2017年 朝鮮半島核問題の主な動き

7月の主な動き
−※は報道日、表記は報道のまま。−

 3日 −スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は、世界の核軍備に関する最新報告書を発表し、北朝鮮が今年1月時点で推定10〜20発の核弾頭を保有していると推計する分析結果を明らかにした。核・弾道ミサイル開発で「技術的な進展」がみられると指摘し、短中距離ミサイルに搭載可能な小型弾頭の製造技術も確保したと考える専門家の見方を掲載した。
 報告書によると、北朝鮮は兵器級プルトニウムの保有量を年々増加させる一方、米本土を狙える長距離弾道ミサイルの開発を「優先的」に進めている。また、今年と昨年の軍事パレードの写真を分析した結果、移動式の大陸間弾道ミサイル(ICBM)も開発中と推測した。 (時事)

 4日 ※核・ミサイル開発を進める北朝鮮が米国のトランプ政権に対して平和協議を持ちかけ、その際、韓国を除外するよう求めていたことが分かった。6月初めに北朝鮮当局者と会談した、トランプ政権に近い米ヘリテージ財団のブルース・クリンナー上級研究員が本紙に明らかにした。
 6月30日の米韓首脳会談で、韓国の文在寅大統領は「制裁と対話による段階的アプローチ」による核問題の解決を強調。共同声明には南北対話再開を目指す文氏の意欲をトランプ氏が支持する内容が盛り込まれたが、北朝鮮はあくまで米国との協議にこだわる姿勢が鮮明になった。
 クリンナー氏は6月1〜2日、日中韓の専門家とともにスウェーデンのストックホルムで開かれた非公開会合で北朝鮮当局者3人と会談。当局者は「われわれをまず核保有国と認めた後、平和協定を結ぶか戦争をするか話し合おう」と持ち掛けた。その際「韓国を協議から除外するべきだ」と主張したという。北朝鮮は朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に転換するようかねて求めている。
 当局者はまた、米国が「敵視政策」をとっているとして何度も不服を示し「米国は制裁をやめる条件を示さない」と不満を述べた。クリンナー氏は金正恩・朝鮮労働党委員長就任後に当局者3人に2度接触したが「3人は当時と比べ自信にあふれていた」という。
 北朝鮮は今年、ミサイル発射実験を失敗も含めて10回実施。高度2千キロに達した弾道ミサイルもあり、着実に技術を高めている。クリンナー氏はこうした成功が、自信を深めた背景にあると分析する。
 当局者はさらに、米国に軍事演習をやめるよう求める一方で、非核化の提案に応じる言動は全くなかったという。
 クリンナー氏は「米国がこれ以上できる説得はない」と判断。帰国後、経済制裁強化のための具体案を米政府に提出した。米政府は6月29日、北朝鮮の資金洗浄に協力したとして中国の丹東銀行への制裁を発動したが、クリンナー氏も同様の提案をしたという。
 クリンナー氏は、関係国間の協議への影響を考慮し当局者の身分を明かさなかった。 (東京新聞7.4)

 −北朝鮮は4日午前9時39分頃、同国北西部の平安北道亀城市方峴から日本海に向けて弾道ミサイルを発射した。ミサイルは1発で約40分間飛行して、日本の排他的経済水域(EEZ)内の日本海に落下したとみられる。韓国軍合同参謀本部は、約930キロ・メートル飛行したと発表した。
 北朝鮮の弾道ミサイルがEEZ内に落下するのは5回目で、5月29日以来。弾道ミサイル発射は今年10回目となる。6月8日には地対艦巡航ミサイル数発を発射している。
 防衛省はミサイルの種類などについては分析中だが、自衛隊幹部は「相当高度が高いのは間違いない」と述べ、通常高度より高く打ち上げる「ロフテッド軌道」で発射した可能性を指摘した。米太平洋軍は3日、このミサイルについて、中距離弾道ミサイルだったとの分析を明らかにした。同軍によると、ミサイルは37分間飛行した後、日本海に着弾したという。 (読売新聞夕刊7. 4)

 −北朝鮮の朝鮮中央テレビは4日午後3時(日本時間同3時半)、「特別室大報道」を放送し、ICBM「火星14」の試験発射が「成功した」と発表した。北朝鮮は日本時間の4日午前9時40分ごろ、西岸の平安北道亀城市方峴付近から日本海に向けて弾道ミサイルを発射しており、これを指すとみられる。
 発表が事実なら北朝鮮によるICBMの発射実験は初めてとなる。
 米太平洋軍は特別重大報道に先立ち「中距離弾道ミサイル」と発表、ICBMとは判断していない。
 関係各国が分析を急いでいるが、日本政府関係者は4日、ミサイルを通常の角度で発射した場合の飛距離が「約5000キロになる」と述べ、ICBMの水準に近づいているとの見方を示した。
 朝鮮中央テレビは、火星14が高度2802キロに達し、39分間にわたり933キロ飛行と報道。 「日本海の目標水域に正確に着弾した」と明らかにした。北朝鮮としては、米本土を攻撃できる核兵器の運搬能力を見せつけることで米国からの攻撃を阻止し、体制維持を図る狙いとみられる。
 菅義偉官房長官は記者会見で、ミサイルが過去最長の約40分間で約900キロ飛び、秋田県・男鹿半島の西約300キロの日本のEEZ内に落下したと明かした。一方、日本政府関係者はミサイルの高度が約2800キロに達したと認めた。
 金正恩朝鮮労働党委員長は1月1日の「新年の辞」でICBM発射実験の準備が「最終段階に入った」と述べていた。5月には中距離弾道ミサイル「火星12」や固体燃料型の中距離弾道ミサイル「北極星2」を相次いで試射。党機関紙「労働新聞」(6月10日付)は火星12の試射によって「ICBMの要である大出カエンジンの問題を解決した」「米ニューヨークまでの1万4000キロも我々にとって遠い距離ではない」と主張。米本土が射程に入るICBM開発が近いことを示唆していた。(毎日新聞7. 5)

