2017年 朝鮮半島核問題の主な動き

5月の主な動き
−※は報道日、表記は報道のまま−


 1日 −トランプ米大統領は、米ブルームバーグ通信のインタビューにたいし、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長について、「私にとって適切なものであれば、当然、会談をすることを光栄に思う」と語った。ただ、会談は「適切な状況下で行われることになる」とも強調した。トランプ氏が就任後、米朝首脳会談に前向きな発言をしたのは初めて。
 トランプ政権は、北朝鮮に核・ミサイル開発を断念させるために軍事力行使の可能性を含めて圧力をかけている。一方で、政権が先月示した新たな北朝鮮政策では、「対話はオープンだ」として外交交渉を模索する方針も打ち出した。トランプ氏の発言は、核放棄などの進展があれば会談を受け入れる姿勢を示したものとみられる。
 これまで北朝鮮との首脳会談をした現職の米大統領はいない。今回のインタビューでトランプ氏は、金委員長との会談について「ほとんどの政治家は絶対に口にしないだろう」と指摘した。トランプ氏は、選挙キャンペーン中には、金委員長と「話がしてみたい。彼と話をすることは何の問題もない」と語っていた。
 ただ、ホワイトハウスのスパイサー報道官は同日の会見で、トランプ氏の発言について、米朝首脳会談の条件は「現時点でこうした要件が満たされていないことは明白」とし、現状での会談の可能性を否定した。(朝日新聞夕刊5.2)

 −米ジョンズホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」は、北朝鮮西部沿岸の南浦海軍造船所を撮影した4月19日現在の衛星写真に基づき、北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を加速させる可能性があるとの分析を発表した。
 写真には、SLBMの水中発射管や発射システムの試験、ミサイルの試射などに使われる平底船が接岸しているのが確認された。平底船は全長22・25メートル、幅最大9メートル。2014年に東部新浦で確認された同型の平底船は、SLBM「KN11(北朝鮮名・北極星1号)」の発射実験に4〜6回使われたとされる。
 同サイトは、南浦で新たに確認された平底船は北朝鮮製ではなく、外国から入手したとみられるとしている。南浦と新浦の平底船はいずれもロシア製の水中ミサイル実験用平底船「PSD4」に非常に似ているとという。(産経新聞5.3)

 2日 −米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院の米韓研究所は、人工衛星画像の分析に基づき、北朝鮮が西部・南浦の台城機械工場で、ミサイル関連設備などの近代化を進めていると明らかにした。同工場は「さらに高度な弾道ミサイルの設計や開発で中心的役割を担っている」とみられるという。
 同研究所によれば台城工場は北朝鮮で最も古い弾道ミサイル製造施設。2016年2月〜17年4月撮影の衛星画像を分析した結果、当局が同工場にある垂直型エンジン燃焼実験設備の近代化に着手したことが分かった。
 また、警護要員の詰め所設置やアクセス道路の舗装が進められ、建物数棟が新たな構造物に置き換わった。水平型の固体燃料式エンジン燃焼実験用の設備も新たに整備されたと思われ、国内の別の場所にある燃焼実験設備と大きさや構造が似ているという。
 黄海に面した南浦の海軍造船所では最近、国内2基目とみられるSLBM試験用の発射台が確認された。同研究所は、台城工場の近代化について「新たなSLBM発射台調達と関係しているかもしれない」と分析している。(時事)

 3日 −ティラーソン米国務長官は、核・ミサイルで挑発を繰り返す北朝鮮に対し、「追加制裁を科す用意がある」と語った。一方で、北朝鮮と韓国を隔てる軍事境界線の「北側に入る口実を探しているわけではない」とも語り、金正恩政権と対話する意思があることを強調した。
 国務省で職員向けにした演説で明らかにした。ティラーソン氏は、北朝鮮の経済的な後ろ盾となっている中国が核・ミサイル開発の阻止に取り組むかどうか「見極めているところだ」と語った。それが不十分ならば「米国は追加制裁の用意がある」と明言。北朝鮮と取引がある中国の企業を念頭に単独で制裁を科す構えを示しつつ、北朝鮮の核・ミサイル開発阻止に向けて国連安全保障理事会の制裁の完全な履行を迫った。
 ただ、ティラーソン氏は「適切な条件下であれば対話に応じる準備がある」と述べた。北朝鮮の体制転換は求めないと強調。北朝鮮が「非核化を求めることこそが、将来の安全と繁栄を得ることができる」と語り、北朝鮮に非核化の交渉に応じるよう求めた。
 一方、米空軍は3日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、「ミニットマン3」の発射試験を実施したと発表。先月26日にもICBMの試射をしており、北朝鮮に圧力をかける狙いがあるようだ。(朝日新聞5.5)

 4日 −米下院本会議は、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の資金源途絶を目的とした超党派の制裁強化法案を賛成多数で可決した。北朝鮮労働者を雇用した外国企業などを制裁対象とするのが柱。北朝鮮に核放棄を迫るため外交・軍事両面で「最大限の圧力」をかけるトランプ政権を後押しする狙いがある。
 採決結果は賛成419対反対1。上院で可決後、トランプ大統領の署名で成立する。
 法案は北朝鮮と取引を続ける金融機関に対する制裁拡大や、北朝鮮からの物資検査を怠った港湾、空港に対する監視強化も盛り込んだ。北朝鮮の後ろ盾である中国に影響力行使を促す意味合いもありそうだ。(共同)

