2017年 朝鮮半島核問題の主な動き

9月の主な動き
−※は報道日、表記は報道のまま−

 1日 −ロシアのプーチン大統領は1日に発表した寄稿文で、北朝鮮の核・ミサイル開発について、「平壌への圧力だけで止めるという考えは間違いだ」と強調し、関係国による直接対話を呼びかけた。北朝鮮への制裁強化を目指す日米を牽制(けんせい)した。
 来週、中国で開かれるBRICSサミットに向けた寄稿文の中で述べた。「朝鮮半島は紛争の瀬戸際にある」とし、「挑発や圧力、好戦的で無礼な言葉では行き詰まる」と指摘。中国と取り組んでいる朝鮮半島の正常化に向けた行程表に触れ、「段階的な緊張緩和と、揺るぎない平和と安全のメカニズムをつくる」と述べた。行程表は北朝鮮の核・ミサイル開発の凍結と同時に、米国と韓国にも演習の停止を求めている。(朝日新聞9. 2)

 3日 ※8月下旬に韓国各地で展開された米韓合同軍事演習「乙支フリーダムガーディアン」で、韓国側が、米国が提案した戦略爆撃機の派遣を断っていたことがわかった。北朝鮮の軍事挑発を受けて韓国は方針を変更したが、米国側には不信感が残ったという。
 複数の米韓関係筋によれば米側は8月21日から同31日までの演習期間中、グアムの米軍基地からBIB戦略爆撃機を韓国上空に派遣することを提案した。北朝鮮の軍事挑発を強く牽制する狙いがあったという。
 BIB戦略爆撃機は、戦争の行方を左右する強力な攻撃能力がある戦略兵器の一つ。グアムの米軍基地から約2時間で朝鮮半島に飛来できる。北朝鮮の官営メディアはBIBの飛来をたびたび報道するなど、敏感な反応を示している。
 だが、韓国政府は当時、北朝鮮が言及した弾道ミサイルによるグアム周辺への包囲射撃を巡る緊張状態を考慮し、北朝鮮の強い反発が予想される戦略兵器の演習参加を拒んだという。
 北朝鮮は8月26日、短距離弾道ミサイル3発を日本海に向けて発射。同29日には中距離弾道ミサイル「火星12」(射程4500〜5千キロ)を襟裳岬東方の太平洋上に向けて発射した。米韓は対応を協議し、同31日、米国は2機のBIBと在日米軍のF35Bステルス戦闘機4機を韓国上空に派遣し、韓国空軍のF15K4機と演習を行った。
 この演習についての米軍の31日付報道資料によればブルックス在韓米軍司令官は「米国は北朝鮮と地域国家に肯定的なメッセージを送るために爆撃機を派遣しなかった」と説明。「北朝鮮は、日本上空を越える弾道ミサイル発射などで応えた。結果的に爆撃機が出撃しなくても変化はなかった」と語り、間接的に韓国の対応を批判した。
 韓国側は8月30日の米韓国防相会談で、米戦術核の韓国再配備に言及したほか、米軍戦略兵器の配備増強も求めた。米韓関係筋の一人は韓国の迷走する対応について「南北対話など、自分たちの希望と現実を混同している」と語った。(朝日新聞9. 3)

 −朝鮮中央テレビによると、北朝鮮の核兵器研究所は3日、ICBM用水爆の実験が同日正午(日本時間午後0時半)、北東部の実験場で行われ、「完全に成功した」と発表した。核実験は昨年9月9日の建国68周年に際し実施して以来1年ぶり6回目で、トランプ米政権発足後では初めて。水爆と主張する実験は昨年1月6日以来2回目。日米韓など国際社会の警告を無視した核実験強行によって、朝鮮半島をめぐる緊張が高まるのは必至だ。
 核・ミサイル関連活動を禁じた国連安全保障理事会決議の明確な違反で、安倍晋三首相は「断じて容認できない」と表明。日本政府は外交ルートを通じて北朝鮮側に抗議した。トランプ大統領はツイッターで「非常に敵対的で危険だ」と投稿。米国が強硬姿勢を強めるのは確実で、中国、ロシアを含めた国際社会の制裁圧力が一層強まり、北朝鮮の孤立がさらに深まるのは避けられない。
 韓国気象庁によると、北朝鮮の核実験場がある北東部・咸鏡北道吉州郡豊渓里付近で爆発によるとみられるマグニチュード(M)5.7(推定)の人工地震が観測された。爆発の威力は過去最大規模で、小野寺五典防衛相は核実験の推定出力について「70キロトンになると考えられる」と述べた。1945年に広島に投下された原爆は15キロトンで、今回の核実験はその4倍超の威力となる。
 朝鮮中央テレビによれば、核実験は朝鮮労働党中央委員会政治局常務委員会が3日に決定し、金正恩朝鮮労働党委員長が自筆の命令書に署名。朝鮮中央通信は3日朝、金委員長が新たに製造されたICBMの弾頭部装着用の水爆を視察したと報じていた。同通信は開発した核弾頭について、電子機器をまひさせる電磁パルス(EMP)攻撃も可能な多機能弾頭と伝えた。
 北朝鮮は7月4日と28日の2回にわたり、ICBM「火星14」の発射実験を強行した。さらに、8月29日には中距離弾道ミサイル「火星12」の発射訓練を実施、ミサイルは日本上空を通過し、北太平洋に落下した。核実験はICBMの実戦配備に向け、核弾頭の性能向上を図るとともに、圧力に屈しない姿勢を内外に誇示する狙いがあるとみられる。(時事)

 −トランプ米大統領は、北朝鮮による6回目の核実験を受け、ホワイトハウスにマティス国防長官ら安全保障担当者を招集し対応を協議した。会合後、マティス氏は記者団に「我々が持つ多くの軍事的選択肢の一つ一つについて、大統領から説明を求められた」と述べた。米政権としては外交解決を目指す方針を維持しつつも、軍事行動を排除しない姿勢を示すことで、圧力を強化する狙いがある。
 また、ムニューシン米財務長官は3日、米FOXテレビに出演し、「追加的な経済制裁を大統領に提案する」と表明した。北朝鮮を経済的に遮断するため、北朝鮮との不正な取引を続ける中国企業などへの制裁を視野に入れる。実効性を上げるため、中国政府と連携を強める考えも示した。
 ホワイトハウスでの会合にはペンス副大統領やダンフォード統合参謀本部議長ら国家安全保障チーム幹部が出席した。マティス氏は「米国領土や同盟国へのいかなる脅威も大規模な反撃に見舞われる。効果的で圧倒的な対抗措置を取る」と記者団に強調した。また「北朝鮮の全滅は意図していない」としながらも「それが可能な選択肢を持っている」と強く警告した。
 トランプ氏は会合に先立ち、ワシントン市内で記者団から「北朝鮮への攻撃を検討しているのか」と問われ、「いずれ分かるだろう」と述べた。トランプ氏は核実験の一報から一夜明けた3日朝(現地時間)から立て続けにツイッターに投稿し、北朝鮮の行動を「非常に敵対的で危険」と非難するとともに、北朝鮮に自制を促してきた中国には「脅威と屈辱だ」と指摘した。
 さらに「米国は、北朝鮮と取引関係を持つ国との全面的な貿易停止を検討している」とツイート。中国などを念頭に、核・ミサイル開発の資金源となる北朝鮮の経済活動を支える第三国に対しても、今後さらに強硬な姿勢で臨む考えを示した。(毎日新聞夕刊9. 4)