 −ロシアのプーチン大統領は、訪露中の中国の習近平国家主席とモスクワで会談した。北朝鮮が新たなミサイル発射を強行するなか、会談では朝鮮半島情勢が主要議題となった。両首脳は北朝鮮との対話の必要性を確認しつつ、周辺地域で軍事プレゼンスを強化する米国を強く牽制(けんせい)した。
 プーチン氏は首脳会談後の記者発表で、北朝鮮の核・ミサイル開発を凍結するとともに、米国と韓国の軍事演習もやめるべきだと表明。朝鮮半島情勢の安定化は、中露両国の外交の優先課題だとも述べた。
 同日発表された共同声明で両国は、北朝鮮が4日に実施したミサイル発射に「深刻な懸念」を抱いているとし、「容認できない」と表明。国連安全保障理事会の制裁決議にも違反していると述べ、同国を非難した。核兵器の拡散にも反対するとした。
 一方で声明は、北朝鮮の持つ「正当な懸念」は尊重されるべきだとし、「武力による朝鮮半島問題の解決の可能性は除外されるべきだ」と表明。北朝鮮を擁護する姿勢をにじませた。
 北東アジアへの米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD) 」配備は、「ロシア、中国を含む周辺国の戦略的安全保障上の利益に反する」と主張し、韓国や日本へのTHAAD配備に関する動きに強い警戒感を示した。 (産経新聞7. 5)

 −北朝鮮が4日に発射した弾道ミサイルについてティラーソン米国務長官は同日に声明を出し、このミサイルがICBMだったことを認めた。「米国や同盟国だけでなく、地域や世界に対する脅威が新たな段階に入ったことを示している」と危機感を示した。
 ティラーソン氏は、トランプ政権が北朝鮮を核保有国として認める考えがないことを強調。その上で「世界規模の脅威を食い止めるため、世界規模の行動が必要だ」として、北朝鮮の核・ミサイル開発につながる資金源を断つために、関係国に制裁強化を求めた。
 米国防総省のホワイト報道官は4日、北朝鮮によるICBM発射について「強く非難する」と批判した。
 米メディアによると、北朝鮮が発射したICBMの射程は約56OOキロで、米アラスカを射程内に収めることになる。米太平洋軍は当初、新型の中距離弾道ミサイルとみていたが、その後の分析で、2段目のロケットエンジンが噴射し、さらに30秒間飛んだと判断した。
 韓国国防省も5日、北朝鮮が4日に発射した「火星14」について「ICBM級の射程を持つ」と国会国防委員会に報告したが、大気圏再突入技術は未確認で、「ICBMの開発成功と断定しがたい」ともした。同省は「火星14」が、北朝鮮が5月14日に発射した中長距離弾道ミサイル「火星12」の改良型だと分析した。 (朝日新聞夕刊7. 5)

 5日 −北朝鮮の朝鮮中央通信は、北朝鮮が4日行ったICBM「火星14」の発射実験に関し、大気圏再突入技術の「最終確認」が目的で「大成功」だと報じた。北朝鮮の主張が事実ならICBM実戦配備に近づいた形だ。
 朝鮮中央通信によると実験は「新開発の大型重量核弾頭の搭載が可能なICBMの戦術、技術的レベルと技術特性の確定」が目的。「新開発の炭素繊維複合材料で製造した弾頭部の耐熱性と安定性の最終確認」を目指した。弾頭内の温度は外部が高温となる再突入後も25〜40度で、起爆装置は正常に作動し目標水域に着水したという。また、火星14は2段式で、移動式発射台により発射した。
 発射実験に立ち会った金正恩朝鮮労働党委員長は「米国は独立記念日に受けた贈り物を気に入らないだろうが、これからも頻繁に贈ろう」と述べ核・ミサイル発射実験を続ける考えを強調。「米国の対朝鮮敵視政策がある限り、いかなる場合も核と弾道ミサイルを協議のテーブルに載せない」と述べた。
 一方、米韓両軍が5日実施した弾道ミサイル発射訓練は、韓国青瓦台(大統領府)によると文在寅大統領が4日、「北朝鮮の厳重な挑発に、確固たるミサイル連合対応体制を見せる必要がある」と指示。韓国軍の弾道ミサイル「玄武2A」(射程約300キロ)や米軍の地対地ミサイルを発射した。 (毎日新聞夕刊7.5)

 −北朝鮮のICBM発射を受け、国連安全保障理事会は5日に緊急会合を開き、米国のヘイリー国連大使は「数日以内」に新制裁決議案を配布すると明らかにした。軍事目的の石油の禁輸▽貨物船や貨物機の運航制限▽政権高官に対する制裁一が柱という。一方で会合では、制裁強化に慎重な中国ではなく、ロシアが明確に反対を表明。米露対立で制裁協議が長引く可能性がある。
 「制裁で問題は解決しない」。会合でロシアのサフロンコフ国連次席大使は言い切った。常任理事国のロシアが拒否すれば制裁決議案は採択されない。ヘイリー氏は「北朝鮮の行動にハッピーなら、拒否権を行使すればいい」と強い言葉を投げつけ、「その場合、我々は自分の道を行く」とたんかを切った。
 ロシアは北朝鮮問題を米国との交渉カードにしようと考えている可能性もある。安保理でシリア情勢をめぐる米国との対立が続いた昨年の一時期、北朝鮮のミサイル発射を非難する報道声明に反対した例もある。
 米国が今回発射されたミサイルをICBMと断定したのは、北朝鮮の核・ミサイル開発に対する国際社会の脅威認識を高め、圧力強化を図る狙いがある。一方でロシアは「中距離ミサイルの範囲だ」と主張し、見解が分かれている。
 中国も公式にはICBMとは認めていない。ただ米国とこれまで数カ月にわたって制裁協議を続けた中で、北朝鮮が核実験かICBM発射に踏み切った場合は制裁決議で対応することに基本合意していたとみられる。ICBMと認めれば制裁決議案に賛成せざるを得ず、中国がこの日の会合で制裁について方針を示さなかったのは、こうした事情が影響した可能性もある。 (毎日新聞7. 7)