 5日 −マティス米国防長官は、「弾道ミサイル防衛の見直し(BMDR)」に着手するよう、国防総省に指示した。ICBMを使った米本土への核攻撃能力獲得を狙う北朝鮮をにらみ、防衛力強化に必要な政策や戦略を策定して脅威に備える。年内に大統領に報告書を提出する。
 BMDRはオバマ前政権下の2010年2月に初めて報告書が公表され、今回が2回目となる。トランプ大統領は今年1月、ミサイル防衛能力強化の方策検討をマティス氏に命じていた。
 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は今年1月、ICBMの発射実験準備が「最終段階」にあると表明。トランプ氏は最近、北朝鮮がICBMを保有すれば「私たちは安全ではない」と危機感を示した。国防総省は声明で「米国や、国外での米権益を弾道ミサイルから守るのは、最優先課題の一つだ」と強調した。
 マティス氏は4月、核戦略の指針となる「核体制の見直し(NPR)」の策定も命じている。BMDRはNPRと並行して国防副長官と統合参謀本部副議長が主導し、関係省庁と作業を進める。
 10年のBMDR報告書は、北朝鮮とイランの脅威を強調し、安全保障環境の変化に柔軟に対応する重要性を指摘。日本とのミサイル防衛協力を「突出した好例」と評価した。北朝鮮については「今後10年で戦略に大きな変更がなければ核弾頭と実証済みの運搬手段を一体化させるだろう」とし、核ミサイル保有は時間の問題だと警鐘を鳴らしていた。(共同)

 −北朝鮮による3月の石炭輸出量が6342トン(約58万ドル)と、月100万トンを超えた1、2月に比べて激減したことが5日、分かった。国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会がホームページで公表した。最大の輸出先である中国が2月に輸入を停止したことが反映された形。3月分として報告があったのは1国で、関係筋によるとマレーシアとみられる。
 安保理決議は、北朝鮮による年間の石炭輸出上限を金額ベースで約4億ドル(約450億円)、総量ベースで750万トンに設定。加盟国からの報告を集計している制裁委によると、1月は約144万トン(約1億2600万ドル)、2月は約123万トン(約1億460万ドル)の輸出があった。1、2月とも報告国は1カ国のみで、中国とみられる。1〜3月の輸出は決議の年間上限に対し、金額で約58%、総量で約36%に達した。(時事)

 9日 ※トランプ米政権が中国に対して、北朝鮮が核・ミサイル開発を放棄すれば金正恩委員長を米国に招いて首脳会談に応じ、北朝鮮への武力侵攻などもしないとの方針を説明したことが分かった。中国は米国に経済援助などにも応じるよう促すと同時に、北朝鮮には米国の方針を伝えたもよう。複数の外交筋が明らかにした。
 米国は北朝鮮が核・ミサイル開発を放棄した場合に「4つのノー」を約束すると説明した。@北朝鮮の体制転換は求めないA金正恩政権の崩壊を目指さないB朝鮮半島を南北に分けている北緯38度線を越えて侵攻することはないC朝鮮半島の再統一を急がない──との内容。
 ティラーソン米国務長官は3日の講演でこうした方針を公表、中国にも水面下で伝えたという。4月上旬に米フロリダ州で行った米中首脳会談後とみられる。トランプ大統領は「環境が適切なら(金氏と)会ってもいい」と述べ、将来的な米朝首脳会談の可能性をにじませていた。
 中国は米国に対し、北朝鮮を説得するには前向きな提案も必要だとの考えを説明。朝鮮戦争時の休戦協定を平和協定に切り替える交渉や、経済援助の実施、国交正常化交渉の開始などにも応じるよう求めた。(日本経済新聞5.9)

 −南ドイツ新聞電子版などは9日、核兵器やミサイルの開発を進める北朝鮮の在ベルリン大使館の敷地にある宿泊施設と会議場について、ドイツ政府が営業を禁止する方針を固めたと報じた。業者が支払う賃貸料が外貨として北朝鮮に渡っており、国連安全保障理事会の制裁決議に違反しているためだ。
 宿泊施設はベルリン中心部にある「シティホステル」。東西ドイツ統一の象徴、ブランデンブルク門など観光名所に近く、宿泊料が安いことから、観光客らに人気がある。業者が大使館の建物を2004年から賃借し宿泊施設に改造。月額約3万8千ユーロ(約470万円)の賃貸料を北朝鮮側に支払っている。
 昨年11月の安保理制裁決議は、北朝鮮が他国で所有・賃貸する不動産の利用について外交目的を除き禁じており、ドイツは米国や韓国から繰り返し施設の閉鎖を求められてきた。ドイツ外務省高官は南ドイツ新聞などに対し「北朝鮮に対する圧力を強めなければならない。制裁を徹底的に実行に移すことが重要だ」と語った。(共同)

 10日 −米中央情報局(CIA)は、北朝鮮が進める核・ミサイル開発に関する情報収集や分析能力を強化するための「ミッションセンター」を新設したと発表した。北朝鮮問題を政権の最優先課題に掲げるトランプ大統領の方針を反映している。
 CIAのポンペオ長官は声明で「米国や同盟国に対する、北朝鮮の深刻な脅威への対処を強化できる」と強調した。
 ミッションセンターには省庁横断的に経験豊富な人材を集め、政府内の他の情報機関とも緊密に連携する。CIAにはアフリカや中東などの地域を担当する10のミッションセンターがあるが、特定の国を対象としたセンターの設置は初めてとみられる。(共同)

 −米情報セキュリティー会社「シマンテック」の幹部は、上院国土安全保障・政府活動委員会の公聴会で証言し、北朝鮮が昨年2月にバングラデシュ中央銀行にサイバー攻撃を仕掛け、8100万ドル(約92億円)を盗んだ疑いがあると証言した。
 証言したのは、同社上級ディレクターのジェフ・グリーン氏。同氏は北朝鮮が国家ぐるみで金融犯罪に関与したとの見方を示した。北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源となった恐れがある。
 グリーン氏は「これまでは金融詐欺の99%が犯罪者によるものだったが、われわれは初めて国家による詐欺を目撃した」と指摘した。
 同様の被害はベトナムなど30カ国以上で確認されており、グリーン氏は北朝鮮がバングラデシュ以外でも「銀行を攻撃している」との懸念を示した。(共同)