 4日 −韓国軍は4日午前、北朝鮮北東部の豊渓里にある核実験場への攻撃を想定したミサイル発射訓練を行った。北朝鮮の核実験を受け、韓国軍の精密攻撃能力示すのが狙いで、米軍との合同訓練も今後行う予定。国防省によると、核実験場への攻撃という訓練想定を公開するのは初めてという。
 訓練は、陸軍が地対地弾道ミサイル「玄武2」、空軍のF15戦闘機が空対地ミサイルを発射して行われた。豊渓里の核実験場までの距離を想定し、日本海の公海上の目標地点に向けて発射して行われた。ミサイルは目標に命中した。
 今回の訓練について、韓国軍は「正確に目標に命中させ、有事に敵の指揮拠点などを精密に攻撃する能力を示した」としており、北朝鮮の核実験への「強力な警告」と強調した。文在寅大統領は3日の国家安全保障会議(NSC)で、韓国軍の強力な対応能力を示すよう指示していた。(読売新聞夕刊9.4)

 −韓国の宋永武国防相は、韓国国会への報告で、北朝鮮がICBM「火星(ファソン)14」(射程1万3千キロ)に搭載できる500キログラム程度まで、核弾頭の小型・軽量化に成功したとの見方を示した。ただ「戦術的に使えるとは判断していない」とも述べた。米軍戦術核の韓国再配備について「政府の政策とは異なるが、検討しなければならない」と語った。
 韓国側は、北朝鮮のICBM再発射の可能性もあるとみている。米韓は、米軍の戦略爆撃機や原子力空母の韓国派遣などについて協議しているという。
 一方、国家情報院は4日、国会情報委員会に対し、3日の核実験が行われた北朝鮮北部の咸鏡南北道豊渓里の実験場で、未使用の3番坑道の準備がほぼ完了し、4番坑道も整備中と報告した。国情院は新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などが発射される可能性もあるとした。(朝日新聞9.5)

 −韓国の文在寅大統領は4日深夜、トランプ米大統領と約40分間電話協議し、韓国軍の弾道ミサイルの弾頭重量制限を撤廃することで合意した。北朝鮮が3日に強行した6回目の核実験を受け、両首脳が韓国軍の国防力強化が必要との考えで一致した。
 米国は1970年代、朴正煕元大統領が核・ミサイル開発を進めたのに対し、朝鮮半島や周辺地域での軍事的緊張を抑止するため韓国軍の弾道ミサイル能力を制限する必要があると判断。米韓両国は79年、韓国軍の弾道ミサイルの射程と弾頭重量を定めた「ミサイル指針」に合意した。その後、北朝鮮の核・ミサイル開発の進展を受け、2度にわたり改定され、射程は北朝鮮全域をカバーできる800キロまで延長されたが、弾頭重量は500キロに据え置かれたままだった。
 文氏は7月末の北朝鮮によるICBM発射を受け、ミサイル指針改定を指示。韓国側は北朝鮮の地下施設の破壊などが可能となるよう、重量制限の撤廃を求めていた。
 また電話協議で両首脳は、今回の北朝鮮の核実験に対し、「最高度の強力な圧迫と制裁を加えなければならない」との認識で一致。国連安全保障理事会での新たな制裁決議採択に向けて緊密に連携する方針を確認した。
 文氏は米軍の最新鋭ミサイル迎撃システム「終末高高度防衛(THAAD)ミサイル」を韓国内で可及的速やかに配備完了するとも表明。韓国国防省によると配備済みの2基に近く4基を追加する。(毎日新聞夕刊9. 5)

 −スイスのロイトハルト大統領は、首都ベルンで記者会見し、朝鮮半島の危機の高まりについて「対話の時が来ている」と述べ中立国スイスは外交交渉の仲介役を務める準備があると表明した。
 ロイトハルト氏は国際社会は北朝鮮の6回目の核実験に過剰反応すべきではないとし、国連の制裁強化も「多くを変えないだろう」と指摘。またトランプ米大統領を念頭に、事態解決の手段としてツイッターは「適当ではない」と述べ外相級などの直接交渉が必要だと強調した。
 さらに「危機打開は今後数週間、米国と中国がどう行動するかにかかっている」と訴え、スイスはスウェーデンとともに「秘密裏に」協力する用意があると語った。(共同)

 5日 −ロシアのプーチン大統領は、北朝鮮の核実験にともなう制裁強化について「制裁はもう限界に達して効果がない。圧力をかけても北朝鮮の方針は変わらず(北朝鮮の国民)数百万人の苦労が増すだけだ」と否定的な考えを示した。新興5カ国(BRICS)首脳会議が開かれた中国南東部の福建省アモイでの記者会見で述べた。
 核実験自体は非難したが、米国の介入で独裁体制が崩壊したイラク、リビアなどを例に挙げ「北朝鮮は草を食べるようになっても、安心できるまで核開発は止めないだろう」と指摘。「武力による威嚇は肯定的な結果をもたらさず、地球レベルの大惨事を生む」と対話路線堅持を求めた。
 さらにプーチン氏は、米国が対ロ制裁を強化しながら北朝鮮制裁への協力をロシアに求めることに「非常識だ」と不快感をのぞかせた。ロシアは北朝鮮に4半世紀で約4万トンの原油・石油製品を輸出し、約3万人の北朝鮮労働者を受け入れたと説明した上で、ロシアと他国との輸出入の規模に比べれば北朝鮮との経済関係は「ゼロに等しい」と強調。国際社会がロシアに求める北朝鮮への制裁の効果は薄いと主張した。(東京新聞9. 6)

 6日 ※北朝鮮は8月、米国の敵視政策を理由として、核・ミサイル開発の中止要請を拒否していた。当時は北朝鮮によるICBM「火星14」の試射を巡る国連制裁決議が出た直後だったが、国際社会の締めつけに屈しない姿勢を明確に示した。
 ソウルの外交筋によればカナダのダニエル・ジャン国家安保首相補佐官らは8月8日、抑留されていた韓国系カナダ人牧師、林賢洙氏の解放のために、トルドー首相特使として訪朝した。交渉の際、カナダ側は「地域だけでなく国際的にも悪影響を与える」として核やミサイルによる挑発の中止を求めた。これに、北朝鮮当局者らは「米国が敵視政策をやめれば可能だ」と述べ米韓合同軍事演習の中止や在韓米軍の撤収などを求める考えを表明。新たな国連制裁決議に屈しない姿勢も強調したという。(朝日新聞9、 6)

 −小野寺五典防衛相は6日午前、3日の北朝鮮による核実験の爆発規模が160キロトンだったとの分析を発表した。暫定値で120キロトンとしていた5日の説明を修正した。1945年8月6日に広島に投下された原子爆弾の10倍超の威力だ。発表に先立ち、小野寺氏は米国のマティス国防長官と電話協議し、北朝鮮に圧力をかけていく方針を確認した。
 北朝鮮の前回2016年9月の核実験は11〜12キロトンだった。1年で爆発規模が10倍超と格段に大きくなった計算になる。小野寺氏は防衛省内で記者団に3日の核実験について「過去に比べはるかに大きい」と指摘し「核技術は確実に進展している」と強調した。広島の原爆は15キロトンだった。
 爆発規模は包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)が公表する揺れの大きさを基準に計算する。CTBTOは実験直後に暫定値でマグニチュード(M)5.8とし、その後にM6.0と修正した。防衛省によると、同機構が改めてM6.1との確定値を公表したため、これをもとに爆発規模を160キロトンと計算したという。(日本経済新聞夕刊9. 6)