 −米国防総省のデービス報道部長は、北朝鮮が4日に発射した弾道ミサイル「火星14」について、ICBMと確認したうえで、「これまで見たことがないミサイルだ」と述べた。
 国防総省は当初、中距離弾道ミサイルとしていたが、デービス氏は「航空機や衛星などによるさまざまな観測データを精査した結果、(射程が5500キロ以上の) ICBMと断定した」と述べた。また移動式発射台を使用したことも確認した。
 一方、北朝鮮が弾頭が入る再突入体の技術確立に成功したと主張している点については、「精査中だ」と述べるにとどまった。
 北朝鮮は2012年12月、人工衛星打ち上げを名目に「テポドン2改良型」を発射し、約1万キロを飛行したが、デービス氏は「人工衛星を打ち上げるためのものだった」と述べ、ICBMには当たらないとの考えを示した。ただ、人工衛星打ち上げのためのロケット技術をICBMの開発に「活用した」とも指摘した。 (毎日新聞7. 7)

 6日 −ワルシャワ訪問中のトランプ米大統領は、北朝鮮によるICBM発射に関し「世界にとって危機的な時だ。我々はこの脅威に強い姿勢で立ち向かう」と述べた。軍事的対応の可能性については明言を避ける一方、「北朝鮮の行動は非常に危険で、何らかの対処が必要だ」と強調した。
 旧王宮で開かれたポーランドのドゥダ大統領との会談後、共同記者会見で語った。トランプ氏が北朝鮮によるICBM発射について公の場で発言するのは初めてで、「国際社会がテロに加え北朝鮮という脅威に直面している」と主張。「悪辣(あくらつ)な行動には重大な結果が伴うことを知らしめるため、北朝鮮に対抗するよう世界各国に呼びかける」と述べた。具体的な対応については「事前に計画を語りたくないが、語らないから行動をしないという意味ではない」と強調した。 (毎日新聞7. 7)

 −米国連代表部はICBMを発射した北朝鮮への制裁強化を求める国連安全保障理事会の報道声明案を配布したが、ロシアが6日に反対し、発表を阻止した。ロシア国連代表部は、発射されたのはICBMではなく中距離弾道ミサイルだったとし「適切な修正を提案した」と発表した。
 北朝鮮に対する安保理制裁は、北朝鮮の経済的な後ろ盾となっている中国と米国の交渉が軸に進むことが通例で、ロシアが交渉序盤から異議を唱えるのは珍しい。シリア情勢などを巡り冷却化が進む米ロ関係が影響しているとみられる。 (共同)

 −マティス米国防長官は、北朝鮮がICBMを発射したことについて「 (北朝鮮との)戦争に近づいているとは思わない」と記者団に語った。北朝鮮に核・ミサイルを放棄させるために外交的な努力を続ける考えを示した。
 北朝鮮によるICBM発射後、マティス氏が公に発言するのは初めて。トランプ政権は、米本土の攻撃につながるICBM発射によって「脅威が新たな段階に入った」 (ティラーソン国務長官)として対応を検討している。今回のマティス発言は、米軍を統括する国防長官として、北朝鮮に対する軍事力行使の可能性を否定したものだ。
 マティス氏は、北朝鮮のICBMが射程を大幅に延ばすための「ブースター」を備えた新型であることを明らかにした。北朝鮮がミサイル実験を重ねるごとに「新たなデータを獲得しており、深刻に受け止めている」と危機感を示した。
 一方で、米軍が先制攻撃などの軍事手段に出れば、反撃によって同盟国の韓国などに「深刻な結果を招く」と強調。軍として「自制していく」と述べ、軍事力行使には慎重な見方を示した。 (朝日新聞夕刊7.7)

 −米検察当局が欧米の主要銀行8行に対し、北朝鮮と結びつきの深い企業との取引にかかわる資金差し押さえを進めていることが6日明らかになった。2009年以降、北朝鮮に関連する7億ドル(約800億円)以上の取引を処理していたとみられる。軍事関連の取引が含まれ、資金が核・ミサイル開発に流れていた可能性があるという。
 ロイター通信や複数の米メディアが報じた。ワシントン特別区の裁判所が5月に検察当局に対して令状の申請を許可し、このほど関連書類を公開した。
 北朝鮮が4日にICBMを発射したことを受け、米国は強硬姿勢に一段と傾いている。今回の措置を含め、核・ミサイル開発にかかわるマネーロンダリング(資金洗浄)の根絶に向けた対策をより強める構えだ。
 報道によると、対象の銀行は米国のJPモルガン・チェース、シティグループ、バンク・オブアメリカ、ウェルズ・ファーゴ、バンク・オブ.ニューヨーク・メロンのほか、欧州系のドイツ銀行、HSBC、スタンダードチャータード。
 各行は中国を拠点とする貿易会社「丹東至誠金属材料公司」のほか、北朝鮮のフロント企業4社と取引をしていた。ロイター通信によると、関連書類などには、各行が故意に制裁逃れをしていたとの記述はない。 (日本経済新聞夕刊7. 7)

 7日 ※宇宙活動の国際協力を議論する国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)の本委員会に、北朝鮮がオブザーバー参加を初めて申請し、承認された。複数の外交筋が明らかにした。申請理由は定かではないが、専門家からは、北朝鮮が情報収集日的などで人工衛星打ち上げを検討している可能性を指摘する声もある。
 北朝鮮がこれまで「人工衛星」打ち上げ名目で弾道ミサイルを複数回発射していることから、国際社会に対してミサイル発射を正当化する場として委員会を利用するのではとの懸念も広がっている。
 委員会は84カ国が加盟しており、ウィーンで6月7日から16日まで開催。関係者によると、北朝鮮の参加申請について米国、日本、英国など6カ国が強い懸念を表明し、ロシア、キューバが賛成した。
 米国は「北朝鮮は弾道ミサイルを何度も発射し、国連安全保障理事会の決議に違反している」と述べ委員会への参加に懸念を表明。日本は「北朝鮮が、弾道ミサイル発射を『宇宙の平和利用』と一方的に主張することが考えられる」と指摘した。
 今回の委員会では北朝鮮の担当者は出席しなかった。 (毎日新聞夕刊7. 7)