 11日 −米国の17情報機関を統括するコーツ国家情報長官は、上院情報特別委員会の公聴会で証言し、核・弾道ミサイル開発を続ける北朝鮮は「非常に重大な脅威で、潜在的に米国の存続を脅かしている」と指摘。北朝鮮が昨年、これまで以上に活発に核実験や弾道ミサイル発射を実施したのは「米本土を核攻撃する能力があることを示す意図がある」とした上で、北朝鮮の公的見解からみて「今年中に初のICBMの発射実験を実施する態勢ができている」との分析を明らかにした。(産経新聞5.13)

 12日 −北朝鮮の最高人民会議(国会)外交委員会は、米下院が核・ミサイル開発を進める北朝鮮の資金源途絶を目的とした制裁強化法案を可決したことについて「強力に糾弾する」とする抗議書筒を下院宛てに送り、公表した。朝鮮中央通信が伝えた。
 外交委は4月の最高人民会議で約20年ぶりに復活した委員会で、米議会に書簡を送るのは復活後、初めて。北朝鮮は昨年7月、米朝間の接触ルートだった国連代表部間の「ニューヨーク・チャンネル」の遮断を表明したが、書簡送付で米国と意思疎通する姿勢をにじませた。
 書簡は法案可決について、北朝鮮の主権と国民の生存権を「著しく侵害している」と非難。「朝鮮半島核問題の本質に対する米政治家の無知から出た敵視政策の産物だ」と反発した。(共同)

 −北朝鮮の国連代表部は、国連の全加盟国とオブザーバー国家に対し、安保理の北朝鮮制裁決議の合法性が明確になるまで、決議の履行を「再考」するよう求める書簡を送ったと発表した。書簡は11日付。米国は北朝鮮包囲網の構築に向け、決議の完全履行を加盟国に迫っており、書簡にはこれを阻止する狙いがあるとみられる。
 北朝鮮は、米国の支配下にある安保理の決議は違法だと繰り返し主張し、合法性を調べる組織の設置を国連に要請しているが、実現していない。書簡は、安保理の北朝鮮制裁委員会が決議への理解を深めるため地域別に開いている会合を批判し、会合を米国による「敵対的行為」と訴えた。(時事)

 13日 −北朝鮮外務省の崔善姫米州局長は、中国の北京空港で記者団に、米国との対話の可能性について「環境が整えば対話する」と述べた。韓国の聯合ニュースが伝えた。
 崔氏は、北朝鮮に融和的な韓国の文在寅政権との対話については「見守っていく」と述べるにとどめた。
 崔氏民は8、9日にノルウェーのオスロで開かれた会議に参加。トーマス・ピカリング元米国連大使らと会談した。この会談の具体的な内容には触れなかった。
 トランプ米大統領は、北朝鮮への圧力を強めていく方針を強調する一方、金正恩朝鮮労働党委員長との会談について「ふさわしい条件が整えば会う」とも述べている。(読売新聞5.14)

 14日 −北朝鮮は日本時間14日午前5時28分、北西部の平安北道・亀城から弾道ミサイル1発を発射した。韓国軍や日本政府によると、ミサイルは亀城から東北東へ約800キロ飛行し、日本海上に落下。
 飛行時間は約30分間で、高度は約2000キロに到達した。新型で飛距離は最大4000キロを超えるとの分析もあり、米空軍基地のあるグアムを射程内に収める可能性も出てきた。
 落下地点は日本の排他的経済水域(EEZ)の外と推定され、米CNNテレビはロシア極東ウラジオストク南方約97キロの沖合と伝えた。米専門家は、通常の軌道で飛行した場合、飛距離が最大約4500キロに達するとの見解を示した。
 韓国で革新系「共に民主党」の文在寅大統領が10日に就任した後、北朝鮮の弾道ミサイル発射は初めて。文大統領はミサイル発射を非難し、対話には北朝鮮側が態度を変えることが必要だとの立場を明らかにした。
 米ホワイトハウスはミサイル発射について声明を出し、北朝鮮に対する制裁強化の実施をすべての国に呼び掛けた。
 稲田朋美防衛相はミサイルに関し、新型で高度が2000キロを超えたと推定され、通常より高い高度で打ち上げる「ロフテッド軌道」で発射された可能性があるとの見方を示した。米太平洋軍によればICBMではないとみられる。
 安倍晋三首相は記者団に対し、「断じて容認できない。強く抗議する」と批判。「米国や韓国と連携しながら高度な警戒態勢を維持し、国民の安全確保に万全を期していく。北朝鮮に対し毅然(きぜん)として対応する」と述べた。日本政府は北朝鮮側に厳重に抗議するとともに、国家安全保障会議(NSC)を開いた。
 韓国でも文大統領がNSC常任委員会でミサイル発射を非難し、「対話は可能であっても、北朝鮮の態度に変化があるときに初めて可能になるということを示さなければならない」と言明した。大統領府が発表した。
 文大統領は「北朝鮮に対しては制裁・圧力と対話の双方が必要だ」という立場だったが、自分の就任後わずか5日目に挑発行為に及んだため、対話は北朝鮮の挑発的行動中止が前提であることを明確にした。
 文大統領は「(弾道ミサイル発射は)国連安保理決議の明確な違反であるだけでなく、朝鮮半島はもちろん、国際平和・安全に対しても深刻な挑戦だ」と指摘。「北朝鮮が誤った判断をしないよう、挑発には断固として対応しなければならない」と強調した。
 北朝鮮は、米韓合同軍事演習が行われていた3〜4月、弾道ミサイル発射を試みた。3月6日には4発同時に発射し、うち3発が日本のEEZ内に落下。直近では4月29日、西部の北倉周辺から1発を発射したが、失敗したとみられている。(時事)