 −6回目の核実験を強行した北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁決議原案に、北朝鮮への石油の禁輸や、金正恩朝鮮労働党委員長の資産凍結と渡航禁止措置が盛り込まれたことが6日、分かった。米国が作成して安保理のメンバー国に配布した原案を共同通信が入手した。
 核・ミサイル開発の資金遮断が目的だが、北朝鮮の市民生活にも大きな影響を及ぼす内容になっている。米国として最大限の要求を網羅しており、対話による問題解決を重視し石油禁輸に慎重な中国やロシアの反対は必至だ。米国が目指す11日の採決に向け、制裁強化を求める日本を含めた各国間の駆け引きが激しさを増す。
 原案は13ページで、金正恩氏ら党幹部の制裁対象追加指定、公海上の船舶検査、石油禁輸、北朝鮮からの繊維製品の輸出禁止、出稼ぎ労働者の受け入れ禁止、国営の高麗航空の資産凍結が柱になっている。
 石油に関しては「原油、石油精製品、天然ガスの北朝鮮への供給や販売、持ち込み」を明記し、全面的に禁止した。資産凍結の対象には朝鮮人民軍の黄炳瑞総政治局長も含めた。
 採択されれば、北朝鮮に対する制裁決議は7月の2回のICBM発射に対応した8月5日以来になる。この際は、北朝鮮の主産品である石炭や鉄鉱石、海産物の輸出を全面禁止した。最大10万人ともされる出稼ぎ労働者については、各国に対し新規受け入れを認めないよう求めた。(共同)

 7日 −韓国国防省は、最新鋭迎撃システム「THAADミサイル」の発射台4基を予定通り韓国南部・星州の米軍施設に搬入したと発表した。THAADは通常、発射台6基で構成されており、すでに搬入済みの2基と合わせて配備が完了した。
 国防省は「各種弾道ミサイル発射や核実験により、より高度化する北朝鮮の核・ミサイルの脅威から国民の生命と安全を保護するための措置の一環だ」とのコメントを発表。中国が継続して在韓米軍へのTHAAD配備に反発していることと関連し「具体的な解消方法に関する関係国間の協議について検討している」とも説明した。(毎日新聞9. 8)

 −トランプ米大統領は、6回目の核実験を行った北朝鮮への対応について「軍事行動は間違いなく選択肢だ」とした上で、「軍事力を使えば北朝鮮にとって悲劇の日となる」と述べ、北朝鮮への攻撃を望まない考えを示した。ホワイトハウスでクウェートのサバハ首長と会談後、共同記者会見で語った。
 トランプ政権は国連安全保障理事会で北朝鮮への石油禁輸を含む「最強の制裁」を目指しており、国際社会による圧力強化で北朝鮮に非核化を迫る構え。石油禁輸に慎重な姿勢を示してきた中国やロシアと制裁決議をめぐる駆け引きが続いている。トランプ氏は軍事力行使を排除しない姿勢を示し、中ロに制裁強化への協力を迫る狙いとみられる。
 トランプ氏は会見で「私たちの軍はかつてなく強く、装備は最新だ」と強調。国連での制裁強化などを念頭に「他のことがうまくいけば素晴らしい」と語った。(共同)

 −メキシコ政府は、北朝鮮大使を「ペルソナ・ノン・グラータ」 (好ましからざる人物)として72時間以内に国外追放すると発表した。北朝鮮の核・ミサイル開発活動を理由にしている。核・ミサイル開発など北朝鮮の挑発をめぐり北朝鮮大使が追放されるのは極めて異例。中南米や欧州などで北朝鮮と外交関係を持つ国がメキシコに続けば北朝鮮は一層、外交的に孤立することになりそうだ。
 メキシコ外務省は声明で「北朝鮮はここ数カ月、国際法と国連安保理決議に違反して核実験とミサイル発射を強行している。こうした活動は平和と国際安全保障を危険にさらすもので、メキシコにとって重要な日本や韓国への脅威が増している」と指摘。北朝鮮による核・ミサイル活動を「絶対に拒否する」と非難し、金畑吉駐メキシコ大使に退去を命じた。(時事)

 11日 −中国環境保護省は11日までに、北朝鮮が実施した6回目の核実験について「わが国の環境に影響は与えていない」と結論付けた。同省の発表によると、核実験の直後から国境地帯で放射性物質を監視する緊急措置を発動したが、10日までに異常は見つからなかった。同日午後6時に緊急監視態勢を解除したという。(産経新聞9. 12)

 −国連安全保障理事会は11日夕(日本時間12日朝)、北朝鮮の6回目の核実験を受け、北朝鮮への石油輸出に上限を設けるなどした制裁決議を採択した。制裁に慎重な中ロも賛成し、全会一致だった。石油の全面禁輸を掲げた米国は中ロとの妥協で大幅譲歩を余儀なくされたが、「これまでよりはるかに強い決議」 (へイリー米国連大使)と強調した。
 北朝鮮に対する制裁決議は今回で9回目で、石油が対象になるのは初めて。へイリー氏は「安保理は今回これまでと異なる行動を取った。燃料と資金を断つことで核開発計画を北朝鮮のならず者体制から取り上げようとしている。石油は核兵器の製造、運搬の原動力だ」と評価した。
 決議は国連加盟国に対し、ガソリンや軽油などの石油精製品について年間200万バレルという対北朝鮮輸出の上限を設け、原油については過去1年の輸出量400万バレルまでの輸出を認めた。米政府によると北朝鮮は石油精製品を年間450万バレル輸入しており、55%の削減となる。全体では3割の削減。全面禁輸には北朝鮮の不安定化を嫌う中国などが反対したが、日本の別所浩郎国連大使は「石油精製品がまさに(核開発などに)使われるもの。そこを抑えているのは非常に大事だ」と話者団に語った。
 決議はまた、北朝鮮の繊維製品の輸出を禁止。繊維製品はこれまでの制裁に含まれていなかった北朝鮮の唯一の主力産業で、1年で7億6千万ドル(約830億円)を稼いでいた。今回繊維製品を禁輸対象としたことで、北朝鮮の輸出の9割が制裁対象になるという。
 北朝鮮が核や弾道ミサイル開発にあてる外貨稼ぎの手段にしているとされる労働者派遣は、現行の契約期間終了後は更新できなくした。北朝鮮は推計9万3千人の労働者を派遣しており、契約がすべて終了すれば5億ドル(約550億円)の影響があるといい、制裁が完全に履行されれば繊維製品と合わせて約13億ドルの資金を断つことになるという。
 当初案では金正恩・朝鮮労働党委員長の在外資産凍結や渡航禁止を盛り込んだが、北朝鮮が態度を硬化させる可能性があることなどから取り下げられた。
 制裁に慎重だった中国やロシアは「北朝鮮の核実験を強く非難する」(劉結一・中国国連大使)などとして、決議賛成に回った。両国はその一方で対話の必要性を何度も強調して米国の対応も批判、米国などとの温度差もあらわになった。(朝日新聞夕刊9. 12)

 12日 −北朝鮮問題を研究する米ジョンズ・ホプキンス大の研究グループ「38ノース」は、北朝鮮が今月実施した核実験の爆発規模が約250キロトン(TNT火薬換算)に上るとの試算を発表した。広島に落とされた原爆の17倍近くになる。
 同グループは当初、120キロトンと推定していた。しかし、米地質調査所(USGS)が測定したマグニチュード(M)を6.3と発表したほか、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)などが初期値のM5.8からM6.1に引き上げた。そのため、爆発規模を試算し直したという。同グループは、250キロトンは実験が行われた北朝鮮の豊渓里の核実験場が耐えうる最大値に非常に近いとしている。
 爆発規模をめぐっては、日本政府は当初70キロトンと試算した後、160キロトンに上方修正している。(朝日新聞夕刊9. 14)

 13日 −朝鮮中央通信によると、北朝鮮外務省は、国連安全保障理事会が採択した北朝鮮への追加制裁決議について、「全面的な経済封鎖によってわが国家と人民を完全に窒息させることを狙った挑発行為の産物として糾弾し、全面的に排撃する」と非難した。北朝鮮が追加制裁に関する公式の反応を発表したのは初めて。
 同省は制裁決議の採択について、「米国があらゆる卑劣で悪辣な手段を動員して仕立て上げた」などと指摘。今後の対応として、「米国と実際の均衡を成し、わが方の自主権と生存権を守って地域の平和と安全を保障するための力を強化していく」と述べ、核・ミサイル開発を継続する方針を強調した。
 北朝鮮外務省が13日に発表したのは「報道」という形式で、「声明」や「報道官談話」より格下だった。(読売新聞夕刊9. 13)

