事的手段を排除しない考えも示唆した。
 声明の公表に先だって、全上院議員100人をホワイトハウスに招き、約1時間にわたって非公開の説明会を行った。トランプ大統領は冒頭の約5分間、あいさつした。下院議員(定数435)に対しては連邦議会議事堂で説明した。
 3長官と米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長による説明内容は機密扱いで、詳細は明らかになっていない。AP通信によると、@北朝鮮の核ミサイル能力についての情報A軍事行動を含む米国の対抗措置の選択肢B北朝鮮に対する既存の経済制裁を、中国にどのように履行させるか──などについてい説明した模様だ。(読売新聞夕刊4.27)

◆共同声明の要旨は次の通り。
 1.北朝鮮の違法な兵器計画や核・弾道ミサイル実験を止める過去の努力は失敗した。
 1.北朝鮮による核兵器の追求は、国家安全保障への差し迫った脅威であり、外交政策の最優先課題だ。トランプ大統領は就任時に対北朝鮮政策の見直しを命じた。
 1.本日、われわれは見直しについて議員に説明した。大統領の方針では、経済制裁の強化と外交手段の追求によって北朝鮮に圧力をかけ、核と弾道ミサイルの廃棄を目指す。
 1.われわれは、(緊張)緩和と対話の道へ戻るよう北朝鮮政権を説得するため、圧力強化に向けて国際社会の責任あるメンバーと連携する。
 1.われわれは、地域の安定と繁栄を守る上で同盟国、特に韓国と日本との緊密な調整と協力を維持していく。
 1.米国は朝鮮半島の安定と平和的な非核化を目指す。われわれは、この目標に向けた交渉に門戸を開き続ける。しかしながら、われわれと同盟国を防衛する用意も維持し続ける。(時事)

 27日 −トランプ米大統領は、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮について「米国は外交的に解決したいが、非常に困難だ」と述べたうえで、「最終的に北朝鮮との大規模な紛争になる可能性がある」と、ロイター通信のインタビューで語った。北朝鮮を強く牽制すると同時に、中国側に北朝鮮への圧力を強めるよう促す狙いがあるとみられる。
 ロイター通信によると、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長について「私は彼を信用していない。彼が理性的かどうか、どちらとも言えない」と述べた。
 一方で、中国の習近平国家主席が北朝鮮に経済・外交的な圧力をかけていることに関し、「習主席は一生懸命努力していると信じている。彼は混乱や破滅を見たくないはずだ」と強調。中国のさらなる北朝鮮への圧力に期待感を示した。(朝日新聞夕刊4.28)

 −ティラーソン米国務長官は27日放送のFOXテレビのインタビューで、中国が北朝鮮に対し、再び核実験を行えば独自制裁を科すと通告していたことを明らかにした。中国側が米国政府に伝えたという。
 北朝鮮が今月にも6度目の核実験に踏み切るとの観測があったにもかかわらず実施しなかったのは、中国側の警告が奏功した可能性がある。
 トランプ大統領が今月上旬の首脳会談で中国の習近平国家主席に対し、北朝鮮への影響力を行使して挑発をやめさせるように求めており、中国側がこれに応えた形だ。1950年の朝鮮戦争で中国が義勇兵を北朝鮮に派遣して以来、中国にとって「血で固められた同盟」と呼ばれる存在である北朝鮮に対して、強硬策を示したことが明らかになるのは異例だ。
 ティラーソン氏は、中国の今回の動きについて「我々と協調することを望んでいる」と評価。北朝鮮が核・ミサイルによる挑発をやめ、対話に応じるようになることに期待感を示した。(朝日新聞夕刊4.28)