 15日 −北朝鮮の朝鮮中央通信は、新型の地対地中長距離弾道ミサイル「火星12」の発射実験が14日に実施され、「成功した」と報じた。高度2111.5キロまで上昇し、飛距離787キロを飛んで目標とする水域に着水したという。「大型重量核弾頭の装着が可能」と報じると同時に、実験によって「過酷な再突入環境でも核弾頭爆発システムの動作性を確認した」と主張している。
 発射実験には金正恩朝鮮労働党委員長が立ち会い、「だれが認めようが認めまいが、わが国は名実共に核強国だ」と宣言。「米本土と太平洋の作戦地域がわれわれの打撃圏に入っている」と強調しながら「報復打撃の手段がわれわれの手中にあるという現実を無視したり、誤った判断をしたりしてはならない」と、米国に警告した。
 さらに「米国とその追従勢力が正しい選択をする時まで、高度に精密化、多種化された核兵器と核打撃手段をさらに多く作り、必要な実験の準備にも拍車をかける」と指示し、さらなる核・ミサイル実験の継続を関係機関に求めた。一方で、同通信は、周辺国の安全を考慮して高い角度で発射され、公海上に落下したと伝えた。
 朝鮮労働党機関紙・労働新聞は15日、ミサイル発射実験の写真を公開。米韓などの専門家は、ミサイルや発射台の形状から4月15日の軍事パレードで初登場した液体燃料型の弾道ミサイルと同型とみている。
 また、北朝鮮メディアが今回のミサイルについて「主体弾」と呼び、独自開発を強調している点も注目を集めている。15日付の韓国紙・朝鮮日報は高度約2000キロ、飛距離約800キロという状況から、「通常の角度で発射した場合、飛距離5000キロ程度の準ICBMといえる能力を見せた」と報じた。
 日本政府によると、北朝鮮は日本時間の14日午前5時28分、北西部・平安北道亀城一帯から東北東方向に弾道ミサイル1発を発射、約30分飛行し、日本海のロシアに近い水域に落下した。政府はミサイルが過去最高の2000キロ超の高度に達したと分析していた。(毎日新聞夕刊5.15)

 −国連安全保障理事会は15日(日本時間16日)、北朝鮮の弾道ミサイル発射を強く非難する報道機関向けの声明を発表した。非難声明は、今年6回日。16日(同17日)に予定される緊急会合に先立ち発表したのは、発射から間をおかず迅速に対応することで北朝鮮への圧力を強めると同時に、追加制裁を視野に入れる日米両国が、反発を繰り返すロシアや中国の機先を制する狙いがあったとみられる。
 声明は、4月29日と5月14日の2回のミサイル発射に「最大の懸念」を表明。安保理メンバー国が「北朝鮮に科している、すべての手段を完全に実施することを誓う」と明記して制裁履行をうたい、他の国連加盟国にも履行を強く促した。北朝鮮の対応次第では「制裁を含むさらなる重大な措置を取る」と追加制裁を取ることも警告した。
 ミサイル発射後は一両日中に非難声明が発表されるのが通例だったが、4月16日のミサイル発射日に声明の文言をめぐりロシアが反発。発表が一時見送られ、足並みの乱れが露呈した。同29日の発射後は声明すら発表されず、北朝鮮に再び挑発を許す結果となった。このため今回は「速やかに断固とした対応を取るべきだ」(フランスのデラットル大使)との声も上がっていた。(読売新聞5.17)

 16日 −韓国国防省は、北朝鮮が14日発射した新型の中長距離弾道ミサイル「火星12」の射程は4500キロメートルから5千キロメートルとする分析結果を発表した。韓民求国防相は同日の国会で「一部の技術は予想よりも進歩が早い」と警戒感を示した。
 16日付の韓国紙・朝鮮日報も「500キログラムの弾頭を載せて約5千キロメートルの飛行が可能」とする専門家の見方を紹介した。弾頭は小型化するほどミサイルの射程が延びる。北朝鮮が攻撃力を重視して重量が1トンある弾頭を載せた場合でも「3千キロメートル飛行する」という。
 3千キロは平壌と米領グアム、5千キロはアラスカまでの距離にほぼ相当する。「大型核弾頭の装着が可能」「米国本土と太平洋作戦地帯は攻撃圏内」と主張した北朝鮮国営メディアの15日の発表に信ぴょう性が出てきた。ただ7千キロメートル以上離れた米太平洋軍が司令部を置くハワイは届かない。
 専門家によると、エンジンは主エンジン1基と補助エンジン4基で構成。3月に公開された新型とみられ、北朝鮮が発射実験に何度も失敗した「ムスダン」に比べて信頼性を高めたもようだ。さらに主エンジンを4基に増設した場合、1万3千キロメートル以上に射程が延びる可能性があるという。
 韓民求国防相は16日、火星12は「ICBMとは考えない」と語ったが、韓国では北朝鮮は「準ICBMを手にした」との認識が広がっている。(日本経済新聞5.17)

 −今年に入り7回目となる14日の北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、国連安全保障理事会は16日午後(日本時間17日午前)、緊急会合を開いた。米国と日本は制裁強化を主張。追加制裁を巡り米中は既に協議を始めているが、この日は結論に至らなかった。日米は今後も中国やロシアへの説得を続ける。
 緊急会合の開催は日米韓の3カ国が要請。会合後、議長国のウルグアイのロセリ国連大使は追加制裁について「一つの道だ。その道に向かう可能性は大いにある」と強調した。ただ、会合では具体的な制裁内容への言及はなく、今後の日程も未定。別所浩郎国連大使は「今の時点で結論を出したわけではない」と述べた。中露は対話を通じた解決を求める従来の立場を繰り返したという。
 緊急会合に先立ち、日米韓の国連大使が記者会見した。米国のヘイリー大使は追加制裁に向けて中国と協議中であることを認め、中国の協力に期待を示した。一方、「北朝鮮側につくのか、我々(国際社会)の側に立つのか」と繰り返し、制裁決議を履行しない加盟国に迫った。米国は北朝鮮を支援する第三国に対しても制裁を行う方針を明らかにしている。(毎日新聞夕刊5.17)