 15日 −北朝鮮は15日午前6時57分ごろ、平壌近郊の順安地区から弾道ミサイル1発を太平洋に向けて発射した。韓国軍合同参謀本部が発表した。日本政府は、北朝鮮からのミサイルが北海道上空を通過し、襟裳岬東方の太平洋上に落下したと発表。発射直後に全国瞬時警報システム(Jアラート)で国民に情報を伝え、避難を呼びかけた。
 北朝鮮のミサイルが日本列島を越えたのは、8月29日以来で、6回目。日本政府によると、ミサイルは午前7時4分から7時6分ごろ、北海道上空を通過し、7時16分ごろに襟裳岬東約2200キロメートルの太平洋上に落下した。
 日本の領域への落下物は確認されておらず、航空機や船舶への被害情報も寄せられていない。
 最大高度は約800キロ、飛行距離は過去最長の約3700キロに達したとみられる。小野寺五典防衛相は「米領グアムに十分届く飛距離」とし、北朝鮮が8月29日に発射した新型の中距離弾道ミサイル「火星12」(射程4500〜5千キロ)である可能性を指摘。「性能を確実に向上させている」との見方を示した。
 菅義偉官房長官は「(高角度で打ち上げる)ロフテッドなどの特異な高度ではなかった」と語った。通常に近い角度で撃った可能性がある。
 飛行距離は8月29日の発射時よりも約1千キロ伸びた。北朝鮮は8月、米軍基地のあるグアムの周辺を中距離弾道ミサイルで包囲射撃すると予告している。北朝鮮からグアムまでの距離は約3400キロで、米側に実際に攻撃できると示す狙いがあった可能性もある。
 北朝鮮は3日に6回目の核実験を実施。国連安全保障理事会が11日に新たな制裁決議を採択すると、強く反発した。官営メディアは核とミサイル開発の継続を繰り返し訴えていた。
 また、金正恩朝鮮労働党委員長も8月の「火星12」の試射を視察した際、太平洋上に向けて弾道ミサイルを数多く発射するよう指示していた。制裁決議からわずか4日後に挑発に出たことで、朝鮮半島情勢は更に緊張の一途をたどることは間違いない。
 一方、韓国軍は、北朝鮮のミサイル発射と同時に、玄武2型の弾道ミサイルを日本海側に試射する演習を行った。ミサイルは平壌までの距離約250キロに合わせて落下し、報復能力を示した。韓国政府は15日午前8時、NSCを招集した。(朝日新聞夕刊9. 15)

 −北海道上空を通過した北朝鮮による弾道ミサイル発射を受け、国連安全保障理事会は15日午後3時(日本時間16日午前4時)に緊急会合を開催し、ミサイル発射を「極めて挑発的」と強く非難し、これまで採択された制裁決議の完全かつ即時実施を求める報道声明を発表した。声明は新たな制裁については言及していない。
 緊急会合は日米韓が要請した。報道声明には拘束力がないが、全15理事国の同意が必要で、中国、ロシアを含む全理事国が賛同した。会合後、議長国エチオピアのアレム国連大使が報道声明を読み上げた。
 声明は、「北朝鮮による発射と暴挙を強く非難する」と述べ北朝鮮に対しすべての挑発行動を即時停止するよう要求した。また、日本を飛び越えたミサイル発射について、日本だけではなく「すべての国連加盟国への脅威」と指摘した。
 さらに、全加盟国に対し、安保理の北朝鮮制裁決議を完全かつ包括的に即時実施するよう要請。北朝鮮問題の平和的、政治的、外交的な解決に尽力することも強調した。
 北朝鮮による6回目の核実験を受け安保理が11日に採択した決議には、北朝鮮向けの原油や石油精製品の輸出に上限を設ける追加制裁とともに、新たな挑発行動には「さらなる重大な措置」を取ると表明していたが、今回の声明は新たな措置に触れていない。英国のライクロフト国連大使は会合前、追加制裁や措置について「月曜日(11日)に採択したばかりだ」と述べており、決議の完全実施を優先したとみられる。
 日本の別所浩郎国連大使は会合後、「北朝鮮が政策を変えるまで圧力をかけ続ける必要があると主張した」と発言。北朝鮮への非難と制裁決議の完全実施という点で、安保理の足並みはそろったとの見方を示したが、追加制裁については明言を避けた。(毎日新聞夕刊9. 16)

 −トランプ米大統領は首都ワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地で演説し、北朝鮮の弾道ミサイル発射について「近隣国と全世界を完全に侮辱していることを改めて示した」と批判した。「この脅威に対する(軍事的)選択肢は有効で圧倒的だ」と強調した。
 トランプ氏は空軍基地で軍人らを前に演説。「我々は生活を脅かそうとする者すべてから国民を守る」と強調した。
 一方、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)は同日のホワイトハウスでの記者会見で、北朝鮮への「軍事的選択肢はある」としたうえで「使いたくない」とも述べた。「米国と北朝鮮の問題ではなく、世界と北朝鮮の問題だ」と強調し、国際社会が協力して北朝鮮に外交・経済的な圧力を加える必要があると訴えた。
 記者会見に同席したサンダース大統領報道官は、トランプ氏が国連総会で「北朝鮮に強力な圧力をかけることが極めて重要であることを明確にする」と説明した。ヘイリー国連大使は「持ちうる外交的選択肢を実行する」と述べた。(日本経済新聞夕刊9. 16)

 16日 −北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、平壌から15日に東に向けて発射した弾道ミサイルに関し、中距離弾道ミサイル「火星12」の発射訓練が実施され、金正恩朝鮮労働党委員長が現地指導したと伝えた。
 金委員長は訓練の「成功」を高く評価し、「『火星12』の戦力化が実現した」と述べるとともに、核戦力の完成について「今はその終着点にほぼ達した」と主張した。「核弾頭の実戦配備」にも言及し、軍事的選択肢を示唆するトランプ米政権を強くけん制した。
 同通信によれば訓練は「われわれへの軍事力使用を叫んでいる米国の好戦性」を抑え込み、迅速かつ強力な軍事的対応で対抗するため、攻撃と反撃作戦遂行能力をさらに強化し、核弾頭の取り扱い手続きを点検する目的で行われたとしている。
 ミサイルは予定された軌道に沿って飛行し、北海道上空を通過、太平洋上に設定された目標水域に「正確に着弾した」という。ミサイルの最高高度は約800キロに達し、飛行距離は約3700キロと推定されている。
 金委員長は「大国主義者たちに対し、彼らの無限の制裁や封鎖の下でも、わが国が国家核戦力完成の目標をどのように達成するかをしっかりと見せるべきだ」と強調し、終着点にほぼ達したとの認識を示した。その上で「全国家的なすべての力を尽くして終えなければならない」と訴えた。
 さらに「各種核弾頭の実戦配備に合わせ、その取り扱い手続きを厳格に確立しなければならない」と指摘。「われわれの最終目標は、米国と実質的な力の均衡を達成し、米国の執権者(トランプ大統領)の口からわが国に対する軍事的選択などという無駄口が出ないようにすることだ」と述べ「米国が耐えられないような核反撃を加えることができる軍事的攻撃能力を引き続き強化しなければならない」と強調した。(時事)