 28日 −国連安全保障理事会は28日午前(日本時間28日深夜)、北朝鮮の核問題に関する閣僚級会合を開いた。議長を務めたティラーソン米国務長官は「北朝鮮によるソウルと東京への核攻撃は今や現実の脅威」と指摘し、近い将来、米国本土への攻撃能力も持つとの認識を示した。その上で北朝鮮を外交、経済両面で孤立させる「新しいアプローチ」を提案し、新たな制裁の必要性を強調した。
 ティラーソン氏は「(オバマ前政権が進めた)戦略的忍耐は終わった」と指摘し、「すべての選択肢はテーブルの上になければならない」と述べた。これは軍事的な行動も辞さない姿勢を示し、北朝鮮を強くけん制したものだ。「新しいアプローチ」としてティラーソン氏は@国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議の完全な履行A北朝鮮との外交関係の停止または制限B北朝鮮を金融面で孤立化させる──を提案し、「我々は新しい制裁を始めなければならない」と呼びかけた。
 具体的には北朝鮮の外貨獲得手段である外国への労働者派遣を受け入れないことや、石炭などの輸入停止を提案。「北朝鮮の違法行為を支える第三国の組織、個人への制裁もためらわない」と述べ、主に中国を念頭に制裁対象を広げる方針を示した。
 中国の王毅外相は、北朝鮮の核・ミサイル開発に「反対の立場は一貫している」と述べた。そして「朝鮮半島の核問題を解決するカギは中国にない」と述べ、中国に行動を求める米国に反論する場面もあった。王氏は関係国に「自制」を求め、米韓軍事演習とTHAADの韓国配備に反対した。
 ロシアのガティロフ外務次官は中国と足並みをそろえたほか、制裁強化に慎重な姿勢を示した。(読売新聞4.29)

 29日 −韓国軍合同参謀本部などによると、北朝鮮は29日午前5時半ごろ、中部の北倉周辺から弾道ミサイル1発を発射したが、失敗したもようだ。ミサイルは北東に向け発射され、数分間飛行、最高高度は71キロと推定されるという。米韓メディアによると、ミサイルは空中で爆発した。
 北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐり、国連安全保障理事会は28日、閣僚級会合を開催しており、ミサイル発射で、圧力に屈しない姿勢を示そうとした可能性もある。
 米太平洋軍は、弾道ミサイルは北倉飛行場の近郊から発射され、「北朝鮮の領域を出なかった」と発表。米当局者はロイター通信などに、発射されたのは準中距離弾道ミサイル「KN17」ではないかと話した。スパイサー米大統領報道官は「米政府は北朝鮮のミサイル実験を把握しており、大統領は報告を受けた」と述べた。
 菅義偉官房長官も記者会見で、ミサイルは北倉から北東方向に約50キロ飛び、内陸部に落下したと説明。防衛省幹部は「失敗した」との見方を示した。政府は北京の大使館ルートを通じ、北朝鮮に厳重に抗議した。
 トランプ米大統領は28日、ツイッターで、「北朝鮮が中国および習近平国家主席の要求を尊重せずミサイルを発射したが、失敗した。ひどい」と非難した。
 米韓メディアによると、KN17は、スカッドまたはノドン・ミサイルを対艦用に改造した弾道ミサイルとみられる。米軍は、原子力空母カール・ビンソンを朝鮮半島近海に派遣するなど軍事的圧力を強化しており、こうした動きをけん制する狙いもありそうだ。カール・ビンソンは29日、日本海で海上自衛隊の護衛艦と共同訓練を行ったのに続き、韓国海軍艦艇とも共同訓練を実施した。
 北朝鮮は今月5日、16日にも弾道ミサイル1発の発射を試みており、これらも準中距離弾道ミサイルだったと推定されている。25日には軍創建85周年の記念日を迎え、過去最大規模の合同演習を実施。これと前後して核実験やミサイル試射などの挑発に出る可能性が高いとみて、日米韓は警戒を強めていた。(時事)

 30日 −トランプ米大統領は、北朝鮮の核・ミサイル問題の解決に向けて中国が影響力を行使するなら、見返りとして貿易不均衡など米中の通商交渉で米側が譲歩する用意があるとの考えを示した。30日放映のCBSテレビのインタビューで語った。
 トランプ氏は「中国は北朝鮮に対し究極的な影響力でないにしても、かなり強い影響力を持っていると思う」とこれまでの見解を強調。その上で「何百万人もの死者が出るような大規模な戦闘」への懸念があり、中国の影響力を引き出して核問題を解決できるなら「米国にとってそれほど良くない通商協定にする価値はある」と述べた。
 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長について、トランプ氏は「父親が死去し、26、27歳の若さで権力を継承した。彼から権力を取り上げようとする将軍らタフな人たちと渡り合った。明らかに、かなり頭の切れる人物だ」との見方を示した。(共同)

 

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