北南間の和解と不可侵および協力、交流に関する合意書
−1991年12月13日−

序 文


 北と南は、分断された祖国の平和統一を念願するすべての同胞の意に従い、7.4北南共同声明で宣言された祖国統一3大原則を再確認し、政治・軍事的対決状態を解消して民族和解を成し遂げる。武力による侵略と衝突を防いで緊張緩和と平和を保障し、多角的な交流・協力を実現して民族共同の利益と繁栄を図る。

 双方の関係が国家間の関係でなく、統一を指向する過程で暫定的に形成される特殊関係であることを認め、平和統一を成就するための共同の努力を傾注することを誓いつつ、次のように合意した。

第1章 北南和解
 1条 北と南は、互いに相手方の体制を認定し、尊重する。
 2条 北と南は、相手方の内部問題に干渉しない。
 3条 北と南は、相手方に対する誹謗・中傷をしない。
 4条 北と南は、相手方を破壊・転覆しようとする一切の行為をしない。
 5条 北と南は、現停戦状態を北南間の強固な平和状態に転換させるため共同で努力し、このような平和状態が定着する時まで現軍事停戦協定を遵守する。
 6条 北と南は、国際舞台での対決と競争を中止し、互いに協力して民族の尊厳と利益のため共同で努力する。
 7条 北と南は、相互の緊密な連絡と協議のため、この合意書発効後3カ月以内に板門店に北南連絡事務所を設置・運営する。
 8条 北と南は、この合意書発効後1カ月以内に本会談の枠内で北南政治分科委員会を構成し、北南和解に関する合意の履行と遵守のための具体的対策を協議する。

第2章 北南不可侵
 9条 北と南は、相手方に対して武力を使用せず、相手方を武力で侵略しない。
 10条 北と南は、意見対立と紛争問題を対話と協商を通じて平和的に解決する。
 11条 北と南の不可侵境界線と区域は、1953年7月27日付の軍事停戦に関する協定に規定された軍事分界線と、これまで双方が管轄してきた区域とする。
 12条 北と南は、不可侵の履行と保障のため、この合意書発効後3カ月以内に北南軍事共同委員会を構成・運営する。北南軍事共同委員会では大規模部隊移動と軍事演習の通報および統制問題、非武装地帯の平和的利用問題、軍人交流および情報交換問題、大量殺傷武器と攻撃能力の除去をはじめとする段階的軍縮実現問題、検証問題など軍事的信頼醸成と軍縮を実現するための問題を協議・推進する。
 13条 北と南は、偶発的な武力衝突とその拡大を防止するため、双方の軍事当局者間に直通電話を設置・運営する。
 14条 北と南は、この合意書発効後1カ月以内に本会談の枠内で北南軍事分科委員会を構成し、不可侵に関する合意の履行と遵守および軍事的対決状態を解消するための具体的対策を協議する。

第3章 北南交流・協力
  15条 北と南は、民族経済の統一的で均衡的な発展と民族全体の福利向上をはかるため資源の共同開発、民族内部交流としての物質交流、合弁投資など経済交流と協力を実施する。
 16条 北と南は、科学・技術、教育、文学・芸術、保健、体育、環境と、新聞、ラジオ、テレビおよび出版物をはじめとする出版・報道などさまざまな分野で交流と協力を実施する。
 17条 北と南は、民族構成員の自由な往来と接触を実現する。
 18条 北と南は、離ればなれの家族・親類の自由な書信往来と再会および訪問を実施し、自由意思による再結合を実現し、その他人道的に解決する問題について対策を講ずる。
 19条 北と南は、断絶された鉄道と道路を連結し、海路、空路を開設する。
 20条 北と南は、郵便と電気通信交流に必要な施設を設置・連絡し、郵便・電気通信交流の秘密を保障する。
 21条 北と南は、国際舞台で経済と文化などさまざまな分野で互いに協力し、対外に共同で進出する。
 22条 北と南は、経済と文化などの交流と協力を実現するための合意の履行のため、この合意書発効後3カ月以内に北南経済交流・協力共同委員会をはじめとする部門別共同委員会を構成・運営する。
 23条 北と南は、この合意書発効後1カ月以内に、本会談の枠内で北南交流・協力分科委員会を構成し、北南交流・協力に関する合意の履行と遵守のための具体的対策を協議する。

第4章 修正および発効
 24条 この合意書は双方の合意によって修正・補充することができる。
 25条 この合意書は北と南がそれぞれ発効に必要な手続きを経て、原本を相互交換した日から効力を発生する。

    1991年12月13日

北南首相会談北側代表団団長    北南首相会談南側代表団首席代表
朝鮮民主主義人民共和国政務院総理 延 亨黙             大韓民国国務総理 鄭 元植


朝鮮半島の非核化に関する共同宣言
−1992年1月20日−
 
 北と南は、朝鮮半島を非核化することにより核戦争の危機を除去し、我が国の平和と平和統一に有利な条件と環境を醸成し、アジアと世界の平和と安全に貢献するため次のように宣言する。

 1.北と南は、核兵器の試験、製造、生産、接受、保有、貯蔵、配備、使用をしない。
 2.北と南は、核エネルギーを平和的目的にだけ利用する。
 3.北と南は、核再処理施設とウラン濃縮施設を保有しない。
 4.北と南は、朝鮮半島の非核化を検証するため、相手側が選定し、双方が合意した対象について、北南核管理共同委員会が規定した手続きと方法によって査察を実施する。
 5.北と南は、この共同宣言の履行のため、共同宣言の発効後、1カ月以内に北南核管理共同委員会を構成、運営する。
 6.この共同宣言は、北と南がおのおの発効に必要な手続きを経て、その本文を交換した日から効力を発生する。 