 −北朝鮮の朝鮮中央テレビは、金正恩朝鮮労働党委員長が中距離弾道ミサイル「火星12」の発射を現地指導したと報じ、発射場面を放映した。15日朝、平壌近郊の順安地区から発射し、日本上空を通過した弾道ミサイルとみられる。映像には、移動式発射台から直接ミサイルを発射する場面が映し出されていた。
 朝鮮中央通信は16日、今回の発射は「実戦的な行動を確定する目的で行われた」と指摘。正恩氏が「『火星12』の戦闘性能と信頼性が徹底的に検証され、戦力化が実現した」と述べたと伝えた。また、正恩氏は、目標としてきた核戦力の完成について「最終点にほぼ遷した」と語ったとした。
 8月29日、日本上空を通過した「火星12」の発射では、ミサイルを車両型の移動式発射台で運んだ後、地上に降ろして打ち上げていた。ミサイルを降ろす作業がなくなれば、発射準備にかかる時間は大幅に短縮される。移動式発射台から直接発射する場面を公開することで、いつでも迅速に発射できる能力を持ったとアピールした可能性がある。(朝日新聞9. 17)

 17日 ※米政策研究機関「憂慮する科学者同盟」のミサイル技術専門家デビッド・ライト氏は、北朝鮮が今回発射した弾道ミサイルが「グアムの米空軍基地を破壊できる可能性は10%以下」との見方を本紙に語った。
 今回発射された中距離弾道ミサイル「火星12」について、ライト氏は、発射直後にエンジンの燃焼で加速する「ブースト段階」での誘導・制御システムのエラーや大気圏への再突入時のエラーから、平壌から約3400キロ・メートル離れたグアムを狙っても、5〜10キロ・メートルか、それ以上の誤差が生じる可能性があると指摘。爆心地が基地から大幅に外れ、TNT火薬換算で広島に投下された原爆の10倍に相当する150キロ・トンの爆発威力のある核爆弾を撃ち込んだとしても、基地を破壊できる可能性は10%以下になるという。
 また、今回発射したミサイルの弾頭を1万キロ・メートル飛行させて大気圏に再突入させた場合、弾頭の表面温度は今回の1.8〜1.9倍になる計算という。その上で「北朝鮮は1万キロ・メートル飛行しても高熱に耐えられるミサイルを開発できそうに見えるが、今回のテストでは(その性能を)証明していない」と分析。ICBMに搭載する弾頭の大気圏再突入技術の実証にはつながらなかったとの見方を示した。(読売新聞9. 17)

 18日 −朝鮮中央通信によれば北朝鮮外務省は弾道ミサイル発射に対する国連安全保障理事会の15日の報道声明に関して報道官談話を発表し、「我々の体制と政権、人民を抹殺しようとする極悪非道な敵対行為だ」と非難した。「米国と追従勢力が制裁や圧力にしがみつくほど、核戦力完成の終着点へと疾走する速度は増す」と強調した。(朝日新聞9. 19)

 −スペイン外務省は、北朝鮮がミサイル発射と核実験を再び実施したことに抗議し、駐マドリードの北朝鮮大使に国外退去処分を通告したと発表した。スペインのメディアが伝えた。
 スペイン外務省は8月末、日本上空を通過する形で北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことを受けて、北朝鮮大使館の外交官3人のうち1人を退去させると通告した。その後も北朝鮮が核実験とミサイル発射を強行したため、今回の措置に至ったとしている。(共同)

 −クウェート政府は同国に駐在する北朝鮮大使に対し、1カ月以内の国外退去を命じた。ロイター通信が18日までに、北朝鮮の外交筋の話として伝えた。核・ミサイル開発を強行する北朝鮮への対抗措置。(共同)

 −マティス米国防長官は、核・ミサイル開発で挑発を強める北朝鮮への軍事的選択肢に関し、韓国の首都ソウルを北朝鮮の報復で「重大な危険」に陥らせることのない軍事的手段があると記者団に明かした。作戦の詳細について言及することは控えた。
 米軍の攻撃を受け、北朝鮮が南北軍事境界線付近に展開した多数の長距離砲などで約50キロ程度の距離にあるソウルへの攻撃で報復する恐れから、先制攻撃は難しいとされてきた。マティス氏は先制攻撃が可能であると強調することで北朝鮮を牽制するとともに、同盟国の防衛に責任を果たす決意を示したとみられる。
 マティス氏はまた、韓国への戦術核の再配備について韓国側と協議したことを認めた。マティス氏が訪米した韓国の宋永武国防相と8月30日に会談した際、再配備が議題になったことが明らかになっていた。
 ただ、マティス氏は米軍が実際に再配備する可能性は否定し、「 (韓国とは)選択肢について議論した」と述べるにとどめた。
 一方、マティス氏は、北朝鮮が15日に発射した日本上空を通過する弾道ミサイルを迎撃しなかったのは日米などの直接的な脅威ではないと判断したためだと説明。北朝鮮が米軍の軍事行動を招く一線を越えないよう太平洋を狙って発射したとの認識を示した上で、「米領グアムや日本への脅威になる場合には異なる対応をとる」とし、必要なら迎撃する決意を表明した。(産経新聞9. 20)

 19日 −トランプ米大統領は、国連総会で初の一般討論演説を行い、外交分野に関する政権の理念と戦略について表明した。トランプ氏は持論である「米国第一」を掲げる一方、北朝鮮の核・ミサイル開発問題を「世界全体の脅威だ」と指摘し、国連が一体となって北朝鮮に核放棄を迫っていくべきだと訴えた。
 トランプ氏は北朝鮮やイランを「ならずもの体制だ」と指摘。北朝鮮の金正恩体制について「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」と述べ、北朝鮮の核・弾道ミサイルは金体制の崩壊につながると警告。「米国はあらゆる手段を講じて自国と同盟国を防衛する」と言明するとともに、もし軍事攻撃に踏み切る事態となれば「北朝鮮は完全に破壊される」と強調した。
 また、加盟各国に対し国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議の確実な履行などを通じた締め付け強化を要請するとともに、先の安保理決議で賛成に回った中国とロシアに対して謝意を表明した。
 一方、日本の横田めぐみさん(52)=拉致当時(13)=を念頭に、「日本人の13歳の少女が拉致された。彼女はスパイの養成に利用された」と述べるとともに、「北朝鮮はすさまじい人権侵害を行っている」と非難した。(産経新聞9. 20)

 20日 −米ニューヨークを訪問中の安倍晋三首相は20日午後(日本時間21日未明)、国連総会で16分間、一般討論演説を行った。全体の8割を北朝鮮問題に割き、「対話による問題解決の試みは無に帰した」と断言して圧力強化を訴えた。
 首相は北朝鮮が繰り返す核実験とミサイル発射について「 (核)不拡散体制は史上最も確信的な破壊者によって深刻な打撃を受けようとしている」と指摘。1994年の米朝枠組み合意と07年の6者協議合意が破られ、水爆とICBMの開発が進められている現状に触れ、「対話とは、北朝鮮にとって我々を欺き、時間を稼ぐため、むしろ最良の手段だった」と非難した。
 首相は、北朝鮮への石油の輸出制限を初めて盛り込んだ11日の安全保障理事会決議の採択後もミサイルが発射された事実を踏まえ、「決議はあくまで始まりにすぎない。必要なのは行動だ」とも強調。全ての国連加盟国に一連の制裁決議の厳格な履行を求めた。
 そのうえで首相は「北朝鮮が勤勉な労働力や地下資源を活用すれば経済を飛躍的に伸ばし、民生を改善する道があり得る」と指摘。「そこにこそ北朝鮮の明るい未来はある」と結んだ。(朝日新聞夕刊9.21)

