2017年 朝鮮半島核問題の主な動き

6月の主な動き
−※は報道日、表記は報道のまま−

 1日 −米財務省は、北朝鮮の大量破壊兵器開発に関与したとして、ロシア企業を含む6団体と3個人を制裁対象に追加指定した。米国内の資産が凍結され、米国人との取引が禁止される。6団体とは別に北朝鮮の国務委員会、朝鮮人民軍、人民武力省の3機関も制裁リストに加えた。
 このうち、ロシア企業アルディス・ベアリングズは既に制裁対象だった北朝鮮の貿易会社と協力関係にあったとして、幹部のイーゴリ・ミチュリン氏とともに追加指定された。同様に追加指定されたロシア企業インディペンデント・ペトロリアムは、北朝鮮への石油輸出に携わったとされる。 (時事)

 2日 −国連安全保障理事会(15カ国)は2日午後(日本時間3日午前)、公開会合を開き、北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイル発射を強く非難し、金正恩朝鮮労働党委員長の側近を含む北朝鮮の14個人と4団体を資産凍結・渡航禁止の対象に新たに追加する米国主導の制裁強化決議案を全会一致で採択した。北朝鮮と友好関係にある中国やロシアも支持した。制裁決議は5回目の核実験を受けた昨年11月以来で、今年1月のトランプ米政権発足後初めて。
 北朝鮮に核・ミサイル開発を断念させるため、国際的な圧力を一層強化させる狙いがある。これまでの制裁決議とは異なり、対象範囲で個人・団体を拡大する内容にとどまったが、北朝鮮が反発を強めるのは確実だ。
 安倍晋三首相は3日、「全会一致で採択されたことを評価する。北朝鮮に対し、さらなる核実験や弾道ミサイル発射などの挑発を行わないよう強く求める」とのコメントを発表した。
 へイリー米国連大使は採択後、ミサイル発射について「我が国を含む多くの国の安全にとって直接的な脅威だ」と強く非難した。別所浩郎国連大使も北朝鮮と「有意義な対話」を再開できる状況ではないと述べ、圧力の必要性を強調。一方、中国の劉結一国連大使は発射には反対したが「全ての当事者が中国と共に対話と交渉を求めるよう望む」と語った。
 決議は新たな制裁対象に、海外のスパイ活動を担当しているとみられる北朝鮮の情報機関、偵察総局のチョ・イルウ第5局長や金氏の公式活動に同行している趙甬元、・党組織指導部副部長ら14人を追加。核兵器やミサイルの運用を担当しているとされる朝鮮人民軍の「戦略軍」のほか、金氏の秘密資金を管理するとされる党39号室と関連がある高麗銀行など4団体も加えた。
 度重なる弾道ミサイル発射や核開発を最も強い言葉で非難し「北朝鮮に核・ミサイル開発を検証可能で不可逆的な方法で放棄させる決意」を確認。対話を通じた平和的解決を促す各国の取り組みを歓迎するとした。
 安保理の北朝鮮制裁委員会によると、6月1日時点の制裁対象は合計39個人と42団体だった。(共同)

 −ロシアのプーチン大統領は、北朝鮮の核開発問題に関し「小国は独立や安全、主権を守るために核兵器を保有する以外に方法がないと思っている」と述べ核武装に理解を示すような発言を行った。サンクトペテルブルクの経済フォーラムで語った。
 発言は北朝鮮などへの軍事的圧力を強める米国を批判する中で出た。プーチン氏はこれまで「核クラブの拡大に断固反対する」と語り、北朝鮮の核開発を認めない立場を示してきた。しかし、今回の発言は米国が圧力をかけ続ける限り、核開発を容認するとも受け取れる内容だった。
 プーチン氏は「力の論理、暴力の論理が続く間は北朝鮮で起きているような問題が起こるだろう」と指摘。「力の乱用」がこうした事態を招いていると主張し、米国をけん制した。 (時事)