 17日 −韓国紙、中央日報は、北朝鮮が14日発射した弾道ミサイル「火星12」に関し、弾頭部分が大気圏に再突入した後も内部の装置が作動していた形跡があり、再突入に成功したようだと報じた。
 韓国情報当局者が、弾頭と管制センターの交信が再突入後も行われており、弾頭が破壊されなかったとの見方を示したという。ただ同当局者は、北朝鮮国営メディアが報じた写真の中で、弾頭から送られたデータを記録する装置に「30分11秒」と飛行時間を示すものがあることを根拠に挙げており、米韓当局が実際に弾頭部分との交信を傍受していたかには触れていない。(共同)

 −米太平洋軍のハリス司令官は、東京都内で講演し、核開発と弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長について「正気に戻すことが大事だ。北朝鮮に、より強い制裁をかけなければならない」と述べ、圧力強化の必要性を強調した。尖閣諸島(沖縄県石垣市)に関しては、日米安全保障条約第5条に基づき、米軍が防衛に関与する姿勢を示した。
 ハリス氏は、核・ミサイル開発を続ける金氏の姿勢について「核弾頭とミサイル技術を激しやすい金氏のような人の手に持たせるのは、大惨事のレシピとなる」と警告。「北朝鮮は中国にとってもお荷物になっている」と述べた上で、ロシアも圧力強化に加わる必要性を繰り返し指摘した。
 また、4月に北朝鮮がミサイル発射に3度失敗したことに言及し「金氏は公開の場で失敗することを恐れていない。失敗を重ねるごとに、世界中のどこにでも飛ばすことができるという事態に近付いている」と技術向上に懸念を表明した。(産経新聞5.18)

 19日 −米NBCテレビは、複数の米国防当局者の話として、北朝鮮は14日の弾道ミサイル発射の際、弾頭の大気圏再突入に成功したと報じた。再突入時に弾頭は燃え尽きなかったという。ただ、マティス国防長官は19日の記者会見で「(今回の発射で)北朝鮮は多くのことを学んだとみられる」と述べるにとどめ、成否の確認を避けた。
 再突入成功が事実であれば、米本土を射程に入れるICBMの完成に近づいたことを意味する。トランプ政権の警戒が一段と強まるのは必至だ。14日に発射したミサイルは既に米領グアムを射程に収めているとみられ、米国に対する脅威の度合いが上がっている。
 北朝鮮は2016年3月、弾頭の大気圏再突入の模擬実験に成功し、「技術を自力で確保した」と主張している。だが、米国はこれまで、「再突入技術は未完成」という立場を取ってきた。
 また、マティス長官は北朝鮮問題の軍事的解決について「信じられないほどの規模の悲劇になる」と指摘。「米国は、こうした事態を避ける方法を探すために国連や中国、日本、韓国と連携している」と語った。トランプ政権は経済制裁や外交手段による北朝鮮への圧力強化を目指している。(時事)

 −北朝鮮のキム・インリョン国連次席大使は記者会見で「米国が北朝鮮への敵視政策や核の脅威、恐喝、制裁、圧力をやめない限り、核攻撃能力の強化を迅速に進める」と強調した。北朝鮮のミサイル発射に対し、米国が追加制裁を主張していることに反発した。世界各地で起きた大規模サイバー攻撃への関与については否定した。
 国連安全保障理事会が北朝鮮によるミサイル発射を巡る緊急会合を16日に開いたことに反発し、ニューヨークの国連本部で記者会見を開いた。米国が同会合で北朝鮮に対する追加制裁の必要性を訴えたことについて、キム氏は「正当性がなく、北朝鮮か米国を選べと国際社会を脅している」と主張した。
 さらに、米韓合同軍事演習や朝鮮半島近海への米原子力空母「カール・ビンソン」の派遣は「米国が侵略と戦争の首謀者、平和の破壊者であることを証明している」と非難した。「国連安保理は米国のICBM発射実験は黙認している」とも語り、北朝鮮の核・ミサイル開発は米国による敵視政策への自衛手段との主張を繰り返した。
 北朝鮮と米国の間の緊張は続き、新たに米原子力空母「ロナルド・レーガン」も朝鮮半島近海に向かっているとされる。中国も石炭の輸入停止で北朝鮮への制裁に加わっているが、キム次席大使は「伝統的な友好国である中国とロシアは北朝鮮の核保有を理解している」と述べ米国を集中的に批判した。
 また、世界各地の大規模サイバー攻撃に北朝鮮が関与している可能性については「おかしなことが起こるたびに米国など敵対勢力が故意に北朝鮮と結びつけ、反北朝鮮キャンペーンを繰り広げる」と反発した。(日本経済新聞夕刊5.20)

 21日 −防衛省や韓国軍によると、北朝鮮は21日午後4時59分(日本時間同)ごろ、中部・北倉付近から東側に向けて弾道ミサイル1発を発射した。約500キロ飛行し、最高高度は約560キロだった。
 北朝鮮東岸から東へ約350キロの日本海上に落下したとみられる。男鹿半島から約700キロ、隠岐諸島から約400キロの海域、日本の排他的経済水域(EEZ)外と推定されるという。
 北朝鮮は14日、北西部・亀城から弾道ミサイル1発を発射したばかり。翌15日に国営メディアを通じて、新型の地対地中長距離弾道ミサイル「火星12」の発射実験に成功したと報じていた。
 米ホワイトハウス当局者は今回発射されたミサイルについて、準中距離弾道ミサイルだと指摘。韓国国防省当局者は、SLBMの技術を応用した新型の固体燃料推進式弾道ミサイル「北極星2型」に似ているという見方を示した。
 稲田朋美防衛相はミサイルの種類や高度について「詳細は分析中」としながらも、「1000キロを超えるような特異な高度ではなかったと認識している」と述べた。
 北朝鮮は4月29日にも、北倉周辺から弾道ミサイル1発を発射したが、失敗したとみられている。
 安倍晋三首相はミサイル発射について「国際社会の平和的解決に向けた努力を踏みにじるものであり、世界に対する挑戦だ」と非難した。ティラーソン米国務長官はFOXニュースのインタビューで「失望し、憂慮すべきことだ」と述べた。韓国の文在寅大統領は、国家安全保障会議(NSC)常任委員会の開催を指示。韓国外務省は声明で「北朝鮮との対話の可能性は残しておくが、挑発には断固として対応していく立場を堅持していく」と強調した。(時事)