 8日 −米韓両軍は、米軍のBl戦略爆撃機2機が参加し、弾道ミサイル発射台を標的とした爆撃訓練を行った。韓国空軍が発表した。北朝鮮が4日にICBM発射を強行しており、訓練で北朝鮮を強く威嚇した。
 訓練では、グアムの米空軍基地から飛来したBl爆撃機が韓国上空に展開。北東部江原道の訓練場に設けられた核心施設(ミサイル発射台)に見立てた目標物を標的とし、“爆撃”した。韓国軍のF15戦闘機も参加し、Bl爆撃機による爆撃訓練に続き、地下の重要施設への攻撃訓練を実施した。
 Bl爆撃機はそのまま、北朝鮮との軍事境界線付近にまで飛行。北朝鮮を強く牽制した。Blは韓国軍との訓練後、九州周辺の空域で航空自衛隊とも共同訓練を行った。
 米戦略爆撃機の朝鮮半島上空での爆撃訓練が公表されるのは今回が初めて。Bl爆撃機は、グアムから2時間以内に朝鮮半島に到達することが可能だ。
 弾道ミサイル発射を続ける金正恩政権を、訓練で米軍の爆撃能力を誇示し強く警告したわけだが、北朝鮮が反発するのは必至とみられる。 (産経新聞7. 9)

 −トランプ米大統領は、ドイツ北部ハンブルクで行われた中国の習近平国家主席との会談で、北朝鮮のICBM発射への対応を協議した。ホワイトハウスが発表した。米国はICBM発射を受け、国連安全保障理事会の新たな北朝鮮制裁決議案など圧力をさらに強化する方針で、大統領は習主席に協力を求めたとみられる。大統領は冒頭、「 (北朝鮮問題の解決は)望むより長い時間がかかるかもしれない」と指摘した。
 中国外務省によると、習主席は「国際社会は国連安保理決議に違反する活動に必要な対応を実行しなければならない」と強調。ただ、「同時に対話を促す努力を強化すべきだ」とも訴えた。中国が決議案に賛成するかは明らかになっていない。
 習主席は「朝鮮半島の非核化」「半島の平和・安定維持」「対話を通じた問題解決」という中国の原則的立場を繰り返した。ホワイトハウスは「両首脳は朝鮮半島の非核への責務を再確認した」と発表した。(時事)

 −20カ国・地域(G20)首脳会議の閉幕に当たり、8日に採択された首脳宣言は、北朝鮮の核・ミサイル問題に言及しなかった。当初は各国が一致して、ICBMを発射するなど挑発行為を強める北朝鮮に自制を求める姿勢を打ち出すとみられていたが、中国やロシアなどが反対した可能性がある。トランプ外交の失点となりそうだ。
 G20に合わせて7日に行われた日米韓首脳会談では、北朝鮮問題は最大の焦点となり、 ICBM発射を非難し、国連安保理決議による新たな北朝鮮制裁の早期採択を目指す方針を示した。日米韓はG20首脳会議でも、北朝鮮へのメッセージを発信することを目指していた。
 また、ドイツのメルケル首相も北朝鮮問題についてG20で議長総括なども含め何らかの形で言及する意向を示していた。
 トランプ米政権は、国際社会が北朝鮮への経済制裁や外交的圧力を強く打ち出すよう要求。ティラーソン米国務長官も7日、記者団に「もし失敗すれば、良い選択肢はあまり残されていない」と警告していた。
 長官は同時に「われわれは希望を諦めていない」とも述べ、各国による圧力強化の必要性を訴えていた。今後も引き続き各国による圧力強化を呼び掛けていくとみられるが、G20で結束した姿勢を示せなかったことは、今後の北朝鮮への対応に微妙な影響を与える恐れもある。 (時事)

 10日 −米航空宇宙エンジニアのジョン・シリング氏は、北朝鮮が今月4日に発射したICBM「火星14」について、全ての問題点を解決すれば、飛距離が最大9700キロ・メートルに達するとの分析結果を発表した。北朝鮮から米西部カリフォルニア州サンディエゴの海軍基地まで届くことになる。
 シリング氏は米ジョンズ・ホプキンス大の北朝鮮問題研究グループ「38ノース」を通じて発表した。4日のICBMは、通常より高度が高い「ロフテッド軌道」で打ち上げられたが、射程を伸ばす角度で発射されていれば、飛距離が「7000〜8000キロ・メートルだったかもしれない」と推定した。 (読売新聞7.12)

 11日 −米国防総省ミサイル防衛局は、地上配備型迎撃システムTHAADによるミサイル迎撃実験を行い、初期評価として成功したと発表した。弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮に対し、防衛能力を誇示し、けん制する狙いがある。
 同局によれば、ハワイ北方上空の米空軍輸送機C17から中距離弾道ミサイルに見立てた標的を発射。アラスカ州コディアクにあるTHAADで捕捉・追跡し、迎撃した。
 同局のグリーブズ局長は「今回の実験により、弾道ミサイルを迎撃し、破壊するTHAADシステムの能力が示された」と指摘。「THAADは増大する現実の脅威から国民や(在日米軍など)前方展開戦力、同盟国を守り続ける」と強調した。
 今回の実験前の時点で、米軍はTHAADによる13回の迎撃実験にすべて成功している。THAADは、大気圏外で撃ち落とせなかった弾道ミサイルを大気圏に再突入する段階で迎撃するシステムで、在韓米軍への配備が始まっている。 (時事)