 −北朝鮮の今年4月分の石炭輸出量がゼロになったことが2日、わかった。石炭輸出は北朝鮮の主要な外貨獲得源の一つで、これが断たれたことが数字で裏付けられた。
 国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会がホームページで公表した。「北朝鮮産の石炭を4月に輸入した」と国連に報告した国が「0」だった。
 安保理は昨年11月に採択した制裁決議で、北朝鮮からの石炭輸出に上限額・量を設けた。中国はその後の2月、北朝鮮からの輸入停止を発表した。
 北朝鮮産の石炭輸出について1〜3月に報告した国は、いずれも1か国のみだった。総量は1月が約144万トン、2月が約123万トンで、3月は2月に比べ約200分の1となる6342トンに激減した。国名は公表されていないが、1、2月は輸入量の大きさから中国、3月3月は「マレーシアとみられる」 (国連外交筋)という。 (読売新聞6. 4)

 3日 −マティス米国防長官は3日午前、シンガポールで開かれている「アジア安全保障会議」(英国際戦略研究所主催)で演説し、核・ミサイル開発を進める北朝鮮について、「アジア太平洋地域の平和と安全にとって最も危険で差し迫った脅威だ」と述べ対北朝鮮包囲網を各国で狭めていくことの重要性を強調した。稲田防衛相も演説で、北朝鮮を「地域と世界に与える脅威は、今や新たな段階の脅威」と強く非難し、圧力強化の必要性を訴えた。
 マティス氏は米国の北朝鮮政策について、「体制転換は目的ではない」としつつ、「核兵器とミサイルを永久に放棄するまで外交的、経済的圧力を強化し続ける」と強調。「中国は北朝鮮が戦略的な資産ではなく、負債であることに最終的に気づくと確信している」と指摘し、中国による北朝鮮への働きかけに期待感を示した。 (読売新聞夕刊6. 3)

 −稲田朋美防衛相は、アジア安全保障会議(英国際戦略研究所主催)が開かれているシンガポールで、米国のマティス国防長官、韓国の韓民求国防相と1時間15分、会談した。3氏は、北朝鮮の核・ミサイル開発が地域と世界の安全保障に対する喫緊の脅威という認識で一致。北朝鮮に国連安全保障理事会決議を順守させるため圧力を強化する考えを共有した。終了後、自衛隊、米軍、韓国軍がより緊密に協力するとの共同声明を発表した。
 声明は、北朝鮮に挑発行為を停止するよう要求。日米韓の防衛協力として情報共有や共同訓練、相互運用性の向上を進める。中国の海洋進出を念頭に「航行の自由と上空飛行の自由は保障されなければならない」と昨年同様の表現を盛り込んだ。日米韓防衛相会談はトランプ米政権と韓国の文在寅政権発足後、初めて。 (毎日新聞6. 4)

 4日 −朝鮮中央通信によると、北朝鮮外務省報道官は、談話を発表し、国連安全保障理事会が北朝鮮の相次ぐ弾道ミサイル発射を受け、制裁決議を採択したことを「悪辣な敵対行為」と非難、「断罪、糾弾し、全面排撃する」と表明した。特に、決議案作成を主導した米中を「自らの利益のみ追求している」とやり玉に挙げた。
 その上で「米国とその追従勢力が正しい選択をするときまで、精密化、多様化された『主体弾』(弾道ミサイル)の雷鳴は世界を震撼(しんかん)させ、多発的、連続的に響くだろう」と警告し、今後も発射を続ける姿勢を明確にした。
 談話は「 (決議案は)米国が中国と長い間、協議してまとめた」と指摘。 「二つの国が裏で勝手に作成した決議案を強圧的に通過させ、『国際社会の総意』として押し付けている」と主張し、「自らの利益のみを追求する強権と専横を赤裸々に示した」と批判した。 (時事)