「北南間の和解と不可侵および協力、交流に関する合意書」と
「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」に関する背景と経緯


 1990年9月5〜6日にソウルで、分断後初めて、双方総理を団長とする北南高位級会談が開かれた。

 1989年1月、延亨黙総理が次官級予備接触を提案。2月から90年7月まで計8回、予備会談が開かれた。

 予備会談の第4回で第1回本会談のソウル開催、第5回では名称を北南高位級会談とすることで合意。議題問題が懸案として残った。北側は、議題を「北南間の当面の政治軍事的対決状態を解消することについて」、南側は「北南間の多角的な交流・協力と政治軍事的対決状態の解消について」と主張したが、北側が第5回予備会談で「北南間の政治軍事的対決状態を解消し、多面的な協力と交流を実現することについて」とする修正案を提示し、合意した。

 本会談は計8回、ソウルと平壌で交互に開かれた。第1回では北側が、3項目の緊急課題と政治的対決状態解消のための6項目の方案、軍事的対決状態解消のための4部分、9項目からなる方案を提示。第2回(90年10月)では不可侵宣言の採択問題が討議されたが、南側が採択を回避。第3回会談(同12月)では、北側が示した「北南不可侵と和解協力に関する宣言」の草案の採択問題が協議されたが、南側がみずからの案「北南関係改善のための基本合意書」を採択すれば応じるとし、政治軍事的対決状態解消の問題を避けようとした。

 第4回会談(91年10月)では、北側が「朝鮮半島の非核地帯化に関する宣言」案を提案し、「北南間の和解と不可侵及び協力、交流に関する合意書」を採択することで原則合意。第5回会談(同12月)で北南合意書を採択し、第6回会談(92年2月)で「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」とともに発効した。

 第7回会談(同5月)では和解、不可侵、協力・交流の3分野の付属合意書が作成された。また、軍事、協力・交流分野の共同委員会の構成、連絡事務所の設置など合意書履行における具体的な打開策が提起され、合意書を採択、発効した。第8回会談(同9月)では3分野の付属合意書を採択、発効し、和解共同委員会を構成。第9回会談を12月に行うことで合意した。

 しかし、南側が、92年は中止していた北侵をねらった米・南合同軍事演習チームスピリットの再開を決定したため、第9回は開かれなかった。米・南は翌年1月末に演習を強行。北側代表団は声明で、演習は北南対話破綻宣言、北南合意書履行遮断宣言であり、対話相手の北側への許し難い挑戦だと非難した。会談は中断された。


 北南合意書と非核化宣言(1991年12月13日、92年1月20日)

 北南高位級会談第5回本会談では「北南間の和解と不可侵及び協力、交流に関する合意書」が採択され、第6回本会談で発効した。これは、自主・平和統一・民族大団結の祖国統一3大原則に基づく1972年の7・4北南共同声明発表に匹敵する北南当局間の合意である。

 北南合意書は4章25条からなる。前文では、7・4共同声明で明示された祖国(朝鮮)統一3大原則を再確認し、双方の関係が国と国との関係ではなく、統一を志向する過程で暫定的に形成された特殊関係であると認めたうえで、
 1)政治軍事的対決状態を解消して民族の和解を実現
 2)武力による侵略と衝突を防いで緊張緩和と平和を保障
 3)多面的な協力と交流を実現して民族共同の利益と反映に寄与
  することなどを誓い合った。

 北南合意書の採択によって、北南間に政治、軍事、経済、文化など各方面で協議を深める基礎が築かれ、相互信頼と民族的団結を図り、統一に有利な局面を切り開ける現実的可能性が作られた。特に、北南が不可侵を確約し、朝鮮半島の核問題を解決するための共同の意志を確認したことで、緊張状態を解消して核戦争の危険を防ぎ、平和を保障するための新たな突破口が開かれることとなった。

 一方、北南合意書と同時に「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」も発効した。北南が核兵器の実験、製造、生産、受け入れ、保有、貯蔵、配備、使用をせず、核エネルギーを平和目的にのみ利用するなどと約束したものだ。非核化宣言は、朝鮮半島で核戦争の危険を根本的に取り除き、国の平和とアジア、世界の安全に貢献し、国の平和統一に有利な前提を築くうえで画期的な意義を持つものだ。

 その後、北南合意書履行のための具体的措置として、3分野の付属合意書が作成され、共同委員会の構成や連絡事務所の設置で合意した。また、非核化宣言履行のための北南核統制共同委員会が構成され、92年3月から12月まで13回にわたり協議が開かれた。しかし、米・南当局が、92年は中止していた合同軍事演習チームスピリットを93年度に再開すると決定したため、協議は中断され、12月に予定された北南高位級会談第9回本会談も中止。以来、北南合意書も非核化宣言に基づく諸事項は履行されていない。

 なお、北側は1999年2月3日の政府・政党・団体連合会議で、南側に反北外勢との「共助」破棄などの先行事項の解決を求めながら、北南高位級政治会談を提案し、北南合意書履行対策を基本議題にしようと主張した。

出典:「朝鮮新報」電子版

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