 13日 −米太平洋軍のハリス司令官が、朝日新聞の電話インタビューに応じた。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮について、制裁や外交を通じた解決は目指し続けるべきだとしつつ、「軍事的な選択肢は常に準備されており、そのどれもがいま実行可能な状態だ」と語った。米国の外交的努力の背景に、軍事的圧力があることを示したものだ。
 米政権は現時点で、北朝鮮に影響力がある中国に制裁圧力を強めるよう求めるなど、外交的解決を目指す方針は崩していない。ただ、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)は6月末、「大統領から軍事的手段も含めたすべての選択肢を準備するよう指示された」と述べており、ハリス氏は今回、最高司令官である大統領の命令があれば軍事攻撃が可能な態勢にあることを示した。
 また、北朝鮮が4日にICBMの発射に成功したと発表したことを受け、「米国本土を射程に入れた核搭載のICBM発射というゴールに日々、近づいている」と指摘。「現時点では核弾頭は搭載されていないとみられるが、注視しなければならない」と述べた。 (朝日新聞7. 14)

 14日 −北朝鮮外務省報道官は、ICBM「火星14」発射をめぐり、国連安保理が追加制裁決議を採択した場合、「後続措置を取り、正義の行動で応える」と威嚇した。「後続措置」の具体的な内容には触れなかったが、ミサイル発射など一層の挑発を示唆したとみられる。朝鮮中央通信が伝えた。
 報道官は北朝鮮が4日に発射した火星14について、米国の核による脅威を終わらせるための「堂々とした自衛権の行使だ」と主張。発射成功で「米国が軽挙妄動すればその心臓部を攻撃し、一挙に壊滅させる意志と能力を示した」と述べ米国が軍事行動に出た場合、米本土に報復攻撃を加える能力があると誇示した。 (時事)

 −米ジョンズ・ホプキンズ大高等国際問題研究大学院の北朝鮮分析サイト「38ノース」は、北朝鮮・寧辺の再処理施設で昨年秋から、使用済み核燃料の再処理を少なくとも2回行い、核兵器に転用可能なプルトニウムを増産した可能性があると公表した。
 同サイトは「プルトニウムの貯蔵が増せば核兵器の保有量が増えることにつながる」と分析している。
 寧辺の再処理施設の熱分布画像を同サイトが解析した。それによると、昨年9〜10月に施設の温度が上昇。その後いったん低下し、今年3〜6月に再び上昇したことが確認された。同サイトは「プルトニウム増産を行ったことを示唆している」と指摘した。
 また、ウラン濃縮施設でも温度の上昇が確認されたが、核兵器に使うための高濃縮ウランを生産したのか、施設の補修作業を行ったのか判別はできなかったという。 (東京新聞夕刊7. 15)

 18日 −米軍のセルバ統合参謀本部副議長は、上院軍事委員会の公聴会で、北朝鮮が4日に発射実験をしたICBMについて米国を正確に攻撃できる能力は現時点で保有できていないとの見方を示した。
 米軍制服組ナンバー2のセルバ氏は、ミサイルの射程についてはICBMに相当する能力を「明らかに持っている」と認めたが、「必要な誘導や制御の能力があることをまだ証明していない」と指摘した。
 北朝鮮への軍事攻撃に関しては選択肢として検討しておく必要があるとした上で「どんな結果をもたらすか深刻に考えなければならない」と強調。「核武装した北朝鮮は中国にとっても脅威だ」とし、外交圧力をかけるには中国の協力が重要だと訴えた。長距離弾道ミサイル技術の拡散にも懸念を示した。(共同)

 19日 −米CNNテレビは、北朝鮮がICBMか中距離弾道ミサイルの発射を準備している可能性があると報じた。約2週間後に発射可能になるとみられる。複数の米政府高官の話としている。
 北朝鮮は4日に初のICBM発射実験を成功させたばかり。トランプ米政権は北朝鮮の核・ミサイル開発に関与している中国やロシアの企業への制裁など圧力強化を検討しているが、挑発を抑止できるかは不透明だ。
 CNNによると、北朝鮮が弾道ミサイルの部品や誘導設備のテストをしているとみられる動きを、米衛星が確認した。米側は発射実験の際に使うレーダーや交信を注視している。また、北朝鮮は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)用部品のテストも続けているが、まだ初期段階とみられる。
 米軍は、北朝鮮がICBMで米国を正確に攻撃できる能力を現時点で保有していないと分析している。ただ、ミサイルの開発ペースは米軍の想定を上回っており、さらなる技術向上に警戒感を強めている。(共同)

 25日 −米紙ワシントン・ポスト(電子版)は、北朝鮮が核弾頭を搭載した信頼性の高いICBMを早ければ来年に配備する可能性があるとの報告書を米国防総省の情報機関、国防情報局(DIA)がまとめたと報じた。配備は2020年以降としていた米情報機関のこれまでの分析を2年早めるものだという。
 DIAの分析内容に詳しい米政府当局者は同紙に対し、「北朝鮮の予定表は我々が考えているより早く動いている。7月のICBM実験は予期していなかった」と述べ、北朝鮮が4日に「火星14」の発射実験に成功したことが、再評価につながったとの見方を示した。その上で、北朝鮮が来年までにICBMの試作品の開発を終え、大量生産に入る可能性を指摘した。
 報告書の内容を知る当局者は、北朝鮮がこの数か月間に実施した弾道ミサイル発射実験でICBMの基本設計を確立し、今後数か月以内にICBM生産を始める可能性があると語った。 (読売新聞夕刊7.26)