 6日 −米海軍の2隻の空母が日本海を離れたことが6日わかった。軍事挑発を続ける北朝鮮をけん制するため、米海軍は原子力空母カール・ビンソンと同ロナルド・レーガンをそれぞれ中心とする2個の空母打撃群を日本海に展開させる異例の構えをとっていた。
 両打撃群は日本海を離れるが、米原子力空母は1日で約1200キロメートルも移動できるため、空母レーガンは西太平洋海域にいる限り数日以内に半島周辺に戻れる。韓国の聯合ニュースによると、巡航ミサイルを発射できる米攻撃型原潜シャイアンが6日釜山に入港。引き続き北朝鮮ににらみをきかせているとの米軍の意思表示とみられる。
 米政府は4月上旬、朝鮮半島情勢の悪化を受け、シンガポールにいたカール・ビンソンを半島周辺に振り向けると発表。実際には時間をかけて同空母を北上させ、北朝鮮軍の部隊配備の変更などを観察し、有事の際の攻撃目標を見極めたもようだ。さらに、北朝鮮軍を緊張状態に置き、部隊を疲弊させることで一定の「成果」を上げた。
 今後、ロナルド・レーガンは沖縄近海で自衛隊との訓練などに臨む。朝鮮半島情勢が緊張している裏で尖閑話島周辺海域で動きを活発にしていた中国ににらみをきかせる目的があるとみられる。米海軍は、米西海岸に帰投するカール・ビンソンと入れ替わる形で空母ニミッツを既に出航させている。最終目的地は中東周辺海域だが、途中、日本周辺を通過するので、その時点で一時的に再び空母2隻態勢になる。 (日本経済新聞6. 7)

 7日 −米国防総省のスーファー副次官補(核・ミサイル防衛政策担当)は、米情報機関の分析に基づき、北朝鮮が初の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を「年内に実施できる態勢が整う」と議会に証言した。米高官が公の場で、こうした見方を示すのは初めてとみられる。
 スーファー氏は7日の上院軍事委員会の公聴会で証言。共和党のサリバン議員から「北朝鮮がニューヨークやシカゴなどを射程に入れたICBMを、いつ保有することになるのかが問題だ」と尋ねられ、スーファー氏は「情報機関の説明をいま一度申し上げると、北朝鮮は年内に初のICBM発射実験を実施できる態勢が整う」と答えた。
 「北朝鮮はICBMを発射する能力を、基本的にはもう持っているのではないのか」とのサリバン氏の問いに、スーファー氏は「その通りだ」と回答。7年前に想定していたよりも開発ベースは「速くなっている」と警戒感を示した。 (共同)

 8日 −韓国軍合同参謀本部は8日、北朝鮮が同日午前6時18分ごろ、東部の江原道元山付近から北東方向に、短距離の地対艦巡航ミサイルを数発発射したと発表した。高さ約2キロまで上がって約200キロ飛行し、日本海に落下した。米軍を強く意識した軍事行動とみられる。北朝鮮は国連安全保障理事会が核・ミサイル開発に関連して2日に採択した制裁決議に反発し、開発を続ける意思を示していた。
 巡航ミサイルは、飛行機のように翼や小型ジェットエンジンを備え、水平飛行するミサイル。弾道ミサイルに比べて速度が遅く、地形に沿って低空飛行する。画像やセンサーなどで位置情報を補完すれば、精度の高い攻撃が可能になるとされる。
 韓国の国防省は「様々な種類のミサイル開発能力を誇示し、米空母船団の海上訓練と関連して、艦艇に対する精密打撃能力を武力示威するねらいがある。米中関係や南北関係の主導権を確保する意図がある」との分析を示した。ただ、北朝鮮がどの位置に目標を設定していたのかは明らかでなく、精度については不明だ。
 北朝鮮は5月29日に元山付近から日本海に向けて弾道ミサイルを発射した後、「敵艦船をはじめ、海上と地上の針の穴のような個別的目標を精密に打撃できる弾道ロケット(ミサイル) 」を開発していると主張していた。専門家からは技術的裏付けがないとの指摘が出ていた。 (朝日新聞夕刊6. 8)