 −核兵器の運用を担う米戦略軍のハイテン司令官は、ワシントン市内で講演し、北朝鮮が開発を進める核弾頭搭載可能なICBMについて、「北朝鮮はすべて(の技術)を統合できたことをいまだ証明していない」と述べ、完成にはまだ時間がかかるとの認識を示した。
 ハイテン司令官は「 (大気圏への再突入や核弾頭の小型化など)すべての技術を統合する最終段階が最も難しい」と指摘。米国はその段階を克服するために大規模な実験場を2カ所建設したが、「北朝鮮はそのような設備を持っておらず、(ICBMの)完成形を示していない」と述べた。
 一方、「完成が2017年になるか18年、19年になるかは分からない」としつつも、「運によるものか試行錯誤によるものかは別として、開発を進めていけば、いずれ完成させるのは間違いない」と警告した。
 また、米軍のセンサーやレーダー、迎撃ミサイルはすべて北朝鮮の脅威に対応するために構築されていると強調。さらに米軍は北朝鮮を完全に圧倒する核戦力を持っていると語り、北朝鮮のミサイル攻撃に対する抑止力は「可能な限りで最も強固だ」と自信を示した。(時事)

 21日 −トランプ米大統領は21日午後(日本時間22日未明)、北朝鮮と取引する企業への制裁を科す大統領令に署名したと発表した。金融やエネルギーから鉱業、繊維製品まで幅広い分野が対象となり、北朝鮮の経済封鎖を目指す厳しい内容だ。核・ミサイル開発の資金源を断つ狙いがある。トランプ氏は、ニューヨークで同日開かれた日米韓3カ国首脳会談の冒頭で制裁内容を明らかにした。
 米政府はこれまで、北朝鮮の大量破壊兵器開発に関与した疑いがある中国などの企業に対して制裁を科してきた。今回の大統領令によって、北朝鮮と金融や物流、サービス業に至る広い分野で取引をする企業が制裁対象となる。
 大統領令によると、北朝鮮に立ち寄った航空機や船舶は180日間、米国への入国が禁じられる。北朝鮮の金融やエネルギー、水産、繊維など幅広い産業において関与した団体・個人を制裁対象に指定する。
 また、北朝鮮と取引をする外国金融機関が米金融システムから締め出されることも盛り込まれた。トランプ氏は大統領令によって「米国と取引をするのか、北朝鮮の『無法政権』の貿易を手助けするのかの選択を迫られることになる」と述べ、外国金融機関に対して北朝鮮との取引を中止するように迫った。
 北朝鮮側との取引が認定されれば、対象となった団体や個人の米国内の資産が凍結されることになる。トランプ氏は「北朝鮮の通商と金融が大きく制限されることになる」と意義を強調した。
 今回の最大の制裁対象となりうるのが、北朝鮮の対外貿易の9割を占める中国企業だ。これに関してトランプ氏は、中国人民銀行(中央銀行)が、国内の金融機関に対し、北朝鮮との取引を停止するように通達したことを明らかにした。中国の金融機関が制裁対象となることを避けるための措置とみられる。トランプ氏は、中国の習近平国家主席に対し「思い切った行動をとってくれたことに感謝する」と評価した。(朝日新聞夕刊9. 22)

 −北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、声明を発表し、北朝鮮に対し「完全に破壊する」と警告したトランプ米大統領の国連演説について「歴代最も暴悪な宣戦布告だ」と非難し「史上最高の超強硬対応措置の断行を慎重に考慮する」と表明した。朝鮮中央通信が22日伝えた。
 声明は国家の最高位とされる国務委員長名義で、金氏が平壌の党庁舎で発表した。金氏が自ら声明を発表したのは初めて。韓国統一省によると、故金日成主席、故金正日総書記の統治時代にも最高指導者名義の声明は出されたことがない。米国に強い警告を送った。
 北朝鮮の李容浩外相は21日、訪問先の米ニューヨークで記者団に対し「超強硬対応措置」は「水爆実験を太平洋上で行うこと」ではないかと述べた。
 声明は「我が国と人民の尊厳と名誉、そして私自身の全てを懸け、我が国の絶滅をわめいた米統帥権者の妄言に対する代価を必ず支払わせる。米国の老いぼれを必ず火で制御する」と威嚇した。
 「完全に破壊する」との発言について「歴代どの米大統領からも聞かれなかった前代未聞の粗野なたわ言だ。世界に向かって言葉を発する時は、語彙を慎重に選んで相手を見てすべきだ」とトランプ氏に「勧告」した。
 トランプ氏について「最高統帥権者として不適格で、政治家ではなく火遊びを楽しむならず者、ごろつきに違いない」とやゆ。その発言は「私を驚かせ立ち止まらせたのではなく選択した道が正しく最後まで進むべき道であると確証させた」と述べ、核・ミサイル開発を続ける姿勢を示した。
 トランプ氏は19日の国連総会一般討論演説で「 (米国や同盟国が防衛を迫られれば)北朝鮮を完全に破壊するしか選択肢はなくなる」と述べ、武力行使を警告した。(共同)

 22日 −トランプ米大統領は、アラバマ州ハンツビルで演説し、北朝鮮の李容浩外相が示唆した太平洋上での水爆実験を念頭に、「大量破壊兵器の太平洋上での爆発は大惨事を引き起こす」と警告した。また、弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を「小さなロケットマン」と再びやゆし、「私が対処する」と訴えた。
 トランプ氏はまた、「異常な男にロケットを至る所に撃たせるわけにはいかない」と述べ、北朝鮮のミサイル実験をけん制した。金委員長については「賢いかもしれないし、戦略的かもしれないし、完全に正気を失っているかもしれない」と指摘した。
 一方、ソーントン米国務次官補代行(東アジア・太平洋担当)も22日、ニューヨークで記者会見し、水爆実験について「(実行すれば)北朝鮮による前例のない侵略行為になる」と強調。その上で、国際社会による報復を招くとけん制した。ただ、米国がどのような措置を取るかは明らかにしなかった。
 トランプ氏が国連総会の一般討論演説で「 (北朝鮮は)自滅に向けた道を突き進んでいる」と指摘したことに関して、ソーントン氏は米国や同盟国への攻撃を行えば、米国は激しい報復を行う用意があるという考えを示したものだと説明した。
 さらに「北朝鮮は非核化に向けた対話に真剣に臨む兆候を見せていない」と指摘したが、北朝鮮が対話を求める呼び掛けに応じることを「希望し、待っている」とも強調。現時点では北朝鮮核問題の外交的解決を追求する姿勢を示した。(時事)

 23日 −中国商務省は、北朝鮮の6回目の核実験に対する国連制裁決議に基づき、北朝鮮への石油精製品の輸出制限を軸にした制裁を発表した。10月1日〜12月末の輸出量の上限を50万バレルに、2018年は年間の上限を200万バレルとした。北朝鮮への圧力強化を求めるトランプ米大統領に制裁決議を履行する姿勢を示した。商務省が22日付で関係機関に通知した。
 国連安全保障理事会が11日に採択した北朝鮮への追加制裁は、石油精製品の輸出制限に踏み込んだ。米国の試算によれば、北朝鮮はガソリンや軽油など石油精製品を年450万バレル輸入している。ほとんどが中国製とみられる。中国は今回の削減率を明示していないが、輸出を半分超も減らす可能性がある。
 国連制裁は石油精製品を絞るが、原油は前年水準の供給を認めた。中国は今回、原油に言及していない。北朝鮮は国内に製油所を持ち、輸入した原油をもとに軍事目的に使うガソリンや軽油などの石油精製品を作っている。ただ、その生産能力には限度もあり、軍の活動に影響を与えるのは間違いない。
 中国は液化天然ガス(LNG)の輸出や北朝鮮の主要産品である繊維製品の輸入も23日から禁止した。制裁決議を採択した11日以前に契約書を交わした商品も12月11日以降は輸入できなくなる。中朝国境地帯には繊維製品を扱う貿易事業者が多く、経済的な影響は大きい。
 金融でも事実上の独自制裁に踏み切った。中国の主要銀行が昨年から北朝鮮籍の個人や企業の口座取引を段階的に制限し、8月末までに大半のサービスを停止した。中国人民銀行(中央銀行)は11日、北朝鮮の名指しを避ける形で国連決議を履行するよう各銀行に通知。ロイター通信によると、18日には北朝鮮との取引停止を求める通知を追加で出した。
 トランプ氏は21日、北朝鮮と取引する企業に制裁を加える新たな大統領令に署名。中国の銀行には米国の制裁対象になるのを回避する思惑もあるとみられる。18日の中銀の通知を公表しないのは、中国が国連決議に基づかない単独制裁に反対していることとの整合性を考慮した可能性がある。(日本経済新聞9. 24)