 26日 ※米CNNテレビは24日、米国防当局者の話として、北朝鮮北西部の亀城市に弾道ミサイル発射のための機材を積んだ複数の車両が21日に到着したことが確認されたと伝えた。当局者は、こうした機材が確認された場合は6日以内にミサイルが発射される公算が大きいとしており、64年前に朝鮮戦争の休戦協定が締結された27日に合わせて発射される可能性がある。
 北朝鮮が発射の準備を進めているのはICBMまたは中距離弾道ミサイル(IRBM)とみられる。
 韓国の聯合ニュースも25日、韓国政府筋の話として、亀城市のある平安北道一帯でミサイルが入っている円筒形の発射管を搭載した移動式発射台の動きを捕捉したと伝えた。
 北朝鮮は米独立記念日にあたる4日、亀城市から新型ICBMの「火星14」を発射した。
 一方、米国防総省のデービス報道部長は24日、米軍が最新鋭迎撃システムTHAADによる弾道ミサイル迎撃実験を近く実施することを明らかにした。実験は今週末にも行われる。 (産経新聞7. 26)

 −米CNNテレビは、米国防当局者の話として、北朝鮮が25日、同国東部の咸鏡南道・新浦にある造船所(潜水艦基地)で、SLBMの発射に用いられる技術を利用したミサイルの射出実験を行ったと伝えた。
 実施したのは、発射管内部で発生させた高圧ガスなどでミサイルをいったん空中に押し上げた後、空中でミサイルの燃料に点火して自力で噴射する「コールド・ローンチ」方式。
 25日も含めて今月2回、今年に入ってからは計3回、同方式の射出実験を実施したという。 (読売新聞7.28)

 −米中央情報局(CIA)のポンペオ長官は、米保守系ニュースサイト「ワシントン・フリー・ビーコン」に掲載されたインタビューで、北朝鮮の核・ミサイル問題について、外交解決が不調に終わった場合の選択肢として「外国情報収集や秘密工作、国防総省の戦友の支援」などの検討を進めていると述べた。
 この中でポンペオ氏は、北朝鮮問題を専門に扱うため、CIA内に設置した「朝鮮ミッションセンター」に言及。「 (トランプ)大統領が『外交が機能しない段階に来た』と言ったときに、目的を達成できそうな選択肢を提示する準備をしている」と語った。ただ、トランプ氏から既に何らかの指示を受けたかどうかは明言しなかった。
 また、これまでの米政権の対応に関し「過去20年間は平静を装ってきたが、その段階は過ぎた」と指摘。「われわれは彼ら(北朝鮮指導部)が腹を固めており、失敗でも成功でも(弾道ミサイルを)発射するたび(完成に)近づいていることを知っている」と強い危機感を示した。 (時事)

 28日 ※北朝鮮は28日午後11時42分頃、同国中部から弾道ミサイルを発射した。ミサイルは45分程度飛行し、北海道・奥尻島沖の日本のEEZ内の日本海に落下したとみられる。航空機や船舶などの被害は確認されていない。北朝鮮の弾道ミサイルが日本のEEZ内に落下するのは、6回目で、7月4日以来。弾道ミサイル発射は今年11回目。
 菅官房長官が29日未明、首相官邸で記者会見を開き、明らかにした。
 防衛省などによると、ミサイルの高度は3000キロ以上に達したとみられるという。北朝鮮が今月4日にICBM「火星14」を通常より高い角度の「ロフテッド軌道」で発射した際は、約40分間飛行し、高度は過去最高の2500キロ・メートル超に達したと推定されている。今回の飛行時間はそれよりも長い45分間飛行しており、日本政府などはロフテッド軌道でICBMを打ち上げた可能性が高いとみて、分析を進めている。
 韓国軍合同参謀本部は、北朝鮮が同国北部・慈江道の舞坪里から弾道ミサイル1発を発射したことを明らかにした。
 米国防総省のデービス報道部長は今月5日、火星14について、「ICBMの要件となる5500キロ・メートル以上の射程があった」と認めた一方で、ICBMに核弾頭を搭載できる能力や、大気圏再突入時に弾頭を高熱や振動から守る技術が確認されていないため、「完全な脅威と見なすには、まだいくつか不明な点がある」としていた。
 このため北朝鮮は再度、同様の実験を行い、大気圏再突入の技術を立証しようとした可能性もある。
 北朝鮮が深夜に弾道ミサイルを発射するのは極めて異例。奇襲攻撃能力を誇示する狙いとみられる。 (読売新聞7. 29)

 −タス通信などによると、ロシア国防省は28日、北朝鮮が同日発射したミサイルについて、中距離弾道ミサイルだと発表した。ミサイル監視システムで航跡を追った結果、高度681キロに達し、732キロ飛行、日本海中部に落下したとしている。ロシア国境から離れた方向へ発射され、ロシアに脅威はないと指摘した。
 ロシアの発表は、高度3500キロ以上、飛行距離約千キロとする日本政府の分析とかけ離れている。
 ロシアは4日に発射された弾道ミサイルについても、ICBMではなく、中距離弾道ミサイルだと発表していた。
 北朝鮮の核・ミサイル開発を巡り、ロシアはこれまで、北朝鮮に制裁や軍事面での圧力をかけることに反対してきた。 (共同)