 9日 −北朝鮮の朝鮮中央通信は、新型地対艦巡航ミサイルの試験発射を初めて行い、成功したと報じた。日時は不明だが、8日に発射したミサイルを指すとみられる。
 同通信によると、ミサイルは国防科学院が新たに開発し、「従来よりも技術力を向上させた」もので、4月に平壌で行われた軍事パレードに登場したという。巡航ミサイルは空母などを標的とし、レーダーによる探知を防ぐため、水平に低空飛行する。命中精度が高いのも特徴だ。
 同通信は「超低空巡航飛行体制での飛行安全性、誘導正確性、目標進入の際の急激な高度移行能力を検討した」とし、ミサイルは「正確に旋回飛行し、海上の目標の船を探索して命中した」と強調。ミサイルを搭載した無限軌道車の移動式発射台も新たに開発し、「機動特性や迅速な射撃準備、発射制御系統の動作信頼性も実証した」と伝えた。
 韓国軍合同参謀本部によると、8日に発射されたミサイルの最高高度は2キロメートルと低く、日本海に向け約200キロ飛行した。北朝鮮によるミサイル発射は4週連続で、新型の中長距離弾道ミサイルな「火星12」など計5種類に及んでいる。 (読売新聞夕刊6. 9)

 12日 −マティス米国防長官は、下院軍事委員会の公聴会で、 2018会計年度(17年10月〜18年9月)の国防予算案の根拠となる世界の安全保障環境に関して証言した。マティス氏は、米国を取り巻く「最も喫緊かつ危険な脅威」として北朝鮮を挙げ、同国の核・ミサイル開発は「全て(の国々)にとり、明白かつ眼前の危険だ」と強調した。
 マティス氏は「北朝鮮は国連の非難や制裁をよそに、国際法違反の挑発行為をやめていない」と指摘する一方、北朝鮮による核兵器と弾道ミサイルの開発のペースを速め、範囲を広げていると警告した。
 外交的解決に失敗し、軍事衝突となった場合は「1953年(の朝鮮戦争)以来、見たこともないような極めて深刻な戦争となる」との見通しを示した。 (産経新聞6. 14)

 13日 −米国務省当局者は、北朝鮮に拘束されていた米国人大学生オットー・ワームビア氏の解放に際し、米国のジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表が率いる国務省代表団が訪朝し、北朝鮮側との交渉に当たったことを明らかにした。オバマ前政権ではクラッパー前国家情報長官が2014年11月、拘束されていた米国人2人を連れ戻すために訪朝したが、トランプ政権高官では初めて。
 米国務省のナウアート報道官は13日の記者会見で、ワームビア氏解放をめぐる交渉が核問題をめぐる米朝の対話に結び付くかについて「将来の対話について述べるのは時期尚早だ」と指摘した。
 米紙ワシントン・ポスト(電子版)によると、ユン氏は6日、ニューヨークで北朝鮮の国連大使と会談し、ワームビア氏の健康状態について情報提供を受けた。ワームビア氏は1年以上昏睡(こんすい)状態にあるとされている。 12日に訪朝したユン氏が「人道的見地」から解放を要請し、北朝鮮側が受け入れたという。
 ユン氏は5月にもオスロで北朝鮮高官と会談。北朝鮮側はワームビア氏を含む拘束中の米国人4人とスウェーデンの外交官が面会することを許可したという。平壌のスウェーデン大使館は米国の利益代表部を兼ねている。
 また、ナウアート氏は、 13日からの米プロバスケットボール協会(NBA)の元スター選手デニス・ロッドマン氏の訪朝は「ワームビア氏の解放とは無関係だ」と述べた。
 FOXニュースによると、ワームビア氏は13日夜(日本時間14日午前) 、地元のオハイオ州シンシナティに到着した。 (時事)

 14日 −ティラーソン米国務長官は、下院外交委員会の公聴会で、トランプ米大統領は北朝鮮の核・ミサイル開発を手助けしている中国企業に対し中国政府が制裁措置を取らなければ、米国が独自制裁を科すと中国の習近平国家主席に通告していると明らかにした。
 ティラーソン氏は、米国が制裁を求める中国企業のリストを中国側に提供しているとも述べた。また、北朝鮮への圧力について「中国の協力は目を見張るものがあるが、むらがある」と述べ、不十分だとの認識を示した。 (共同)