 22日 ※北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐり、中国の習近平国家主席が4月初旬のトランプ米大統領との会談で、米国が北朝鮮に対して具体的な行動をとるまでの猶予期間として「100日間」を求めていたことがわかった。この会談で合意した両国の貿易不均衡是正についての100日計画と並行し、安全保障分野でも同じ期限を設定した格好。ただ北朝鮮は21日も弾道ミサイル発射を強行しており、どこまで効果が出ているか不透明だ。
 米国や日本の複数の関係筋が明らかにした。会談でトランプ氏は、北朝鮮の対外貿易の約9割を占める中国に経済制裁を強めるよう求めた。その上で、中国が協力しない場合、北朝鮮と取引がある大手金融機関を含む複数の中国企業を制裁対象に加える米政府独自の新たな制裁を検討していると説明したという。
 中国企業が制裁対象になれば米国の金融機関や企業との取引ができなくなるため、習氏から猶予期間を提案。経済分野と同期間の100日間で、中国側が北朝鮮に強く働きかける考えを示したという。
 中国は秋に共産党大会が控えており、米中関係がギクシャクしたまま重要な政治日程を迎えたくないという事情もあったようだ。
 関係筋によると、会談で両首脳は、北朝鮮による「重大な挑発」があった場合、米中がそれぞれ独自の制裁を北朝鮮に科すことでも合意。習氏は、中国国内の企業からの北朝鮮への送金規制や北朝鮮向けの石油の輸出規制などの独自制裁を検討していることも示唆したという。
 トランプ氏は4月末に「中国は北朝鮮情勢で我々を助けてくれている」と評価。北朝鮮による核実験も実施されなかった。米国は中国が対北圧力を強めていると判断し、「対話」にシフトしつつある。
 今月19日にはマティス米国防長官が速やかな軍事行動に消極的な立場を表明したが、北朝鮮は軍事的挑発を繰り返している。100日計画の期限にあたる7月には、ドイツで主要20カ国・地域(G20)首脳会議にあわせた米中首脳会談の可能性もあり、北朝鮮対応について改めて協議される見通しだ。(朝日新聞5.22)

 −北朝鮮の国営メディア、朝鮮中央通信は、地対地の新型の中長距離戦略弾道ミサイル「北極星2」の発射に成功したと報じた。日付や場所に言及していないが、21日夕、西部の平安南道・北倉付近から日本海に向けて発射された弾道ミサイルを指すとみられる。金正恩・朝鮮労働党委員長は現地を訪れて発射命令を出し、部隊への実戦配備を承認し、大量生産を指示したと伝えた。
 同通信によると、今回の発射は「『北極星2』型兵器システム全般の技術的指標を最終確認し、戦闘環境下で使えるかどうか十分に検討」するために行われた。
 現地の監視所を訪れた正恩氏は、今回の発射を「百点満点」と評価。配信映像で、ミサイルを自走式車両に載せられたとみられる発射筒から打ち出し、空中で点火させる様子を公開。SLBMの「コールドランチ」と呼ばれる技術を転用した可能性がある。ミサイルに搭載したカメラを通じて地球を撮影したとする写真も流した。
 韓国軍合同参謀本部は「北極星2」について、固体燃料を利用した新型の中距離弾道ミサイルと判断している。射程は約2500キロとされる。
 また同通信は、今月14日に発射した弾道ミサイルについて「米太平洋軍司令部のあるハワイとアラスカを射程圏内に入れている」と明らかにした。正恩氏は「我々の核戦力の多様化、高度化をいっそう進めなければならない」と強調。「核戦力を強化するための課題」を示したとした。(朝日新聞夕刊5.22)

 −北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、国連安全保障理事会(15カ国)は、北朝鮮を強く非難し、「制裁を含めた重大な措置を取る」と警告する報道声明を発表した。安保理は23日午前(日本時間同日午後)に緊急会合を開催し対応を協議する。制裁強化に向け、米国と中国の綱引きが活発化しそうだ。
 報道声明は、安保理の警告を無視して北朝鮮がミサイル発射を続けていることに「最大限の懸念」を表明。安保理理事国はすべての制裁措置を「完全に履行すると誓う」と明記し、また加盟国にも「速やかかつ真剣」な履行を強く要請した。
 さらに、決議の履行状況を調べる安保理制裁委員会に対し、専門家パネルの勧告を含めたあらゆる措置を「直ちに」実施するよう求めた。(毎日新聞夕刊5.23)

 23日 −北朝鮮による21日の弾道ミサイル発射を受け、国連安全保障理事会は23日、緊急会合を開いて対応を協議した。前回の発射から1週間で再びミサイルを発射した北朝鮮を、安保理理事国(15カ国)全てが厳しく非難したが、具体的な対策を巡っては、米国や日本が制裁強化を主張する一方、中国が対話路線を主張。溝は埋まらなかった。
 緊急会合の招集は日米韓が要請した。日本や米国はこれまでの制裁決議より厳格に実施することに加え、新たな制裁を科して圧力を増す必要性を訴えた。これに対し中国は緊張緩和のためには対話開始が必要との従来の立場を主張したとみられる。劉結一・中国国連大使は記者団に「対話をしない理由はない」と述べた。安保理議長国ウルグアイのロセリ国連大使は会合後、「北朝鮮の行動は全く受け入れられないとの共通認識はある」と述べたが、議論の内容については「先週とほぼ同じだった」と認めた。(毎日新聞夕刊5.24)