 29日 −朝鮮中央通信は、北朝鮮が28日夜にICBM「火星14」の2回目の試験発射を実施し、成功したと伝えた。金正恩朝鮮労働党委員長が試射に立ち会い、「米本土全域がわれわれの射程圏内にあることがはっきりと立証された」と強調。従来の早朝や午前中と違い、異例となる深夜の発射を受け、「任意の地域、場所から任意の時間にICBMを奇襲発射できる能力が誇示された」とも主張した。
 同通信によると、ICBMの最高高度は3724. 9キロ、飛行距離は998キロ。 47分12秒間飛行し、公海上に設定された目標水域に「正確に着弾した」としている。北朝鮮は、4日に発射した初のICBMは高度が2802キロ、飛行距離は933キロで、39分間飛行したと公表したが、今回はすべてで更新し、技術の向上を印象付けた。
 米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院の米韓研究所は28日(米時間) 、北朝鮮が同日発射したICBMについてより低い角度で打ち上げた場合、米本土に到達する9000〜1万キロ飛行していた可能性があると分析した。今回の発射で北朝鮮ミサイルの脅威は一段と高まったことになり、日米韓が圧力を強めるのは必至だ。
 米政府も発射されたのはICBMと断定。トランプ米大統領は28日(米時間) 、声明で北朝鮮のICBM発射を非難し、「米本土の安全を確保し、同盟国を守るために必要なすべての措置を取る」と強調した。一方、ティラーソン国務長官は声明で「ロシアと中国は北朝鮮の核・ミサイル開発を経済的に可能にしており、地域と世界の安定に対する脅威の増大に特有かつ特別な責任がある」と述べ、中ロ両国を名指しで批判した。
 日本政府によると、北朝鮮の弾道ミサイルは28日午後11時42分、慈江道の舞坪里から発射。落下地点は北海道の積丹半島西約200キロ、奥尻島北西約150キロの日本のEEZ内の日本海上とみられる。
 ICBM発射を受け、米韓両軍は29日、日本海で北朝鮮指導部への攻撃が可能な弾道ミサイルの合同発射訓練を実施した。韓国の文在寅大統領は29日未明、国家安全保障会議を開催し、対抗措置や国連安保理での制裁強化推進などを指示した。 (時事)

 −トランプ米大統領は、北朝鮮による2回目のICBM発射に関連し、ツイッターに「中国には非常に失望した」と投稿し、北朝鮮の核・ミサイル開発の阻止に向けて中国が影響力を行使していないことに不満を表明した。
 トランプ氏は「過去の米国の愚かな指導者が、貿易で中国に年間何千億ドルもの利益を上げさせたのに、中国は北朝鮮に関し、米国に良いことを言うばかりで何もしてくれない」と指摘。「このような事態が続くのは認められない。中国はこの問題を容易に解決できたはずだ」と訴え、中国に対して何らかの措置に踏み切る可能性を強く示唆した。発言は、核・ミサイル開発関連で北朝鮮と取引のある中国企業などに対する追加制裁を決断したことを示しているとみられる。 (産経新聞7. 31)

 30日 −朝鮮中央通信によると、北朝鮮外務省報道官は、28日のICBM「火星14」発射実験に関する談話を発表し、「米国が軍事的な冒険や超強硬制裁策動を続けるなら、断固たる正義の行動で応える」と警告した。「行動」の内容には言及していないが、さらなるミサイル発射や核実験を念頭に置いているとみられる。
 30日付の朝鮮労働党機関紙・労働新聞(電子版)は論評で、28日の発射実験について、「われわれは米国の侵略の脅威と経済制裁の中で、ICBMを自力で開発することを決心し、ついに完成させた」と強調。「米国の制裁策動は完全に破綻した」と主張した。
 また、「われわれが米国の心臓部を攻撃できるICBMを開発したことで、トランプ政権は極度の不安感と恐怖感に覆われている」と指摘。「米国が騒げば騒ぐほど、自衛的国防力を強化しようとするわれわれの意思は強まる」と核・ミサイル開発を正当化した。(時事)

 −米国のヘイリー国連大使は、北朝鮮が2回目のICBM発射を強行したことを受けて声明を発表し、北朝鮮の後ろ盾である中国に対し「重要な措置に前向きに踏み切るかどうか、決断しなければならない。対話の時期は終わった」と圧力をかけた。
 北朝鮮が4日に1回目のICBMを発射した後、国連安全保障理事会では米中間で追加的な制裁の協議が進められているが、ヘイリー氏は声明で「国際的な圧力を高めない追加的な安保理決議には価値がない」と強調。「北朝鮮の独裁者に、国際社会が真剣に対峙(たいじ)するのは気が進まない、というメッセージを送ってしまう」とし、中国に実効性の高い制裁内容に賛同するよう強く求めた。
 北朝鮮がミサイル発射などを強行した場合、通常は日本、米国、韓国が国連安保理に緊急会合の開催を要請するが、ヘイリー氏は声明で「何も結果を生まないのなら、緊急会合を開いても無駄だ」と指摘した。
 国連安保理は5日、北朝鮮のICBM発射を受けて緊急会合を開催し、ヘイリー氏は「必要なら軍隊を使う」と警告したが、中国の劉結一国連大使は「朝鮮半島に混乱と対立をもたらすことには反対」と表明。米中の溝があらためて浮き彫りになった。 (東京新聞夕刊7. 31)

 −米国防総省のミサイル防衛局(MDA)は、米軍の最新鋭迎撃システムTHAADによる弾道ミサイル迎撃実験を実施し、成功したと発表した。実験は、太平洋の上空で米空軍のC17輸送機から発射された中距離弾道ミサイルに見立てた標的を、アラスカ州コディアック打ち上げ基地に配置された米陸軍部隊のTHAADシステムが「探知し、追跡し、迎撃した」としている。
 迎撃実験は今回で15回目で、現在までの成功率は100%。MDAは「北朝鮮などからのミサイルの脅威に対する防衛能力は強化された」と強調した。
 実験は、28日に2回目のICBM発射を強行した北朝鮮に迎撃能力を誇示する効果も狙ったとみられる。
 MDAのグリーブス局長は声明で「今回の成功で、高まる(弾道ミサイルの)脅威の上を行く(迎撃)能力が強化されることになる」と強調した。
 米軍は、北朝鮮のICBM技術の急進展を受け、米本土に配備されている地上配備型迎撃ミサイル(GBI)や、米海軍の艦船などに搭載されたイージス迎撃システムなどと合わせ、ミサイル防衛体制の確立を急ぐ。 (産経新聞8. 1)