 −北朝鮮の李容浩外相は、国連総会の一般討論で演説し、「我々のロケット(ミサイル)を米国全体に到達させることを不可避にした」と警告した。トランプ米大統領が19日の演説で、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を「ロケットマン」と呼び、「自滅への道を突き進んでいる」とやゆしたことに強く反発した形だ。
 一方で米軍は23日、戦略爆撃機Blを北朝鮮東方沖に展開して軍事的にけん制を強めた。トランプ氏も李外相の演説を受けて同日、「小さなロケットマン(金委員長)の考えをなぞっているのだとすれば、彼らは共に長くないだろう」とツイートした。北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源を断つため、トランプ政権は「経済封鎖」を目指して制裁圧力も高めており、米朝間で威嚇の応酬が激しさを増している。
 李外相は演説で「自滅への道を突き進んでいるのはトランプ自身。罪のない米国人が巻き込まれて死んだら、全責任はトランプにある」とし、トランプ氏を「誇大妄想と独りよがりな考えに満ちた精神錯乱者」「ギャンブラー」と非難した。また、北朝鮮の核戦力について「究極の目標は米国とのパワーバランスの確立」と主張。今月の「水爆実験」で、「核武装の完成段階に入った」とし、「米国や追随勢力が北朝鮮指導部の『斬首』工作や軍事攻撃を行う兆候をみせた場合、容赦なく先制攻撃で予防する」とした。一方、「米国の軍事攻撃に参加しない国に核兵器を使用したり、核兵器を使うと脅したりする意図はない」とした。(毎日新聞9. 25)

 −米国防総省は、米領グアムから飛び立ったBl戦略爆撃機が、北朝鮮の東方沖の国際空域を、今世紀で最北の地点まで飛行したと発表した。核・ミサイル開発を強行する姿勢を改めない北朝鮮に対し、米軍の即応展開能力の高さを誇示し、軍事的圧力をかけた。
 同省によると、今回の飛行は「21世紀に米軍の戦闘機と爆撃機が飛行したなかで最も北」まで到達した。具体的な到達地点は明らかにしていないが、韓国と北朝鮮の軍事境界線より北に位置する国際空域としている。同省のホワイト報道官は声明で「米大統領はあらゆる脅威を打ち砕く多くの軍事的選択肢を持っている、との明快なメッセージと決意を示すため」と説明。さらに「米国は、自国と同盟国を守るため、持ちうる限りの軍事的能力を使う準備ができている」と強調し、北朝鮮を強くけん制した。
 米軍関係者によると、2機のBl爆撃機に、沖縄県の米軍基地から飛行した6機のF15戦闘機が護衛として合流し、計8機で展開した。(読売新聞9. 25)

 24日 −ロシアのラブロフ外相は24日に放映されたテレビ番組で、「米国は北朝鮮を攻撃できない。核爆弾があると知っているからだ」と述べ、北朝鮮への圧力を強める米国を牽制した。これまでロシアは北朝鮮について、核保有国の地位は認めないとしてきたが、現時点では事実上の核保有国として対応することを求めた。
 ラブロフ氏はプーチン大統領も「米国などが(核兵器の)存在を完全に排除できる情報を持っているとは思えない」と話したと述べ、「北朝鮮を擁護しないが、この分析には誰もが同意している」と強調した。
 ラブロフ氏は大量破壊兵器の保有を理由に米英軍が侵攻したイラク戦争について、「米国は、イラクに大量破壊兵器がないとの情報があったから攻撃した」と皮肉った。その上で、米国が北朝鮮情勢に慎重に対応しなければ「韓国や北朝鮮、日本で数万人以上の罪の無い市民が被害を受ける恐れがある」と警告。「ロシアと中国は隣にある」とも強調した。(朝日新聞9. 25)

 −米トランプ政権は、渡航者に対する新たな入国規制令を発表した。従来のイスラム圏諸国に加え、核問題で対立する北朝鮮や、マドゥロ政権の独裁化で関係が悪化するベネズエラなどを加え、8カ国が対象となった。新たな規制は10月18日から執行される。
 対象となるのは、従来のイラン、リビア、ソマリア、シリア、イエメンのほか、北朝鮮、ベネズエラ、チャド。これまで対象だったスーダンは外れた。今回は一律に入国を一時禁止するのではなく、米当局への協力姿勢や、米国に与える脅威の度合いにあわせて段階的な規制になっており、国や身分により入国の一時禁止から審査の厳格化まで対応が異なる。
 新たに対象に加わった北朝鮮はシリアと並び、すべての国民の入国を一時禁止する最も厳しい内容。ホワイトハウスは声明で「北朝鮮は米国政府に協力せず、情報共有の要求も満たしていない」としている。政府高官によると、実際には、北朝鮮から米国への渡航者の数はかなり少ないという。ベネズエラは一部の政府機関職員などの入国が一時禁止になる。(朝日新聞夕刊9. 25)

 25日 −国連総会のため訪米中の北朝鮮の李容浩外相は、ニューヨークの宿泊先のホテル前で話者団に対し、トランプ米大統領が「(北朝鮮は)長くはないだろう」と述べたことについて、「彼(トランプ氏)は宣戦布告をした」と主張した。その上で、北朝鮮には米戦略爆撃機の撃墜を含む「自衛的な対応を取るあらゆる権利がある」と警告した。
 トランプ氏は先週、国連総会の一般討論演説で、金正恩朝鮮労働党委員長を「ロケットマン」とやゆした上で、北朝鮮が米国に脅威を与えるなら「完全に破壊する」と警告。さらに、李外相の国連総会の演説についても、「ちびロケットマン(正恩氏)の考えを繰り返したのであれば彼らは長くないだろう」とツイッターに投稿した。
 李外相はこうしたトランプ氏の発言をめぐり、「世界は米国が最初に宣戦布告をしたことを明確に覚えておかなければならない」と訴えた。
 その上で、国連憲章は国連加盟国が自衛措置を取る権利を定めていると指摘。「領空に入っていなくても、戦略爆撃機の撃墜を含め、われわれには自衛的な対応を取るあらゆる権利がある」と述べ米軍のBl戦略爆撃機などが北朝鮮東方沖を飛行したことをけん制した。
 米軍は23日、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対抗し、BlとF15戦闘機を朝鮮半島に展開。米国防総省の発表によればBlとF15は北朝鮮と韓国の軍事境界線を越え、北朝鮮東方の国際空域を飛行し、「今世紀で最も北まで飛行した」 (同省報道官)という。(時事)

 −サンダース米大統領報道官は、北朝鮮の李容浩外相が「(米国が)宣戦布告をした」と発言したことに関し、「宣戦布告はしていない。率直に言って、そのような考えはばかげている」と強く否定した。
 報道官は記者会見で「平和的に朝鮮半島の非核化を目指す方針に変わりはない」と強調。「現時点で最大限可能な経済・外交圧力をもって実現する」と述べた。
 米軍は23日、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対抗し、Bl戦略爆撃機を北朝鮮東方の国際空域に展開。李外相は記者団に対し、今後は自衛のために撃墜する可能性があると警告した。
 これに対し、国防総省のマニング報道部長は「われわれには国際空域を飛行する権利がある」と反発。「北朝鮮が挑発行為をやめなければ大統領にさまざまな対抗策を提示する」とけん制した。(時事)