 16日 −北朝鮮の朝鮮中央通信は、同国の保健省次官が12日にユニセフやWHOなど国際機関に対し、人道支援の履行を求める手紙を送ったと報じた。国連の制裁決議の余波でマラリア根絶のための殺虫剤や医療機器が届かずにいるため、国際機関は物資輸送に責任を持つよう要求した。
 外務省も16日の報道で、北朝鮮による石炭など地下資源の輸出禁止などを例に、制裁が「我々の経済と生活を完全に窒息させようとしている」と批判した。スポーツ用品がぜいたく品とみなされ輸入が止まったことには「アーチェリーが弾道ミサイルになったり、競技用の銃で核弾頭を発射したりできないのは明白だ」と指摘した。 (日本経済新聞6. 17)

 21日 ※北朝鮮当局者が今月上旬、スウェーデンで開かれた安全保障の専門家らによる非公式会議に出席し、「朝鮮半島の非核地帯化」を目指す立場を主張していたことがわかった。会議の出席者が朝日新聞の取材に明らかにした。北朝鮮側は核開発を続ける一方で、対話を模索する狙いとみられる。
 会議はスウェーデンの安全保障開発政策研究所(ISDP)が今月1へ2日、ストックホルム近郊で開催。トランプ米政権に影響力があるとされる米ヘリテージ財団の上級研究員や中韓の安全保障専門家、元外交官らが出席した。北朝鮮からは外務省傘下の軍縮平和研究所幹部が参加した。
 会議に出席した伊豆見元・東京国際大教授によると、北朝鮮代表団は自衛目的の核開発だとして正当性を主張。同時に金日成国家主席と金正日総書記の「遺訓」である朝鮮半島の非核化を目指す立場に変わりはないとも強調。朝鮮半島に米国の「核を持ち込ませてはいけない」と訴えた。
 一方、会議後の14〜16日にモンゴルであった国際会議にも、北朝鮮から外務省米国研究所副所長が出席。朝鮮戦争の休戦協定を平和条約に転換する考えを改めて主張した。日本からは外務省アジ大洋州局審議官が出席し、日朝当局は短時間意見を交わした。
 こうした動きの背景には、条件が整えば非核化を目指す姿勢をちらつかせることで対話の糸口を模索する狙いがあるとみられる。ただ日本政府関係者は「北朝鮮と関係国との立場の隔たりは大きく、対話は容易ではない」と指摘している。 (朝日新聞6. 21)

 −米中両政府は、初の外交・安全保障対話を開き、北朝鮮の核・ミサイル問題について協議した。米側によると、国連決議で制裁対象となっている北朝鮮企業との取引を控えることで一致した。米側は会合後に記者会見を開いて「中国はより強い圧力をかける責任がある」と迫ったが、中国側は北朝鮮との対話再開を重視するなど溝も目立った。
 ティラーソン米国務長官は会合後の記者会見で、北朝鮮はアジア太平洋地域で「最も差し迫った脅威だ」とし、「米中は朝鮮半島の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化を求める」と述べた。そのうえで、北朝鮮企業を取引先に抱える中国企業が多いことを念頭に「北朝鮮は武器開発資金を集めるためのいくつもの犯罪企業に関与している。資金源を断つ努力を積み重ねなければならない」と述べ、違法取引の取り締まり強化を迫った。
 マティス国防長官は同じ記者会見で、米国民は北朝鮮の相次ぐ挑発行為に不満を募らせていると強調した。トランプ大統領が前日に「 (北朝鮮問題は)まだうまくいっていない」とツイートしたことに言及し、「孤立国で投獄された末の米国人学生の死が反映されたものだ」と説明。北朝鮮から昏睡状態で解放された米国人大学生ワームビア氏が死亡した問題が影響したとの見方を示した。
 一方、中国側代表である外交担当トップの楊潔篪国務委員(副首相級)や人民解放軍の房峰輝統合参謀部参謀長は会合終了後、報道陣の質問に何も答えずに会場の国務省を立ち去った。昨年まで年1回開いていた米中戦略・経済対話で恒例だった共同記者会見は開かず、米側が意欲を示していた共同文書の作成も見送った。
 中国メディアによると、中国は北朝鮮問題について核・ミサイル開発を停止させつつ、米国を中心とする軍事演習などの軍事圧力も止める「双停」を主張。米中で北朝鮮を対話路線に戻すべきだと呼びかけた。圧力重視の米国との違いが浮き彫りになった。 (日本経済新聞夕刊6. 22)