 −米国防情報局(DIA)のスチュワート長官は、北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイル発射に関して「北朝鮮が現在の軌道を進めば、最終的に米本土の脅威となる核搭載ミサイル技術の取得に成功するだろう」と警告した。上院軍事委員会の公聴会で証言した。
 長官は「北朝鮮は過去1年で、前例がない数の弾道ミサイル発射実験を行った。彼らはそれぞれの実験から有益なデータと知見を得ている」と指摘。「こうした(米本土を攻撃する)能力の運用可能時期を予測するのは不可能だが、それが不可避となる途上にある」と強い警戒感を示した。(時事)

 24日 −米紙ワシントン・ポストは、トランプ米大統領が4月29日にフィリピンのドゥテルテ大統領と電話会談した際、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長について「核兵器を持っている正気を失った男」と語っていたと報じた。フィリピン政府がつくった会談記録を同紙が入手したという。
 会談記録によると、トランプ氏はドゥテルテ氏に金委員長について「安定しているか、それとも不安定か」と質問。ドゥテルテ氏は「正常とは言えない」と答えた。トランプ氏は「放っておくわけにはいかない。我々の攻撃力は北朝鮮の20倍あるが、使用することは望んでいない」と発言したという。(朝日新聞5.26)

 25日 −ブルックス在韓米軍司令官は、韓国国防省傘下の研究機関などが主催したセミナーで講演し、「北朝鮮への先制攻撃は困難だ」との認識を示した。日米中韓など関係国が連携し「国際協調によって北朝鮮の脅威を減らす方法を探るべきだ」と持論を展開した。聯合ニュースが報じた。
 ブルックス氏は「金正恩(委員長)が保有するロケットやミサイルは韓国の首都圏にとって大きな脅威だ」と強調。「北朝鮮の兵器システムを先制攻撃するのは難しい状況にある」と語り、被害を考慮すると事実上、先制攻撃が困難であると認めた。米軍司令官自らが、軍事行動の選択肢を狭めることになりかねず、波紋を呼ぶ可能性がある。(日本経済新聞5.26)

 26日 −安倍晋三首相は26日午前(日本時間同日午後)、トランプ米大統領と先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)開催地のイタリア南部シチリア島タオルミナで会談した。両首脳は核・ミサイル開発を強行し、脅威を高める北朝鮮に対し「今は対話ではなく圧力をかけていく必要がある」との認識で一致した。北朝鮮に影響力を持つ中国の役割や、圧力強化のために韓国との連携についても確認し、日米の防衛体制の能力向上に向け、具体的行動を取ることで合意した。
 両首脳の会談は2月の米国での会談以来、2回目。会談は予定の30分間を超えて約50分間続き、半分以上を北朝鮮問題に割いた。
 トランプ氏は会談冒頭、「北朝鮮という問題は、世界的な問題だ」と指摘した上で「断言できる。絶対解決する問題だ」と強調した。首相は「北朝鮮問題などさまざまな課題について、しっかりと連携することを確認する首脳会談としたい」と表明した。首相は安全保障の観点から「この地域における米軍の強力なプレゼンスが重要であり、米側の協力を期待している」と述べた。
 両首脳はサミットでの討議を念頭に意見交換し、首相は「北朝鮮問題はG7が支えてきた国際秩序に対する挑戦だ」と強調。その上で「北朝鮮やシリア問題の解決にはロシアとの対話が重要だ」との考えを示した。同行筋によると、トランプ氏は首相発言に「同意した」と応じ、首相が「自由で公正な貿易」の重要性と指摘したことにも「支持する」と発言したという。(産経新聞5.27)

 27日 −米海軍が原子力空母ニミッツを西太平洋に派遣することが分かった。米西部ワシントン州の海軍基地を6月1日に出港する。地元紙が27日までに報じた。西太平洋には空母カール・ビンソンとロナルド・レーガンが既に展開中。3隻目の派遣は、弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮をけん制する動きの一環とみられる。
 西太平洋に空母3隻が同時に展開するのは珍しい。北朝鮮による6回目の核実験や弾道ミサイル発射などの挑発を抑止したい考えとみられるが、軍事的圧力を強める米国に北朝鮮が反発するのは必至。米朝間の緊張が改めて高まる可能性がある。
 米軍関係者によるとニミッツは、朝鮮半島近くの日本海に展開中だとされるカール・ビンソンと交代する可能性がある。
 地元紙によると、ニミッツの西太平洋への派遣期間は6カ月間。同空母の報道担当者は、世界情勢によって変更もあり得るとしている。ニミッツを中核とする第11空母打撃群は、ミサイル駆逐艦4隻、ミサイル巡洋艦1隻などで構成しているという。(共同)

 −安倍晋三首相は訪問先のイタリア南部シチリア島のタオルミナ近郊で27日午後(日本時間同日夜)、G7サミットの終了後に記者会見した。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮について、サミットで「東アジアにとどまらず、世界全体の脅威」との認識を共有し、圧力強化で一致したことなどを成果と位置づけた。
 首相は「G7(サミット)において、初めて北朝鮮問題が最重要優先課題として取り上げられた」と強調。北朝鮮に核・ミサイル開発を放棄させるため、G7が制裁を強化する用意があることで一致したと述べた。また、「北朝鮮と国境を接する中国やロシアをはじめ、国際社会全体に結束と行動を呼びかけたい」とした。(朝日新聞5.28)

 28日 −北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、新型の対空迎撃誘導兵器システムの試験射撃が行われた、と報じた。ミサイル迎撃システムの発射実験を指すとみられる。金正恩朝鮮労働党委員長が視察し、試射の結果を「合格だ」と評価した。
 聯合ニュースなど韓国メディアは、米韓両軍は北朝鮮が27日にミサイルを発射したことを把握したと報道。地対空ミサイル「ポンゲ(稲妻)5」(KN06)の改良型とみられると伝えた。
 トランプ米政権が空母を朝鮮半島に相次いで派遣するなど、北朝鮮に対する軍事的圧力を強める中、迎撃能力の向上を誇示することにより、米国をけん制する狙いがあるとみられる。
 朝鮮中央通信は試射について「わが国の領空を、敵の空中目標が不意に侵犯する状況を想定して、実施された」と説明。「さまざまな高度と速度で来襲する敵として想定した無人機やミサイルが出現すると、一発で粉砕した」と強調した。
 正恩氏は「昨年よりも目標の発見・追尾能力が大きく向上し、命中精度も高まった。昨年表面化した欠点が完全に克服された」と述べ、量産と実戦配備を指示した。(東京新聞5.29)