 31日 ※北朝鮮の平壌で30日、ICBM「火星14」の2回目の発射実験「成功」を祝う宴会が開かれ、金正恩朝鮮労働党委員長が李雪主夫人と出席した。朝鮮中央通信が31日、伝えた。
 李万建党副委員長が演説し「火星14の1発日の衝撃から抜け出す前に再び悪の帝国(米国)の脳天を強打した今回の発射実験成功は、わが軍と人民に大きな喜びと勇気を与えている」と称賛。「新型の弾道ミサイルを絶え間なく製造し、空中や海上、水中のあらゆる空間で世界を圧倒する成果を連発的に生み出していく」と強調した。
 宴会には今回の発射実験に携わった関係者らが招かれた。平壌では30日、女性音楽グループ「牡丹峰楽団」などによる祝賀公演も開かれた。 (共同)

 −韓国の宋永武国防相は、韓国国会の国防委員会で、北朝鮮が7月28日に2回目の発射実験を行ったICBM「火星14」について、「(米国本土に)十分到達する危険がある」と報告した。宋氏は、2回目の射程が4日の初回よりも伸びたとする専門家の分析を示した。計算上、米首都ワシントンを射程に収める可能性が出てきた。
 宋氏は専門家の分析として、28日の火星14は弾頭重量を300キロ・グラムほど軽くし、エンジンの性能を向上させたと説明。射程が最大約5000キロ・メートル伸びたとの見方を示した。また、今回の発射の目的について「ミサイルの飛距離や速度の検証に重点を置いた」と指摘。26日には発射の兆候を把握し、文在寅大統領に報告していたという。ミサイルを搭載した移動式発射台の動きを捉えていたとも明かした。
 韓国は4日に発射された火星14の射程を7000〜8000キロ・メートルと分析しており、計算上、今回の射程は、1万2000〜3000キロ・メートルに達する。
 北朝鮮は、舞坪里から28日に発射した実験で、ICBM完成の最後の関門とされる大気圏再突入の技術が実証されだと主張したが、韓国の情報機関・国家情報院は31日に開かれた国会情報委員会で「再突入に成功したかどうかは不明だ」としている。 (読売新聞8. 1)

 −中国の劉結一国連大使は、国連本部で記者会見し、北朝鮮による2回目のICBM発射に関し、「問題の主要な責任は北朝鮮と米国にある」と強調した。北朝鮮への制裁強化に同意するよう中国に迫った米国のヘイリー国連大使の声明に反論し、対話を重視する姿勢を改めて示した。
 劉氏は「朝鮮半島の平和と安定や非核化の問題に関して、最も重要な2か国は北朝鮮と米国だ」と指摘。「米朝には正しい方向に事態を動かす責任があり、中国に能力があっても成果は上がらない」と主張した。
 劉氏ば「『すべての選択肢がテーブル上にある』との言動や、THAADのような戦略システム配備を目の当たりにしている」と語り、米国も緊張を高めていると批判。安保理メンバー国から緊急会合の要請はないことも明らかにした。 (読売新聞夕刊8. 1)

 −ロシア外務省は、北朝鮮によるICBM再発射を受け、ティラーソン米国務長官が「ロシアと中国は特別な責任がある」と批判したことを念頭に、こうした非難には「根拠がない」と反発した。
 外務省は声明で、「米国や他の国々は、ロシアと中国が北朝鮮の核・ミサイル開発を『大目に見ている』と非難し、責任を転嫁しようとしているが、こうした試みには根拠がない」と強調。北朝鮮のミサイル発射に懸念を示す一方で、日米韓も「軍事活動を増大させている」と指摘した。
 外務省はその上で、中ロの提案に基づき、対話を通じて問題を解決するよう呼び掛けた。ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席は7月上旬の会談で、北朝鮮に核・ミサイル開発停止を求めると同時に、米韓が軍事演習を中止する必要があるという認識で一致し、共同戦略を進めることで合意した。 (時事)

 −ロイター通信は、米情報当局者が28日発射された北朝鮮のICBMについて、米本土のほぼ全域を射程圏に収める可能性があると分析していると報じた。北朝鮮による「米本土全域がわれわれの射程にある」との主張を大筋で認めた形だ。
 当局者は、北朝鮮は自国への攻撃抑止のために核弾頭搭載可能なICBMの開発を進めていると指摘。実際に米国やその同盟国に核ミサイルを使用することはないとの見通しを明らかにした。
 米国のミサイル専門家も今回のICBMが通常軌道で発射された場合、射程は1万キロを超えるとの見方を示し、米東海岸のニューヨークにもぎりぎり届く性能を持つと分析していた。 (時事)

 −北朝鮮が28日に打ち上げたICBM「火星14」の弾頭部分が大気圏内に再突入した際、崩壊した可能性が高いことが31日わかった。米ミサイル専門家のマイケル・エレマン氏が映像を基に分析した結果を発表した。現状の技術では「 (核兵器などの)弾頭を搭載しても崩壊するだろう」と、再突入技術の確立には時間がかかると指摘している。
 一方でエレマン氏は、北朝鮮が今後、複数の部隊が発射技術を習得する目的もあるため、発射実験を繰り返す可能性があると指摘。また、米国は精度などで9割以上の信頼性がない兵器は実戦配備の対象としないが、北朝鮮がそこまで追求しないのであれば「来年にもICBMの実戦配備は可能だ」と述べた。
 エレマン氏は英国際戦略研究所(IISS)ワシントン事務所の上級研究員で、米ジョンズ・ホプキンズ大学の北朝鮮専門サイト「38ノース」の電話会見で、分析結果を明らかにした。分析した映像はNHKが29日午前0時28分ごろ、北海道の室蘭市からICBMの弾頭と見られる物体を撮影したもの。光を放ちながら落下する様子が映し出されている。
 エレマン氏は弾頭部分が「4〜5キロ上空の地点で、粉々に壊れたとみられる」とし、再突入については実験が「失敗したとみられる」と評価した。
 ミサイルの弾頭を収容する「再突入体」はいったん大気圏外に出た後、再び大気圏を通って落下する。超高速で再突入するため上空約30キロ地点から高温に包まれ、その状態が着弾まで続く。だが映像では、途中から熱に包まれている様子が無く、エレマン氏は、再突入体が崩壊したのが原因と見ている。 (毎日新聞夕刊8. 1)

 

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