 −北朝鮮のケ・チュンヨン駐インド大使は、米韓合同軍事演習の中止といった条件を挙げ、「われわれは、核実験とミサイル実験の凍結について話し合う意思がある」と述べた。インドのテレビ局「ウィオン」が21日夜に放送したインタビュー番組で語った。対話の意思を示すことで、圧迫を続けるトランプ米政権の出方を探る狙いがありそうだ。
 ケ氏は、「例えば、米国側が大規模な軍事演習を一時的または永久的に完全にやめれば、われわれも一時的に停止する」と対話を呼びかけた。
 トランプ政権は、対話の前提として北朝鮮の核放棄を主張しているが、ケ氏は、核・ミサイル開発をやめることを公式に宣言しなければならないといった前提条件は「受け入れられない」と述べ、核・ミサイル開発を放棄しない立場を堅持した。 (産経新聞6. 23)

 24日 ※米FOXテレビは22日、複数の米政府当局者の話として、北朝鮮が北西部・東倉里の西海衛星発射場で、21日にICBMに利用可能とみられるロケットエンジンの燃焼実験を実施したと報じた。
 韓国統一省報道官は23日の定例記者会見で、「北朝鮮がミサイルの能力を高度化するため、このような活動を続けている」と話し、米国と協力して北朝鮮の動向を追跡・監視していることを明らかにした。
 北朝鮮から米本土に到達するICBMを開発するには、複数のエンジンを組み合わせた「多段式」にする必要がある。聯合ニュースは専門家の話として、2段目か3段目に使うエンジンの実験と推定されると報じた。
 北朝鮮がエンジン燃焼実験を行ったのは3月以来。この時のエンジンは、北朝鮮が5月14日に試射を成功させた新型中距離弾道ミサイル「火星12」に使われたとされる。韓国国防省は射程を約4500〜5000キロ・メートルと推定し、飛距離を大幅に向上させたと分析した。北朝鮮は、この新型エンジンを3〜4基束ねて1段目にするとみられ、分離技術も含めた2、3段目のエンジン開発を進めている模様だ。FOXテレビによると、米政府当局者らは今回実験したエンジンが、ICBM以外の新型弾道ミサイルにも利用される可能性もあると指摘した。 (読売新聞6. 24)