 26日 −韓国の情報機関、国家情報院は、米空軍が23日に戦略爆撃機を北朝鮮東方沖の国際空域に飛行させたことについて、「北朝鮮は全く予想しておらず、レーダーなどでも探知できず、対応措置を取れなかった」と明らかにした。「米国側は北朝鮮が気付かなかったとみて、爆撃機の飛行ルートを公開した」という。
 国情院によると、北朝鮮は後続措置として航空機を日本海沿岸に移動させ、態勢を強化しているという。非武装地帯(DMZ)周辺では偶発的な衝突を避けるため、まずは報告し、その後対応するよう指示が出ていると語った。(日本経済新聞夕刊9. 26)

 −トランプ米大統領は、ホワイトハウスでスペインのラホイ首相と会談後の記者会見で、北朝鮮に対する軍事攻撃について、「第2の選択肢だ」とした上で、「準備は万全だが、これを選択すれば北朝鮮は壊滅的打撃を受ける」と警告した。
 米朝の首脳間で非難の応酬が激化していることに関しては、北朝鮮が挑発的な言動を始めたのに対抗しているだけだと述べ、金正恩朝鮮労働党委員長は「口にすべきではないことを言っている」と非難した。
 さらに、歴代米大統領が北朝鮮への対応で失敗し、「私に大変な難題を残した」とした上で「私がその難題を解決する」と言明した。
 一方、ダンフォード米統合参謀本部議長は26日、上院軍事委員会の公聴会で証言し、核・弾道ミサイル開発を進める北朝鮮と米国との非難合戦が激しさを増し、「政治環境が変化した」と指摘しつつ、北朝鮮軍の態勢には変化はみられないとの見解を明らかにした。
 ダンフォード氏はまた、北朝鮮が米本土を射程に収める核弾頭搭載可能なICBMの運用能力を確保したかどうかについて、北朝鮮が「非常に短期間」でそうした能力を確立させるだろうと指摘。大気圏再突入技術などの課題は残るものの、「北朝鮮に(米本土攻撃の)能力があり、使用する意図があると想定する必要がある」と述べた。
 その上で、北朝鮮のミサイルの性能や保有数、脅威の質などを勘案した場合、「北朝鮮のICBMからハワイと米本土を防衛することができる」と強調した。(産経新聞9. 28)

 −米財務省は、北朝鮮の核・ミサイル開発に絡み、北朝鮮の8銀行と中国、ロシア、リビア、アラブ首長国連邦(UAE)で活動する北朝鮮人ら銀行関係者26人を制裁対象に指定した。米国内の資産が凍結され、米国人との取引が禁止される。
 今回の制裁の一部については、トランプ大統領が21日に発表した北朝鮮制裁強化の大統領令を初めて用いた措置で、同国の金融ネットワークに打撃を与える狙いがある。
 ムニューシン財務長官は声明で、「朝鮮半島の非核化と平和という広範囲に及ぶ目標を達成するために北朝鮮を完全に孤立させる戦略を進めるものだ」と強調した。また、財務省は「11日に採択された国連安保理の北朝鮮制裁決議を補完する」と指摘した。(時事)

 28日 −中国商務省は北朝鮮の6回目の核実験を受けた国連安保理制裁に従い、決議の採択日(中国時間12日)から120日以内に、北朝鮮の個人・団体が中国に設立した合弁企業(JV)や全額出資企業の閉鎖を命じる通知を出した。中国企業が北朝鮮の個人・団体と共に中国以外で設立したJVも閉鎖対象とした。
 中国は北朝鮮のICBM発射を受けた別の制裁決議に伴い、8月から北朝鮮との新たなJV設立を禁止している。
 北朝鮮の最大の貿易相手である中国は、米国をはじめ国際社会から影響力を行使するよう再三求められてきた。一方、中国では国民の間にも核実験による放射能などを懸念する声が上がり、王毅外相は国連演説で「地球上に新たな核保有国ができてはならない」と強調。制裁決議に協力姿勢を示し、履行を進めている。
 既に北朝鮮の最大の外貨獲得源だった石炭をはじめ、繊維製品や海産物などの輸入停止や、中国からの石油精製品の輸出制限も打ち出した。(時事)

 −28日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、北朝鮮が東部咸興の化学繊維工場で秘密裏に長距離弾道ミサイル用の燃料を自主製造している可能性があると報じた。米核問題専門家ジェフリー・ルイス氏らの話としている。
 専門家の間では、北朝鮮はこれまでこの燃料をロシアや中国からの輸入に依存しているとみられていた。核問題に詳しいマサチューセッツ工科大(MIT)のバイピン・ナラン准教授は、自主製造が事実であれば、核・ミサイル開発を断念させるため北朝鮮の支援国に科されている制裁はほとんど効果がなくなると指摘している。
 ルイス氏らは衛星写真や北朝鮮から亡命した元政府関係者の証言、同種燃料を製造する際に発生する極めて毒性の強い廃水の処理方法に関する北朝鮮政府の技術論文などを分析。咸興の工場でUDMHと呼ばれるミサイル用燃料が製造されている疑いがあると判断した。
 米国家情報長官の報道官ティモシー・バレット氏も同紙の取材に「北朝鮮が示してきた科学技術能力を考えると、おそらく自国でUDMHを製造できる」と話している。
 国連安全保障理事会は弾道ミサイル関連物資に当たるとして、UDMHを禁輸対象に指定しているが、ルイス氏は北朝鮮が既に必要な量のUDMHを貯蔵している可能性が高いとしている。(共同)

 29日 −ロシア外務省で朝鮮半島問題を担当するブルミストロフ巡回大使と北朝鮮外務省の崔善姫北米局長は、モスクワで会談し、米朝の非難の応酬で緊張が高まる朝鮮半島情勢の事態打開に向けて意見交換した。
 北朝鮮の核・ミサイル開発について、ロシアは対話による問題解決を主張しており、北朝鮮はロシアへの接近を強めている。ロシアは米朝の間に入り、この問題に関与することで国際社会での存在感を示す狙いがありそうだ。(時事)

 30日 −米国務省のナウアート報道官は、声明を発表し、米国が核・弾道ミサイル開発を続ける北朝鮮の金正恩体制と「意思疎通ができる複数のチャンネルを確保している」と述べた。
 声明に先立ち、中国訪問中のティラーソン米国務長官が30日、北京で記者団に、北朝鮮側と接触して対話の意思があるのか探っていると語っていた。
 ナウアート氏はその上で、「米国が(北朝鮮の)体制崩壊の促進や政権転覆の追求、朝鮮半島の統一の加速化や軍事境界線の北側への侵攻に関心がないと断言しているのに、北朝鮮の当局者らは非核化に関する対話への関心も、対話の用意がある様子も示していない」と語った。
 トランプ政権が北朝鮮と核問題に関して直接やりとりしていることを明らかにするのは初めて。(産経新聞10、2)

 −米紙ワシントン・ポスト電子版はトランプ大統領が、米サイバー軍による実力行使を含め、北朝鮮に対する圧力強化戦略を盛り込んだ非公表の大統領令に政権発足初期の段階で署名していたと報じた。
 サイバー軍による作戦は北朝鮮の情報機関、偵察総局のハッカーらを標的とし、同局サーバーに大量の通信負荷をかけ、インターネット接続をできなくする手法が取られたという。作戦は9月30日までを期限としたが、米当局者は成果は一時的であり破壊的なものではなかったとしている。
 大統領令は3月の対北朝鮮政策の見直し後に署名された。サイバー作戦のほか、米外交官らに対し、対外折衝のあらゆる機会を利用して各国に北朝鮮との関係断絶を働き掛けるよう指示。財務省に対しては北朝鮮の団体や個人、北朝鮮と取引のある外国の機関や個人への制裁強化策の立案を指示していた。(共同)

 

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