 29日 −日本政府は29日、北朝鮮が同日午前5時40分ごろ、東岸から弾道ミサイルを発射したと発表した。日本海の日本のEEZ内に落下したとみられる。韓国軍によると、ミサイルはスカッド系列と推定され、東部の元山から発射された。軍当局者は「少なくとも1発が発射され、正確な発射数は分析中」と述べた。日本のEEZ内に北朝鮮のミサイルが落下したのは3月6日以来。
 聯合ニュースによると、韓国当局者は「飛行距離を見れば、(射程約500キロの)スカッドC級に類似している。試験発射というより武力示威の性格があるとみている」と語った。
 菅義偉官房長官によれば、ミサイルは約400キロ飛行し、新潟県佐渡島から約500キロ、島根県隠岐諸島から約300キロの日本海上に落下した。船舶・航空機への被害は確認されていない。米太平洋軍は、北朝鮮が短距離弾道ミサイルを発射し、6分間飛行したことを探知したと発表した。(時事)

 30日 −北朝鮮の朝鮮中央通信は、「精密操縦誘導システム」を導入した新型の弾道ミサイルの発射を金正恩・朝鮮労働党委員長が指導し、成功させたと伝えた。日時や場所を明らかにしていないが、29日に東部の江原道元山付近から日本海に向けて発射した弾道ミサイルを指すとみられる。
 同通信によると、ミサイルは中距離を飛行し「予定目標より7メートルの誤差」で正確に命中したとしている。「敵艦船をはじめ、海上と地上の針の穴のような個別的目標を精密に打撃できる弾道ロケット(ミサイル)」の開発の一環と指摘。空母の攻撃が可能な精度の高い対艦弾道ミサイル(ASBM)の開発を示唆し、日本海に原子力空母カールビンソンの艦隊を展開している米国を強く牽制(けんせい)した。
 同通信は、ミサイルには、方向を変えられる操縦翼や、速度を調整する小型熱噴射機が装備されていたとした。ただ、専門家はこうした主張には技術的な裏付けがないと指摘する。韓国国防省の報道官は「地対艦、または地対地用ミサイルの精度を向上させたという主張についいて精密な分析が必要だ」と述べた。
 同通信によると正恩氏は発射場を訪れて発射命令を下した。「発射の準備工程が高度に自動化され、発射時間を短縮するシステム」と完成されたとしている。(朝日新聞夕刊5.30)

 −米国防総省ミサイル防衛局は30日、ICBMの迎撃実験を同日、初めて実施し、成功したと発表した。北朝鮮が米本土を攻撃可能なICBMの開発に向け技術力を高める中、米軍のミサイル防衛能力の高さを誇示し、けん制する狙いがある。
 同局の発表や米メディアの報道によると、まず太平洋のマーシャル諸島クエゼリン環礁にある米軍施設から、ICBMを摸した標的のミサイルを発射。その後、約7000キロ・メートル離れた米カリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地から迎撃ミサイルを発射し、大気圏外で直接、標的に衝突させることに成功したという。
 今回の迎撃実験に使われたのは、地上配備型ミッドコース防衛(GMD)システム。米軍は2004年からGMDを導入し、現在はアラスカ州に32基、カリフォルニア州に4基を配備している。ICBMより短い射程の弾道ミサイルを想定したGMDの迎撃実験では1999年以降、17回のうち9回成功していた。
 同局のシリング局長は今回の実験成功についいて「とても現実的な脅威に対して、我々が信頼できる抑止力を持つことを示している」との声明を発表した。(読売新聞夕刊5.31)

 31日 −米ミサイル防衛局のシリング局長は、30日に初のICBM迎撃実験に成功したことを受けて電話会見した。シリング氏は、北朝鮮が2020年までに米本土に届くICBMを取得する可能性があると米情報機関が分析していることを明らかにし、来年夏にICBMの迎撃実験を再び実施するほか、より性能の高い新型迎撃ミサイルの開発を急ぐ考えを強調した。
 ジョンズ・ホプキンズ大学の北朝鮮専門サイト「38ノース」をはじめとする米国の核・ミサイル専門家は、北朝鮮が20年までにICBMを取得する可能性が高いと分析している。米政府がこの可能性に触れたのは今回が初めてとみられる。シリング氏はICBM迎撃実験は「情報機関の予測に基づいて実施している」と断った上で、「大気圏外から再突入する際に弾頭を保護する技術や、ロケット推進技術」を北朝鮮が向上させる可能性があると指摘した。
 韓国メディアは、北朝鮮が5月14日に発射した新型ミサイル「火星12」の実験で、「大気圏再突入後も(弾頭部分の)内部装置が作動していた形跡がある」として再突入技術の取得に近づいていると報道。また、北朝鮮はより長距離の飛行を目指して新型ロケットエンジンの開発を進めている。
 来年夏の迎撃実験は8〜9月をメドに実施する。今回の実験は、ICBMの模擬弾、迎撃ミサイルとも1発ずつだったが、次回は2発の迎撃ミサイルを使用する。将来、北朝鮮が取得する可能性がある多弾頭型のミサイルに備える狙いもあるとみられる。またシリング氏は新型迎撃ミサイルについて「19年末までに実験したい」と述べ北朝鮮だけでなく、弾道ミサイルの開発を加速するイランの脅威に備える考えも示した。(毎日新聞夕刊6.1)

 

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