 ※北朝鮮政府高官が昨秋に協議した米政府元高官らに対し、核・ミサイル問題の協議について「中国を関与させない」ことを求めていたことがわかった。その上で、北朝鮮側から「米新政権と直接交渉がしたい」との伝言を受け取り、国務省を通じてトランプ政権側に伝えられたという。
 昨年10月にクアラルンプールで北朝鮮の韓成烈外務次官らと協議したガルーチ元国務次官補と米社会科学研究評議会のシーガル氏が朝日新聞の取材に明らかにした。
 金正恩政権が、北朝鮮にとって「血で固められた同盟」と呼ばれる中国に不信感を持っていることが浮き彫りになった。また、中国が議長国を務める6者協議などの枠組みではなく、米国との直接対話を重視していることも裏付けられた。
 ガルーチ氏らによると、協議で北朝鮮側は、金正恩・朝鮮労働党委員長が「中国に頼って問題を解決しようとする米国の姿勢にいらだっている」と指摘。北朝鮮の対外貿易の約9割を占める中国の影響力を使って問題を解決する米政府のやり方を批判したという。中国が米国の要求を受けて、石油の禁輸や北朝鮮産石炭の輸入を制限することなどを嫌った可能性がある。
 その上で北朝鮮側は「中国を介さず米国と直接取り組みたい」と要求したという。シーガル氏は「北朝鮮側は、中国への依存を下げるために対米関係を改善したがっているようだ」と話す。シーガル氏は、現在も北朝鮮は同様の考えを持っているとみている。
 ただ、当時のオバマ政権との対話については強く拒否。具体的な非核化措置を取るまで交渉に応じないとした「戦略的忍耐」の方針に「強く不満を抱いていた」 (ガルーチ氏)という。北朝鮮側は「我々は次期大統領を心待ちにしている」とも述べトランプ、クリントン両候補のどちらが大統領になっても直接対話する意欲があることを強調したという。
 ガルーチ氏らは新政権との対話の前提として、核実験などの挑発行為をしないように要求。これに対し北朝鮮側は、核兵器について「核兵器以外に我が国を保障するものはないので、放棄することはありえない」と反論し、平行線のままだったという。 (朝日新聞夕刊6. 24)

 27日 −核・ミサイル開発や軍事力拡大に資する物資が北朝鮮に流入するのを防ぐため、政府は27日午前の閣議で、貨物検査法施行令を改正して「キャッチオール規制」を導入することを決めた。公布は30日で、7月中旬に施行される見通し。
 政府はこれまで、国連安全保障理事会の決議に基づき、核・ミサイル開発に関連する品目のリストを作り、海上保安庁などが貨物検査を行ってきた。キャッチオール規制の導入で、今後はリストにない品目でも、北朝鮮の核・ミサイル開発や軍事力拡大につながる恐れがあると判断される場合は、提出命令を出せるようになる。 (朝日新聞夕刊6. 27)

 −北朝鮮が最近までロシアから年間20万〜30万トンの軽油などの石油製品を調達してきたことが27日、分かった。金正恩朝鮮労働党委員長の統治資金を管理する党機関「39号室」で燃料調達に携わった元幹部が、共同通信のインタビューに証言した。北朝鮮の核・ミサイル開発阻止に向け、トランプ米政権は中国に年間約50万トンの原油供給を制限するよう迫っている。北朝鮮経済を支えるロシアルートの存在が明らかになり、制裁強化の新たな焦点となりそうだ。
 元幹部は李正浩氏(59)。2014年に家族と韓国に亡命し、現在は米首都ワシントン近郊に住んでいる。李氏が実名でメディアの取材に応じるのは初めて。39号室による外貨稼ぎの実態も明らかにした。米政府高官も李氏と面会、関心を寄せているもようだ。
 別の北朝鮮関係者によると、書類を偽造するなどしてロシア産燃料を中国向けとして買い付け、実際は北朝鮮に送っているものが相当量を占める。公式統計に表れない不透明な取引実態が浮き彫りになった。
 ロシア産燃料の大量調達は現在も続いているとみられ、米財務省が今月初め、ロシアの石油会社を制裁対象に指定したのも、こうした状況を踏まえた可能性がある。李氏は39号室で農水産物輸出や海運を手掛ける「大典総局」で貿易管理局長などを歴任、日朝貿易のほかロシア極東からの燃料調達や中国への石炭輸出に携わった。韓国に亡命する直前まで中国・大連に駐在していた。
 李氏によると、39号室は大典総局など5大グループを中心に金や農水産物の輸出や加工貿易、労働者派遣などさまざまな方法で外貨を獲得。中国の習近平国家主席が訪朝せずに14年7月に訪韓したことに金正恩氏が反発、ロシアや東南アジア諸国との貿易拡大を指示したことも明らかにした。
 また、李氏によると、北朝鮮は1990年代から燃料をロシアから輸入しており、大半が軽油。シンガポールの複数の仲買業者を通じてウラジオストクやナホトカからタンカーで運んだという。
 中国が供給する原油を精製したガソリンや軽油は17万〜20万トンで軍部門が独占するのに対し、ロシア産は自動車や船舶、列車など広い用途で流通、北朝鮮の市場経済はロシアに燃料を依存している状況だとした。 (共同)

 29日 −トランプ米政権は、北朝鮮との違法な金融取引に関与しているとして、中国の金融機関「丹東銀行」を制裁の対象とすると発表した。4月の米中首脳会談以降、北朝鮮の核・ミサイル開発を抑止するため中国による影響力行使を期待していたが、効果が出ないため独自措置に踏み切った。中国の銀行を対北朝鮮制裁の標的としたのは1月の政権発足後初めて。
 トランプ政権はこの日、台湾への武器売却も発表、対中庄力強化にかじを切った。ロイター通信によると、中国の崔天凱駐米大使は記者団に「相互の信頼を損ない、(4月の)中米首脳会談の精神に逆行するもの」と批判した。
 米財務省によると、丹東銀行は中朝国境の遼寧省丹東市にあり、北朝鮮との取引でマネーロンダリング(資金洗浄)に関わった。ホワイトハウスで会見したムニューシン米財務長官は「北朝鮮の大量破壊兵器計画のため数百万ドルの金融取引をした」と制裁の理由を説明した。今回の制裁で、米金融機関や他国の金融機関経由の取引が禁じられる。
 米国が中国の金融機関を制裁するのは、2005年9月にマカオの金融機関「バンコ・デルタアジア」を制裁して以来2行目。
 丹東銀行は、中国当局が昨年9月に摘発した丹東市の貿易会社「丹東鴻祥実業発展」(DHID)の取引銀行のひとつ。DHIDは、国連制裁を受けた北朝鮮の銀行に代わり、租税回避地(タックスヘイブン)などにペーパー企業を設立。丹東銀行や中国4大銀行に名を連ねる中国工商銀行など12行を通じ違法な金融取引を続けた。
 米財務省はまた、フロント企業などを使い北朝鮮の金融機関の代理人を務めている中国人2人と、国連制裁で北朝鮮への移送が禁止されている「ぜいたく品」を輸送した疑いで中国の海運会社、大連寧聯船務有限公司を制裁した。この海運会社は、主に北朝鮮の石炭、鉄鉱石を運搬している。
 トランプ大統領は21日の演説で「北朝鮮問題でもう少し協力を得られたらと思うが、機能していない」と中国の対応に不満を漏らしていた。 (毎日新聞夕刊6. 30)

 30日 −米国のトランプ大統領と韓国の文在寅大統領は、ワシントンのホワイトハウスで両大統領の就任後初めての首脳会談を行った。米韓両政府は会談後に共同声明を発表し、北朝鮮の核・ミサイル開発による挑発を止めるため、国際社会による制裁で最大限の圧力をかけることが必要との認識で一致した。
 共同声明は、北朝鮮の脅威に対応するため、米国が核兵器を含むすべての兵力による抑止力を韓国に提供することを改めて確認。国際的な圧力を強めていく過程で、中国の役割が重要との認識で一致した。北朝鮮との「対話のドア」は適切な環境の下で開かれているとも明記した。トランプ氏の年内訪韓でも合意した。
 トランプ氏は会談で、2012年に発効した米韓自由貿易協定(FTA)の見直しを文氏に求めた。韓国から米国への自動車、鉄鋼輸出が増え続けていることに強い不満を表明。韓国大統領府は会談後、FTAの再交渉には同意していないと発表した。
 文氏は首脳会談後、ワシントンの政策研究機関「戦略国際問題研究所(CSIS)」で演説。「北朝鮮の挑発には断固として対応する」と述べた上で、「同時に金正恩朝鮮労働党委員長との対話も必要だ。北朝鮮で核放棄を決定できる唯一の人物だ」と南北首脳会談の実現に意欲を示した。会談条件として、北朝鮮による核実験とミサイル発射の中断、抑留されている米国人3人の解放を挙げた。 (読売新聞7.2)

 

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